スマホ向けアドベンチャー『彼女は最後にそう言った』。同じ時間をループして、悲劇の真相を突き止めろ。

アドベンチャー,スマホゲーム,フリーゲーム

今回は、スマートフォンで遊べるフリーのアドベンチャーゲーム『彼女は最後にそう言った』を紹介する。本作の制作を行ったSYUPRO-DXは、過去作としてAppStoreのRPGカテゴリ・アドベンチャーカテゴリで1位となり、小説化もされたスマホゲーム『あなたってよく見るとドブネズミみたいな顔してるわね』や、「王道現代RPG」というジャンルを掲げてリリースされた『奴は四天王の中で最も金持ち』など、一目見て印象的なゲームタイトルを持つ作品を送りだしている。

そんな印象的な作品を送り出してきた制作団体の新作は、時間ループアドベンチャー『彼女は最後にそう言った』。本作の魅力は、丁寧な作りこみの伺えるドット絵と音楽。そして、短編小説のような感動を味わえる物語と、かつての友人の死の真相を突き止めるという探索アドベンチャー要素が絡みあうという点だ。
果たして、ゲームタイトルにもなっている『彼女は最後にそういった』の意味とは…?さっそく、本作の魅力を紹介していきたい。

彼女の死から数年後、故郷の村で真相を突き止めろ!

本作の主人公である少年・シンタローは、中学の時に「ある出来事」を体験し、高校を卒業してからは故郷の「待宵村」を離れ、都会で暮らしていた。そんな彼が久しぶりに故郷へと帰ってきた8月14日は、村の祭である「うたかた祭」が開催されていた。その日、シンタローのもとに届いたのは、中学の頃に同級生だった少女「ナナミ」の手紙だった。

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久しぶりに故郷の村に戻ってきていた主人公・シンタローのもとへ届いた、ナナミからの手紙

しかしシンタローは、この手紙に疑問を覚える。なぜなら同級生だったナナミは、中学時代にすでに亡くなっていたからだ。故人である彼女から、なぜ手紙が…?疑問を抱きながらも祭へと向かったシンタローは、そこでかつての友人とも再会する。

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高校へと進んでからは友人たちとの連絡を絶っていたシンタロー。その理由とは…

祭の夜、待ち合わせ場所でナナミは現れず、かわりに天狗の仮面をつけた謎の人物に遭遇する。そして、いつの間にか眠ってしまうシンタロー。目が覚めると、そこは昨日と同じ8月14日の祭の日だった。死んだはずのナナミからの手紙、村の祭と縁が深い「天狗」の姿をした謎の人物、そして繰り返される祭の夜。久しぶりに戻ってきた故郷で不思議な体験をしたシンタローは、ナナミの死から数年後のいま、「事故死」という形で解決していた彼女の死の真相を突き止めるための調査を決意する。そして、シンタローや同級生たちの、止まっていた時が動き出す…。

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天狗の仮面をつけた謎の人物に遭遇するシンタロー

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祭の夜、8月14日でループしてしまう時間

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様々な不思議な出来事を経て、ナナミの死の真相を探す決意をするシンタロー

本作は、ナナミの名前で届いた「謎の手紙」から物語が始まり、ナナミの死の真相を探していくことが目的となる。情報収集の方法は、基本的に村の中を探索し、村人に話を聞いて進めていく。一度聞いた情報は、ゲーム画面下の「キオク」を選択することで、メモのような形でいつでも見返すことが出来る。また一度会った人物も記録され、同じく「ジンブツ」で人物情報を見ることが出来る。村を探索し、ヒントの情報を参考にしながら、ナナミの死の原因を調べていこう。

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「キオク」や「ジンブツ」のメニューでは、一度知った情報をいつでも見返すことが出来る

調査の過程では、本筋と関わりの薄いサブイベントのような存在である「お願いごと」も発生する。こちらはゲームクリアには必須ではないが、バリエーションに富んだイベント内容がそろっているので、シリアスな本編の息抜きにこちらを進めてみるのもオススメだ。

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「お願いごと」には、「自称勇者の男のために「聖なる剣」を探せ」「廃れてしまった死語を使う「死後部」のメンバーを見つけろ」…など多種多用だ

かつての仲間と、明らかになる真実。シンタローを待つ結末は…

本作の魅力は、繰り返される同じ時間の中で、ナナミの死に関する様々な事実を明らかにしていくという探索要素ももちろんのこと、物語面も先が気になるものとなっているところだ。今回は、そんな魅力あふれる本作の物語をハイライトで紹介しよう。

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時間がループしていることを知ったシンタロー。まず七海の身近だった人に調査を行う

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お寺の息子「サクラバ」、花屋の娘「ツグミ」、地元の名士の一族である「クジョー」。中学の頃に学級委員だった「ミヤコ」。中学時代の友人たちは、探索に当たって心強いサポートをしてくれる

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調査の途中には様々な村人が現れ、シンタローを助けてくれる

本作は、七海の死の調査だけでなく、数年という時を経て変わってしまった人間関係が描かれる。そして調査の途中で、その歪んでしまった関係を正しい方向に修正することも重要となってくる。

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クジョーを慕っていた後輩の「センゴク」。それがいまでは憎しみの感情をむき出しにしている。いったい、数年の間に2人の間に何が…

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シンタローに重い口を開くツグミ。彼女がずっと秘めていた話とは…?

本作は、死の真相を探るアドベンチャーとしての面白さだけではなく、こういった「数年の時を経た人間関係」が丁寧に描かれていることにも注目したい。数年の間に変わってしまったもの、そして変わらないもの…それらが絡み合い、七海の死の真相を紐解いていくことに繋がっていく。

『時間ループ』といえば、2000年代にはこういったテーマを扱った様々なビジュアルノベルゲーム作品が制作されてきたが、本作はスマートフォン向けの短編、そしてドット絵で作られたアドベンチャーゲームということで、筆者としては形式の新鮮さを感じた。物語の真相を解き明かしたい人は、ぜひともプレイしてほしい。

[基本情報]
タイトル 『彼女は最後にそう言った』
制作者 SYUPRO-DX(制作者様サイトはこちら
クリア時間 2時間~
対応OS iOS/Android
価格 無料

ダウンロードはこちらから
iOS版

Android版
Android app on Google Play

  • poroLogue(@poroLogue

    もぐらゲームス編集長。大学在学中にフリーゲームをテーマとした論文を執筆。日本デジタルゲーム学会・若手発表会にて「語りとしてのビデオゲーム(Videogame as Narrative)」を発表。NHKのゲーム紹介コーナーへの作品推薦、株式会社KADOKAWA主催のニコニコ自作ゲームフェス協賛企業賞「窓の杜賞」の選考委員として参加、週刊ファミ通誌のインディーゲームコーナーの作品選出、株式会社インプレス・窓の杜「週末ゲーム」にて連載など。

    フリーゲーム作者さんへのインタビュー・レビューなど多数。フリーゲーム歴は10年半ばほど。思い出に残っているゲームは『SeraphicBlue』『Berwick Saga』。