『Please, Don’t Touch Anything』押してはいけないボタンを押しまくる謎解きゲーム
『Please, Don’t Touch Anything』(お願い、何も触らないで)は、そのタイトルのとおり、押してはいけないボタンを押すPC向けインディゲームです。
「何も触らないでくれよ」と言い残してトイレに向かう同僚。プレイヤーの目の前には、赤いボタンとビル街の映し出されたモニター。ボクにその手を汚せというのか。
暗号を解読するような謎解きゲーム
実に"出オチ"な『Please, Don’t Touch Anything』ですが、その内容は謎解きゲーム。最初は赤いボタンが1つだけの操作パネルですが、押せば押すほどボタンやレバーがどんどん展開していきます。フタが開いたり回ったり、ドット絵のアニメーションで描かれるギミックは一見の価値アリ。チップチューンなサウンドも小気味よく、謎解きのシンキングタイムに花を添えています。
押せば押すほどボタンが増えて…こうやって押して…テーレッテレー!と、どんどん複雑になっていく操作パネルですが、やみくもに弄っても何も起こりません。ちゃんと正解の操作ができなければ、期待しているような"オチ"は見られないのです。不正解な操作をするとゲームオーバー、ということはないので、爆弾解除のようにジリジリすることもなく、総当たりでポチポチ押してしまっても大丈夫。
とはいえ、テキトーに押していてもまず正解にはたどり着けません。ヒントは壁に貼りつけられた意味深なメモくらいなので、なかなか大変。答えはすべて画面内にあるし、わかってしまえば「なるほど」と思えるのですが、気づかなければドン詰まりなので、難易度は高めかも。
四苦八苦の末、"正解"にたどり着くと、モニターに表示された都市に"何か"が起こります。概ね予想通りの"大変なこと"が起こるわけですが、その結末のパターンは実に15通り。さまざまなパターンの謎解きを繰り返し、すべての結末を目指すことが本作の目的になります。すべての結末の果てに、真のエンディングが待っているのです。
出オチの価値、好評のワケ
『Please, Don’t Touch Anything』はSteamにて498円。ある意味、「押してはいけないボタンを押す権利」を500円で売っているようなモノですが、ユーザーレビューではサムズアップ(高評価)が並び、総合評価は「非常に好評」(154件中の88%が好評:2015/4/3時点)となっています。みなさん、そんなにご自身の手を汚したいのでしょうか。
ユーザーレビューが好評な理由はカンタン。「押してはいけないボタンを押す権利」を500円で買うような人々がレビューしているから、です。このボタンを押したいという欲求に素直に従った人々が期待どおりの結果を得られたことで、サムズアップの行列が生まれている、というわけです。
まず、押してはいけないボタンを押す、という願望を叶えてくれます。イケないボタンを押したくなるのは人の性。わざわざ「押すな」と忠告してくれるのだからなおさらです。これが現実なら忠告に従うかもしれませんが、ゲームですからね。押してはいけないボタンをいくら押してもいい…こんなにうれしいことはない。
そして、赤いボタンとビル街の映し出されたモニターからは、誰しもが破壊的な結末を期待することでしょう。押せば押すほど予想外に展開する操作パネルから、予想外にムズかしい謎を解くと、予想どおりかそれ以上に破壊的で破滅的な結末が訪れるのです。プレイヤーの期待を外すことなく、それを超えてくれたりもする。だからこそ、好評なのでしょう。
どうみても"出オチ"の本作ですが、真のエンディングという本当の"オチ"があります。詳しくは書きませんが、このゲームに500円を払った人たちにとって、クスリとさせられるものだったはず。あの"オチ"を見て、思わず親指を立てたくなる気持ちは、とてもよくわかります。
ボタンを押せば何かが起こるということ
ボタンを押すと画面の中で何かが起こる、というのは、ビデオゲームそのものの縮図でもあります。ジャンプをするのもパンチをするのもボタン1つ。ボタンを押した結果として画面の中で起こることが、楽しかったり気持ちよかったりするのがビデオゲームというものです。
また、イケナイことができる、というのもビデオゲームならでは。人の頭に向けて引き金を引くのも、運転席から引きずりおろして自動車を奪うのも、現実ではやっちゃイケないことですが、ゲームの世界だからやり放題。どうみても怪しいボタンを押すのも自由、結果なんか知ったこっちゃない、というわけです。
といっても、ボクは『Grand Theft Auto』でも信号を守ってしまう小心者なので、今回もボタンを押せずにしばらくぼんやり眺めていたわけですが…。
そんなわけで『Please, Don’t Touch Anything』って、実はビデオゲームの縮図なのかもしれません。さすがにそれは言いすぎかもしれません。ともあれ、操作パネルに並ぶボタンをポチポチ押しまくれるゲームです。コーヒーでも片手に謎解きと洒落込み、世界を崩壊させてみるのもよいのではないでしょうか。
[基本情報]
タイトル Please, Don’t Touch Anything(日本語版あり)
制作者 Four Quarters
クリア時間 最低でも1時間くらい
対応OS Win XP/VISTA/7/8
価格 498円
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2015/11/4 追記:iOS版が出ました。価格は600円です。
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