青森県の伝承を基にした紙芝居ノベルゲーム『KiTAN』
『KiTAN』は青森県弘前市に残る、とある伝承をもとにした紙芝居ノベルゲームだ。プレイ時間は20分と短時間ながら、味わい深いゲームに仕上がっているので紹介していきたい。
今は昔。妖術を使う一族の内紛により、故郷を追われ北の地へと流れ着いた1人の若者がいた。傷を負った若者を、その地に住む鍛冶屋の一人娘が看病をし……という冒頭のストーリー。あまり紹介し過ぎると勢い余って全てをネタバレしてしまいそうなので、お話の中心はこの二人を中心に進むということだけ紹介しておこう。
一族の内紛により故郷を追われた若者。彼が語らないある秘密とは……
傷も癒え、娘の父である鍛冶屋のもとで働き始める若者。やがて二人は……
冒頭に述べたとおり、『KiTAN』のストーリーは青森県弘前市の民間伝承をもとに構成されているが、もともとの伝承に独自の味付けを加え、切なく味わい深いものへと昇華させている。
わび・さびを感じるイラストとその使用の「間合い」
このゲームで使われている紙芝居のイラストは200枚。その量もさることながら、そのイラストを切り替えるタイミングやエフェクトなどが素晴らしい。純和風な、言ってみれば「わび・さび」を感じるような出来栄えとなっている。海外にも「世界よ、これが日本だ」と言ってやりたくなるようなテイストだ。特に本編中に何度か出てくる戦闘シーンなどでは、刀の触れ合うサウンドの使用タイミングなども含めて、躍動感が極めて高い。シンプルながら引き込まれるつくりで必見だ。
いくつか引用したスクリーンショットからも分かるように(ネタバレを避け意図的に省いたものもあるが)、紙芝居のイラストとサウンド、エフェクトのみで情景を表現しているシーンもかなり多く、このあたりも表現力を感じさせる一作だ。
また、『KiTAN』はプレイ時間20分程度と非常に短い時間で終わるのも特徴的。選択肢による分岐もなく、つくりとしてはシンプルな一本道ノベルゲームだ。しかし、約20分の間に200枚以上ものイラストが贅沢に使われていると考えると、かなり濃密な時間が過ごせることは間違いない。
ゲームクリア後には、伝説の出典や制作者の後書きなどを見られるおまけモードも存在する。実際に制作者が青森県弘前市の、伝説の舞台となった地で取材した様子などが実際の写真とともに書かれており、こちらもとても興味深く読める。
『KiTAN』。シンプルだが味わいのある、短時間で楽しめるノベルゲームとして、プレイしてみてほしい一作だ。
[基本情報]
タイトル KiTAN -キタン-
制作者 サークル「セイナルボンジン」たぬ子様(製作者様サイトはこちら)
クリア時間 20分
対応OS等 Windows ME/XP/VISTA/7 等
価格 無料
ダウンロードはこちらから↓
http://www.freem.ne.jp/win/game/8411