ギリシャ神話の女神が銀河を駆ける!?レースゲームじゃないようでレースゲームな怪作『The Next Penelope』

インディーゲーム,レースゲーム

ストイックさとスピード感を併せ持つレースゲームは昨今、縮小傾向にある。かつては『F-ZERO』、『WipEout』と言った作品が人気を博していたが、いずれも人気に陰りが現れ始めるなどして、新作が出なくなってしまった。

後者は先日、旧作三本をまとめたリマスタータイトル『WipEout Omega Collection』が販売され、シリーズは辛うじて存続しているが、前者に関しては停止状態にあり、主人公格のキャラクターは今やゲームではなく、ランチの人として知られるようになっている状況だ。
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『The Next Penelope Race to Odysseus』は、そんなレースゲームの系譜を汲みつつ、一石を投じる試みを行った作品である。開発はフランス在住のゲーム開発者、Aurelien Regard氏。氏は国内ではニンテンドーDS向けに発売された『BRICKDOWN ブロックくずしのフランス革命やぁ~!(販売元:サクセス)』、プレイステーション3、Xbox 360、Windows PC向けに発売された『地獄だい好き Hell Yeah!(販売元:セガ)』などで知られるゲーム開発会社Arkedo Studioの設立者の一人で、今作ではゲームデザイン、プログラム、音楽まで、ほぼ全てを一人で手掛けた。

宇宙船型のマシンを操縦し、2Dの見下ろし視点で構築されたサーキットを駆け抜けるレースゲームというのが大まかな内容。しかしてその実態は「レースゲーム…?」と、誰もが首を傾げてしまうこと確実なものになっている。

ジャンルの常識に捉われない、何でもありのレースゲーム

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基本的なルールは、ライバル達との順位争いに挑み、上位入賞を目指すというもの。まさにレースゲームである。だが、今作においてそのルールは「コースの一つ」に過ぎない。
 
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一体、どういうことか?実は今作は、複数のコースで構成された「惑星」を攻略していく形で本編が進む。そのコースの中に、先のレースゲームお馴染みの順位争いが含まれているのだ。
「コースの一つ」なら、他に違ったコースがあるのかと言えばその通り。そして、それらこそが思わず首を傾げてしまうようなものなのである。どんなものか、その一部を紹介すると、
 
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自機を飲み込もうと、後方から迫りくる怪物から逃げたり、
 
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巨大な虫を捕獲したり、
 
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ゴースト(本物)と共に無人のコースを駆け抜けたりなど。

単なる順位争いに留まらない、ハチャメチャな展開が繰り広げられるのだ。
 
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また、本編のワールドに絡まない独立したコースも用意されているのだが、こちらは更にぶっ飛んでいて、自機を操縦してホッケーをしたり、コース上に散らばるコインを回収し続けると言った、「レースは何処へ!?」なシチュエーションの連続。
 
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更に惑星の最後にはボス戦が展開されるのだが、その内容もレースゲームだから順位争いをする…というものではなく、普通に殺るか殺られるかの真剣勝負。相手の攻撃を掻い潜りながら自機に実装された攻撃用の装備を使い、ダメージを与えていくという、レースゲームらしからぬ戦闘が繰り広げられるのだ。もちろん、自機にも耐久力が設定されているので、敵の攻撃を受けて空になってしまえば大破し、ゲームオーバー。力押しで乗り切ることもできない。

そんな順位争いと文字通りの戦闘を繰り返していくのが今作の詳細な内容。レースゲームでありながら、シューティングあり、アクションありの常識外れなゲームデザインを売りとしているのである。それもあって、プレイすればほぼ誰もが衝動的に首を傾げたくなる斬新としか言い様がない、レースゲームのような「なにか」に仕上がっている。

複数の装備、成長機能まで搭載した風変わりなマシン

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プレイヤーが操縦するマシンも一線を画している。というのも、アクセルとブレーキが無い。自動的に走行するのだ。その為、プレイヤーはカーブを曲がる際のハンドリングに集中するだけでいい。
 
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また、自機には攻撃などを実施できる「装備」が搭載されている。「ブースト」、「ショット」、「機雷」、「テレポート」、そして「クリスタル」、「フック」の六種類があり、ゲームの進行に応じて一つずつ習得されていく。また、一連の装備を使うと、自機の耐久力を指す「エナジーゲージ」が減少し、乱用すればするほど、自機が大破する危険が増していく。その為、順位争いにせよ、ボス戦にせよ、状況を見計らった活用と制限を心がけて使わなければならない。安易な力押しを許さないバランス調整が図られているのだ。
 
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常識外れなレースの数々のみならず、このように自機も強烈な個性付けが施されていてインパクト抜群。また、使う度に「エナジーゲージ」を消費するシステムは、任天堂の『F-ZERO(F-ZERO X)』っぽさ全開。他にもエナジーゲージの回復を行う「ピットエリア」、順位争いにおける一周目時の装備ロック(及び、二周目以降からのアンロック)など、同作を髣髴とさせる要素はあるので、経験者ならばニヤリとしてしまうこと請け合いだ。
 
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装備に関してはもう一つ、コースを攻略する度に獲得する「XP」を割り振り、強化を図るアップグレードの要素もある。当然ながら、強化すればレースを有利に展開していけるようにもなり、実力での対処が厳しい所をカバーすることができる。そんなロールプレイングゲームな遊び方で楽しめるのも、今作の魅力。
そして、「これレースゲームなの…??」と思わず首を傾げる戸惑いと驚きを味わえるのだ。

ここでしか味わえない、唯一無二のレースバトルがある

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様々な要素をごった煮の如く盛り込みながら、そのレース一つ一つが違和感なく遊びとしてまとまっているのも見事。それに貢献しているのがストーリーで、様々な惑星を巡っていくという設定が展開の多彩さにマッチしている。
 
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肝心の内容も主人公のペネロペが夫のオデュッセウスの行方を捜すべく、銀河を駆けるというギリシャ神話をモチーフにしたもので、それにちなんだネタが豊富に盛り込まれている。終盤の展開も、まさにストーリーがあってこそ、と言わんばかりの常識外れなものになっていて、思わず「なにこれ!?」と声を上げてしまうこと必至。同時に「レースゲームなの…?」という違和感も(お約束のように)爆発するだろう。
 
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ここまで魅力を中心に語ってきたが、ゲームの難易度は高い。通常の順位争いにせよ、ボス戦にせよ、常にデッドヒートと死闘が繰り広げられる。アップグレードによる強化を図っても多少、楽になる程度なので、レースゲームに苦手意識のあるプレイヤーには、残念ながらお薦めできない。
 
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しかし、そんなプレイヤーでも一度は体験するべき唯一無二の遊びが今作には詰まっている。『F-ZERO』などのストイックさとスピード感を特色にするレースゲームの伝統を踏襲し、革新的な遊びを盛り込んだ、まさに怪作と言うに相応しいこの作品。競争は飽きた、昔ながらのストイックな駆け引きを味わいたいという欲求が溜まっているプレイヤーなら、ぜひ、挑んでみて欲しい。ローカル専用だが、最大四人のマルチプレイにも対応しているので、接待用にもどうぞ。
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[基本情報]
タイトル:『The Next Penelope Race to Odysseus』
制作者: Aurelien Regard
クリア時間:2時間~4時間(※やり込み要素のコンプリートを除く)
対応OS: PC(Windows、Mac)
価格: ¥1280

https://www.amazon.co.jp/Next-Penelope-Race-Odysseus-%E3%82%AA%E3%83%B3%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%89/dp/B010Q0CN58
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