ノベル×アクション=聖徳太子シミュレータ!?『1f y0u’re a gh0st ca11 me here!』
飛鳥時代の政治家である偉人・聖徳太子。彼が10人もの歎願を同時に聞き分け、的確に指示を返したとされる伝説は多くの人が知るところだろう。かの人のように実際に何人も同時に応対することは本当に可能なのか?そんな疑問に実際に挑戦することになるのが今回紹介する作品だ。
『1f y0u’re a gh0st ca11 me here!』はサークル「フロシキラボ」が開発したアクションノベルゲーム。シナリオおよびキャラクターデザインを同サークル代表である田平孝太郎氏、メインプログラムをため息空氏がそれぞれ担当している。2021年11月1日よりSTEAMにて配信が開始されている。
はいこちら、ゴースト・コールセンターです
冥界に住む少女ヴァニタス・ヴァニタートゥム。彼女はとある事情から、現世での死者の幽霊を冥界へ導く花形の職業「死神」に就くことができず、落ちこぼれるような形でブラックデスという人物の屋敷でメイドとして働いていたが、屋敷の主人から新たな仕事を紹介される。
その仕事とは新たに発足した「ゴースト・コールセンター」のオペレーター業務。局長のアルスによれば、コールセンター内に設置された電話交換機は下界の公衆電話と通じており、道に迷った幽霊たちを死神に代わって電話口で誘導する画期的な業務であるという。戸惑うヴァニタスではあったが、それまでの自分を変えるべく決意をし、オペレーター業という未知の仕事へと挑むこととなった。
電話交換はてんやわんや
さて、読者の中に電話交換機という機械について馴染みのある人は多くはないと思われる。かいつまんで説明すると「電話と電話をつなげる機械」のことで、電話網が発足したばかりの頃は現代のように番号を入れれば電話がつながるというわけではなく、まず交換所と呼ばれるところと一度通話を行い、交換所で担当者が宛先を聞き取って電話交換機を人力で配線して目的の場所と通話を接続する必要があったのである。余談となるが「もしもし」という受け答えで使われる単語はこうした電話の交換業務の中から生まれたと言われている。
そしてヴァニタスとプレイヤーが挑むことになるのがこの電話の交換業務である。現世と冥界を繋ぐ電話には助けを求める幽霊たちからの電話がかかってくる。除霊などで追われている人であれば警察へ、道に迷っている人であれば地図案内へ、死傷を負った人であれば病院へ、それぞれフキダシの上部に表示されているアイコンをクリックし、対応する施設へと接続していこう。接続は通話時間の5秒以内に行う必要があり、接続先のヒントとなるポイントはフキダシの中に太字で強調される。一度に複数の会話が同時に展開されるため、見逃しが無いように注意が必要だ。
業務終了後にはミスの回数に応じて評価が与えられる。また、ゲームを進めていくと「電話を繋げない」という新たな対応を求められる事態にも遭遇することとなる。やるべきことは時間内に対応する答えをクリックするだけでシンプルだが、いざ手を出してみるとこれがなかなかに苦戦する。特にゲーム後半ではフキダシの数も速度も上がっていくので、心して交換業務に取り掛かろう。
複数の会話を瞬時に判断して適切な回答をとる、という、まさに冒頭で述べた聖徳太子のような所業が求められる。ノベルゲームの選択肢決定にアクション要素を加えた、あるいは早押しクイズをノベル寄りに変形させた作品と例えることができるだろう。
日々の勤めを果たすもの
6日間の業務を終えると、獲得した評価に応じたエンディングへと到達する。高評価を目指したい場合は「Chapter History」から巻き戻ってゲームを再開することになる。
高評価を目指す上では、交換業務で出現する通話は順序こそ変化するものの、内容は日数によって固定なので、繰り返しプレイして対応する解答を覚えればなんとかなる範疇だろう。逆に言うと通話内容を覚えてしまうとそれまでになってしまうのが惜しい。贅沢ではあるが、より臨機応変さを問う出題バリエーションも欲しかったところだ。本稿執筆時点では全体的にボリュームが少なめだがアップデートが予定されており、今後の拡充に期待したい。
一方、死神に就くことができなかった過去を持ち、そのコンプレックスから抜け出そうとするヴァニタスの前向きな姿勢は筆者を勇気づけてくれた。作中のヴァニタスと同じ様にこれから新しい仕事に就くという人や、日々の仕事に悩んでいるという人には感じ入る箇所がきっとあるだろう。キャッチーなシステムに目を奪われがちだが、キャラクター描写にも注目してほしい一本だ。
[基本情報]
タイトル:『1f y0u’re a gh0st ca11 me here!』
制作者:フロシキラボ
クリア時間: 45分~
対応OS:Windows
価格:¥720
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