史上最高のゲーム『tERRORbane』が完成した!ただちに遊びたまえ!……って、バグ地獄じゃねーか!!
開発者:
やあ!プレイヤーのみんな!ようこそ!
僕が長い年月をかけて作り上げたゲーム、
『tERRORbane(テラーベイン)』がついに完成したんだ!これは史上最高のゲームといっても過言ではないものなんだ!
なぜなら、僕自身が全てプログラムしているんだからね!
だから当然、僕のためにプレイしてくれるよね!しないわけないよね!?
だって、最高の完成度を誇る完璧なゲームだから!『tERRORbane』は2022年の4月1日から、
Nintendo SwitchとPC(Steam)で発売中!
買ってくれたみんなには、
ゲームの気に入った所を書き込める素敵な用紙を渡すよ。
これを使って君だけの冒険の記録を残そう!最後の方には見つかった不具合(バグ)を書くセクションもあるんだけど、
まあ、あまり使うことはないだろうね!じゃあ、早速ゲームを始めてみて!
きっと完成度の凄さに驚くよ!
歴史に名を残す傑作が生まれる瞬間を見のがすな!
……これが、最高のゲーム……だと?
始まって間もなくブルースクリーンになる、これが??
上等じゃねえか……!
この用紙を「バグリスト」にして、不具合を全て書き留めてやる。
セクションごとのバグを全部見つけ、開発者に叩きつけるぞ。
自分のゲームが破綻している証拠を前にしても、なお自慢できるのか?
どんな反応を見せるのか、思う存分に見届けてやろうじゃないか……!
史上空前?!バグ探しで阿鼻叫喚の新感覚アドベンチャーゲーム
……という設定の異色極まりないアドベンチャーゲーム、それが本作『tERRORbane(エラーベイン)』である。念のためだが、Nintendo SwitchとPC(Steam)で発売中というのは設定でもなんでもない、紛うことなき事実。
価格を書いていなかったが、どちらも税込1,640円である。これまた揺るぎなき事実。
4月1日に発売されたというのも本当のホントのファクトである。
そして、史上最高のゲームというのは”設定上において”嘘である。
そんなものが出来上がったと意気揚々と語る開発者に、現実(バグ)という名の真実(リアリティ)をたんまりぶつけ、”アビキョウカン ノ ジゴクエズ”になる有様(リアクション)を楽しむ!ひと口に言えば、そんなゲームである。
お分かりいただけただろうか。
詳しく紹介していくと、内容としてはRPG要素のあるアドベンチャーゲーム。自信満々な開発者が作り上げた『tERRORbane』を遊ぶプレイヤーになって、「セクション」ごとに設けられたイベントをこなし、ストーリーを進めていくというものである。RPGスタイルということでマップの探索に謎解き、敵との戦闘も用意されている。
ただし、この『tERRORbane』は自称・史上最高のゲーム。その実態はプログラムのミスにまみれた未完成品である。
ストレートに申し上げてしまえば史上最低のゲームである。念のためだが、設定上の話だぞ!設定上の話だぞ!(※もの凄く大事なことなので2回繰り返した)
これが何を意味するのかというと、ゲームは本来の筋書き通り進行せず、システム全般もほとんど壊れていて、まともに動作しない。そのため、プレイヤーの操作に応じて不具合が生じ、想定外の事態が巻き起こっては大変なことが起きる。
一例を出すと、マップの構造やグラフィックが崩壊したり、ストーリーが中断してしまったり、果てはゲームシステムが破綻したり、強制終了してしまったりと実に様々。
不具合とは別に(開発者の)設定ミスもあり、普通に進めていたら、史上最強にして最凶最悪の最終ボスとの戦闘が始まってしまうなんてことも起こる。
そんなヤツと戦えば、どんな結果が訪れるのかは上記の画像の通りである。
……心が折れそうだ。
こうした数々の不具合、設定ミスの数々を発見しては体験しては「バグリスト」を埋め、『tERRORbane』の世界を巡っていく。基本的にはそんな流れとなっている。
正直なところ、これでもどんなゲームなのか想像しにくいかもしれないが、「セクション」を「チャプター」(あるいはエピソード、章)、不具合を「選択肢」、「バグリスト」を「イベントリスト」と言い換えると大体掴めるかもしれない。
つまるところ膨大な選択肢、分岐が設けられたアドベンチャーゲームということである。そこにRPGのマップ探索、謎解き、戦闘といった要素が絡んできて、プレイヤーの参加と攻略を促しつつ、入り組んだ展開を見せていく。
実に様々な体験と個性的の限度を超えたアイディアが沢山詰め込まれた内容に仕上げられている。作中の『tERRORbane』は自称・史上最高のゲームだが、全体としては史上空前のゲームと言ってもそれほど不思議ではないものなのである。
総当たりという共通点で新しいゲームを生み出した面白さ
そんな本作の魅力は、驚くほどアドベンチャーゲームな遊び心地である。厳密にはコマンド選択型のテキストアドベンチャーゲーム、選択肢による分岐要素を持つノベルゲームに極めて近い共通点とやり応えが表現された仕上がりになっている。
それは”総当たり”だ。
コマンド選択型なら、ストーリー進行の過程で会話が途切れ、どれが次に繋がるコマンドなのかを一通り確かめる。選択肢による分岐なら、どれがどのルートに関係し、またバッドエンドへと繋がるのかを確かめるため実行するアレだ。本作はそれを”不具合探し”という題材を用い、似ているようで異なる独特の遊び心地を表現しているのだ。
そもそも、ゲームの不具合探し……専門用語で「デバッグ」では、色んな可能性を試しては実行する。壁に延々とぶつかり続けたり、わざと罠にハマったり、ルートを変えてみたりなどなど。まさに”総当たり”を基本とする作業だ。
それを本作はストーリーを進めていくための攻略法に落とし込んでいる。コマンド選択、分岐パターン検証といったアドベンチャーゲームの”総当たり”を不具合探しに置き換え、驚くほど共通していて、それでいて違うような遊びを実現しているのだ。
まさに「そんなのアリか!?いや、アリだ!」と納得してしまう違和感のなさ。RPG要素のあるゲームなのに、アドベンチャーゲームと名乗るのも分かる高い説得力が表現されているのだ。さながら、テキスト以外の手法でジャンル特有の攻略スタイル、分岐に伴う展開の変化を表現している感じ。それに”総当たり”のスタイルで共通する「デバッグ」の題材を用いているのには、発想と解釈の勝利というものを実感させられるだろう。
分岐パターンと不具合の膨大さも圧巻である。別の言い方で脱線パターンとも言う。基本、「セクション」は本来の筋書きに沿って進むが、行動次第で本当に無茶苦茶極まりない展開(という名の不具合)が起きていく。
マップが崩壊したり、システムが正常動作しなくなるのは序の口。突然、RPGから別ジャンルのゲームが始まったり、チート機能が解禁されて戦闘システムが一変したり、果てはVRヘッドセットに対応してしまうなんて事象も起きる。
とりわけ強烈なのは戦闘システムの変化だ。最初は正統派のコマンド選択型だったのが、コマンドの種類がおかしくなったり、開発者用コンソール解禁で双方ソースコード改修とチート行為の応酬になったり、その過程でパズルゲームが始まったりとカオス。
果てはこんなポケットの中のモンスターが戦うようなことにも!
この他にも、思わず二度見するような変化と不具合が盛り沢山、数にして200種類以上用意されている。まさに湯水の勢いであふれ出す変化の数々には、よくこれほどのものを思いつくなと逆に感動すらしてしまうほど。驚くべき気合とセンスが込められた仕上がりになっている。
また、パターンが多いからこそ、あれこれ試しては熱中してしまう面白さもある。そこに一連の不具合と種類の多さに対するこだわりを実感させられること請け合いだ。
さらに、一部スクリーンショットから分かる通り、著名な名作タイトルのパロディネタも多い。面白いのが古いタイトルに限らず、最新タイトルのネタも網羅していること。
続編のたびにサブタイトルがやたら長くなっていくものに始まり、
人狼が毎日ぐーるぐるしていると噂の村に住む吸血鬼の貴婦人、
メタなバースな分野で脚光を浴びる、エピックな大ヒット作まで網羅!
古いタイトルのパロディネタもRPG作品を中心としつつ、「なんと!あの”た~る”も?!」と、分かる人ならニヤリとしてしまうタイトルのものまである。さらにマニアックなものになれば、古いオペレーティングシステムにちなんだアレやコレやも……。
こんな新旧幅広くフォローし、若い世代を置いてきぼりにしない配慮が凝らされているのもゲームプレイ面に匹敵する魅力。同時に制作者が過去から今に至るまで、いかにゲームを愛し、今も昔も楽しんでいるかが分かるものになっているので要注目だ。
実は”心打つ”ストーリーも必見の自称・史上最高のゲーム。
このような怒涛のパロディと共に描かれるストーリー、演出周りもカオス。特に不具合が発生するたび、プレイヤーに対してツッコミを入れ、時に慌てふためく開発者は嫌でも印象に残ること確実。最初の自信満々な様子が徐々に壊れていく様子も、よくも悪くもニヤリしてしまう面白さ。『tERRORbane』本編のストーリーも個性的過ぎるキャラクターたちの会話劇、ぶっ飛びまくりな展開の数々で、着地点が全く見えない楽しさがある。
同時に実は心打たれる展開が待っている。本作には2種類のエンディングがあり、200種類以上の不具合を全て発見するとトゥルーエンドへと到達できる。このトゥルーエンドが非常に素晴らしく、本作がパロディてんこ盛りのギャグ作品という初見の印象を180度覆すものになっているのである。どんな結末が待つのかは見てのお楽しみだが、本作が決してウケ狙いで作っている訳ではないこと、そしてプレイヤーと開発者の関係性について真摯に考えた作品であることを思い知らされるだろう。
他にボリュームも1周するだけなら2~3時間、トゥルーを目指すと10時間ほどと適度な長さ。クリア後にはセクションの途中から始められる「ワープポイント」なるチャプターセレクト機能も解禁されるなど、完全攻略時の負担を軽減する対策も万全だ。
グラフィックもキャラクターデザインはだいぶクセ強めながら、個人の開発者が作っている設定特有の手作り感が印象的。音楽もどこか懐かしく、それでいて不具合を題材にしたなりの(いい意味での)統一感のなさで笑いを誘う。
また、本作は日本語にも対応しているのだが、ローカライズの質は極めて高い。率直に申して、完璧といっても過言ではないぐらいである。
断じて設定ではない!本当に史上最高の完成度である。
特に画面に応じたフォントの使い分けが素晴らしい。翻訳も自然で、今風の日本語表現も交えたキャラクターの台詞回しが光る。最初から日本語で書かれていたのでは、と錯覚するほどの違和感のなさには匠の技を思い知らされるだろう。
マップ移動中の速度が遅い、総当たりが基本ゆえの煩わしさがある、そしてゲームパッド操作を受け付けない(一部)本物の不具合が存在するなど、褒められない部分も多少ある。また、(ゲーム内世界での)開発者の性格も自己顕示欲が凄いため、苦手な人には抵抗を感じるかもしれない。
だが、この発想と解釈の勝利ともいえるゲームプレイ、新旧幅広く押さえたパロディネタ、意外にも心打つストーリーは傑出したものがある。さすがに史上最高のゲーム、完璧なゲームとまでは言わないが、素直に良作以上と言える出来を誇る1本である。このハチャメチャさと雰囲気に惹かれたのなら、すぐにでも遊んでみていただきたい!
保証しよう。この不具合探しの旅は、きっとあなたを解き放つ。
[基本情報]
タイトル:『tERRORbane』
開発・販売元:BitNine Studio、WhisperGames
クリア時間:2~3時間(※トゥルーエンド目的:9~11時間)
対応プラットフォーム:Nintendo Switch、Windows
価格:¥1,640(全機種共通)
購入はこちら
※Nintendo Switch
https://store-jp.nintendo.com/list/software/70010000048946.html
※PC(Steam)