“純血種”ながらも軽快操作な魔界アクションゲーム『マルディタカスティーラ』

アクション,インディーゲーム

1980年代初期から終わりにかけ、アーケードゲーム市場では数多くの手ごわい横スクロールアクションの名作が生まれた。

だが、時代はパズル、対戦格闘に傾倒していき、横スクロールアクションの新作は減少。気づいた頃には、その存在自体が過去の遺産となってしまった。

当時、その手のゲームに魅了されたスペイン在住の二人のプレイヤーは、新作が消え失せたことに不満を募らせていた。そして、しびれを切らした彼らはある日、一大決心をする。
だったら、自分達で作ってしまえ!」…と。
 
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そんな経緯の末に生まれたのが今作、『マルディタカスティーラ ドン・ラミロと呪われた大地』だ。新作が出ないことにしびれを切らした二人のプレイヤーこと、個人開発者のLocomalito、Gryzor87の両氏によって制作され、2012年にフリーゲームとして公開された。

その4年後にはAbylight Studios、YoYo Gamesの協力を得て、パワーアップ版の『MalditaCastilla EX』がSteamで配信。プレイステーション4、XboxOneにも移植された。日本でも同年12月、プレイステーション4版がフライハイワークスよりリリースされている。また、2017年2月にはニンテンドー3DSへの移植も発表。こちらもフライハイワークスより、同年7月12日に日本でリリース予定だ。

見た目からして、80年代の横スクロールアクション全開の今作。後発のパワーアップ版(兼日本語ローカライズ版)を軸に置く形で、その魔界な魅力を紹介していこう。

遊びやすくて良心的な、「魔界」アクションゲーム

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時は西暦1081年。戦争で恋人を失い、深い悲しみの中に陥った少女モーラは古代の悪魔に惑わされ、その涙を鍵に魔界への扉を開いてしまった。やがて悪魔の軍勢がカスティーラ王国を襲い、滅亡へと追いやってしまう。
 
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悪魔の軍勢が迫りつつあるトロメラ王国の王は、騎士ドン・ラミロとその部下達に悪魔討伐を命じる。王の命を受けた彼らは、悪魔達のはびこるカスティーラ王国へ向かい、その根城とされる魔界を目指す…というのが大まかなストーリーだ。
 
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内容としてはステージクリア型で、ゾンビを始めとする魔物達を「ソード」と言った投てき型の武器で倒しながら、最後に待ち構えるボスの撃破を目指す、単純明快な作りとなっている。

主人公が騎士。投てき型の武器で敵と戦う。ゾンビが出てくる。ついでに、立派なヒゲを生やしている

それらの要素から、80年代からゲームに親しんでいる世代のほか、90年代の家庭用ゲーム機のアクションゲームを楽しんできた世代も、某有名メーカーの「魔界のアレ」を連想することだろう。

正直なところ、筆者も初めて今作を見た時、「魔界のアレ」を連想した。同時に鎧が「パリーン」と砕け散って、「パン・ツー」が丸見えになっちゃうあの姿も浮かんだ。更に言うなら、赤い悪魔の先生も。
 
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実際、どうなのか?結論から言うと、イメージ通り
紛れもない、魔界アクションゲームである。「純血種」と言っても良い。
 
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一方で「遊びやすさ」への工夫にも注目。特に操作性が素晴らしく、ジャンプ動作には少し慣れが必要かもしれないが、移動、攻撃と言った基本アクションの反応が軽快。プレイヤーの思うがままに動いてくれる気持ちよさに満ちている。
 
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難易度もランダム要素を抑えているので、失敗してやり直しを繰り返すにつれ、確実な突破法が分かってくる調整。更にライフ制が採用されているため、多少のミスを許してくれる。
 
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普通にエンディングを目指した場合の難易度も、そのような調整というだけあって、悲鳴をあげたくなるほどの厳しさはない。

しかしながら、今作には複数のエンディングが用意されており、その内の完璧なエンディングを目指した場合だと、推定四~五倍の難しさに跳ね上がる。ただ、これも前述の難易度調整によって、気持ちいい達成感が味わえる「手ごわさ」を描けている
 
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なので、魔界な難しさはあれど、その味付けは決定的に異なる。また、ステージごとの制限時間が99秒に固定、主人公のアクションを拡張させる装備アイテムの存在など、システムにも独自の試みが成されているので、そちらでも同じ感覚を覚えること間違いなしだ。

まさに「初心者も上級者も公平に受け入れる魔界」。全てのプレイヤーに80年代由来の「手ごわさ」を素晴らしい操作性、配慮を利かせた難易度で楽しませてくれるのだ。

80年代にこだわり尽したグラフィックと音楽

「手ごわさ」だけでなく、グラフィック、音楽も80年代にこだわり尽している
 
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中でもブラウン管の走査線まで、忠実に描かれたグラフィックは鮮烈。ドット絵もその時代らしく、色数を制限して描かれていて、「俺達はこういうアクションゲームをもっと遊びたかったんだ!」…という、制作者の心の叫びが聞こえてきそうな仕上がりになっている。(※ちなみにオプションには走査線を消す機能も実装されている)

音楽も全曲がFM音源で作曲された80年代仕様。しかも制作者曰く、実際にその当時のアーケードゲームで使われていたFM音源チップ「Yamaha YM2203」をエミュレーションして作っているのだとか。なんたる執念。なんたる80年代LOVE。
 
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ゲームを起動した時も、本当に筐体を稼働させたかのように「RAM OK」、「ROM OK」のシステムメッセージが表示されたり、そこから微妙な間を挟んだ後、オープニングのストーリー紹介が始まったりと、「そこまでやるか!」と笑いながらツッコミを入れたくなるほどこだわっている。

当時のアーケードゲームに慣れ親しんだ世代ほど、今作の80年代を再現することへのこだわりには感動必至。直撃世代ではない若いプレイヤーも、独特の表現の数々には新鮮さを感じること請け合いだ。新旧のプレイヤーを受け入れる魔界の懐の広さを垣間見るだろう。

豊富なやり込み要素と凝ったローカライズも見逃せない

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(日本経由では)Steam、プレイステーション4、そして2017年7月12日よりニンテンドー3DSで購入できるパワーアップ版は、新たなステージとボス、魔物図鑑、サウンドテスト、実績(トロフィー)などの新要素が追加されており、盛り沢山且つ、やり込み甲斐のあるボリュームになっている
 
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プレイステーション4、ニンテンドー3DS版に関しては、フライハイワークスによる日本語ローカライズが実施されているので、ストーリーも含めた「魔界のすべて」を味わえる。プレイステーション4版の発売を間近に控えた頃、同社のメールマガジンで語られた裏話いわく、わざわざ今作の為に専用の日本語フォントを作成し、翻訳を行ったというほどなので、ぜひ、そのこだわりの成果をチェックしてみて欲しい。
 
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新旧プレイヤーを受け入れる魅力的な80年代由来の要素、優れた遊び心地を特色とする今作。あの頃の「手ごわいアクションゲーム」を体験してみたい、当時の雰囲気にまた浸りたい、そして悪魔の軍勢に責め込まれて興奮したい、そんなプレイヤーの思いに応えてくれる執念の力作だ。
ぜひ、古き良き時代の魔界の手ごわさとそこを乗り越える面白さを感じ取って欲しい。

なお、もしもタイトル名が読みにくい!分かりにくい!なめとんのか!…と思ったら、『丸太とカステーラ』と覚えるのがお薦めだ。ちなみにフライハイワークス公認の略称です。

[基本情報]
タイトル: 『マルディタカスティーラ -ドン・ラミロと呪われた大地-(Cursed Castilla (Maldita Castilla EX))』
制作者: Locomalito、Gryzor87 (販売:フライハイワークス、Abylight Studios)
クリア時間: 50分~4時間(※やり込み要素のコンプリートを除く)
対応OS: PC(Windows)、PlayStation 4、XboxOne(※海外のみ)、ニンテンドー3DS
価格: ¥1200(PC、PS4、XboxOne、3DS)

ダウンロードはこちら

プレイステーション4版
https://store.playstation.com/#!/ja-jp/cid=JP1178-CUSA06881_00-CASTILLA00000000?EMCID=jGMsoftware-JP1178-CUSA06881_00-CASTILLA00000000

ニンテンドー3DS版(※2017.7.12より配信開始)
https://www.nintendo.co.jp/titles/50010000042940

PC(Windows)版

  • シェループ(@shelloop

    様々なゲームに手を伸ばしたがる人。2D、3Dのアクションと手強めの戦略シミュレーションを与えると喜びます。

    Webサイト:box sentence