時を操るキノコを傘に、雨の向こうへ。2Dパズルアクション『トキノ降水区』

アクション

6月といえば雨の季節。と言いたいところだが、今年は例年に比べて梅雨入りが大きく遅れているという。陰鬱な物として捉えがちな雨だが、降るべき時に降らないというのもそれはそれで寂しい限り。ゲームの中だけでも雨に思いを馳せてみる…というのは気取りすぎだろうか。

サークルMYOJO WORKSによる『トキノ降水区』は雨の降る街を探索していく2Dパズルアクションゲーム。unity1week「ふる」に出展された同名作品をベースに開発され、2023年末のコミックマーケット103にて初頒布されたのち、2024年1月13日よりBOOTHにてダウンロード販売が開始されている。

降り止むことのない雨の国を抜けて

ある荒れ野に生えた巨大なキノコ。そのキノコの下には土地を潤す雨が振り、やがてキノコの下に人が住みはじめ、それぞれ異なる時間の流れを持つ国々が生まれた。降り止まない雨の下に生まれた国々は、いつしか「降水区」と呼ばれるようになった。

世界の端の崖に住んでいた少女「イロハ」は、偶然から降水区へと落ちてくる。イロハはもと居た場所へと戻るべく、時間を操作する不思議なキノコの力を使いながら降水区を巡る旅をすることとなる。

旅の途中でイロハが立ち寄った「ロツェルド降水区」では、廃棄場の管理人「カンナ」に出会い、彼女はイロハのガイドを買って出る。奇妙な協力体制のもと、イロハは帰郷への第一歩としてロツェルド降水区を抜けるべく奮闘する。

時を操るキノコを駆使して先へと進め

本作ではプレイヤーはイロハを操作し、各ステージを突破していくことが目的となる。イロハはブロックにして3ブロック分のジャンプ力を持ち、崖の部分に手を引っ掛けてぶら下がることができる。ぶら下がりからは更にジャンプを行えるため、上方向へ登りたいときはぶら下がれるポイントを探すことが重要だ。穴に落ちたり障害物に挟まれた場合はチェックポイントからやり直しになるほか、行き詰って状況を一度戻したい場合はRキーを押すことでチェックポイントから再開可能だ。

ステージ中にはイロハの背丈よりも大きい大型のキノコが生えており、このキノコは持ち歩いて別の平らな場所に植えなおして足場として利用することができる。キノコを抱えている状態ではぶら下がりができなくなるほか、抱えたキノコの高さのぶんだけ狭い天井に引っかかる点に気を付けよう。

また、キノコは雨などの水に当てることでキノコの傘の下にある物体の時間の流れを変化させる性質を持ち、青いキノコなら流れを早く、赤いキノコならば流れを遅くすることができる。プレイヤーキャラクターであるイロハがキノコの時間変化の影響を受けている場合は相対的に周囲がスロー化・高速化しているように扱われるため、効果を混同しないように注意しよう。

短編ながらガッツリ悩めるパズルアクション

本作では前述したキノコを使った時間操作のパズルが肝になっている。例えば普通に歩いた場合ではコンベアの流れに間に合わない場合でも、青キノコを抱えて水に当てることで加速状態となって素早く潜り抜けられる、というような具合だ。時間という目には見えにくい概念を操作することによって、自分や周囲にある物体に対してどのような変化を起こせるのかを掴むことが先へ進むためのコツと言えるだろう。

シャッターやシャッターと連動する通電スイッチ、青キノコと赤キノコが複合して出てくるようになる後半戦では、どの物体の動作を早めて何を遅くするべきなのか、その実現のためにはキノコをどういう順番で運べば良いのかなど、考えるべき点が幾重にも折り重なってくるため、先へ進めば進むほど悩ましさが増していく。とはいえキノコの持つ法則から順序立てていけば着実に解法を見出すことができ、理不尽さを感じさせないようにもなっている。

パズルの難易度に脂が乗ってきて、ストーリー的にも旅はこれから!というところでエンディングを迎えてしまうため、ボリュームの面では物足りなさが残る部分があるものの、歯ごたえのある濃いパズルが味わえる一作となっている。パズルファンに推薦したい作品だ。

[基本情報]
タイトル:トキノ降水区
制作者:MYOJO WORKS
クリア時間: 2時間~
対応OS:Windows 
価格:¥800

↓購入はこちらから
(BOOTH)
https://booth.pm/ja/items/5358109

  • 真野 崇(@tacashi

    フリーゲームと共に四半世紀を生きるフリゲ馬鹿一代。
    フリーゲームのレビューブログ「自由遊戯黙示録」を経て、自身のフリゲ人生を集約した、フリーゲーム・同人ゲーム・インディーズゲームの年代記「自主制作ゲーム史論」を執筆。