タイムリミットSFアクションRPG『UNSIGHTED』にじり寄る刻限に抗い崩壊都市を駆けろ

アクション,インディーゲーム

こと時間に追われ続けて疲弊しがちなのが常な現代、タイムリミット、と聞いて良い顔をする人はあまり居ないだろう。しかしどこかで区切らなければ引き延ばしに引き延ばしを重ねて終わりが見えなくなってしまうのも人の性というもので、必要不可欠なものと捉えて日々の歩みを進めるのみである。

今回紹介する『UNSIGHTED』は「タイムリミット」をテーマとしたアクションRPG。ブラジルの開発スタジオStudio Pixel Punkが制作し、Humble Gamesが販売を行っている。PC版がHumble StoreとSTEAMにて、PlayStation4版・Nintendo Switch版・XBox One版が各家庭用機向けストアで、2021年9月30日から10月1日にかけてそれぞれ配信が開始されている。日本語表示にも対応しており、翻訳は架け橋ゲームズが担当している。

守るべきものは「自我」。自律人形達の戦い

自意識を持つアンドロイドの「オートマトン」達が暮らす世界。とある地下研究所で目覚めたオートマトン・Almaは目覚める以前の記憶を失っており、何もわからないままに奇妙な生物に襲われ、命からがら地上へと脱出する。しかし地上の都市Arcadiaは「UNSIGHTED」(アンサイテッド)と呼ばれる暴走ロボットが闊歩する危険地帯となっていた。

Arcadiaではかつて宇宙から降ってきた隕石(メテオ)の研究をめぐって争いが繰り広げられており、そのメテオが人間たちによって建造されたクレータータワーによって封印されたことから、メテオに成分として含まれているオートマトン達の自我の源「Anima」(アニマ)が枯渇しはじめ、そこで暮らすオートマトン達にとって死活問題となっていた。
UNSIGHTEDとはAnimaを失ったオートマトンの成れの果てであり、オートマトンのUNSIGHTED化を防ぐためにはメテオの封印を解いてAnimaをオートマトン達の手に取り戻す必要があった。

Almaはメテオの封印を解く鍵となる「メテオシャード」を集めるため、またかつての記憶を取り戻し、争いの中で行方不明になったパートナー・Raquelを探し出すため、探求と戦いの旅へと赴くことになる。

バトルもパズルも手応え抜群

本作『UNSIGHTED』は見下ろし視点で展開する2DのアクションRPG。主人公Almaを操作して敵との戦闘を繰り広げつつ、パズルを解いてダンジョンを攻略し、奥に潜むボスを倒して「メテオシャード」を集めてタワーの解放を目指していくことになる。

Almaは剣や銃などから武器を2種類まで同時に装備することができ、これを駆使して敵と戦うことになる。近接武器であれば武器を振るたびにスタミナを消費し、銃であれば弾が切れればリロードが必要になるため一方的に敵を攻め立てることはできない。敵の動きが全般的に素早く手強いので、Almaの能力を強化できる「チップ」や「コグ」を組み込んだり、素材と設計図を集めて新たな武器を作るなどして戦力を強化していこう。

ダンジョン内では岩を押して足場を作りジャンプで渡ったり、スイッチを順序通りに押して仕掛けを動作させると言ったものに加え、壁に張り付くことができるフックショット、コントローラの右スティックで飛ぶ軌道をコントロールできるリモコン式の手裏剣など、独特なギミックを持つ装備を活用してパズルを解いていくことになる。壁に這っているツタや地面に残る引きずり痕、順を追ったアイテムの入手などヒントは十分に散りばめられており、適度に悩みつつもパズルを解いていく達成感を味わえる。

本作のポイントとして、敵の攻撃を直前で弾いて隙を作り敵に大ダメージを与えられるシステム、いわゆるパリィの存在が挙げられる。フロムソフトウェアのアクションRPG『DARK SOULS』シリーズのヒット以来多くの作品で取り入れられているシステムだが、本作では敵からの攻撃は全て赤い点滅で予告されるためパリィするための位置取りやタイミングがつかみやすく、パリィに成功したときには敵が派手に転ぶなどリアクションにも手ごたえがある。またタイミングがずれたり大型の敵を相手にした場合ではパリィを繰り返し成功させる必要があり一進一退の白熱した剣戟が楽しめる。うまくパリィを決められた時の爽快感は随一だ。

迫る時間の中でも、道を「見失う」ことなかれ

オートマトン達はエネルギー切れの危機に直面している。オートマトン達の動力源であるAnimaが尽きてしまうと暴走を引き起こし、UNSIGHTED――”見失ったモノ”という名の鋼のケダモノとして闊歩することとなる。

作中において登場人物であるオートマトン達には「残存時間」が設定されており、残存時間はリアルタイムに減っていく。残存時間が無くなったキャラクターは消滅してしまい、それが店の店主などであった場合は付随するサービスも受けられなくなってしまう。アイテムの「メテオダスト」を使うことで少しだけ残存時間を伸ばすことができるが、各地から探し出さねばならず数にも限りがあるため気軽には使えない。そして、残存時間の存在は主人公のAlmaにとっても例外ではない

果たして時間切れまでにタワーの解放を間に合わせることができるのか。誰を救い、誰を見捨てるのか。その葛藤や苦渋の選択も本作を彩る体験のひとつとなるだろう。

一方でダンジョンで頭を悩ませたりボスに苦戦している間にも残存時間が刻一刻と減っていくことであせらされたり、親しくなったオートマトンがAnima切れで暴走する現場を目撃してしまうショッキングなシーンを快く思わない人もいることだろう。これについては好みが大きく分かれる点だという自覚があるのか、残存時間を撤廃する「探索者モード」も搭載されている。腰を据えてプレイしたい人はこれを設定すればよいが、残存時間の存在は本作の根底をなす要素とも言えるので、なるべくであれば一度は残存時間の設定ありでプレイしてみてほしいところだ。

ところで、作中の人物からも示唆されるとおり、本作においては必要なアイテムさえ揃えられればダンジョンを攻略していく順序は問われない。ダンジョンのドアを開けるための鍵が各地共通で使用でき、高額ながら店でも購入可能といった抜け道となりえる要素も散りばめられているので、大胆なショートカットルートを考える楽しみ方も可能になっている。ゲームクリア後には主要アイテムの設計図がそろった状態でスタートできるモードが解禁され、こと時間という観点で言えば、近年加熱している競技的タイムアタック(スピードラン)についても意識された作品ともいえるだろう。

『UNSIGHTED』は探索と戦闘のバランスが絶妙な正統派アクションRPGであり、同ジャンルのファンには迷わず推薦することのできる逸品だ。

[基本情報]
タイトル:UNSIGHTED
制作者:Studio Pixel Punk
クリア時間:7時間~
対応OS:Windows , PlayStation4 , Nintendo Switch , XBox One
価格:$19.99 (¥2050)

↓ダウンロードはこちらから

(Humble Store)
https://www.humblebundle.com/store/unsighted

(Steam)
https://store.steampowered.com/app/1062110/UNSIGHTED/

(Nintendo Store)
https://store-jp.nintendo.com/list/software/70010000040587.html

(PlayStation Store)
https://store.playstation.com/ja-jp/product/UP3864-CUSA29757_00-UNSIGHTED000000A/

(Microsoft Store)
https://www.microsoft.com/ja-jp/p/unsighted/9P31WJ3N46KB

  • 真野 崇(@tacashi

    フリーゲームと共に四半世紀を生きるフリゲ馬鹿一代。
    フリーゲームのレビューブログ「自由遊戯黙示録」を経て、自身のフリゲ人生を集約した、フリーゲーム・同人ゲーム・インディーズゲームの年代記「自主制作ゲーム史論」を執筆。