甦るクラシック・スタイルFPS。『Project Warlock』

インディーゲーム,シューティング

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1992年の『Wolfenstein 3D』で基礎が確立され、翌1993年の『DOOM』の世界的ヒット以降、パソコンゲームの花形のひとつとなり続けているジャンル・FPS(First-Person view Shooting)。そこには昔も今も最新鋭の3D映像技術が惜しみなく投入されている。
しかし先に述べたような時代を切り開いた作品たちも、すでにその生誕からは四半世紀が過ぎ去り、レトロゲームと呼んでも差支えのない域に踏み込むようになった。

ゲーム配信サイトGOG.comにて10月18日より独占先行配信中のBuckshot Software『Project Warlock』は、そんな古き良き時代のFPSを模した作品となっている。
…ただし、その時代には生を受けていなかった弱冠19歳の開発者によって。

闇の力を以て闇をねじ伏せ、その頂に立て

『Project Warlock』では、プレイヤーは銃火器と魔法を操る黒魔道士(warlock)となり、中世、南極、古代の砂漠、工業地帯、地獄の5つの地域に跨いで邪悪な存在を討伐していく。

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本作はレトロ風FPSを謳っているだけあり、敵キャラクターやアイテムなどのオブジェクトがビルボード(書き割り)方式で描画されている点が特徴となっている。
FPSの世界においてフルポリゴンが実現したのは1996年のことであり、それまではこうしたビルボード方式が主流となっていた。よく観察してみれば、角度によっては板切れのような状態となっていて、どの方向に回り込んでも敵やアイテムが必ず自分の方向を向いてくることが判るだろう。

ルールもシンプルで、迷路の中を走り回り、時に行く手を阻む敵と戦い、時に扉を開けるためのスイッチや鍵を探しつつ出口を目指すことが目的となる。モンスターに倒されてしまった場合は、通常難易度であればライフを1消費してステージ冒頭からリトライとなる。
ひとつの地区はボス戦を含む5エリアに分かれ、さらに1エリア内は1~4ステージで構成されており、総ステージ数は50程度となっている。

「迷路ゲーム」あるいは「縁日のお化け屋敷」としてのFPS

本作はその見た目のみならず、映像美やストーリー、即弾着・一撃死のリアリスティックな銃撃戦、あるいはチームワークを醍醐味とした多人数対戦が追及される中でやがて見られなくなっていったレトロなFPSのプレイ感覚を再現している。

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迷路の中は薄暗く、敵がどこに潜んでいるかはわからない。
うかつに敵が潜む曲がり角に踏み込んで鉢合わせになり、思わずパニックになって銃を乱射したり、あるいは反撃の暇もなく滅多打ちにされることもあるだろう。
照明の魔法(Magic Light)が無償で使えるとはいえ、暗闇の中を警戒しながら進むのには集中力を要する。

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さらに、部屋の奥に置いてある鍵を取ったその瞬間、周囲の壁がせり上がって敵がなだれ込んでくるなど、巧妙にプレイヤーの肝を脅かしにかかってくる。
鍵を取りに行けば襲われるに違いない、しかし鍵を取らなかれければ先には進めない。ステージを進めるたびに葛藤を覚えるようになるだろう。

いつ襲われるかわからない緊迫感と、敵をせん滅したあとに訪れる安堵感の緩急のバランス、それこそが本作最大の見所といえる。本作は往年のFPSに存在していた”ビビらせ方”が良く研究されているのである。

やるか、やられるかの生存競争。ありったけを叩き込め!

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モンスターとの戦いでは走る、撃つ、避けるのメリハリあるハイテンポバトルを楽しめる。敵が放ってくる射撃攻撃の弾速が遅く、発射を見てからサイドステップで十分に避けられるようになっている点もクラシックなFPSならではの味わいと言えるだろう。

なぜかそこらへんに転がっている爆発物や、モンスターに必殺の一撃を叩き込む魂の武器・二連装ショットガンといった定番ガジェットもぬかりなく用意。銃の薬包が床に落ちる乾いた効果音も秀逸で、トリガーを引く指を加速させてくれる。

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また、本作ではRPGのような成長要素が存在しており、敵を倒したり財宝を拾うことで経験値を貯めてレベルアップし、パラメータの強化や特殊能力を獲得することができる他、アップグレードポイントを集めることで武器の改造や魔法の習得を行うことができる。武器の改造は2系統から1つを選択することになり、特性も大幅に異なる個性的なものになっているため、アップグレードポイントの使い方が悩ましい。

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経験値となる財宝やアップグレードポイントはステージ中の隠しエリアに配置されていることが多い。そうした隠しエリアを探すことも本作の楽しみと言えるだろう。

故きを温ねて新しきを知る。往年のFPSファンならば迷うことなく手に取って欲しい。また昔のFPSを知らない世代にも触れて欲しい作品だ。

[基本情報]
タイトル: Project Warlock
制作者:  Buckshot Software
クリア時間:  10時間~
対応OS: Windows
価格: $12.00

↓ダウンロードはこちらから
https://www.gog.com/game/project_warlock

  • 真野 崇(@tacashi

    フリーゲームと共に四半世紀を生きるフリゲ馬鹿一代。
    フリーゲームのレビューブログ「自由遊戯黙示録」を経て、自身のフリゲ人生を集約した、フリーゲーム・同人ゲーム・インディーズゲームの年代記「自主制作ゲーム史論」を執筆。