おじいさん剣士と孫のような女の子が秘宝求めて森を探検する、短編フリゲ”ポンポン”RPG『じじまごRPGmini』
孫に当たる小さな子供と壮齢の大人が触れ合う光景は、見ているだけでも微笑ましいものがある。そのような関係性に着目した娯楽作品も少なからず存在し、一部は大きなヒットも記録している。中には双方が対立する様を描いた作品もあるが……それはさておき。
今回紹介する『じじまごRPGmini』は、タイトル通りにおじいさんと孫の関係を題材にしたPC(Windows)向け短編フリゲRPGだ。
ただ、厳密には孫のような年齢の女の子、血縁関係皆無のおじいさん剣士が冒険するというものである。なんとも紛らわしいが、そういう設定なのだから仕方がないのです、どうしようもないのです、ということでご了承のほどを。
「千年樹の水」求めて、目指すは森の奥!
改めて主人公を紹介すると、孫……のような女の子は「マルナ」、おじいさん剣士は「ジャンズ」。少し前、王都「エイトワーズ」に「精霊鬼(せいれいき)」と呼ばれる魔物が現れる事件が起きた。その折に規格外の精霊術を操れるようになる「祝福の子」として覚醒したマルナ、精霊に因縁のあるジャンズの活躍によって、事件は一応の解決を迎えた。しかし、「祝福の子」に関する謎は残り、マルナの中にくすぶっていた。
そんな中、「祝福の子」にまつわるアイテム、その名も「千年樹の水」を手に入れる依頼が二人に舞い込んだ。自らの力に関係する依頼に興味を持ったマルナは即決で依頼を受け、ジャンズと共に聖域と呼ばれる森の海への冒険へと向かう。
ストーリーのあらましはこのような感じである。
なんだか続編のような出だしだが、それもそのはず、本作は作者の鏡読み氏((偽)苅田町役所)が過去に制作した短編RPG『Sword of mind』、『Sword of mind -忌まれ咲きし花の姫-』に続く三作目という位置づけになっている。
▲『Sword of mind -忌まれ咲きし花の姫-』より。
先のタイトル画面のスクリーンショットで明らかだが、本作の正式名称も『じじまごRPGmini -Sword of mind 3.1-』と、前二作との関連が強く現れたものになっている。
一応、作品としては独立しているので、本作から始めても支障はない。
ただ、前二作の背景などが前提で語られる部分があるため、プレイしておくと、少し入りやすくなる。いずれの二作もフリーゲームで、短編ということでプレイ時間も短めに設定されているので(平均30分~1時間ほど)、できれば前提知識があった上で遊びたい……という場合は、先にそちらをプレイしておくのがお薦めだ。
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>sword of mind(ふりーむ!:作品紹介&ダウンロードページ)
>Sword of mind -忌まれ咲きし花の姫-(ふりーむ!:作品紹介&ダウンロードページ)
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改めて本作の内容を紹介すると、個性派の一言に尽きるRPG。システム周りに、大きな特徴を持った作りになっている。
一つに移動及び探索。画面左側に表示される複数のマス目(フロア)で構成されたマップを方向キーを押しながら進んで、目的地への到達を目指す一風変わった仕組みになっている。
マップには現在位置などがアイコンとして表示。何らかのアイコンが表示されている所まで辿り着けば、アイテムが手に入ったり、次のマップへと進めたり、時にはストーリーイベントが発生する。基本的には「EV」と表示された会話イベント発生アイコンへの到達を繰り返しつつ、舞台となる森の最深部にあるとされる「千年樹の水」の元に辿り着くのが最終目標となる。
当然ながら、探索中には敵との戦闘も発生。この戦闘も二つ目に当たる個性的な部分で、作りはオーソドックスなコマンド選択型ながら、前列にジャンズ、後列にマルナが位置して戦う形となる。
見ての通りに非力な孫を壮齢の大人が庇いつつ戦う感じだ。そのため、前列のジャンズが倒れ、後方のマルナが集中砲火を浴びぬよう、体力回復を図ったり、それぞれが持つ特技を最大限に駆使する戦術が重要となるバランスになっている。
また、ジャンズもマルナも防御力は気持ち低め。主に現在のレベル以上の強さを誇る敵との戦闘では、一瞬で体力を奪われ、前列のジャンズが戦闘不能になることが頻発する。これを考慮してか、戦闘不能に陥ってからの復帰手段は簡単で、体力回復アイテムを与えるだけで戦闘へと戻れてしまう。裏を返せば、武器・防具の装備、育成のツメが甘いと、戦闘不能→復帰のループに陥りやすい。
そのことからも、慎重な管理が試される調整だ。
しかし、全体的な難易度はそこまで高くはなく、全滅しても戦闘発生前のマップに戻れる良心的な仕様なのに加え、レベルを上げて強化するのを心がければ、力押しも通用する程度に控えめ。
レベルとは別に強力な敵を倒した時に限り、「ステータスポイント」なるものも手に入り、メニュー画面の「ステータス」から、ポイントのある限り、好きなパラメータをプレイヤーの自由に底上げさせることもできる。これとレベルアップを組み合わせれば、そこそこ火力に秀でた性能にすることも夢ではない。
さらにマップのどこでも「休憩」が可能。これをする度に体力のほか、特技の使用に用いる「SP」の回復も図れる。休憩中にも敵が現れるなど、油断ならない部分もあるのだが、弱い敵ならジャンズによる先制攻撃こと「Smash!!」が発生して、戦闘が早期決着するなど、手間をかけさせないための配慮も凝らされている。
地図のようなマップを進むプレイスタイル、おじいさんと孫が主人公なりの”もろさ”など、独特な要素が満載だが、そのプレイ感は意外にお手軽。それでいて、相応の手応えも感じ取れるバランスを持つ、個性派の名に相応しいRPGに仕上げられている。
ハイテンポで起伏のある展開と……ポンポン?
短編というのもあり、ゲーム全体のボリュームは控え目。エンディングまで要する時間は長くても1時間ほどだ。ゲームテンポも移動時はサクサク動いてくれるのみならず、高速化ボタンを押せばよりスピーディに展開。戦闘もジャンズとマルナ、敵共に目にも止まらぬ速さで攻撃を繰り広げるのもあって、全く持ってモタつくことがない。むしろ、あまりに早く動くのもあって、何が起きているのか状況を見極めるのに一苦労するほどである。
そうも短く、スピーディとなると構成に起伏が無いのかと思いきや、全くそうであらず。特にマップは基本、最深部を目指して色んなエリアを進んで探索していくことが主となるが、途中、フロアごとの繋がりが分からないエリアが登場し、手探り感覚で次のマップに繋がる道を探す展開が挟まれたり、ボス戦が発生するなど、なかなか侮りがたい構成になっている。
ある程度、奥地へと進むと隠しエリアも出てくる。当然、その先には相応の御褒美と”お仕置き”に等しい何かも。そこでしか手に入らないレアな装備も存在するので、全てを網羅しようとなれば結構な歯応えを堪能できる。少しばかりネタバレしてしまうが、ちゃんと探索をどこまで行ったかの記録がエンディング後に表示されるほか、プレイ時間も表示されるので、より効率的且つ、完全な攻略を目指した二周目以降のやり込みも楽しめる。
二周目に関連したところでは、ストーリーイベントで度々挟まれる選択肢も見所。本編のストーリーは一本道で、エンディングが分岐する仕掛けもないのだが、会話パターンが豊富に用意されていて、マルナとジャンズの様々なやり取りを楽しむことができる。
特筆すべきは、選択肢に必ずと言っていいほど付いてくる「頭をポンポンする」。これを選択すると文字通りの行動をジャンズが行ってくれる。そして、それを実施する度にマルナが相応の反応を見せる。
これが何とも言い様がない面白さがあり、ついそれ見たさに選びたくなる。しかもこちら、ストーリー中、シリアスな場面でも普通に出てくるという徹底ぶり。作者のこだわりが現れている。
さらにこの「ポンポン」には驚くべき隠し要素が用意されているのだが……これに関しては本編で確かめて欲しいとだけ、言っておくとする。色んな意味でプレイヤーそれぞれの”性格”というものを見せつけられることになるはずだ。
そして、きっと二周目で意地でもポンポンする執念が実ることだろう。
全てをやり遂げた後、貴方はきっと本作にこんなRPGだと言いたくなるはずだ。
じじまご”ポンポン”RPG、と。
(※注:多少、誇張表現が含まれます)
懐かしいグラフィックと音楽も光る、小粒な良作
スクリーンショットの通りだが、本作はグラフィックにも凝っていて、任天堂の携帯ゲーム機『ゲームボーイ』の新作であることを強く意識したモノクロ調のドット絵で描かれたものになっている。中でもキャラクターのドットは素晴らしく、ちょこまかと動いたり、リアクションを見せたりする様には微笑ましい気持ちにさせられること請け合い。
音楽も同様にゲームボーイを意識したチップチューンスタイルの懐かしさ溢れる楽曲で構成されている。音源的にはゲームボーイというよりも、その後継機の『ゲームボーイアドバンス』な感じで(※実際に音の数からしてゲームボーイではない)、同ハード風の音楽を求めると肩透かしを喰らうほか、こだわりのある人なら、後継機側で誕生した名作になぞらえて「異議あり!」とRボタンを押すかのような勢いで物申したくなるかもしれないが、曲は印象に残るものが多く、特に戦闘曲全般は珠玉の出来。要チェックだ。
ゲームシステム、全体の構成、グラフィックから音楽、演出に至るまで完成度が高く、短編RPGとしては申し分のない作品に完成されている。
それだけにストーリーが作者の制作した過去二作の続きに当たる内容で、未プレイのプレイヤーが置いてきぼりにされやすい内容になってしまっているのが勿体ない。また、そのような設定である関係でエンディングも主要目的こそ達成するものの、一部の謎が語られない未完オチを迎えるため、消化不良感は否めない。
独立した作品であれば……と、もどかしく感じてしまう部分があるが、手軽に遊べてやり込めるRPGをお求めなら、お薦めできる一本だ。特にシステム周りは興味深い作りをしているので、RPGにはストーリーよりもシステムを、という思いをお持ちであれば、ぜひ、プレイしてみて欲しい。
そして時々、孫……のような女の子をポンポンしてみよう。極めてみよう。
極めた末に何が得られるのかは……己の心に聞こう。
▲ちなみに英語テキストにも対応しています。
[基本情報]
タイトル:『じじまごRPGmini』
制作者: (偽)苅田町役所(鏡読み)
クリア時間: 50分~1時間
難易度:初級~上級者向け
対応OS: PC(Windows)
価格: 無料
備考:英語テキスト対応
※公式サイト
https://jijimagorpg.web.fc2.com/index.html
※ダウンロードはこちらから
https://www.freem.ne.jp/win/game/19321