衝撃の迷宮脱出生存戦略料理ホラーRPG『放課後迷宮サバイバル』食べろ!逃げろ!戦え!謎に溺れろ!?
普段使っている倉庫が物でいっぱいになったため、放課後に片付けにやってきた生徒会メンバーの女子学生「ミヤコ」とその先輩で男子学生の「キョウヤ」。
一通り片づけを終え、撤収しようとした中、ミヤコは倉庫の奥にもうひとつ部屋があるのを発見。そこにも片づけなければならないものがあるのかと、気になったミヤコは中へと足を踏み入れた。
すると間もなく、彼女の悲鳴が!
それを耳にしたキョウヤは助けを呼ぶため、倉庫の外へ!
その後、ミヤコの姿を見た者はいないという。おしまい。
……って、違う!そうじゃない!
悲鳴を聞いたキョウヤが部屋に踏み込むと、そこには巨大な穴があったのである!
そして2人は謎の地下洞窟へと落下。閉じ込められてしまったのである!
しかも、その洞窟の先にはどう猛な怪物たちが巣食う巨大な迷宮が広がっていたのだ!
このまま留まっていれば、いずれは怪物たちの餌にされる!ヤバい!脱出だ!
……という訳でWindows PC用フリーゲーム『放課後迷宮サバイバル』の始まり、始まりなのである。途中、ヤケ気味の紹介になったが、お気になさらず。
謎の地下迷宮を非常食頼りに突き進む、ゆるふわサバイバルRPG
タイトルの「サバイバル」から、限られた資源を活用して生き延びることを目指すアドベンチャーゲームが連想されるが、記事見出しで丸わかりの書くまでもないがなの通り、ジャンルはロールプレイングゲーム(RPG)。キョウヤとミヤコの2人を操作し、怪物が巣食う地下迷宮を進み、脱出を目指すという内容である。
RPGとしてはダンジョン探索、サバイバルの2つをテーマに掲げた作り。特に後者はアイテム、装備品類などを購入できる店が存在しないため、全てを現地調達で賄っていくという、いかにもなものになっている。途中経過の記録(セーブ)も、特定地点に置かれた「焚火」でしか行えない。そのため、仮に戦闘で全滅すると前回の記録からやり直し。極め付けに設置場所も非常に少なく、距離も大きく開いているというおまけ付きだ。
まさに極限下の設定を忠実に反映した構成で、緊張感を煽り立てるRPGになっている。
とは言え、戦闘では逃走コマンドが必ず成功する仕様で(ボスですら!)、レベルを上げれば多少の力押しが効く程度に難易度は緩め。サバイバルの程度としては”ゆるふわ”なので、全体的には肩の力を抜いて遊べる設計だ。
戦闘システムも敏捷性の高いキャラクターから順に行動する、ターン制のコマンド選択型。正統派の作りである。ただ、少し変わったシステム……というよりは制約で、回復アイテム類を戦闘中に一切使用できないようになっている。戦闘中に受けたダメージなどの回復は、2人それぞれが会得した「スキル」を使うしかないのだ。なぜ、そんな制約が課せられているのかは、2人にそんな余裕がないとのストーリー上の都合と、回復アイテムそのものが非常食のためである。
本作では戦闘に勝利すると、倒した怪物の「死骸」が手に入る。これをセーブ兼休憩ポイントの「焚火」にて「料理」をすることにより、非常食の回復アイテムへと変えられるのだ。出来上がった非常食の効果は体力(HP)、スキル仕様に必要な「SP」から状態異常の回復まで様々。ただし、作れる数は死骸をどれほど手に入れたかによって変動。そして、料理できる場所はただでさえ数が少ない「焚火」のみ。ゆえに多くの非常食を持ちたければ、戦闘に何度も挑んで死骸を多く手に入れるしかない。そしてそれを用いて可能な限り非常食を作って、ため込むのが迷宮の探索を進めていくに当たっての保険になる。
まさに「腹が減っては戦ができぬ」のことわざを体現するかのような戦略が試されるのだ。
なお、非常食というものは全てゲテモノ料理である!
とても大事なことなので、もう一度言おう!ゲテモノ料理だ!
「ねずみの丸焼き」、「ムカデの姿焼き」といった様々な料理が2人のピンチを救っては、癒しを与えてくれるのである。もちろん、それぞれの料理を食した時にはそれはそれは美味しそうで香ばしそうな効果音が流れる!ついでに初めて食べる料理の時には、ミヤコによる詳細な実食レポート(食レポ)のイベントも発生!どんな味で、どんな歯応えなのかが詳らかに語られるぞ!さらにゲームが進めば、作れる料理のレシピも増える。カレー、シチューといった豪勢なものも作れるようになっちゃうのだ。無論、具材はゲテモノである!
思わずドン引き必至かもしれないが、ご安心いただきたい。料理が直接的に描かれることは無い!一切ない!あくまでもそんな名前のものが出てくる程度だ!もし、描かれるようなら、テレビ番組でゲテモノ料理が映った瞬間、秒速でチャンネルを切り替える習性が身に付いている筆者はゲームクリアを断念している!なので、安心いただきたい!描かれはしない!大丈夫だ、きっと問題ない!
ただ、食レポの内容はそこそこ具体的。想像力が豊かだと脳内が悶絶フィーバー状態になっちゃうから、そこは要注意だぞ!
……とにもかくにも。このように本作はRPGとしては正統派で、サバイバル周りも緩めだが、ゲテモノ料理てんこ盛りで戦慄の食レポ満載の激烈な個性を持ち合わせた作品に完成されている。さながら料理ホラーRPGとも言える内容だ。
空前絶後がすぎるイベントの連続!そしてサバイバル感溢れるマップ!
もはや語るまでもないが、本作の見所にして魅力はゲテモノ料理の数々である。中でもミヤコによる食レポはそれはそれは愉快でエグい。特定の人の腹筋を刺激させ、その手の料理を平然と作って食べるキョウヤにがく然とさせられる内容になっている。
具体的などんなレポートが展開されるのかの紹介については、ゲテモノ料理嫌いの筆者のSAN値が急下落し、ベリーマッドネスでギャラクシーなことになりかねないため、申し訳ないが自重する。続きはゲーム本編で!ゲーム本編で見てくれ!ネタバレはしたくないのだ。というか、ネタバレするだけでこっちの心がグワングワンしちゃうから勘弁してください!
いい加減、一個人にとって地獄の苦しみでしかないネタは終え、他にも本作には優れた部分があるという話題に移ろう。
その優れた部分というのはストーリーとマップデザインである。
ストーリーは端的に言って狂気である。男女の学生2人がゲテモノ料理で飢えを凌ぎつつ、地下迷宮からの脱出を目指すだけでも相当にぶっ飛んでいるが、これで序の口。本編は途中から空前絶後の疾風怒濤な青天を衝く……じゃなくて、霹靂が過ぎる展開を見せ、そのまま斜め上からの明後日の方向へよじれによじれた、異次元の最終局面へと向かっていくのである。
もはや何がなんだかだが、本当にそう表現する以外に考えられない展開になるのだ。謎の人工的な空間へ移行してからはまさに!
これ以上は詳しく言えないので、またも「続きはゲーム本編で!」である。きっとボカしながら紹介した意味を痛感させられるはずだ。同時に頭の中からゲテモノ料理というキーワードもどこかへ消え失せるかもしれない。少なくとも筆者はそうなって、救いを得た。ゲームクリアも達成できた。そして、よく分からない感動を味わったのである。
マップデザインも完成度が高い。特にセーブ兼休憩ポイントの「焚火」の設置場所の少なさは、サバイバルというストーリー上の題材との高い親和性が演出されていて、全く意地悪な印象を抱かせない。こんな状況下なら少ないのも、間隔が開いているのも当然と思える納得感が描かれているのである。
戦闘からの逃走が確実に成功する仕様、レベル上昇による力押しの余地も設置場所の少なさからくるストレスを軽減させており、肩の力を抜きながら極限下の状況や雰囲気を楽しめるようにしている。何せ、確実に逃げられるからこそ、「焚火」のあった場所まで戻り、休憩したり非常食を準備して立て直すのがやり易い。多少、戻るに伴う時間はかかるものの、繰り返していればいずれは突破口が開く。そのバランスがとてもよい意味で”ゆるふわ”で、安心感のあるサバイバルを体験させてくれるのだ。逆に安心感を無くしたいなら戻る回数を減らす縛りを設けたり、一切戻らず突き進む選択肢も取れる。そんな遊び方が難易度を上下させるようになっているのも見事で、なかなか考え抜かれたものに仕上げられているのだ。
だが、最も考え抜かれた作りを実感させるのは謎の人工的な空間に移行してからである。ここも地下迷宮同様、「焚火」は一部しかないが、それが全く攻略のストレスにならない。どうしてかは進めれば自然に分かってくるので、ぜひその目で確かめてみていただきたい。筆者はこの作者は探索型アクションゲーム及びアクションRPGに精通しているな、と感じた次第だ。その名作と謳われる作品の影響が垣間見える構成にまとめられているからである。この場で描かれるストーリーのインパクトが強すぎるため、隠れがちなところもあるが、気付けば思わずハッとさせられるはず。お見逃しなく、だ。
ゲテモノ料理のところがどうにもこうにもインパクト絶大のため、ネタゲーと見なしやすいのは否めない。だが、それだけではない。サバイバル兼ダンジョン探索主体のRPGとしても出来はよく、遊びやすさへのこだわりが光る内容に仕上がっている。ネタゲーと安易に言い切れない魅力があるのだ。そもそも、ゲテモノ料理大嫌いの人間が最後の最後まで楽しく遊べ、謎めいた感動を味わっただけでもその優れた出来が察せるはずである。
けど、食レポは想像力が豊かだと本当に悲惨なことになりかねないので、苦手な人は用心いただきたい限りである。筆者はあえて右から左に受け流す心持ちで読んだ次第です。
おかげで、ゲテモノ料理ネタへのスルースキルを鍛えられました。
よって、このレビュー記事も書けたのです。
食前のプレイは厳禁!突き抜けすぎて感動すら覚える快作
ただ、ストーリーにはやや気になる部分もある。所々で未解決の謎が残るのだ。また、終盤の展開は若干、駆け足すぎる印象が否めない。
ボリュームもエンディングまでは早くて1時間程度と短めのため、人によっては物足りなさを感じるだろう。とは言え、エンディングの分岐や選択肢による会話の変化など、小ネタが満載。それら全てを把握しようとなれば、相応の満足度は得られるはずだ。
特に選択肢は珍妙なもの揃いで、全パターンを試したくなること請け合い。一部、「それは大丈夫なの!?」と言いたくなる直接的すぎるパロディネタも仕込まれており、中には選ぶと大ボスの名前が大変なことになる仕掛けもあるので必見だ。ただ、自らが若くないことを思い知らされる副反応が後々襲い掛かるのでご覚悟を。
他に演出周りも何が起こるか分からない不穏さを随所で描いているのが印象的。音楽もその雰囲気を引き立てるものが選曲されているのだが、終盤の戦闘で流れる曲については「なぜ!?」と思ってしまうかもしれない。ぜひ、ヘッドフォン装着の上で聴いてみよう。
総じてネタゲーとしても、ダンジョン探索RPGとしても見事な完成度で、侮り難い良作と言い切れる本作。勢いに任せたなりの粗もあるが、プレイすれば良くも悪くも記憶に残る内容である。RPG好きもそうでない人も、そしてゲテモノ料理好きも嫌いな人もぜひ、プレイいただきたい。そして、最後に待ち受ける謎の感動を堪能しよう!
なお、題材が題材なので当然、食前のプレイは非推奨です。あしからず。
[基本情報]
タイトル:『放課後迷宮サバイバル』
作者:Karukus
クリア時間:1~2時間
対応プラットフォーム:Windows
価格:無料
備考:ゲテモノ料理表現てんこ盛り
※ダウンロードはこちら
https://www.freem.ne.jp/win/game/26341