食いしん坊騎士のドカ食い大冒険!?まんぷく系アクションADV『ビュッフェの騎士~極上の一品を求めて~』

アクション,インディーゲーム

「ビュッフェ」(buffet)。フランス語で「飾り棚」を意味する単語だ。そして、その棚(もしくは台)に料理を並べ、各自が好きな料理を選んで取り分け、食べるスタイルのことである。

日本だと「バイキング」と似ているが、定義と特徴は異なる。詳しく解説すると長くなるので簡潔にまとめるが、ビュッフェは立食およびセルフサービス型の食事形式。バイキングは食べ放題のセルフサービス形式の食事を指す感じだ。

また、言葉の発祥も「バイキング」は日本で、和製英語でもある。

つまるところ、この『ビュッフェの騎士~極上の一品を求めて~』は、立食を基本にあれこれ食べまくるゲームということである。ただ、なんでもかんでも食べられるので、実質「バイキング」と言える……かもしれない。

なお、食べるに当たっては基本、吸い込むだけである。
「なんかどこかで聞いたような……?」と思ったかもしれないが、詳しくは後ほど。

王国中の食べ物を強奪した大悪党を倒すべく、なんでも吸い込んで食べちゃう騎士が立ち上がる!

改めて本作、『ビュッフェの騎士~極上の一品を求めて~』は2025年3月7日より、Steamで販売中のWindows PC向けアクションアドベンチャーゲームだ。

元は2021年にフリーゲームとして配信された短編アクションアドベンチャーゲーム『ビュッフェの騎士』で、その内容を大幅に拡張し、パワーアップさせた作品となる。

舞台となるのは「グルメ王国」と呼ばれる国。ある日、「この世界に普通の食べ物は要らない」と豪語する大悪党「デーモンシェフ」が王城を襲撃。「神の味」と呼ぶに相応しい料理を作って、頂点を教えてやると宣言し、国中の食べ物を奪い去ってしまった。

この横暴にブチギレた国王は、着任して間もない近衛騎士で、幼い頃より神の味を探し求める主人公「ビュッフェの騎士」にデーモンシェフの討伐を命ずる。かくして、国中の食べ物を取り返すための冒険が幕を開けた!……というのが本作のオープニングである。なんだかこれもどこかで聞いたようなあらすじだが、“今は”気にしてはならない。

アクションアドベンチャーとしては、見下ろし型(トップビュー)のマップを移動しながら探索、戦闘といったイベントをストーリーに沿ってこなしていく伝統的な内容となる。最終目標は前述の通り、デーモンシェフの討伐。

しかし、デーモンシェフの居城と書いてレストラン「デーモンタワー」は、彼に「お呼びじゃない客を止めろ」と料理をドッサリもらって依頼されたドラゴンが通せんぼしていて、内部に突入できない。これに対抗する手段はただひとつだ。同族たるジャグリングが得意なドラゴンをけしかけ……って、できるか!彼は今、きさらぎ駅か静岡県だ!

目には目を。歯には歯を……料理には料理を!5つの「伝説の食材」を集め、究極の料理を作ってドラゴンに食べさせ、こっちに引き入れる!

そんな訳で、本編では5つの食材を手に入れるため、グルメ王国の各地を冒険していく形となる。なお、食材がどの土地にあるかはマップに表示。次にどこへ向かえばいいか右往左往する心配もなく進めていける、親切設計となっている。

また、プレイヤーのアクションは移動と吸い込み、そして吸い込んだものを吐き出すことによる攻撃が基本。いよいよもって、気にせずにはいられないが、概ねそういうことだ。本作は某レジェンドと、某はるかぜの成分を含むアクションアドベンチャーである。主人公の“まんまるな”容姿からして「お察しください」という感じだ。

だが、システム全般は大きく異なる。ひとつに吸い込みだが、敵は対象外。厳密にはある程度、本編が進むと可能になるのだが、基本はマップ上の草花、倒した敵の残骸が吸い込める対象となっている。そして、これらの吸い込んだ“モノ”は胃袋に蓄えておくことが可能。

本作には胃袋の概念が存在し、この容量に応じて複数のモノを蓄えておけるのだ。蓄えたモノはそのまま、攻撃のために吐き出して使える。要はモノすなわちピストルでたとえるところの弾丸で、胃袋は弾倉。言うなれば本作の戦闘は、ファーストパーソンシューター(FPS)およびサードパーソンシューター(TPS)っぽい感じなのである。

さらにゲームが進むと「アビリティ」を獲得。蓄えたモノを使って回復行動を取ったり、爆弾を作り出したり、身体を軽くするといったことができるように。この能力を駆使して謎を解いたり、行動範囲を広げるといった展開も用意されている。

ほかに本作にはモノを吸い込むと「グルメポイント」なる経験値を獲得。それを消費する形でステータスのレベルアップも図れる。レベルを上げれば吸い込めるモノの種類を増やしたり、胃袋の容量を拡張させることもでき、より大胆な行動がとれるように。これ以外にも吐き出し方に変化を付ける「秘伝の技」「アクセサリー」といった要素もある。

見た目は某レジェンドで、某はるかぜの色合いが強い。前者もキーアイテム回収を軸に展開される本編と、ダンジョンの存在が殊更にその印象を際立たせる。しかし、実際は意外にも味は別物。オマージュと見せかけた独自性の高い作品になっているのだ。

元ネタ臭バリバリの見た目やネタとは裏腹に肝心の味は別物。意外な独自性に舌鼓を打つ!

そして、本作の魅力もオマージュと見せかけて独自性の高いその内容にある。

「ああ、これは某レジェンドと某はるかぜの合いの子か」との先入観を持って遊ぶほど、「あれ?思ってたのと違うぞ……?」と、いい意味で裏切られるのだ。

最も違いを感じさせられる部分は、吸い込みのアクション。「なるほど、敵を吸い込んでそれを吐き出して攻撃か」と、思いきや。実際は腹(胃袋)に溜め込み、それを弾の代わりに活用するFPS/TPSっぽいスタイルになっている。

「アビリティ」で胃袋に溜め込んだモノを変換し、特殊な行動を取るシステムもまた然り。それらの変換が、胃袋にモノを溜め込んでいなければできない仕組みも、どこかRPGを思わせるものになっている。回復行動を取るアビリティはその象徴。そもそも本作、ストック可能な回復アイテムが存在しない。任意で回復したい時は、専用のアビリティを使うしかないのだ。

このように吸い込んだ対象をさまざまな形に転用する攻略が試されてくるのは、まさに本作ならではといった感じだ。仕組みはソックリだが、想像するのとは違うのである。

また、キーアイテム入手のために挑むダンジョンマップの仕組みもだいぶ違う。おそらく、某レジェンドを知る人なら、途中で新アイテムが手に入って、それを用いた攻略(謎解き、ボス戦)へとシフトする展開をイメージすると思われる。

だが、実際はダンジョンクリアでキーアイテムと一緒に新アイテム(アビリティ)が手に入る構成。さらにアビリティの多くは、ダンジョン内の仕掛けに由来。

つまるところ、ダンジョンをクリアするたびに、主人公はそのダンジョンに存在した仕掛けを自由自在に扱えるようになるというワケだ。仕掛けを自分のものにし、探索範囲を広げていくのを本作は基本としているのである。

それもあって、某レジェンドを知る人ほど「思ってたのと違う!」となること確実。純粋にアクションアドベンチャーとしても、ジャンルの定石からややズレていて、懐かしいようで新鮮な心持ちにさせてくれる。

まさに「ダンジョンを食べる」かのような感じ。少々変わった攻略する楽しさと達成感が味わえる作りになっているのだ。

ほかに戦術面にも若干のシューティング性がある。そもそも、接近して攻撃する手段が一切ない。相手との間合いを考えながら立ち回るのが基本で、某レジェンドとはだいぶ違うのだ。

▲ちなみにホンモノのシューティングゲームもミニゲームとして用意されている。

そんな訳で本作、もし興味を抱いたのなら、ぜひ先入観維持の上でプレイしてみていただきたい。「きっとこうだろう」「こんな展開になるんでしょ?」との思いが、とてもいい感じにひっくり返される。同時に「吸い込む」アクションと、アクションアドベンチャーのジャンルとしても独自性のある作品だと実感させられるだろう。

もし、触りの部分を確かめたい興味を持ったなら、無料の体験版もあるので、そちらから始めてみるのがオススメ。しかも、セーブデータは製品版にそのまま引き継げる。最終的にどんな冒険とストーリーが楽しめるのか。気になったなら、製品版にゴーだ。

児童向け作品っぽく見せかけた闇の深すぎるストーリーも見逃せない、衝撃の意欲作がここに!

なお、本作はストーリーも魅力のひとつとなっている。とは言え、前述したオープニングの感じだと、勧善懲悪の冒険活劇のように見える。

世界観も舞台となるグルメ王国の住民たちはみな、食べ物を擬人化した面々。どことなく児童向けアニメっぽい雰囲気を醸し出している。

▲作中で何度か浮上する「神の味」とは……

だが、実はそこも「思ってたのと違う」部分なのだ。詳しくは5つのキーアイテム、そして本筋から外れたところにある「妙なアイテム」をすべて回収し、デーモンシェフの待つタワーへと突入せよ。「あんぐり」となってしまうはずだ。

ちなみに本作には3+α種類のエンディングが用意されている。前述した展開は、その中で最良のものに当たり、作中で語られたさまざまな伏線が回収される見所満載なものとなっている。だが、その伏線回収にもおそらく「あんぐり」となってしまうだろう。例によって、詳細はその目で見届けていただきたい。

「闇が深すぎる!」となることをお約束する。

そのほか、ボリュームはエンディングを目指すだけなら5~6時間、ベストエンディングの到達を狙った場合は10~12時間ほどとなる。規模的にはほど良い物量だ。やり込み要素も食べ物図鑑、隠しアイテム探し、そして引き継ぎありの2周目と充実。コンプリートも含めれば、そこそこ長く遊べる内容で、十分お腹いっぱいになれるだろう。

総じて見た目はオマージュ、もしくはパロディなのだが、独自性の高さでプレイヤーの裏をかく作品に仕上げられている。ただ、マップデザインには道が繋がってそうに見えて実は繋がっていない、ショートカットが少ない(ファストトラベルもない)など、難もチラホラ。グラフィックも見た目は懐かしい感じなのだが、色合いの関係で仕掛けと地形の見分けがつきにくいといった視認性の問題がある。

そして、これは大変重要な情報ゆえにネタバレしてお伝えするが、敵の一部に「黒光りするアイツ」がいる。しかも、前述の食べ物図鑑で……あとは察していただきたい。一応、デザインはデフォルメされているが、苦手な人なら確実に応えるのでご注意を。ただ、頻繁に出てくるわけではないので、安心していただきたい。ごく一部のエリアだけだ。

そんな要注意事項もあるが、なかなか面白くて印象に残るものに仕上がっている。一連の特徴に関心を抱いた人はもちろん、アクションアドベンチャー好きなら要チェックの良作だ。「至高の料理こそ絶対」な思想の大悪党から食べ物を取り返して、王国の住民たちの食卓を豊かにしよう。食べて食べて食べまくろう。

ご安心あれ。我らがビュッフェの騎士の胃袋は宇宙だ。

[基本情報]
タイトル:『ビュッフェの騎士~極上の一品を求めて~』
開発:Nowis-337 Games(※販売:KOMODO)
クリア時間:5~6時間
対応プラットフォーム:Windows
価格(税込):999円

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