圧倒的ビジュアルで綴られる短篇アクションRPG『Atma』

RPG,アクション,フリーゲーム

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筆者が自主制作ゲームの世界を見つめ続ける中で、とみに感じているのが近年の学生制作作品の発展の目覚ましさだ。
それは過去には専門的な履修を要した技術や技法がより使いやすい形で浸透するとともに、頒布・販売網の拡大によって制作した作品を学校や学生たち自身の手によって世に送り出すことも出来るようになってきたことが背後にあると考えている。
そうした学生制作の作品のなかにあって、ひときわ印象を強める作品がこの度リリースされたので紹介したい。

『Atma』はフランスに籍を置くデジタルクリエイション専門学校Rubikaのゲーム部門Supinfogameの学生チーム「Team Atma」の制作による2DアクションRPG。2年時の課題として制作されており、2019年7月11日よりSTEAMおよびitch.ioにて無料でダウンロードできる。

生と死と愛と使命。その葛藤の狭間で

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ところは「目に見えるもの」と「目に見えざるもの」たちの満ちる世界。大きな力を持つアーティファクトによって世界の均衡がはかられており、Atma(アートマ)とShaya(シャヤ)のカップルは人と精霊とのバランスを保つ守り人として暮らしていた。

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仲睦まじいふたりだったが、ある日AtmaがアーティファクトのひとつであるUlja(ウルジャ)を調合しようとするも、事を急ごうとするあまりに事故を引き起こしてしまう。
そしてその失敗はかえって世界の調和を乱す要因となり、悪しき精霊が人の領域へと漏れ出してくると共に、Atmaは生と死の狭間に囚われの身となる。

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Shayaは想い人との再会と、守護者としての使命との合間で揺れ動き、己が心中を試される中、道を探るべくAtmaの記憶を辿りながら冒険を繰り広げることとなる。

圧倒的な”総天然色”ピクセルグラフィック

『Atma』を立ち上げてまず目を惹くのがそのグラフィックだ。インディーゲームの世界では多々見かけることのあるピクセルアートスタイルながらも、仏教文化を基としたエスニックな世界感が織りなす色使いは総天然色と形容したくなる鮮やかさに満ち溢れている。

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どこを切り取っても一切合切が美しいが、加えてアニメーションにも力が入れられている。とりわけ河の流れやそこから上がる水煙、神殿に貼られている水の揺らめきなど、「水」まわりの表現がこと細やかに描かれている。カエルの住む池に立つ緩やかな波を見た時にはそのこだわりぶりに畏敬の念を覚えたほどだ。

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プレイ中、つい足を止めて青紫の花々や小動物たち、川の流れに見入ってしまう。ただ景色を眺めて回るだけでも楽しめること請け合いだ。

真言を以て八苦を打ち砕け

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本作の主人公であるShayaは剣や銃のような身を護る為の武器の類は所持しておらず、その代わりに「マントラ」を唱える事で降りかかってくる苦難に対抗していく。

キーボード&マウス操作字はスペースキー、Xboxコントローラ使用時はBボタンでマントラ入力モードに移行し、マウスドラッグもしくはAボタン+左スティックで筆のエフェクトを走らせることができる。(コントローラ使用時、ゲーム画面上ではRTボタンの表記になっているがAボタンで反応する)

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基本となるのは「雷光」を発生させるマントラで、ドアや飛び石などに記されているマーカーを筆のエフェクトでなぞることで仕掛けを起動できるほか、襲ってくる敵に表示されているマーカーを線で結びつけることで電撃を放ち敵を撃退することができる。

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また、ゲームを進めることで「突風」を起こすマントラを入手でき、風車を回転させたり炎や毒霧を吹き飛ばすといった事が可能になる。マントラ発動時に走る梵字のエフェクトも相まり、「印を切る」かのようにマウスを走らせれば、さながら導師になったかのような気分が味わえる。

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これらのマントラを駆使した戦闘と謎解きはカプコン/クローバースタジオ『大神』に類似したシステムといえるが、Rubika校の『Atma』プロジェクト紹介ページにおいても『大神』の名前が上がっており、本作の発想の源泉のひとつになっていることが伺える。『大神』をご存知の方は比較しつつ楽しんでみるのもいいだろう。

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本作の難点としてはボリュームの少なさが挙げられる。ちょっとした分岐も存在しているが、アクションRPGのダンジョン1つ分程度のボリューム感でエンディングとなるため食い足りなさが残る。もっとShayaとしてこの鮮やかな世界を冒険してみたいと思わせることしきりである。
しかし短さを抜きにしても、高いセンスが発揮されている怒涛のビジュアルは、それだけでも『Atma』を体験するだけの価値があるものにしているといえるだろう。

[基本情報]
タイトル: Atma
制作者: Team Atma (Rubika Supinfogame)
クリア時間:  45分
対応OS: Windows
価格: 無料

↓ダウンロードはこちらから
(STEAM)

(itch.io)
https://atmagame.itch.io/atma

  • 真野 崇(@tacashi

    フリーゲームと共に四半世紀を生きるフリゲ馬鹿一代。
    フリーゲームのレビューブログ「自由遊戯黙示録」を経て、自身のフリゲ人生を集約した、フリーゲーム・同人ゲーム・インディーズゲームの年代記「自主制作ゲーム史論」を執筆。