『魔王物語物語』『いりす症候群!』のカタテマから6年ぶりの完全新作が登場。連鎖爆発パズル物理アクション+弾幕ゲー、その名も『ムラサキ』!

シューティング,フリーゲーム

去る10月16日、『愛と勇気とかしわもち』や『いりす症候群!』そして『魔王物語物語』で知られるゲーム制作サークル、カタテマから新作『ムラサキ』がリリースされた。

カタテマが完全新規タイトルをリリースするのは『いりす症候群!』以来なんと6年ぶり!その間には既存タイトルのバージョンアップや移植もあったとはいえ、まだかまだかと期待しながら待っていたファンも多いのではないだろうか。

本作をひとくちで言えば、公式サイトにある通り「シンプルで楽しい爆発パズル物理アクション」そのままだ。バーンと撃つとカンカンカンカンカンと連鎖してバババババーッと爆発して敵と敵弾を殲滅し壁ドンするとボボボボボッと得点が入る。
……流石にこれだけでは絶対に分からないと思うので(当然である)、より詳細な『ムラサキ』の紹介といこう。

文字通りの“シンプルで楽しい爆発パズル物理アクション”

公式サイトによると本作は「爆発パズル物理アクション」とあるが、それに加えて弾幕シューティング的なところがある。言うより見るが早し、ということで下にスクリーンショットを掲載しておいた。見ての通り、弾幕弾幕アンド弾幕である。放っておくと画面の大半が敵弾で埋め尽くされてしまうので、ショットや必殺技を当てて弾を消しつつ敵に対処するのが基本的なプレイ方針となる。

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わーきれい(棒読み)。ちなみに画面中央下にいるのが自機

しかし自機のショットは一度に二つ以上撃つことができない。加えて必殺技も使用回数に制限があるため連発するわけにもいかず、しかも敵弾には耐久力がある(赤>黄>青>白の順番で硬い)ため、単発のショットでは非常に心もとない。

では、画面狭しと飛び交う弾幕にどう立ち向かえばいいのか?
もちろん答えは用意されている。
本作のジャンルに冠された「爆発パズル」「物理」を利用するのだ。

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敵弾の嵐を切り抜けるには、ブロックの使用が不可欠。早速真上にある赤ブロックに弾を当てる

上のスクリーンショットにもある、赤と青のブロックがカギとなる。このブロックは時間経過で出現する。自機がブロックにぶつかるとダメージを受けるだけで何もいいことはないが、自機のショットをぶつけるとブロックは押し出されたのち爆発し、爆発に巻き込まれた敵弾は消える(あるいは耐久力が低下する)。既にカタテマのゲームをあらかたプレイしている方には『いりす症候群!』のブロックのような動き方をする、と言えば伝わるだろうか。ここが「物理」だ。

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自機手前にあった赤ブロックにショットをぶつけて弾き飛ばす。他の赤ブロックにも接触・連鎖し……。

そして、ここが一番のポイント。同じ色のブロック同士を連続してぶつけると連鎖爆発し、ブロックひとつあたりの爆発範囲が大きくなるのだ。連鎖させるブロック数が多ければ多いほど爆発も大きくなるため、より多く敵弾を巻き込んで消滅させることができる。この「ブロックの移動先を推測して、ショットを当てて連鎖を引き起こし、大爆発で敵弾を一掃する」のが「爆発パズル」にあたる。

また、弾かれたブロックは異なる色のブロックをすり抜けるのでご安心を。同色同士でしかぶつからないため、安心して連鎖爆発を狙うことができる。

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敵弾の大半を消し飛ばす大爆発! 大量の敵弾を爆発に巻き込んだ時の効果音は、最高に気持ちいい

それと、連鎖させればさせるほど、弾を消した際に出現する得点アイテム(紫色の玉のようなもの)もたくさん出る。実績の解除やハイスコアを目指す場合は積極的に連鎖を狙っていきたい。大量に出た得点アイテムを回収しきれないという方は、画面の壁に自機をぶつけるとその場で全回収できるのでぜひ。

ちなみに青く光っている回復アイテムとその色違いである赤い必殺技の弾数回復アイテムは上記の方法では回収できないため、自分から取りにいく必要がある。

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基本テク・壁ドン。これで得点アイテムは全回収できるので便利。他方、回復アイテムは自分で取りに行くしかない

もちろん、連鎖爆発はボス戦でも大活躍。ボス戦ではボスの射出した弾をブロックの爆発で消すと、ボスへ直接ダメージが入る。このシステムをうまく利用して大量連鎖を狙い、画面上の弾幕を一掃しつつボスに大ダメージを与えるのが基本的な戦法だ。テクニックとして、自機のショットをボスに連打する荒業もあるのだが……それについてはまた別の機会に。

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消した敵弾は得点アイテムではなく赤い矢(?)となり、ボスにダメージを与える。かわされたりしないので安心

以上が本作の基本的なシステムとなる。はじめに書いたが、要するにバーンと撃つとカンカンカンカンカンと連鎖してバババババーッと爆発して敵と敵弾を殲滅し壁ドンするとボボボボボッと得点が入る。そしてさっきは書き損ねたが、本作はこの効果音が抜群に気持ちいい。文章だけでこの気持ちよさを伝えるのは難があるので、こればかりは実際にプレイして聴いてもらうのがいいだろう。とりあえず爆発させたくなると思う。

本作を数度プレイすれば気づくが、本作には瞬時の判断を求められる緊張感がそこかしこに、いや常にある。道中もボス戦も変わらず、プレイヤーは無数の敵弾を前に「ブロックをいつ/どう消すか」「自機はどのあたりに動かすべきか」「どの敵弾をショットで消して、どの敵弾をブロックで消すか」、エトセトラ、エトセトラ……その判断を迫られる。1ステージが短い(ボス含めてだいたい10分前後)こともあり、プレイヤーはどっぷりと『ムラサキ』のゲームプレイに熱中してゆくだろう。

弾幕ゲー初心者にもやさしい安心設計

さて、上の文章を読んだりスクリーンショットを見たりして「考える必要があってちょっと難しそう」とか「弾幕ゲーって難易度高そうだし、やったことないし……」と思った方も、それなりにいると思う。

しかし、本作は弾幕ゲー初心者にもやさしい設計になっている
第一に、操作はいたってシンプル。十字キーで移動しZキーで弾を射出、Xキーのタメ打ちで必殺技、それだけだ。特別なコマンド入力は存在しないため、操作方法はすぐに覚えられる。システム自体もそこまで複雑ではないので、ステージ1冒頭のチュートリアルで本作の基礎は全て覚えられるはずだ。

加えて各ステージは通しプレイではなく、順番にクリアする必要こそあるものの選択制となっている。ゲームオーバーになっても一面の最初からスタートするわけではないため、やり直しがそこまで辛くないのはありがたい。(ほら、2面の開幕とかね)

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ステージは全部で1~5(本編)+クリア後のオマケで6つ

ちなみに自機はオールラウンダーの海浬(カイリ)と火力・速度偏重の沙月(サツキ)の二人から選ぶ形になる。弾幕系のゲームに不慣れな方はまず使い勝手の良い海浬から入り、ある程度ゲームの仕組みや感触がつかめてきたところで沙月に切り替えてみると良いと思う。あとは性能なりビジュアルなりキャラなりノリなりで選べばOK。どちらの主人公でも十分戦える。そこからは慣れと腕と運次第だ。健闘を祈る。

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海浬は必殺技が便利で安定性能、沙月はちょっとピーキーだが爆発的な火力がある。なお筆者は沙月派

ゲームプレイと物語に深く根差した“音楽”

ここまでで本作のシステムについてあらかた書き終えたのだが、もうひとつだけ書いていないことがある。それは音楽だ。『いりす症候群!』でも音楽を担当したwatson氏による本作のBGMはどれもこれも素晴らしく、さらに効果音も非常にツボをついてくるものが多い。こればっかりは文章で伝わらないので、是非プレイしてその耳で確かめて頂きたい。マジで。

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この記事も『ムラサキ』のBGMをずっと聴きながら書いていた。どれもこれも印象深い

一度でもゲーム中で流れた曲はスタート画面の「コレクション」から聴くことができるので、お気に入りの曲をじっくり聴きたいときはこちらで。筆者イチオシはステージ4道中の「草木薫る夢路」。BGMにジャズを聴きながら弾幕ゲーに興じるのもなかなかオツなものだ。

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ゲーム自体もさることながら、謎を解き明かすべく設定を収集するのも楽しい

さらに、コレクションではキャラクターの設定や『ムラサキ』の世界、そしてストーリーについて知ることができる。実際のゲーム中にはさほどはっきりと語られないため、プレイヤーはコレクションのページやキャラクターのセリフ、そうした断片から推測して物語を編みあげてゆく他ない。この辺りは過去作である『いりす症候群!』や『魔王物語物語』のストーリーテリングの手法が多分に活かされていると言っていいのではないかと思う。

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各ボスとの会話はちぐはぐで謎だらけだが、やり込めばその理由も分かる(はず)

コレクションで読むことができる設定や物語については、BGMとは異なり実績解除(例:○面のボスを倒す、等)という形をとっている。『ムラサキ』の物語や各キャラクターの設定について、おぼろげな輪郭をつかむだけならあまり労力はかからないが、より深く知りたいのなら幾度となく挑戦し、着実にやり込んでゆく必要がある。苦労して実績を解除し、獲得した物語や設定には喜びもひとしおだ。

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ゲーム開始直後のまっさらなコレクション。こんなテキトーな目的を与えられて放り出された時はどうしようかと思った

そんな本作だが、一通りエンディングまでプレイしてみて、大きなテーマのひとつとして『音楽』という軸が全体を貫いているように思う。ゲームプレイを見ても、ステージの要所において音楽とゲーム展開が同期する演出を見ることができる。これについては正直何を喋ってもネタバレになってしまうので詳細は差し控えておくが、どれもこれも心憎いというか素晴らしいというか……。そんなこんなで、本作の演出や物語、というかもう「プレー体験」の集大成である最終ステージは必見・必聴・必プレイ。ぜひとも弾幕の嵐を前にしても投げ出さずに最後まで遊んでほしい、の一言に尽きる。それと演奏は最後まで聴きましょう。

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こっちだってけっこう待ったよと言いたい

本日は数々の名作・傑作を作り上げてきたカタテマによる6年ぶりの完全新作『ムラサキ』について色々と書き連ねてみたが、本作の魅力を伝えるには文字と十数枚のスクリーンショットではいつも以上に不十分が過ぎる。ぜひとも遊んで・見て・聴いて・読んで・体験していただきたい。文句ナシにオススメの一本だ。

確かに、6年という歳月は少し長かったかもしれない。しかし、その間に蓄積された期待を全く裏切らない――いや良い意味で裏切るかのような。そんな本作『ムラサキ』は、カタテマの新たなマスターピースであるように思う。

[基本情報]
タイトル ムラサキ
制作者 カタテマ(制作者様サイトはこちら
クリア時間 数時間程度(やり込みは果てしない)
対応OS Windows Vista/7/8
価格 無料(フリーウェア)
ダウンロード 制作者様サイト内のこちらから
備考 弾幕ゲー初心者の筆者でもなんとかエンディングを見れたのでご安心ください

  • 水原由紀(@mizuharayuki

    読みは「みずはらゆき」。ゲーム業界のはしっこに勤めつつ、色々書いてます。思い入れの強いゲームは初代『.hack//』や『風ノ旅ビト』、『Dear Esther』『ゆめにっき』『Ruina 廃都の物語』などなど。2015年マイベストははむすたさんの『ざくざくアクターズ』。美学と工学の交差するゲームを求め、今日も片道切符。Narrative関係勉強中。