フリーゲーム『IMPERIALIZER』(インペリアライザー) ゼロから長年かけて作り込まれた理想の戦略SRPG ここにあり!

シミュレーション,フリーゲーム

理想の戦略シミュレーションRPGを作りたい」それも既存の制作ツールでは実現しえない独自仕様かつ数十時間遊べるボリュームで! さらにゲーム制作初挑戦でイチからプログラミングを勉強しながらシナリオ、グラフィック、音楽等あらゆる分野を手がけての個人制作……少しでもゲーム制作をかじった経験のある者なら誰もが非常に難しい挑戦と感じることでしょう。

今回は、そんなゼロから作り込む大規模プロジェクトを2014年から2024年まで約10年かけて一人で最後までやり遂げ、完成にこぎ着けた理想の戦略シミュレーションRPG『IMPERIALIZER』(インペリアライザー)を紹介させて頂きます。DXRuby製で、制作者は渡鳥之氏。行動力を表すアクティブゲージ(AG)が溜まった順に敵味方が入り乱れて動くアクティブターン制と、六角形のマス目で組まれたへクスマップ制が主なシステムとして採用された作品です。

imperialize(帝政化)を推し進める、戦時下のパリシア帝国第二皇女の物語

ある大陸の北西部にて六大国家が争い合う「ラグメル」と呼ばれる地域を舞台に、中央に位置する「パリシア帝国」の皇帝ゼノンが “六大国家を統一して帝国が全ラグメルの宗主となる“「ラグメル統一論」を掲げて大陸中を巻き込む巨大な戦乱を巻き起こしていました。そんな戦時下のパリシア帝国における第二皇女「ラウフェイ」が本作の主人公であり、帝国皇族としてこの六大国家間の統一戦争と向き合う物語になります。

ラウフェイが皇帝の命を受け帝国西部・イールズ辺境伯領へ向かう場面から物語は始まる

本作はSRPGですが、ステージ出撃前後にRPGのように拠点マップを自由に探索して情報収集を行ったり装備を整えたり仲間と会話して交流したりする「クエストモード」と呼ばれる場面があります。1990年代の『ロマンシングサガ』シリーズや『ファイアーエムブレム』シリーズ等を彷彿とさせる懐かしく美麗なキャラドット絵や立ち絵、音楽などは、すべて渡鳥之氏による自作です! クエストモードを通してラウフェイ皇女を操作して回ることで、帝国の第二皇女視点で物語に没入しやすいつくりとなっています。

イールズ辺境伯レプナード卿の姪、メルファーク。見知らぬ辺境伯領へ移り住んだラウフェイにとって同年代の大切な友人だ
時には重要な選択を迫られることも。プレイヤーは王道、覇道どちらのラウフェイ皇女を演じても構わない

独自性あふれる戦闘システムが生み出す奥深さを体感せよ!

本作はアクティブターン制とへクスマップ制が採用されていると冒頭で述べましたが、敵軍と戦闘を行う「戦術マップモード」では他にも様々な独自仕様の数々でもってシステムが構成されています。その独自仕様の代表例として「射程ゼロ」の概念があります。以下の画像をご覧ください。

リザードガードのベオグライが、山賊ゲーベンスと同じへクスに入って重なり合った状態で近接攻撃を仕掛ける場面です。本作の近接攻撃は射程ゼロで行われます。射程1以上は間接攻撃扱いになります。一般的なSRPGの射程(射程1が近接攻撃、射程2以上が間接攻撃)に慣れていると、なかなかピンとこないかもしれません。最初はこういうシステムと割り切ってゲームを進めていただくのがいいかと。進めるうちにシステムを理解してくると、この射程ゼロがとても優秀なシステムであることがわかります。

一言で表現すると「攻めやすく守りにくい」のです。以下の画像のように、守りが堅いユニットを橋の上など狭い場所に陣取らせて敵を渋滞させる戦法はSRPGの定番です。しかし橋の上を守るユニットは4体の敵から射程ゼロで重なって集中攻撃を受けてしまいます。逆に後ろにいる味方ユニットは、橋の向こう側にいる敵へ射程ゼロで重なって立て続けに近接攻撃を仕掛けられます。射程ゼロの概念があるだけで、敵の攻撃を受け止めるよりも積極的に攻め込む方が有利になるゲームバランスへ様変わりするのです!

射程ゼロが近接攻撃の本作においては、前衛ユニットを支える後衛の味方ユニットのサポートが重要となる

斬・打・突・射といった特定の攻撃属性に反応して攻撃をガードする盾の存在も本作の特徴です。こちらが盾を使う場合は敵がどの攻撃属性で攻撃してくるか予想して盾の防御モードを変更。その予想が的中すると受けるダメージを大きく軽減できます。一方で、こちらから盾持ちの敵に攻撃する時は攻撃を防がれないように攻撃属性を工夫する必要があります。この攻撃属性の読み合いに思考を巡らせるのが楽しく、本作の戦闘の面白さの一端を担っています。

戦闘シーンはクエストモードのキャラ歩行ドット絵を拡大したグラフィックで臨場感たっぷりに動いて演出される。盾持ちの敵を効率よく倒すための戦術は多種多様に用意されており、それを見つけ出すのも醍醐味の一つだ

本作の戦闘独自仕様すべてを挙げるとキリがないため、あと一つだけご紹介します。飛行ユニットは射程ゼロの近接攻撃を受けず、敵からの攻撃は間接攻撃しか届きません(自分から攻撃して反撃される場合を除く)。空を飛んでいるのだから近接攻撃が届くわけがないという、ある意味で当たり前といえるリアリティを細部まで作り込んだシステムでしっかり表現できている事例といえるでしょう。

天馬騎士ティーノ。近接攻撃を受けないため、積極的に前線へ出て戦いやすい。上記マップの場合、間接攻撃武器を持つ「!」印が付いた敵一体からのみ攻撃される可能性があり「×」印の敵三体からは攻撃されない

育成方針の自由度が高く、ユニット運用幅が広い!

本作は純粋に戦闘が楽しいだけでなく、育成もやり応えのある充実したものになっています。特筆すべきは「捕縛」システム。本作にはHPと別にもう一つ生命力を表すLPの概念があり、HPが0になると続けてLPがHPと同様にダメージを受けて、さらにLP0でそのユニットは死亡します。そこで敵ユニットを死亡する寸前まで弱らせてHP0、LP1以上の戦闘不能状態にすると、その敵を捕まえて持っている装備をまとめて入手できるのです。有用な装備はそのまま自軍で使えますし、いらない装備は売却して軍資金の足しにできます。一方でLP0にして敵を撃破すると経験値がより多くもらえるようにもなっており、戦闘不能にして捕縛するか…それとも撃破して経験値とするか嬉しい悩みが発生するシステムです。

実際に捕縛している場面。高価なもの(精霊石など)を入手できると嬉しくなる

味方ユニットは一部の専用武器を除いて原則すべての武器・盾を装備できます。武器・盾や術に対してそれぞれ技能レベルが設定されており、この技能レベルが高まるほど攻撃力や命中精度が上がり便利な戦技・術を修得していきます。技能レベルの低い苦手武器は装備してもさすがに使いものになりませんが、逆に同程度の技能レベルであれば各プレイヤーの判断で初期装備から別の武器に持ち替えて戦っても良いわけです。武器種を変えれば使える戦技もガラリと変化するため、いろいろな武器を持たせてみたくなる非常に奥が深い要素となっています。捕縛で武器を手に入れやすいシステムと合わせて、各プレイヤー好みにユニットをある程度カスタマイズして育成できるのです!

傭兵ジャガーロウ。剣、槍、斧、鈍器の4種類がいずれも得意で序盤から技能レベルが高く技能成長率も優秀なため、武器を持ち替えて戦わせたくなる面白いユニットの筆頭。ちなみに、筆者のお勧めは彼に戦斧(バトルアクス)を装備させる攻撃的な運用だ
帝国宮廷術士メルファーク。水属性の術を扱えて、精霊技能レベルが上がれば次々と新たな水術を修得して運用の幅が広がっていく。術士はどんな術を覚えるか期待しながら育てるワクワク感が楽しい

充実のゲーム内ヘルプ機能とトレーニングモードで、初めてのプレイも安心

ここまで紹介したシステムだけでも「複雑で覚えるのが大変そう」との印象を抱いた方もいることでしょう。ご安心ください! 本作はゲーム内ヘルプ機能がこれでもかと充実しています。マウスカーソルを合わせると赤枠が出る項目は、そこでマウスホイールをクリックすれば、すべてヘルプ参照が可能です。もしヘルプの文章が理解しきれない場合はトレーニングモードを活用しましょう。主人公ラウフェイ皇女と仲間になるユニット全員にトレーニング会話が用意されており、とても丁寧に各種システムを解説してくれます。

(左)ゲーム内ヘルプ機能 (右)トレーニング会話。ゲーム内情報で、ほぼすべてわかるように出来ている

「ゲーム内の情報だけでは足りない。攻略情報が欲しい!」という方は、公式のIMPERIALIZER 総合掲示板がプレイヤー間で活発に情報交換されており大変参考になります。手前味噌ですが、筆者も自身のnoteに攻略・感想記事をまとめております。

皇女として部隊を指揮し、ラグメルの地で繰り返される戦争を生き抜こう!

本作は独自性あふれる作品なだけあって、良くも悪くもSRPGマニア向けである点は筆者も否定しません。しかしルールを理解すればするほど、やり込めばやり込むほど新たな味わいというか楽しみかたが発見できます。細部まで徹底して作り込まれた非常にやり応えのあるゲームです。公称40時間~60時間と大ボリュームながら、例えば「1周目は王道寄りだったから2周目は覇道ラウフェイ皇女にしよう」「2周目はあのキャラに別の武器を装備させて育成してみよう」といった目的で周回プレイをするプレイヤーが続出しています。筆者もハマりにハマって1周目をクリアした後、すぐにでも2周目をプレイしたくなる衝動を抑えながら本記事を執筆しました。SRPGの戦闘が好きであれば幅広い層にお勧めしたい名作だと確信しています!

もし興味を持っていただけたなら、ラグメルの地に飛び込みラウフェイ皇女の立場で六大国家間の統一戦争の行く末を見届けてみませんか? 「理想の戦略SRPG」に違わぬ面白さを保証します。

[基本情報]
タイトル『IMPERIALIZER』(インペリアライザー)
制作者 渡鳥之(制作者様サイトはこちら
クリア時間 40時間~60時間くらい
対応OS Windows
価格 無料

ダウンロードはこちらから
https://imperializer.skr.jp/

  • 追憶(@reminder_89

    RPGツクール2000・2003をこよなく愛し、特にサイドビュー戦闘RPGが好みのレトロなフリーゲーマー。システム重視のRPGをよくプレイする傾向にありますが、RPGやSRPGなら幅広く手を出します。頭がバグっています。

    noteでフリーゲーム紹介や感想等まとめています:https://note.com/reminder_89