硬派で”やさしい”縦シューティング『DEVIL BLADE REBOOT』は、ジャンルの入門編としても最良の傑作だ
『オーディンスフィア』『朧村正』『ドラゴンズクラウン』、そして近頃は『十三機兵防衛圏』と『ユニコーンオーバーロード』で知られるヴァニラウェア有限会社。
そんな同社にグラフィックデザイナー兼イラストレーターとして所属するシガタケ氏は、かつて株式会社アテナより発売されたシューティングゲーム制作ソフト、「デザエモン」シリーズでゲーム制作をしていたことでも知られる人物だ。
そんなシガタケ氏が1996年発売の『デザエモン+』(PlayStation)で制作したシューティングゲーム『デビルブレイド』は、ド派手な映像と演出で大きな注目を集め、当時開催されたコンテストで入選を受賞。後に1998年発売の『デザエモンKids!』(PlayStation)付属のコンテスト作品集、『デザエモン+セレクト100』に収録されるに至った。
その後も2003年にセガサターン向けに発売された『デザエモン2』で続編『デビルブレイド2』、2015年にファミリーコンピュータの元祖『絵描衛門』で初代『デビルブレイド』の逆リメイク(デメイク)版をシガタケ氏は制作。いずれも公式サイト「画展」において公開された。
そして、2024年。最初の『デビルブレイド』誕生から実に28年の時を経て、シガタケ氏自らによる最新リメイク版が爆誕した。その名も『DEVIL BLADE REBOOT(デビルブレイド リブート)』である。
本作は2018年頃より、シューティングゲーム制作ツール「Shooting Game Builder」を用いて制作が始まった作品。当時から数えて制作には6年近くを要し、晴れてPCゲーム配信プラットフォーム「Steam」で完成版が発売されるに至った。
ジャンルの醍醐味を集中的に味わえる、遊びやすさ重視の縦スクロールシューティング
オリジナル版『デビルブレイド』と同じく、本作『デビルブレイド リブート』もジャンルは縦スクロールのステージクリア型シューティングゲームとなる。
プレイヤーは小型高火力戦闘機「シャイニング」を操縦し、圧倒的な軍事力を誇る大国「ゾーク」の軍勢と、その首領を討つ強襲作戦の遂行に挑む。
遊び方も襲い来るゾークの軍勢をショット攻撃で撃ち倒しつつ、最後に待ち受けるボスを目指すというもの。ボスを倒せばステージクリアで、以降もそれを繰り返すというシューティングゲームの定番にして王道を地で行く作りだ。
システム周りは、必要最低限の要素に留めるという取っつきやすさを重視。象徴的なのが基本攻撃のショットで、アイテムを取得することによる攻撃力の強化(パワーアップ)と、撃墜に伴う弱体化(パワーダウン)がない。威力と性能は初期状態と撃墜された時のどちらも変わることなくそのままで、存分にその威力を振るうことができる仕組みになっている。
アイテムも前述のショットの概要通り、パワーアップ系は皆無で、回数制の全体攻撃武器「ボム」と、被弾を1回防いでくれる「シールド」の2種類に限定。
ちなみに「シールド」は、「ボム」を発射した時にも展開されるというユニークな付加効果がある。また、「ボム」を発射するボタンを長押しすると「ブースト」が発動。一定時間の間、被弾しても撃墜されない無敵状態になれる。
この関係で、本作はゲームバランス面でもある程度ながら力押しを容認。また、撃墜による弱体化がないため、プレイヤーの実力次第で難しさが極端に上下するようなこともないなど、多少アバウトな立ち回りでも突破口を見出せる懐の広さを実現させている。
逆にプレイヤー自身に敵への接近といった、危険行為を推奨させるシステムも。それが「バーサク」で、本作は敵を近接破壊することでスコア倍率が上昇し、高得点を出せるようになっている。さらに接近攻撃を仕掛けると、画面左上に記された「バーサク%」が上昇していき、100%に達すると「バーサク」が発動。敵の攻撃、耐久力が上昇すると同時に、得られるスコアがなんと5倍に上昇する。
あくまでも高得点を獲得することに特化したシステムで、純粋にゲームクリアを目指す場合はそこまで積極的に狙う必要はなかったりする。ただ、狙うなりのメリットは大きく、特に残機数アップ(エクステンド)の機会が得られやすい。無理に狙わずともいいが、頑張れば相応のリターンが得られる。そんな頑張るなりの意義が込められており、なかなかに絶妙な落としどころに収まったシステムになっている。
他に本作ではステージクリアのたびに「コイン」が手に入り、これをタイトル画面から行ける「UNLOCK MENU(アンロックメニュー)」で使うことで、様々な追加機能や特別なコンテンツを解禁できる。後者の中にはサウンドテスト、ギャラリーといったおまけ要素も用意。
特にギャラリーには、ゲーム好きなら一度は耳にしたことのある著名なイラストレーターが手がけたイラストもあり、解禁欲を刺激させられること請け合い。追加機能にも本編の攻略をしやすくするものがあるなど、救済措置の役割を兼ねているのも見所だ。
このようにシューティングゲームとしては定番を踏襲しつつ、システムやゲームバランス周りでストレス要因となり得る要素を徹底してカット。そして遊びやすく、継続しやすくするための工夫を凝らすという、”やさしさ”が滲み出た内容に仕上げられている。
重厚なグラフィックからは想像もつかない、良心的なゲームバランスと工夫の数々が異彩を放つ
本作の特筆すべきポイントは、ゲームクリアを目指す際の選択肢が豊富なところだ。そのように紹介すると、以前取り上げた『DRAINUS(ドレイナス)』(紹介記事)と被っている感じだが、本作は別のアプローチでシューティングゲーム初心者、苦手なプレイヤーへの門戸を開いている。
とりわけ光る要素がステージクリアのたびに得られる「コイン」。これで解禁可能な追加機能でゲームオーバー後のコンティニュー回数があるのだが、解禁後も続けて支払うことによって、さらにその上限を増やすことができるのだ。そのため、増やせば増やすほど、力押しによる攻略が容易なプレイ環境へと変質させられる。
しかも、コンティニュー回数は全難易度が上昇の対象で、何度か繰り返せば高い難易度にも挑戦しやすくなっていく。
紹介が前後したが、本作は難易度選択機能も網羅。簡単な「EASY」から地獄の「INFERNO」までの4種類が用意されている。
この要素もまた、クリアを目指す際の選択肢のひとつであると同時に、「INFERNO」を除いて時間を費やせば費やすほど、いつかはクリア可能になる余地を設けている。実力ではなく、時間をかける策も攻略法として活かせる設計なのだ。
このようにクリアを目指す際のサポートが手厚いと同時に、挑戦意欲も殺がれにくいゲームバランスを確立させている。
加えて本作、シューティングゲームとしてはありがちな”初見殺し”に遭遇する頻度が極めて低い。敵やボスが唐突に素早い攻撃を繰り出し、避けきれずに撃墜されてしまう事故が起きにくい設計が施されているのである。
それを象徴するのが攻撃直前の弾道(射線)表示。実は本作、道中に現れる敵、ボス共に強力な攻撃を繰り出す際には、どんな軌道でそれが飛んでくるのかを予告する射線が直前に表示される。いきなり攻撃を出さずにワンクッション、それも予告の上で攻撃を仕掛けてくるのだ。
それもあって、本作はその種の攻撃に対処しやすい。また、射線が出るからこそ、どこに自機が居れば命中せずに済むかも分かるので、万が一撃墜されても、「射線の上に居たからやられた」という納得感のあるものになる。おかげで「射線から外れた場所に居ればいいんだ」という学習にもなって、以降のプレイでそれを踏まえた動きを心がけるようになっていく。それと共にミスも徐々に減っていくのだ。
この工夫もあって初回プレイ時、件の攻撃の対処法が分からず、成す術もなく撃ち落とされることも少ない。加えて本作には被弾を防ぐシールドがある上、失ったとしてもボムさえ撃てれば、すぐに展開し直すことが可能。さらにボムではなく、ブーストによる無敵時間を利用するという手段も用意されている。
なので、突発的な攻撃自体の理不尽さはほとんどない。大体、対処できなかった時は射線を見落としたか、ボムによるシールド再展開、ブーストといった手札を使えなかった(使わなかった)という、明確な理由がセットでついてくるのだ。
弾の軌道を推測し、自機を避けることはシューティングゲームにおける基本戦術だが、特に突発的な攻撃は推測の時間すら与えてくれず、そのまま意図しないストレスフルな事故へと繋がる頻度が高い。本作はそうした突発的な攻撃に対して公平さを担保すると同時に、他の要素でもその対処法を設けてストレスを徹底的に緩和。結果として、納得感の高いゲームプレイと難易度を実現させているのである。
工夫そのものは地味なものだが、これが大変効果的に作用しており、ミスしても理不尽に感じにくい。何より、ちゃんと射線通り弾が飛んでくる作りが素晴らしい。射線を外れて飛んでくるといった裏切りがほとんどないのだ。そうしたものは、本編後半の弾幕攻撃に任せているのに加え、それらも今までの回避経験とシールドを始めとする別手段があれば乗り切れる、理不尽さの少ないものになっている。
シューティングゲームの難しさを一層際立たせる負の側面を持つ初見殺しの要素。それをより分かりやすく、そして受けても納得感があると同時に、他にも対処法を用意している本作の工夫は特筆すべきものがあり、ある意味、現代のシューティングゲームとも言えるバランスを確立させている。地味な手法とは言うものの、遊び心地に大きな影響を及ぼしているのである。
真偽を疑ったのなら、ぜひ試していただきたい。予想以上に理不尽さの軽減に効果を発揮していることを実感させられるだろう。同時にこうした面でもクリアを目指しやすくしている所に、本作がいかに”やさしさ”にこだわっているのかを感じ取れる。
グラフィックや音楽のテイストは紛うことなき硬派で、鉄と炎の匂いが漂う重厚な雰囲気漂うものなのだが、実態はそれとは真逆。いい意味で、見た目と中身が合致しない仕上がりで、シューティングゲーム入門編としても申し分ない仕上がりなのだ。
もし今、シューティングゲームにデビューしてみようかなと考えている人がいるなら、本作は最良の1本になってくれるだろう。それほどゲームバランスが良心的で、サポート周りが手厚い。硬派だけども”やさしい”シューティングゲームなのである。
ちなみに余談だが、前述で取り上げた『DRAINUS』も最良の1本である。本作で縦スクロールタイプに入門し、そちらで横スクロールタイプに入門してみると、より一層、シューティングゲームの素晴らしき世界を堪能できるだろう。
間口が広くて遊びやすい、幅広いプレイヤー層に自信を持ってお薦めできる傑作
”やさしい”シューティングゲームの姿を隠すがごとき重厚なグラフィックだが、この完成度も飛び抜けて高い。
いかにとんでもないかは、シンプルに動いている様子をプレイしながら堪能せよの一言に尽きる。紛うことなきドット絵の芸術を目撃することになるだろう。
また、演出面では疑似3Dの表現もふんだんに取り入れるなど、1990年代後半に発売された32ビットのゲーム機を思わせる映像を作り上げている。一部ステージにはこの表現を活かした仕掛けも登場すると同時に、戦闘と並行して思わず心が熱くなるシチュエーションが描かれているので要チェックである。
音楽もその見た目にベストマッチした熱くて激しい楽曲が揃っている。特にボスに関しては、個体別に固有の楽曲が設定されているのに加え、攻撃パターンを始めとする特徴、見た目に相応しいものになっているので必見&必聴である。
他にボリュームも1周30分ほどとお手頃ながら、アンロックメニューに用意された要素の全解禁、さらなる難易度への挑戦など豊富なやり込み要素が揃っているため、それらをコンプリートしようとすれば長い時間遊ぶことができる。
総じて非常に高い完成度を誇る、紛うことなき傑作となっている本作。エクステンドの目安(得点)に関する説明がない、大量の敵と弾幕が一気に押し寄せる場面では視認性が落ちるという気になる点も多少があるが、遊んでいる際は手厚いサポート周りと良好なゲームバランス、そして濃ゆいドット絵の数々によって、自然にのめり込んでしまうだろう。
そんなこんなで、シューティングゲーム好きからこのジャンルにデビューしようと考えている方々まで、自信をもってお薦めする。
見た目とは裏腹な”やさしい”硬派なシューティングゲームがここにある!
[基本情報]
タイトル:『DEVIL BLADE REBOOT』
作者:シガタケ(SHIGATAKE GAMES)
クリア時間:30~40分
対応プラットフォーム:Windows
価格(税込):1,800円
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