SMILE GAME BUILDERで楽しむゲーム制作 第8回:坂本昌一郎『たそがれのひ』②
※本記事は、1月7日より開始した「SMILE GAME BUILDER」制作実演の連載です。
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坂本昌一郎『たそがれのひ』制作連載 1
こんにちは! 「たそがれのひ」を制作しました、坂本昌一郎です。
前回を振り返って
前回はこれまでの連載とは趣向を変えて、まずゲーム本編を公開しました。
「たそがれのひ」のテーマは「冒険」「プレイヤーごとにプレイ体験が変わるRPG」「バッドエンド」。終わりゆく世界のなかで、”内側”と呼ばれる場所に閉じ込められた人類。そのコアになる少年「セロ」とおさななじみの少女「ヴィオラ」、そして友人の「トラバス」の3人の物語を描いた、マルチバッドエンドRPGとなっています。
「SMILE GAME BUILDER」は3DRPGを作れることが特徴で、キー入力でぐるぐる画面を回したり、一人称視点に変更できます。ただ、どうしても操作系統が雑多になってしまうのが気になりました。ですので、私はあえて3Dに関わる操作を省き、ストーリー演出や隠しアイテム探しなどのゲーム部分に使う路線で3Dカメラを利用する――という手法を採用しました。今回は、実際にどう作っていったのかを解説します。(以降、大きなネタバレを含みますのでご注意ください)
すべては最期のシーンを描くため
まずはじめに浮かんだのはエンディング。「主人公が呪いの影響で人々を皆殺しにしたあげく、最後にヒロインを殺してしまい、自らも真の敵に殺されて終わる悲劇」。このシーンを盛り上げるためになにをするかが今後の目的となります。
検討の結果、たどりついた選択は冒険モノ&マルチエンド。1プレイをさっくり終えられるようにするため、あえてルートを2つにわけ、ルート毎にヒロインと友人をじっくり描写することに。ヒロイン側は全滅エンド。友人側は「友情&未完エンド」――わざと不穏な香りを残してヒロイン編へ繋ぐルート――と設定しました。
どちらのルートも序盤はひたすら明るく、ヴィオラ(ヒロイン)やトラバス(友人)との日常を描きます。主人公としての役割をプレイヤーにロールプレイして頂ければと、ことあるごとに選択肢を用意しました。変な選択肢もたくさんありますが、ルート分岐点の選択肢以外に大きな意味はありません。
ルート分岐では「友人との約束を破るのか?」をちらつかせ、人情的にトラバス編を先に選ぶよう誘導。このルートは実質的に一本道の未完エンドにすることでヴィオラ編へのチュートリアルの役目をもたせました。
ヴィオラ編ではヒロインとの交流を描くため、トラバス編で不可能だった「冒険」を大きくフィーチャーします。前半は大きな”壁の内側の世界”を巡り、ヴィオラと一緒に冒険します。すべては最期のシーンを描くため。中盤で急展開を用意し、あとはそれまで築いたものを粉々に打ち砕くバッドエンドへ直行……という組み立てです。そして、そのバッドエンドも実は……? ラストシーンは実際にあなたの目で確認してください。
カメラ演出はゲームに生命を吹き込む!
3D画面で実際にイベントを作ったところ、カメラ演出をおこたるとかなり味気なく感じたので、あらゆるイベントにカメラ演出を仕込みました。イベント演出からシステムに関連したものまで、様々なシーンを用意しています。
前述のようにシステム側では意図的にカメラ動作を禁止して、隠し通路や隠しアイテムを仕込んだり。イベントでは重要場所をカメラで注視したり、大きなマップの全体図を見れるようにしたり。とくにイベントではカメラの移動速度や距離・方向ひとつで、感情や間の表現ができます。あまり多く入れ込みすぎると冗長になりますが、うまく使えば3Dゲームにとって大きな武器になるのではないでしょうか。
3D画面におけるカメラの演出は、たくさんの用途に利用できます。ゲーム画面に動きが出て、演出がよりリッチに。プレイヤーの目線を重要箇所へ誘導できる。逆に、わざとなにかを隠したり。色々なアイディアを試して動かすだけでもとても楽しいので、ぜひチャレンジしてみてください。
第3回ではシステム部の工夫についての解説と、総まとめを行いますので、お楽しみに。
おまけ
Bルート(ヴィオラ編)の中央大陸、ハカセの屋敷の廊下にあるこの鎧。実は、なんども持っていこうとするとヴィオラの反応が変わります。気付きましたか? 屋敷では3人目の仲間が加わったあとも会話イベントがすこし変わりますので、いろいろイベントを探してみるのも楽しいかも?