「静」の演出がたまらないフリゲアドベンチャー『31日の彼』。静かに進められる魔女狩りの謎
ゲームにBGMは欠かせないものだ。これまで様々なゲーム向けに生み出されてきた楽曲の数々は「ゲーム音楽」というジャンルを築き上げてきた。筆者も御多分にもれずゲーム音楽好きである。
『Crypt of the NecroDancer』のようにBGMをゲームデザインに取り込んでしまったような作品すらある。BGMはプレイヤーを盛り上げ、プレイを楽しいエンターテインメントとして彩る。
しかし、今回紹介するフリーゲーム『31日の彼』は正反対のゲームと言っても過言ではないかもしれない、BGMがほとんどない非常に静かなアドベンチャーゲームだ。とある街を舞台に、魔女狩りをテーマとした重々しい内容と相まって厳かな雰囲気を見事に醸し出している。さっそく紹介していこう。
魔女狩りの標的となった姉弟
本作の舞台は中世のとある街。名も無き主人公が街を歩いていると聴こえてくるのは魔女の話。どうやら「外の世界」から来た姉弟が、教会の神父によって裁かれるらしい…。
街中を歩いて周り、話を聴いたり、アイテムを集めながら物語を進めていくアドベンチャー形式のゲームだ。街は朝、昼、夕、夜に対応した4つの区域に分かれており、それぞれのマップをいったりきたりしながら進めていく。
街の人々は教会が率いる魔女狩りに加担していく…。以前1人狩ることに失敗し、今回はとある姉と弟が標的となっているようだ。
酒場で話し込む客とマスター。マスターは外から来たらしく姉弟に同情しているようだ。
このゲームを進めて行く上で重要になるのは、各所にあるメモや書物など。謎を解くためのヒントが隠されているので、見逃さないようにしよう。
「夜の区」の森には、不思議な存在が住んでいる。その存在を紹介し、対抗手段を記した書物
静けさが醸成する魔女狩りの雰囲気
本作の物語は、街の人々の話とメモによって紐解かれていく。決してストレートな物語が語られるのではなく、断片的な情報を集めるとぼやーっと全体像が浮かび上がってくるといった具合だ。
そして、魔女狩りという重々しいテーマを見事にゲームの雰囲気で実現しているのが「音」の存在だ。このゲームではほとんどの場面でBGMがかからない。聞こえるのは、扉を開ける音などの効果音のみ。非常に静かなゲームなのだ。
静かな中、進んでいく魔女狩りの儀式の準備。音がない分、重々しくそして不気味だ。
音楽がないことでプレイヤーは謎解きに集中し、そして物語に引き込まれていく。まさに淡々と魔女狩りの儀式の準備が進む中、傍観する街の人々のように。そんな冷めた街の様子をさらにどこか遠くから見ているかのような不思議な感覚になる。
この不思議な感覚の正体には、本作最大の謎が隠されているのではないかと筆者は考えている。次節ではその謎について問題提起したい。
主人公の謎
本作をプレイしていると気になることが一つある。それは、プレイヤーが操作する主人公自身についてだ。この主人公は誰なのか?実はゲーム中では3つあるうちのトゥルーエンド=ED1に達しない限り、その正体が語られることはない。自身について一切語られることなくゲームは始まるのだ
果たして主人公は何者なのか。そして街を探索するときの静けさに感じる不思議な感覚の正体は何なのか。その答えにぜひ至ってほしい。
用意されたエンディングは全部で3つ。普通にプレイすると到達するのはED3で、本作の物語の謎はほとんど明かされない。制作者が公開している攻略のヒントなども参考にしながら、ぜひED1とED2も見てほしい。(セーブスロットは3つしかない。こまめなセーブは必須だ!)
決してワクワクする楽しさだけではない重々しさ。静けさが醸し出す余韻のような雰囲気をぜひ楽しんでみてほしい。
[基本情報]
タイトル 『31日の彼』
制作者 黒時(制作者様サイトはこちら)
クリア時間 1~2時間
対応OS Win
価格 無料
ダウンロードはこちら
http://www.freem.ne.jp/win/game/5209