デジタルワールド転生無双。レトロテイストが新しい2Dアクションアドベンチャー『Narita Boy』

アクション,インディーゲーム

レトロ・フューチャー。「過去に信じられていた未来」を示す言葉だ。空を飛ぶ車やチューブ状の建築物、あるいは気軽な宇宙旅行など、現実の未来である今には実現していないテクノロジーによる明るい未来がそこには描かれている。テクノロジーの産物であるコンピュータ・ゲームにも、かつてそんな未来を垣間見たという人は少なくないだろう。今回紹介する『Narita Boy』は”1980年代の最先端”を舞台に据えた、レトロ・フューチャーの息吹を感じさせる作品だ。

『Narita Boy』はスペインのStudio Kobaが開発し、Team17が販売を担当する2Dアクションゲーム。2021年3月30日よりPC,Nintendo Switch,PlayStation4,XBox One向けに配信が開始されている。日本語にも対応している。

電子世界の救世主、その者の名は

ナリタァ、ボォーーイッ!!

インパクト抜群のタイトルコールと共に始まる本作『Narita Boy』は横スクロールタイプのアクションアドベンチャーゲームとなっている。

世界的ヒットを飛ばすゲームコンピュータ「ナリタ・ワン」。その目玉タイトルとなるゲームソフト「ナリタ・ボーイ」は、同名のヒーロー・ナリタボーイがデジタルキングダムを舞台にパワフルな冒険を繰り広げるファンタジー作品として大人気となっていた。

しかし一度は追放されたゲーム内の悪役「HIM」がデジタル世界から現実世界への侵攻を企てていた。HIMは自らの軍勢「スタリオン」でデジタルキングダムの制圧を進めると同時に現実世界へと干渉し、自らを抹消し得る存在である自身の創造主の記憶を奪い去ってしまう。

それに対抗するべくデジタルキングダムの管理者たちは「ナリタ・ボーイ・プロトコル」を発動させ、現実世界のゲームプレイヤーをゲーム世界へと召喚した。英雄ナリタボーイとなったプレイヤーはHIMの邪悪な野望を阻止するため、デジタルキングダムを駆け抜けることとなる。

輝ける調和の剣にて闇を打ち払え!

テクノゥ、スゥォーード!!

説明しよう。「テクノ・ソード」とは調和の力「トリクロマ」を示す赤、青、黄の3色の光の刀身を持つ武器であり、デジタルキングダムに仇為すスタリオンの軍団を打ち倒すことができる唯一の対抗手段だ。

本作の美点のひとつは躍動感に溢れるアクションの数々にある。軽快を通り越してヌルリと動くため若干の慣れは必要だが、自キャラクターの操作に関してはストレスとは無縁。縦横無尽に戦場を駆け巡ろう。

バトルでは威力が低い連続攻撃のみではなかなか敵を倒すには至らないため、溜め攻撃の「ホームラン」や弾数がある「ショットガン」などの威力の高い攻撃を織り交ぜていくことがコツになる。また、探索を進めると対空技の「アッパーカット」などの更なるアクションを習得できるので、それらも活用していこう。
特に中盤以降で入手できる「ワイルドファイア」は、敵に灯されている炎の色に合わせてエネルギーをチャージして攻撃すれば5~6倍程の強烈な攻撃力を発揮する。大剣ひとつで悪者をバッサバッサと薙ぎ倒す様はまさしく古き良きヒーロー像そのもの。その豪快さにテンションが上がること間違いなしだ。

一方、探索面では寄り道やショートカットの余地などはあまりなく、先へと進むための鍵を集める事に終始しがち。良く捉えれば難しく考える必要が少ないとも言える。途中でトランススクリプター(転送装置)を動作させるためのシンボルの組み合わせを知っておく必要があるので、作中のカエル氏のアドバイスにもある通り記憶力に自信がない人は傍らにメモを用意しておくと良いだろう。

何を糧とし、そして何を託すのか

ナリタボーイの使命は悪の化身HIMを封じるために、奪われた創造主の記憶を取り戻すことにある。その過程でプレイヤーは「ナリタ・ボーイ」のゲーム世界を創りあげたクリエイターの記憶を垣間見ていくことになる。

クリエイターの名は「ライオネル・パール・ナカムラ」。千葉県ナリタ市でアメリカ人の父と日本人の母との間に生まれたハーフである。複雑な境遇に生まれた彼のモノローグの語り口は非常に哀愁を誘うものになっている。

綴られるのは”二拍手一礼”の動作として織り込まれた霊験あらたかな神社の記憶、あるいは馬に乗って駆け抜ける高速スクロールシーンの元になったであろう競馬場の思い出(なお他紙のインタビュー[参考1][参考2]などによれば「ナリタ・ボーイ」の名前は1990年代に活躍した競走馬ナリタブライアンから取られているという)、またあるいは愛すべき家族の存在。

作品は作家の生き写し、人生の切り売り…などとはよく言ったものだが、ひとりのクリエイターの自らの人生の欠片が作品へとつながっていくその光景は、絵でも、音楽でも、文芸でも、あるいはゲームでも…何かしらの創作をしたことがある人にとって、きっと心動かされるものがあるはずだ。内省的なきらいはあるが、そうした繊細な部分が本作の物語をただの英雄譚に留めないものにしていると言えるだろう。

キャッチーなビジュアルとサウンドで目を引き付け、アクションとストーリーの両面で魅せる骨太の作品となっている本作。ぜひともデジタルワールドに飛び込み、稀代のヒーローの名を高らかに叫んでほしい。

[基本情報]
タイトル: Narita Boy
制作者: Studio Koba
クリア時間:  6時間~
対応OS: Windows, Macintosh, Nintendo Switch, PlayStation4, XBox One
価格: ¥2570 ($24.99)

↓ダウンロードはこちらから
(STEAM)

(Nintendo eShop)
https://store-jp.nintendo.com/list/software/70010000039197.html

(PlayStation Store)
https://store.playstation.com/ja-jp/product/EP4064-CUSA25801_00-NARITABOY0000000

(Microsoft Store)
https://www.microsoft.com/ja-jp/p/narita-boy/9nbl782wbhk6?activetab=pivot:overviewtab

  • 真野 崇(@tacashi

    フリーゲームと共に四半世紀を生きるフリゲ馬鹿一代。
    フリーゲームのレビューブログ「自由遊戯黙示録」を経て、自身のフリゲ人生を集約した、フリーゲーム・同人ゲーム・インディーズゲームの年代記「自主制作ゲーム史論」を執筆。