インディゲーム開発者に広がる『スプラトゥーン』インスパイアゲームまとめ
いよいよ発売を迎える任天堂の新作TPS『スプラトゥーン』。インクで街を塗りつぶしてナワバリを奪い合うユニークな設定や、イカした世界観、秀逸なゲームシステムなど前評判が非常に高く、ファンの間で非常に大きな盛り上がりを見せている。
その一方で、5月に入ってからなぜか複数の開発者から「床を塗るゲーム」が次々と発表されている。なぜ今になって次々と共通したテーマのゲームが発表されているのだろうか? 今回はそんな「床を塗るゲーム」7作品を紹介しつつ、その謎に迫りたいと思う。
短時間で作られた作品が多く、どれも作者の個性がよく伝わってくる作品ばかりだ。いずれも作品自体は無料で公開されているので、プレイできる環境にあるならば色々比較してみるとより楽しめるだろう。
マインクラフトで再現『Splatoon in Minecraft』
海外の制作者による『マインクラフト』用自作マップ。武器の種類が本家のものに近い3種類が用意されていたり、インクに潜って高速移動ができる仕組みが搭載されているなど、本家をきっちり再現することに注力した方向性となっている。
ダウンロード:http://www.minecraftforum.net/forums/mapping-and-modding/maps/2423910-splatoon-in-minecraft
豚で塗る!?はっちゃけアレンジの『Sbutatoon(スブタトーン)』
ゲーム実況者の「ぬどん」氏(@nudoing)による『マインクラフト』用自作マップ。『Splatoon in Minecraft』とはうってかわって豚をテーマにした大胆なアレンジが特徴だ。「豚に乗って走ることで塗る」「豚肉を食べると周囲を広範囲に塗る」「豚が大量に降ってくる」などユニークな要素が満載だ。
また、マップが非常に広く、4チームかつ大人数で遊べるようになっており、ワイワイと非常に盛り上がれる作りになっているなど、ゲーム実況者らしい作品に仕上がっている。
ダウンロード:http://ch.nicovideo.jp/nudon-ch
Maruchu氏が短期間で制作した三部作
個性的なゲームを次々と作り出しているMaruchu氏(@Maruchu)による作品群。三部作というよりも、アップデートの履歴のようなものではあるが、一通り触ってその変化や更新点を味わってみるとより楽しめるだろう。
Splatoof(スプラトーフ)
スプラトーフ http://t.co/2WAsjESyGr#Splatoof
ユニティちゃんの手からどんどんトーフが出てきて床にちりばめるゲームを作りました! 時間内に沢山ちりばめた方が勝ちです! pic.twitter.com/XfR8GfydQS
— ㊥Maruchu (@Maruchu) 2015, 5月 24
ゲーム開発ツール「Unity」のマスコットキャラクター、ユニティちゃんを使用した、“トーフ”を投げまくるゲームだ。
「なぜトーフなのか?」については、本家の開発者インタビューにある「試作版のキャラクターが豆腐のようなデザインだった」というエピソードが元となった、というのが答えだと思われる。ユニティちゃんの右手からトーフがどんどん出てくる様は非常にシュールだ。
プレイはこちらから:http://many.chu.jp/Unity/Splatoof/
Splatoof2(スプラトーフ2)
Gotcha!! <:=
http://t.co/Komnb5cDe1pic.twitter.com/Ec6Vk2yV8F
— ㊥Maruchu (@Maruchu) 2015, 5月 25
『Splatoof』がバージョンアップされ、トーフではなく、ちゃんと(?)インクを飛ばして塗るゲームになった。対戦相手がおらず塗った量の判定もないが、本家再現に着々と近付いている。
プレイはこちらから:http://many.chu.jp/Unity/Splatoof2/
MINECRAFTOON(マインクラフトーン)
マインクラフトゥーン http://t.co/hfJjWCee3a#MINECRAFTOON
マインクラフトとスプラトゥーンを一度に遊んだ気になれる夢のようなゲームを作りました。自分でも何 言ってるかよくわかりません。 pic.twitter.com/x90cRqyiZt
— ㊥Maruchu (@Maruchu) 2015, 5月 26
グラフィックが『マインクラフト』風に置き換えられたことで世界観が確立し、さらにインクを塗り合うゲームとして完成した印象だ。
本人のTwitterによると、本家ではなく、先ほど紹介した『スブタトーン』にインスパイアされて作った作品のようだ。最終的に「インクを塗り合うゲームをマインクラフトで再現したゲームをUnityで再現した」というこれまたシュールな立ち位置のゲームとなった。
プレイはこちらから:http://many.chu.jp/Unity/MINECRAFTOON/
特筆すべきは「この3作品がたったの4日間で作られた」という点ではないだろうか。「作りたい」と思ったらすぐ作れる。それを可能にする制作ツールUnityのすさまじさだ。もちろん、制作者のセンスと技量にも乾杯。
オリジナル要素が面白いピコピコ塗りゲーム『Naughty Painters』
ブラウザでできる2人対戦ゲームを作ったので、よかったら遊んでみてください。床をペンキで多く塗た方が勝ちです。 http://t.co/Vp12arHM61#pico8pic.twitter.com/4hRihKb8CG
— Ryosuke Mihara (@oinariman) 2015, 5月 24
インディーゲーム開発者、三原氏(@oinariman)による作品。ペンキで塗り合うシンプルな対戦ゲームだ。「塗った面積を競う」という点では本家と同様だが、歩いた場所が塗られるシステムで、また、触れると爆発して周囲を広く塗る「爆弾」や、Ver1.1では「自動で塗ってくれるロボを奪い合う」という要素も追加されているなど、非常にオリジナリティが高い。
「PICO-8」という8bit風ゲーム専門のツールを使って制作されている。
プレイはこちらから:http://www.lexaloffle.com/bbs/?tid=2016&pid=10937&autoplay=1
塗るだけで楽しい?『SplaPainter(スプラペインター)』
#スプラトゥーン 発売まで我慢できないのを少しでも抑えるためのソフトを作りました。 https://t.co/H1oZMMnoII ※Windows専用です pic.twitter.com/MQpUILpJ2j
— ニカイドウレンジ (@R_Nikaido) 2015, 5月 26
ニカイドウレンジ氏(@R_Nikaido)によるペイントツール風ソフト。キャンバスの上を歩き回って好き放題インクをばらまけるソフトだ。なお、制作者は筆者と同一人物である。(手前味噌ですみません)
ゲームではないし、ペイントツールとしても使い物にならないが、その分インクの気持ちよさにこだわっており、時間を忘れて塗ってしまう。「ただ塗るだけで楽しい」それを強調した作品ともいえる。2Dゲーム専門の制作ツール、GameMaker:Studioで制作。
ダウンロード:https://dl.dropboxusercontent.com/u/14767899/nikaidrop/SplaPainter.zip(※zipファイル直リンク)
『スプラトゥーン』が持つ「マネされ耐性」
初心者向けのゲーム制作本を開くと、最初に作ってみるゲームが『ブロック崩し』であることが多かったり、また作例として『テトリス』や『スーパーマリオブラザーズ』風のゲームの作り方が載っていることが多い。また、実際の製品でも、類似ゲームが大量に出現した結果一大ジャンルを築くことになるものもある。例えば『ストリートファイター2』はその影響力が大きく、一瞬のうちに「格ゲー」というジャンルを定着させてしまった。
これらに共通するのは、「マネしやすいゲームである」という点だ。
例えば『スーパーマリオブラザーズ』ならば、「ジャンプして敵を踏む」「コインを集める」という要素は、類似したものを作られて、ジャンプの高さが変わったり集めるものがコインでなくなったとしても、根本的な面白さは変わらないだろう。それはなぜかというと、基礎となる骨組みそれ自体が非常に面白くできているから、ということなのだと筆者は思う。いわば「マネされ耐性」があるゲーム、ということだ。
そして『スプラトゥーン』もまた、強固な「マネされ耐性」を持つゲームなのだ。何かを大量にバラまくというだけで楽しい。床や壁を塗るという行為そのものが楽しい。液体がビチャビチャする感じがそれだけで楽しい。鮮やかな色の組み合わせが気持ちよい。そんな「マネされ耐性」がある要素が多くある。それらをテーマにしたゲームが今回いくつも発表されたのも、それが1つの理由なのだ。
このような「マネされ耐性」のあるアイデアは、多少こねくり回しても揺るぐことはないため、逆に言えば色々試せる余地があるということだと筆者は思う。今回は荒削りな作品も多いが、この「マネ」が起点となって、単なるマネではないプラスアルファのある作品が生まれるかもしれない。
そして、今回紹介した作品が短期間かつ多種多様なツールによって作られているように、短期間でアイデアを形にする方法は今この現在、数多く存在している。「作る→マネする→さらにマネをする」のサイクルで「塗るゲーム」がひとつのジャンルとなり、そこから進化した新しいゲームが生まれる。そのサイクルが短くなった今、次の革命的ゲームが登場するのも、そう先の話ではないのかもしれない。