「がんばりたくないから、がんばる」RucKyGAMES流・ゲームの作り方 RucKyGAMES×井上明人 対談 (後編・全3回)
RucKyGAMES氏×井上明人氏対談、後編です。いい話に突入していきます。果たして話はどんな方向に向かっていくのでしょうか。
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ちゃんとしてるんですよ、意外に
- RucKyGAMES
- 単純に作ってみたいというのもあるんですけど、一番の理由は自分が遊びたいからです。『MY NUMBER PLACE』も、iPhoneにあるナンプレ、数独系は操作がめんどくさくて。自分ならこうやるのに……じゃあ自分がつくればいいじゃん!と。自分が遊びたいから作ってます。
- 井上
- 純粋な動機なんですね。ときどき、すべての複雑なゲームをやる気が無くなった時に、ぼんやりフリーセルをやりたくなることがあるんです。
- RucKyGAMES
- わかるかも。
- 井上
- それで、iOS系でフリーセルでUIが良さそうなものをやってみたところ、RucKyGAMESさんだと知らずに入れていたのがこの『フリーセル』で。他の定番系を作っている人たちと比べても普通に上位に入りますよね。
- RucKyGAMES
- ちゃんとした仕事もできる感があって、嬉しいですね(笑)。ちゃんとしてるんですよ、意外に。見えてる世界だと「ゆるい人」とか、雑な……「変なゲームばっかり作ってる人」って思われてるんですけど……。
- 井上
- ちゃんとしてますよ、本当に。
- RucKyGAMES
- でも定番系のゲームも20本ぐらい作ってるから、「定番系作ってる人」って見られてもいいはずなんですけどね。『i大富豪』は、スマホで触っている人は結構いると思います。
- 井上
- コンプガチャ(的なもの)の仕上がりがいいのも見て思ったし、地味にきっちりした仕事をされてるんですよね。タイアップした時の対応をきちんと考えておられるところもそうなのですが、あ、普通にビジネスも考えてるんだ!っていう。
- RucKyGAMES
- ちゃんとしてない側面がクローズアップされすぎて、「あれでしょ、左右に振り分けるゲームしか作れない人でしょ」って言われたりとか……。よく言われるんですけど。
- 井上
- それは失礼な(笑)。
- RucKyGAMES
- まあ、あれがラクなんですけどね。
がんばりたくないから、がんばる
- RucKyGAMES
- 自分のゲームの作り方としては、ラクしたい気持ちが強く出ます。プログラムは極力負担を軽くするっていう組み方を頑張るんですよね。頑張りたくないから、なんですけど。
- 井上
- 「がんばりたくないから、がんばる」ということですね。
- RucKyGAMES
- グラフィッカーだと演出とか豪華にしたいんですけど、僕は「ここの見せ方をもっとラクにしよう」とかそういう提案ばっかりするんです。極力削った結果、今出ているものみたいな形になるんですけど。
- 井上
- …なるほど。
今の発言だけ切り取って聞くと、すごくこう……ゲーム会社にお勤めの優秀なプログラマーさんの発言っぽいですよね。
「やっぱ仕事っていうのはコストと効率性のバランスが……」みたいな発言っぽく聞こえるというか、ほぼ同じ内容のことをおっしゃられていますよね。
- RucKyGAMES
- ええ。
- 井上
- でも出現しているものがこれ、っていうのを見るとすごく……なにかこう、コストを切り詰めてミニマムなものを作りましたという話とはだいぶ違う何かのような…。
- RucKyGAMES
- 究極に削減した形がこれなんですよ(笑)。削減の仕方が半端ないんですよね。だいぶ削減しないと、自分の作れる範囲にこないので。そうすると、こうなっちゃう。
- 井上
- ゲーム業界系でコスト削減をするという話題で言うと、比較的小さな開発規模でゲームとして成り立たせるために、壮大なゲームデザインをどうシンプルに落としこむか、仕様や開発プロセスをどう省コストにおさめるか、という話ですよね。たとえば、『SIMPLE 1500』なんかは、開発コストをどれだけ切り詰めるかがよく考えてられていますよね。
- RucKyGAMES
- SIMPLEシリーズもぼく、好きでしたね。それをより、どんどん削った形ですね。会社っぽいことをしないだけでも、だいぶコスト削減にはなるんですけどね。仕様書、企画書、スケジュール組み、会議……そうやって、1週間~2週間持っていかれる時間でこっちは作っているので。
- 井上
- なるほど……。うーん、でも、たとえば、大規模開発では、作業工数を少なくして、開発コストの減らして作品をつくりたいということがありますよね。そういう場合、ブレストでたくさん仕様が挙げられて、どの仕様が重要かということを意思決定して、途中まで開発した部分も納期のために仕様を泣く泣く「これは仕方ない、削ろう」とやっていく作業のほうがどうしても多くなっていきます。
- RucKyGAMES
- はい。
- 井上
- でも、RucKyGAMESさんの場合は、どちらかというと、削るというよりは、作っていく途中で仕様を増やしているというのが、正確かなという印象なのですが……。
- RucKyGAMES
- ああ、まあ、そうですね。開発している途中に、「あ、これ入れたら面白そう」とか。最初決めた仕様がないので、何をもって増やすというか難しいんですけど。
- 井上
- 費用対コストを考えて仕様を絞り込んでいくのではなく、費用対コストを考えながら仕様を増やしていく、ということですよね。そのプロセスは、やはりアジャイルとか言われるものとも、大規模プロジェクトの効率的運用とは少し違う世界ですよね。
とうさん
- 井上
- つくられたもので、思い入れのあるものとかはありますか。
- 井上
- やめたきっかけというのは……会社を?
- RucKyGAMES
- そうですね。もともとは、DS向けに作ったんです。でも、「倒産ってテーマはちょっと……」って言われて。でもこれは、世に出したかった。当初の企画からは中身はだいぶ変わっているんですけど。
- 井上
- 当初の企画は、どんな感じだったんですか。
- 井上
- …その企画は、会社で通すのは難しいでしょうねぇ…。
- RucKyGAMES
- そういう流れですね。スマホ版だと、それを1画面で収めて表現してます。これは出したかった。前の会社から、「これ出していいですか」って許可を貰いに行ったら、「誰も作る人いないからいいよ」って言われて……
- 井上
- まあ、確かにそんな気はします……。それにしても、このセリフとかいいですよね。
- RucKyGAMES
- 「倒産で幸せになろう!」をテーマに、300個ぐらいセリフを考えたんですけど。このセリフを考えるのは本当につらかった……
- RucKyGAMES
- キャラクターも結構ちゃんとしてるんで、お気に入りです。10万DLぐらい、いったのかな。このテーマでそれだけDLされればいいかな、という。あんまり話題になると(倒産は)不謹慎とか色々言われちゃうし。
- 井上
- そうですね。50万DLとかいっちゃうと面倒なことも多そうですね。
- RucKyGAMES
- (ゲーム画面を見ながら)……倒産ってああいう字でいいんだっけ……?にんべんに至るって、変じゃないですか。
油断するとニートになっちゃう
- 井上
- リリースする日とか、決めているんですか。
- RucKyGAMES
- いや、決めてはないです。完成したら決めます。一週間でつくろうとか、そういう気持ちでやってる以外はないですね。
- 井上
- でも、それで次々出せているというのはすごいですよね。
- RucKyGAMES
- それは、自分を追い詰めているんですよ。仕事しなきゃヤバイよ、っていうプレッシャーとたたかってるんです。で、プレッシャーに負けて変なもの作ってしまうんですけど。
- 井上
- そのご発言は、今日お会いする前のイメージより意外にちゃんとしている……
- RucKyGAMES
- ぼく、ちゃんとしてる……(笑)。油断するとガチのニートになっちゃうのがわかっているので、必死に自分に制御をかけて生きてる感じですね。
- 井上
- 本気をだすと、一日中だらだら。
- RucKyGAMES
- しちゃいます。
- 井上
- どんな感じになるんですか。
- RucKyGAMES
- さっきも言ったんですけど、無双系とかが大好きなので、あれでただただ、時間が奪われるんですよね。簡単に1日20時間消費できてしまう。なので、それを避けるために今を頑張ってる!と。
- 井上
- 「無双系を起動してはいけない」。
- RucKyGAMES
- まあ、やってはいますけど(笑)。遊ぶ時間に制限をかけてはいますね。前の働いてた頃より、ゲームやる時間が減ってしまったのが悩みです。家にいるときは全部仕事になっちゃうので。
- 井上
- すごくわかります。
- RucKyGAMES
- 遊んでいる時間は仕事をしていない時間だとすると、いつ遊べばいいんだろうって。何かを削らないとゲームする時間がなくて、つらいです。
- 井上
- 前と今とでは?
- RucKyGAMES
- 今のほうが、ラクです。通勤しなくていいので。
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- 井上
- 本日は、色々と長時間お話をありがとうございました。なるほど、そういう世界が見えているんだ!という驚きがあって楽しく聞かせていただきました。これからも、作り続けて頂ければと思います。
- RucKyGAMES
- 適当にコスト削減しながら!変なものは自然に出ちゃうと思うので、ゆるく頑張ります。
3回にわたってお届けした対談、如何だったでしょうか?RucKyGAMESさん、井上明人さん、ありがとうございました!