インディーゲーム『Shovel Knight』にみる、「総合点の高さ」
2014年、海外で軒並みハイスコアを獲得し、話題となったPC向け2Dアクションゲーム『Shovel Knight』。6月の公開以来、12月までに30万本を売り上げている(海外では、Wii U、3DS、PS3、PS4で販売中)。
開発中の2013年4月に実施したKickstarterでのクラウドファンディングでは、目標金額75,000ドルの4倍以上にもなる311,502ドルを15000人弱の支援者から集めており、事前の期待も非常に多かったことが伺える。
Shovel Knight by Yacht Club Games – Kickstarter
https://www.kickstarter.com/projects/yachtclubgames/shovel-knight
なぜそんなにも人気だったのか。筆者は最近になってやっとプレイし終わったのだが、一言で言ってしまうと、「総合点が高い」ゲームだという言葉が適切だろう。本作を開発したアメリカのYacht Club Gamesはインディデベロッパーだ。インディゲームというと尖ったゲームが目立つが、このゲームは完成度という総合点で評価できる。
様々な名作ゲームのゲームデザインの秀逸な繋ぎあわせ
8bitのレトロなグラフィックで描かれる中世チックな世界。主人公のShovel Knight(ショベルナイト)は、一緒に戦ってきた愛するShield Knight(シールドナイト)と離れ離れになってしまう。Shield Knightをさらった魔女(the Enchantless)を倒し、Shield Knightを救うべく、Shovel Knightは旅に出る…。そんなストーリーだ。
ステージをクリアするとShovel Knightが焚き火の側で眠りながら夢を見るシーンが何度かある。夢の中では、Shield Knightが空から落ちてくるのだが…。非常にせつなくなる描写だ。
ワールドマップを移動してステージを行き来する。途中、体力や防具の強化などができる村があったり、移動する敵などもいる。
主人公のShovel Knightは名前の通り「ショベル」。アクションも非常に限られており、ジャンプかショベルを使うか、特殊能力を使うかの3種類程度。ショベルは敵を倒すためにも、ブロックを掘ったりすることにも使える。操作自体は非常にシンプルながら、ステージのギミックと敵のバリエーションがとても豊富で、難易度を上げている。
開発者がKickstarterのページでも言及しているように、ロックマンや悪魔城ドラキュラ、ダークソウルなど様々な名作ゲームに影響を受けている。先ほど紹介したマス目を移動していくワールドマップはマリオブラザーズ3風だ。
特にステージの構成やサウンドなど全体にわたって、ロックマンシリーズの影響は色濃い。各ステージのボスの名称は◯◯Knightで統一されており、ロックマンのボスキャラをオマージュしている。
もぐらゲームス的に気になるボスキャラ「MOLE KNIGHT」(もぐらナイト)
また、イエローデビルやドクターワイリーといった敵キャラを彷彿をさせるボス戦もあったりする。
そして参考にしたという3作にも通ずる容赦のない難易度だ。Shovel Knightには体力が設定されているものの、ゲージが気になるのはボス戦くらいだ。とにかくトゲなどでの即死が多い。
死ぬと中間セーブポイントから復活。所持金を落としてしまう。SSのように死んだ場所に残されているので回収しよう。ダークソウルの「ソウル」を落としてしまう仕様と同じだ。
ここまで書いてきたように、本作はとにかく「この部分はあのゲームっぽい」という要素が非常に多い。それはゲームデザインレベルでの適用が多く、ゲームをプレイする楽しさに見事に結びついているところが秀逸だ。
ファミコン風のゲームを現代風にアレンジするということ
そんな本作を彩るのは、非常に良く動く8bitのグラフィックと、かっこいいチップチューンだ。
グラフィックは8bitのファミコン風でありながら、しっかりと描きこまれており、決して古臭い感じを受けない。特に感じるのは、使っている色の多さと背景の描き込みだ。火山、氷、工場、墓場などそれぞれのステージの舞台はテーマが設定されている。その雰囲気に合わせつつも、複数の鮮やかで強めな色を組み合わせている。
ホラーテイストなステージ。赤、明るい紫、黄と目を引く色を複数使っている
主張していくるのは色遣いだけではない。背景の描き方も非常にダイナミックだ。
サウンドは、通常のサントラだけでなくアレンジ版が発売されるほどの人気。ロックマン1,2のサウンドを担当した松前真奈美氏も楽曲を提供している。こちらもグラフィック同様に懐かしいようで古臭さをあまり感じない、軽快な和音がゲームを盛り上げる。
『Shovel Knight』は、ゲームデザインもグラフィックもサウンドも、ファミコン風でありながら、2015年現在遊んでも古いと思わない、そこにこのゲームの面白さの秘訣がある。
総合点の高さで勝負したインディゲーム
ここまで紹介してきて、このゲームを面白くたらしめているのはグラフィックやサウンド、ストーリーといった個々の要素のレベルの高さであり、ファミコン風2Dアクションの現代における再現だ。その結果、プレイしたときにゲーム全体としての完成度の高さを感じる。筆者は、ひと通りプレイした限りでは、「ここをもう少しこうしたほうがいい」という惜しいポイントがほとんど見当たらなかった。
冒頭にも述べたようにインディゲームは、メジャータイトルでは実現できないようなどこか尖ったゲームが目立ちやすい。その中で、『Shovel Knight』は正攻法で勝負したインディゲームだ。
Kickstarterのサポーターを含め、コミュニティとのやりとりも活発だ。サントラのアレンジ曲やTシャツなどのノベルティも様々な種類を用意したり、無料の追加コンテンツをリリースしたりと精力的に活動を続けている。
スピンオフ的な位置づけとなる、追加コンテンツのDLC:Plague of Shadowsは2015年春に公開予定。本編では薬品を操って攻撃してくるボスとして登場した「Plague Knight」が主人公となり、究極の薬を求めて冒険を繰り広げることになる。世界観は踏襲しつつ、本編とは違った視点で楽しめるDLCになりそうだ。
海外ではWii U、3DS版に加え、4月からはPS3、PS4、PS vita版も登場する。日本では現在、PC版のみSteamで購入できる状態だが、日本語版のリリースも含め、今後に期待したいところだ。
[基本情報]
タイトル Shovel Knight(英語版のみ)
制作者 Yacht Club Games(制作者様サイトはこちら)
クリア時間 5時間程度
対応機種 Win/ Mac / Linux (海外はWIi U/3DS/PS3/PS4/PS vita、Xbox One(予定))
価格 1,480円
購入・ダウンロードはこちらから
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