これが宅飲み耐久トークゲームにして、BL(ボーイズローグ)ゲームでもある『今日こそは_酔い潰れない_絶対に!』
この誰かの強い決意がにじみ出ているかのごとし『今日こそは_酔い潰れない_絶対に!』とは、読んで字のごとくの目標を成し遂げることに挑むゲームである。言い直すならば、酒を飲み続けて雑談を耐え抜くゲーム(縮めて酒飲み耐久トークゲーム)である。
なお、もし途中で酔い潰れて夢の世界にショータイムされてしまえば、即ゲームオーバー&最初からやり直しである。
トレンディな言葉を用いるならば、ローグライトとも言う。だが、本作はどちらかというと「ボーイズローグ(Boys Louge)」だろう。略してBLと言う。
なお「「Rouge」では?」とのご指摘は本作の場合、“半分”あやまりとなる。
なぜ、半分あやまりであるかの詳しい理由はこれより解説する。
何の相談かが気になって仕方がない。だから今日こそは!絶対に!酔い潰れない!
あらためて本作『今日こそは_酔い潰れない_絶対に!』は、「ノベルゲームコレクション」にて公開中のWindows PC、ブラウザ向けフリーゲームである。「酒飲み耐久トークゲーム」やら「BL」などと表したが、厳密にはノベルゲームに当たる。
ところで、誰が「今日こそは酔い潰れぬぞ!」と固く誓っているのかだが、それは主人公の大学生「有馬(ありま)」である。
彼は友人の「辰巳(たつみ)」との宅飲みが習慣化していた。しかし、酒は好きなのにいつも辰巳より先に酔い潰れてしまうのがちょっとしたコンプレックスとなっている。
そんなある日のこと、有馬は辰巳から「相談がある」と連絡を受ける。「あのお気楽・能天気な辰巳が相談!?」と、まさかの事態に興味が津々となってしまう有馬。とは言うものの、その相談はいつものように宅飲みとなるのは確実。もし、先に酔い潰れてしまえば、相談の全容がほとんど分からぬまま終わってしまう!
かくして有馬は、辰巳の話を最後まで聞き出すため、ペットボトル3本分の水をスタンバイの上、今宵の宅飲みに立ち向かうのだ。
なんだかまるで戦場に出向くかのごとし勢いのオープニングだが、とりあえずはそんなノリで始まるゲームと思っていただければ。基本的には辰巳との会話を進めつつ、途中で出される酒を1杯ずつ飲んでいくのが主な流れとなっている。
ただし、酒を飲むたびに有馬のいる場所に表示された「酩酊度(めいていど)」なるゲージが上昇していく。つまるところこれは、有馬が今、どれだけ酔っているかを指すゲージである。そして、このゲージが満タンになった時、有馬の身に何が起こるのかはだいたい察せるだろう。「酔い潰れちゃって夢の中」である。
それと共にゲームは終了。それから先の辰巳の話を聞くことも叶わず、タイトル画面へと強制的に戻されてしまうのだ。なお、話を進めている途中の経過を記録(セーブ)することは不可能。そもそも、そんなシステム自体がない。もうひとつ言うならば、一度上昇した「酩酊度」を下げる手段もなし。
まさに1発勝負で乗り越えるしかないのだ。この辺りの仕組みは、まさにローグライトといったところだ。「いや、1発勝負の要素だけがローグライトじゃないだろう」「酒を飲むことしかやることがないじゃねえか」と思うかもしれないが、ご安心いただきたい。ランダム要素と戦略要素もバッチリだ。
ランダム要素は辰巳から出される酒。これがプレイするたびにランダムで変わるのである。酒の種類も多く、それぞれに固有のアルコールの強さが設定。強さに応じて、酩酊度の上昇の仕方が変わる。
これもあって、時と場合によっては1杯目から酩酊度が急上昇するようなことも起こり得る。そのため、攻略には運が強く絡むのだ。
そして、この酩酊度の急上昇を抑える対策として用意されたのが、戦略要素に該当する「水」である。前述したように有馬は、アルコールの吸収を抑制させる目的でペットボトル3本分の水を用意。これを酒を飲む前に「ごく…」とすれば、酒ごとの酩酊度の上昇をわずかに下げられるのだ。
ただし、3本飲んでしまったらそこまでである。補充?そんなスキもヒマもあらぬ。それもあって、どのタイミングで飲んで、飲まずにおくかの判断が重要となる。
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また、酒ごとのアルコールの強さにまつわる情報は、画面左下にある「メモ」へと記録されていく。これにより何回かトライ&エラーを重ねれば、これから飲もうとしている酒の強さが分かり、水を使用するかの判断もしやすくなる。しかし、1杯目から早々に強い酒が出てしまって酔い潰れ確定、みたいな事態を完全に防ぐことはできない。
なるほど、確かにローグライトかも……と、納得できたかと思うが、どうだろうか。
これらのシステムとルールを念頭に入れ、プレイヤーは酔い潰れずに話を聞ききることを目指すのだ。なお、最終的に8杯の酒を飲み切れば、酔い潰れ回避(ゴール)である。
宅飲みと男の子同士の会話にランダム要素が混じったことで、新感覚「BL(Boys Louge)」ゲームが爆誕した?
そんな本作だが、設定とは裏腹にローグライトらしさのある作りを大きな魅力とする。
とりわけ「出される酒が毎回ランダム」「酔いつぶれてしまったら最初からやり直し」「繰り返すたびに酒の情報がメモに記録されていき、次第に戦略的な判断がしやすくなる」3点は、遊んでみれば「確かにこれはローグライトっぽい……」となること請け合いである。
事実上のターン制を採用している点からすれば、ある意味ではローグライクとも言える。しかも、やることは戦闘ではなくて、会話しながらの宅飲み。設定的な異色さもあることから、「こういう発想もあるのか……」と感心してしまう側面もある。
面白いのが「Rogue」じゃなくて「Logue」と言えるゲームになっていることだろう。「Logue」は主に「話す」「論じる」といった意味を持つ英語の接尾辞だ。本作は、まさにそんな「話す」こともゲームの根幹のひとつになっている。そして、設定的には男の子たち……ボーイズ(Boys)が話し合うというものである。
そのような特徴と設定も相まって、本作は「ボーイズローグ」と表しても不思議ではなさそうなゲームになっているのである。まさに新たな「BL」の略称にできるゲーム爆誕といった具合である。「こじ付けすぎないか?」「なんかちがくね?」と思うかもしれないが、何度か遊んでみれば、次第にそうと言えなくもなくなってくるはず!
とにかく、気になるのなら「迷わずやれよ、やればわかるさ」である!
単純にローグライト(ローグライク)として見ても、覚える要素の少なさと、取り組むこと自体の難易度がそれほど高くないことから、ジャンルの一端を知るゲームとしての魅力を持つ。また、詳しくはプレイしてのお楽しみだが、周回に要する時間も短い。スムーズに進めば、だいたい10分以内にはクリアできてしまう設計となっている。
それもあって、最初からやり直しになっても苦になりにくい。この遊びやすいバランスが確立している点から見ても、ジャンルの一端を知る作品としては最適な仕上がりと言ってもいいだろう。
そして、遊びやすいとは言うものの、ちゃんと油断できない手ごわさも持つ。そもそも、何の酒が出てくるかが毎回ランダムゆえ、時折、事前に立てていた戦略が木っ端みじんになることがワリとある。おまけに本作は、1周したらそれで終わりにはならない。さらなる展開が用意されているのだ。もちろん、そこでは新たなストーリーも描かれる。
ストーリーに関しても、相手の辰巳の発言にはいろいろと「おいおい……」となってしまうこと請け合い。そして、完全な形で本作を終えた時、アナタは真の「BL」を知ることになるだろう。いや、それよりも前に「BL」を知ることになるかもしれない。
……そういう訳なので、苦手意識があったりする人はご注意くださいませ。
一応、軽め(ライト)なんですけどね。
ただ酔い潰れないことを耐え抜くだけなのに、不思議な味わいとやり応えを持った良作
ここまでピックアップしてきたスクリーンショットからも明らかだが、グラフィックはすべてをドット絵で描写。水を飲んだ時に挿入されるスチル(1枚絵)にしても同様だ。それもあって、どこか懐かしい雰囲気を醸し出しているのが見どころとなっている。
表情の変化をはじめとする細かい描写も必見。特に有馬は「酩酊度」に応じ、少しずつ赤くなるという差分を用意している。その微かな変化を見るだけでも、グラフィックに対する熱の入れようが伝わってくるだろう。
なお、念のためだが、有馬が赤くなりすぎてレッドアリーマーになっちゃったりするようなことはないのでご安心いただきたい。……すみません、言いたかっただけです。
総じて手軽に遊べながら、ちゃんと手ごたえも得られる小粒ながらも侮りがたいゲームに仕上げられている。ただ、運要素の強さは賛否が分かれるところ。実際、最初に出される酒によっては、あっという間にゲームオーバーを迎えてしまうような事態も普通に起こりうる。それを受け入れられるか否かで、本作に対する印象は大きく変わるだろう。
筆者個人としては、欲を言うならもう少しボリュームがほしかったと思うところもあった。また、会話のテンポが総じて良好であることから、スキップ機能(ボタン)はカットしてしまっても問題がなかったように思える。
少々、難点を挙げてしまったが、仕上がりは盤石だ。この一見、2人の男性が会話劇と宅飲みをするだけの内容で、実はちゃんとローグライトしている作りは体験の価値大いにあり。ローグライク、ローグライトというジャンルの一端と特色を知るタイトルとしても優れているので、興味があればぜひ。そして、最後に大事な一言を。
お酒は20歳になってからですぞ。(※以上、下戸のザレゴトでした)
[基本情報]
タイトル:『今日こそは_酔い潰れない_絶対に!』
作者:街八ちよ
クリア時間:5分(1周)、30分以上(エンディング目的)
対応プラットフォーム:Windows、ブラウザ
価格(税込):無料
◇ダウンロード・プレイはこちら
・ノベルゲームコレクション
https://novelgame.jp/games/show/11079