『王たちの同人誌』。同人誌を作り、即売会で戦う!10分で何回も遊べる「同人体験カードゲーム」。

アナログゲーム,カードゲーム

今回は「同人体験カードゲーム」と銘打たれたアナログゲーム『王たちの同人誌』を紹介する。このゲームは、テーマの通り「同人誌を作り、即売会で戦う!」という、珍しいタイプのアナログゲーム。そして数分でワンプレイが終わるというお手軽さが魅力だ。また本作は、ゲームとしての得点勝負の面白さだけでなく、原稿の作成から即売会での販売までを行うという、実際の同人活動をモチーフにしたロールプレイも可能な作りにもなっている。そのため、まるでゲームを通してみんなで物語を作っていくテーブルトークRPGのような要素もあるのが特徴だ。

なお、このゲームの制作を行ったサークル「辺境紳士社交場」の主宰である今野隼史氏は、かつてアマチュアコンテンツ作品のコンテストである「コンテストパーク」にて金賞を受賞した『今の風を感じて』など、RPGツクール製の名作フリーゲームRPGを数々送り出してきた「アルファナッツ」のゲームイラストも担当していたイラストレーターだ。

このゲームのテーマである「同人誌を作り、即売会で戦う!」とはいったいどういうことなのか?さっそく紹介したい。

自分だけの「同人誌」を作り、そして「即売会」の覇者を目指せ!

このゲームのルールとして、プレイヤーは「原稿フェイズ」「即売会フェイズ」の2つのフェイズを乗り越えていく。誰よりも得点の高い同人誌を作り、即売会でのさまざまなイベントを乗り越え、即売会の覇者である「壁サークル」を目指す!というわけだ。まずは、この2つのフェイズについて説明しよう。

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ゲームは、初めに「原稿フェイズ」から始まる。原稿フェイズでは、プレイヤーひとりひとりが順番に、①「同人カードを手札に加える」、②「手札の同人カードをひっくりかえす」、という2つの行動を選ぶことができる。まずは①から説明しよう。

①では、山札をめくり、同人カードを手札に加えていく。 同人カードにはそれぞれ得点が書かれており、即売会終了後には、持っている得点が高い人が勝者となる。また、同人カードの種類にはそれぞれ「表紙」「ジャンル」「要素」「名前」の4種がある。プレイヤーのうち誰か一人が4種類を揃えると、その時点で「〆切」となる。その後残りのプレイヤーが1回ずつ手番を行うと 「即売会フェイズ」が始まる。

②については、同人カードには色付きの面「光」と、黒色の面「闇」があり、面によって得点が変わってくる。同人カードが手札に入った時点では「光」面だが、即売会フェイズで使用するカードの中には、同人カードの向きをひっくりかえす効果を持つものもある。そのため、なるべく高い得点を持つ向きを維持するのがポイントだ。

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原稿フェイズでは、プレイヤーが順番に「同人カード」を引いていく。カードごとに特徴を現したテキストが書かれており、それを眺めているだけで面白い。果たしてどんな同人誌ができるのだろうか?

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左が「光」の状態の同人カード、右がひっくりかえって「闇」の状態となった同人カードだ。得点が大きいほど、「闇」の向きになったときにマイナスの得点となるカードが多い。そのため「光」の向きを維持するのが重要となる

原稿フェイズで最初に原稿を完成させたプレイヤーは「早割」カードを入手できる。これは即売会フェイズで有利な効果を発揮することができるカードだ。「早割」とは、実際の同人活動で使われる同人誌印刷の割引サービスのことで、こういった実際の同人活動をテーマとしたカードがゲームに味を与えている。

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「早割」以外にも、勝者に与えられ、次回以降のゲームが非常に有利となる「壁」のカード、そしてなんとも博打のような効果をもつ「18禁」…などなど特殊なカードがあり、うまく使うことでプレイを有利にすることができる

原稿フェイズの次に迎える「即売会フェイズ」では、さまざまな出来事が記された「イベントカード」の山札をめくり、それらを乗り越えながら手札の得点を高めていく。プレイヤーの人数に応じた周回を終えるとゲーム終了となり、 得点の最も高いプレイヤーが勝者となる。勝者は「壁サークル」(※即売会での有名サークルという意味合い)の称号を与えられ、次回のプレイ時には大幅なプラス得点を持ってスタートできる「壁」カードを持って参加できる。

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即売会フェイズでは、イベントカードを引いていくことでプラス・マイナスのそれぞれの効果を持つイベントが発生する。それらは実際に即売会で体験できる嬉しい出来事や、ありがちなアクシデントなど「あるある!」と思えるイベントが揃っている

また、即売会フェイズでは、ゲーム開始時にプレイヤーそれぞれが1枚だけ持つことができる「切札」カードを使用することができる。この効果によって、逆転も可能となるのだ。

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プレイヤーがそれぞれ1枚だけ持つことができる切札カード。適切な場面で使えば有効に活用できる

実際に「同人体験」してみた

もぐらゲームスでこのゲームのプレイを行ってみたところ、このゲームの公式ページでも「運の流れと展開をみんなで笑う面白さに重きを置いたデザイン」と紹介されているように「つぎはどんな同人カードやイベントカードが出てくるだろう?」という、運の要素のワクワク感がなにより楽しいものだった。

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自慢の同人誌を作り、即売会を行うもぐらゲームスメンバーの図

原稿フェイズで同人カードを集めていくうちに、ゲームとして高得点を目指すのももちろんだが、ふと「同人誌として面白い要素の組み合わせはなんだろう??」と考え始めるようになる。また、イベントカードの内容の中には自然に話題が広がるものもあり、得点勝負だけではなく、コミュニケーションも楽しめるものとなっている。

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イベントカードでは、プレイヤー同士のコミュニケーションを生むようなものもある。得点勝負だけではないロールプレイを楽しもう

「同人体験」という独特なテーマを打ち出した本作『王たちの同人誌』。今回紹介したゲームの流れは、公式オンラインマニュアルでより詳しく公開されている。ワンプレイ数分で遊べるゲームなので、ぜひみんなでわいわい遊んでみてほしい。

[基本情報]
タイトル 王たちの同人誌
制作者 辺境紳士社交場(制作者様サイトはこちら
プレイ時間 10~20分程度
購入方法 製作者様サイトの販売情報ページにて掲載

  • poroLogue(@poroLogue

    もぐらゲームス編集長。大学在学中にフリーゲームをテーマとした論文を執筆。日本デジタルゲーム学会・若手発表会にて「語りとしてのビデオゲーム(Videogame as Narrative)」を発表。NHKのゲーム紹介コーナーへの作品推薦、株式会社KADOKAWA主催のニコニコ自作ゲームフェス協賛企業賞「窓の杜賞」の選考委員として参加、週刊ファミ通誌のインディーゲームコーナーの作品選出、株式会社インプレス・窓の杜「週末ゲーム」にて連載など。

    フリーゲーム作者さんへのインタビュー・レビューなど多数。フリーゲーム歴は10年半ばほど。思い出に残っているゲームは『SeraphicBlue』『Berwick Saga』。