”病み”に抗い、悪魔を狩りまくり、地獄を制圧してのお疲れちゃ~ん♪それが爆速爽快FPS『HAZAMA_QUEEN』だ!

FPS,インディーゲーム

202X年、世界は「病み」に包まれたッ!
地上は悪魔たちで溢れ返り、人類はただひたすらに蹂躙され、絶滅を待つのみ!
だが!彼らには最後の希望があった!
地雷系メイクガール「串刺しメアリー」である!

彼女はすべての元凶たる「魔王」を始末すべく、地獄へとただひとり突撃する!
すべては「病み」に包まれた世界を救うため!
さあ、制圧せよ―地獄をッ!!

……と、Steamストアページに記載されたストーリー紹介をホドホドに装飾し、脳内に千葉繁氏を召喚させつつ書いてみたのだが、こんな感じで良かったのだろうか。

そんなこんなの『HAZAMA_QUEEN(ハザマクイーン)』です。
個人開発者のBhaskara(ばーすから)氏が諸々我慢できなくなっちゃって、当初の予定を前倒しして販売しちゃった作品である。
ちなみに5月頭の予定だったらしい。
そして、発売後もアップデートで色々追加されていたりする。

本稿はあえての我慢の末、あれこれ追加されちゃった最新のバージョンを元に書いた。
耐え抜いたぞ。(実際はタイミングを見計らいすぎただけです、すみません。)

生き残りたくば悪魔を倒し続けろ!攻撃重視型のFPS

本作『HAZAMA_QUEEN』はファーストパーソンシューター、略してFPSだ。プレイヤーは主人公の串刺しメアリー……と、いちいち書くのはわずらわしいので、メアリーと以下から略す。メアリーを操作し、悪魔たちを狩り倒しながら3つのゾーンと複数のエリアから成る地獄を駆け抜けていく。

最終目標は最深部で待ち受ける「病み」の元凶、魔王を刺身にすることである。

本編はゾーンごとに設けられたエリアを順番に攻略していく形で進行。各エリアでの目的は出口(ゴール)への到達だ。到達することで次のエリアが始まり、以降その繰り返しになる。いわゆるステージクリア型アクションゲームの流れと同じだ。ただし、その途上でメアリーが力尽きれば即ゲームオーバーとなり、最初のゾーン1からやり直しである。たとえゾーン3まで進んだとしても、やられてしまえば問答無用で最初からだ。慈悲はない。

この仕組みが物語る通り、本作にはローグライク要素が”ごく僅かに”採用されている。ごく僅かの通り、一部の要素は採用されていない。敵や地形が前回のプレイとは異なるものに変化する自動生成システム、プレイヤーが一歩動けば相手も一歩動くターン制がその一例だ。

逆にやり直し以外で採用されているものは、ランダム選択式のパワーアップシステム。本作は各フロアの出口に到達すると、「スキルカード」なるメアリーの強化などを図るカードを選ぶ画面へと移行。ここで出される3枚の中から1枚を選ぶという、昨今で言うデッキ構築型、サバイバー系でお馴染みの要素が備わっている。

採用されているもので挙げられるのはそれぐらい。これが”ごく僅か”が意味するところである。なので、ローグライク系FPSと言えなくもないのだが、それ絡みの要素が最小限かつ軽めという……いわゆる”ライト”に強く寄った設計になっている。

これら以外にも特徴的なシステムがある。それが両手に備わった武器と「病みヂカラ」。

両手に備わった武器は文字通りである。メアリーは左右の手、それぞれに武器を持つ二刀流スタイルを基本としている。。二刀流と書きはしたが、実際に用いるのは銃火器である。

けど、ちゃんと刀と言い切れる武器もあるから安心してね♪(?)

ただ、メイン装備として使うのは左手の武器。右手は連射性に劣る高火力武器(技)で、耐久力の高い敵を即座に倒す時など、ここぞという時に用いることが推奨される位置づけになっている。また、基本的に両方の武器に弾数制限はなく、無限に撃ち続けられる。しかし、左手にはリロードの概念があり、発射可能な最大数を撃ち切ると弾の補充による隙が発生。右手にも同様にクールダウンの概念があって、使うと一定時間が経つまでの間は使えなくなる。

そのため、戦闘においては左手のリロードが発生した時は右手による攻撃で隙を無くす、右手がクールダウン中で使えない時は左手の武器で応戦するといった状況に応じた切り替えが大事。仕組み的には単純だが、それぞれの長所と短所を補う使い方が試されるという、なかなかに戦術的なシステムになっている。

「病みヂカラ」は端的に言えば、メアリーの体力。画面中央にサークル状で表示される。だが、これは時間経過と共に減っていく。すべてが尽きた時に何が起きるかと言えばゲームオーバーだ。残念ながら最初からやり直しです。

なので、本作ではこの減り続ける体力を回復し、キープし続けることが求められる。回復方法はいたって単純で、道中に現れる敵の悪魔たちを倒すだけ。だが、回復しても体力はお構いなしに減り続けるので、キープするには悪魔を倒し続けなくてはならない。もし、その流れが滞れば……ご想像の通りである。もちろん、悪魔の攻撃を喰らってもいけない。何故かはご想像の通りである。

まさに「生き続けたくば悪魔を殺しまくれ!」と言わんばかりの攻撃推奨のシステムになっている。なので、本作で攻撃を避けるとか、逃げるとかを考える暇はない。倒せねばやられてしまうからだ!

このような特徴的なシステムを本作は備え、独特のスリルと戦いを提供するFPSに完成されている。そして、この作りもあって、ゲーム全体のスピードとテンポも”爆速”と言わんばかりに速い。誇張抜きにレースゲームさながらである。

思わずクセになるスピード感と、確かな上達が得られる絶妙な難易度

そんな爆速なスピード感によるスリルと、爽快感が本作の売りとなっている。

なにせ、悪魔を倒し続けなければメアリーがやられてしまうのだ。最初からやり直しになっちゃうのだ。人生達成しちゃうのだ。時折、待機を挟みながらゆっくり進めようとしても以下ほぼ同文。おかげで本編開始から最後まで、立ち止まる瞬間なんてほとんどない。文字通り”目まぐるしい”展開がこれでもかと言わんばかりに連続するのである。

加えて悪魔を倒し続ける、立ち止まってはいけないというルールの数々がプレイヤーの脳味噌をフル回転させ、集中状態にする。立ち止まらない状態を維持しつつ、適切な立ち回りをせねば全てが水泡に帰すのだ。嫌でもそうなる。

なので、先んじて言えば、本作はFPS耐性のない人にはだいぶ(3D酔い的な意味で)応える。そもそも、普通に移動するだけでもかなりの速さであり、下手に視点を回転させればエライコッチャなことになり得る。もし、すでに本作に対して興味を持っているとするならば、まずはストアページに掲載された動画を確認し、耐えられるかどうかを判断していただきたい。「これはヤバい……」と感じたのなら悪いことは言わない、挑戦しない方がいいだろう。逆に「バッチコーイ!」と感じたのなら何も言いません。覚悟を決めろ。


▲基本、進むべき道や敵の出現位置はほぼ固定されている。

爆速だけに、初見時も困惑しやすい。ただ、慣れてくるとテンポよく、かつリズミカルに悪魔を倒せるようになってくる。というのも、前述したが本作にはローグライク要素の定番たる自動生成システムがない。そのため、エリアごとの地形、敵配置はほぼパターンで組まれており、トライ&エラーを重ねればその経験に準じた対処ができるようになっていくのだ。なので、やればやるほどプレイヤー自身の経験値が貯まる。そして、次回以降のプレイが洗練されていく。そうも露骨なほど上達が現れやすいバランスになっているのだ。

特に左右の武器使い分け、ダッシュアクションのクセを掴めば、まさに爆速を通り越して音速で悪魔たちをスタイリッシュに狩り倒す爽快感が堪能できる。メアリーのパワーアップを図るスキルカードに基本、弱体化につながる類のものがないのもそれを助長。枚数が増えるほどステータスは過激になり、力押しが容易になっていくのは痛快の極みだ。

それでも悪魔を倒す流れが滞ると危ないという、緊張感が損なわれないのも凄い。華麗に倒せるようになっても、倒し続けることは常に意識しなければならないのだ。相応にゾーンの構成も後半ほど長くなってくるので、イタズラに時間を消耗しすぎないよう突き進む判断も試されてくる。各ゾーンの最後に設けられたボス戦も、ターゲットにダメージを与え続けつつ、自分も回復を図り続けることが求められるので、どんなに強くなっても戦術的な立ち回りは必須だ。

このような難易度調整の絶妙さも特筆に値する部分で、単にスピード感と爽快感重視で終わっていないのが素晴らしい。ローグライク要素の厳選もそのバランスを実現する狙いがあるとすれば非常に理にかなっていて、極めて適切な判断と言える。

細かい部分でも悪魔たちを倒した時の軽快な撃破音、派手なエフェクトと少しグロテスクなやられ様も爽快感を引き立てつつ、プレイヤーが上手くなった手応えを演出する仕掛けとして機能している。

どうしても絵的な迫力が前に出がちだが、実際に遊んでみると作りはなかなか緻密で、システムも含めて考え抜かれている。速いなりにFPS耐性のない人には辛いが、耐性があり、爽快感のあるFPSをお探しの人なら、本作はぜひともプレイいただきたいところだ。ローグライクのランダム要素に抵抗のある人にも薦められる。
とりわけ上達が現れやすいところは、分かる人には深々と刺さるはずである。

なんだかとってもヘンテコな武器にも注目の力作にして怪作

難易度に関しては、FPSが苦手な人から熟練者への配慮がバッチリなのも見所。

ほぼ無敵状態になる簡単なものから激ムズまで、計5種類が選べる。どれを選んでもエンディングまで到達可能なので、お好みの加減で楽しめる設計だ。ただ、バランスの妙を味わいたければ「レッツメイク!」以上を強くお薦めする。
逆に初見はそれより少し簡単な「イージィ↑↑」がいいかもしれない。もっと簡単な「可愛すぎて死ねない」だと文字通りメアリーがやられなくなるので、物足りなく感じてしまう可能性がある。

全ゾーンのクリア(※ゲームオーバーにならずエンディングまで到達)に要する時間が約15分と、爆速なりに短いのも見所。それでいてゾーンそれぞれが山あり谷ありの構成で、常に悪魔を倒し続けることが要求されるのもあり、密度が濃い。

それでいて、初回プレイ時のエンディング到達は、「イージィ↑↑」以上ならトライ&エラーが発生しやすい都合上、容易にはいかない。それも密度の濃さを印象付ける。ゆえに無事、エンディングを迎えられた時には結構な疲労感を覚えるかもしれない。難易度「レッツメイク!」なら尚更である。そういう意味でもお薦めの難易度です。

また、冒頭の通り本作はストーリーと世界観が全体的にカオス。頭のネジが外れているとしか思えないネタがてんこ盛りとなっている。

特にその象徴がパワーアップとして用意された武器で、スタンダードなハンドガンにレバーアクションライフル、近接特化型のナイフといったものにまぎれて、サークルクラッシャーの生首、バーチャルいいゲーマー(注:本人)といった謎めいたものが満載となっている。それらの性能もぶっ飛び気味、かつなぜか使いやすいというカオスっぷりなので必見だ。


▲実在する「バーチャルいいゲーマー」を武器に悪魔と戦え!(※バーチャルいいゲーマーについてはこちら

それらの武器を手に入れると、画面右側のメアリーのグラフィックが専用のものに変わるのもポイント。ちなみにメアリーはボイス付き。悪魔を倒した時に色々喋る。その中でも「お疲れちゃ~ん♪」は、間違いなく本作をプレイした人の耳に焼き付いてしまうだろう。

他にもキーボード+マウス特化の快適な操作周り、進めるたびに曲調が派手になっていく音楽、ラフ画(!)で描かれたイベントデモといった印象的かつ衝撃的な見所は多い。逆に気になるところとして、表示設定のオプションが保存されない(フルスクリーンにしても起動時は毎回ウィンドウで始まる)、右手攻撃時のヒット感がやや弱い、背景が3Dでキャラが2Dの関係で主に攻撃の距離感が掴みにくいなどもある。
ただ、いずれも爆速なゲーム展開の勢いが強すぎるのもあって、ほぼ(物理的な勢いで)霞んでしまっている……のは果たしていいのかどうか。

とにもかくにも、FPSとしての出来は盤石。気軽に遊べる特徴も持ち合わせているので、FPS耐性がそれなりにあるなら、ぜひチャレンジいただきたい力作だ。古典的なFPSを知る世代をニヤリとさせるネタもある。そのような方々も気になればぜひ。

目にもとまらぬ速さで悪魔たちを狩り、地獄を制圧して元凶たる魔王に思い切って「お疲れちゃ~ん♪」と言い放ってやりましょうぞ。

[基本情報]
タイトル:『HAZAMA_QUEEN』
作者:Crush-vAdin(Bhaskara)
クリア時間:10~15分(1周)
対応プラットフォーム:Windows
価格(税込):500円

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