指を動かすだけでも楽しいタッチアクションRPG『Severed』 片腕の女戦士が家族を取り戻す物語や、敵の四肢を奪う成長要素も特徴
『Severed(セヴァード)』は、カナダのインディーデベロッパーDrinkbox Studiosが開発したアクションRPG。2016年4月26日に海外でPlayStation Vitaにて配信された後、iOS、WiiU、ニンテンドー3DSに移植された。国内ではiOS版が7月28日に、10月6日にPlayStation Vita版の配信が開始。双方共に日本語にも対応している。
ダークファンタジーのような設定や独特な成長要素など、沢山の魅力を持ち合わせた今作だが、何よりも一番主張したい事は「指を動かすだけでも楽しい」こと。画面をなぞってザクザク敵を斬り刻み、撃退していく斬撃アクションの快感は格別なものがある。さっそく紹介しよう。
何者かによって家族をさらわれ、自身も左腕を斬り落とされてしまった女戦士のサーシャ。本作の大まかなストーリーは、そんな彼女が家族を取り戻す為、魔物が徘徊する奇怪な世界へと旅立つというものだ。
画面をなぞって敵を斬り倒す!直感的で爽快な戦闘システム
ゲームは一人称視点で前後左右に枝分かれした道を進み、マップを探索していく3DダンジョンRPGスタイルで展開。しかし、実際は3DダンジョンRPGの姿をしたアクションゲームとなっている。
それを象徴するのが今作の特色である『スワイプ操作』。iOSであればスマホやタブレットの画面、Vitaであればタッチスクリーンをなぞることで敵と戦う戦闘システムだ。短くなぞる『スラッシュ』、長くなぞる『ロングスラッシュ』の二つの技を基本に、目の前の敵の弱点を攻撃し、撃退していく。
指で画面をなぞり、敵を斬り付ける。この単純明快で直感的な操作が非常に気持ちよい。また、素早くスワイプすると連続攻撃になり、敵に文字通りの滅多斬りをぶちかます事もできる。それもまた大変気持ちよく、思わずムキになって画面をこすりまくってしまう楽しさがある。
そして、連続攻撃を展開し、敵に一切の行動を許さないまま倒す事ができた際には脳汁が「ドバッ」。ヒット時の効果音、エフェクトも派手さを追求した作り込みが徹底されており、何度でもこの爽快感に浸りたい気持ちにさせる中毒性を醸し出している。
敵もサーシャの的として、棒立ちしっぱなしという訳にあらず。
敵の体力ゲージを示すアイコン外周部の『アクションゲージ』が最大まで溜まると、サーシャに攻撃を仕掛けてくる。当然、そのまま受けてしまえばダメージだ。
だが、敵の攻撃が来る方向とは逆の方向にスワイプすれば、攻撃をはじき返し、無効化させる事ができる。なので、きちんと攻撃をはじく行動を心掛けれていけば、ノーダメージ撃破も狙える。攻める時だけでなく、守る時もスワイプ。そんな片腕の戦士という設定特有の立ち回りが求められてくるのも、この戦闘システムにおける売りの一つだ。
また、ゲーム開始間もない頃は1対1の戦闘がほとんどだが、ある程度進むと、前後左右に居る複数の敵を相手にする戦闘が基本となっていく。
そうなると、敵の行動(アクションゲージ)を読み取って対象を切り替える、戦略的かつ、スピーディな立ち回りが求められる。更にゲームが進むと、『目くらまし』、『チャージスラッシュ』などの新しい技をサーシャが習得し、より多彩な攻撃を仕掛けられるようになる。
敵もそれらの技を駆使しないと決定的なダメージを与えられない種類が出現する。なので、それまでの戦闘とはまるで異なる立ち回りをしなければならなくなる事も。このように、進行に応じて戦闘に変化を付ける工夫も万全で、直感的に楽しめる作りからは想像もできないような奥深さもしっかり演出されている。
ゲームを始めて間もない頃は基本的な技しか使えないので、底が浅そうな印象を抱くかもしれない。こういう戦闘が今後も続くのなら、徐々に単調なものになっていくのでは、と。だが、遊べば遊ぶほどにできる事が増えていき、戦闘の流れもうねりをあげるように変化していく。
特に複数の敵を相手にする戦闘では、今作の画面をフル活用する事への徹底したこだわりというものを実感させられるはず。同時に本当にムキになって、楽しそうに画面をこする自身のハマりっぷりにも気付かされるだろう。
敵の四肢を奪い取ってスキルを習得。ダークで生々しい成長要素
RPGという事で、成長要素も実装されているが、これもまた奇抜。戦闘で得られた敵の四肢をリソースとし、スキルを習得していく。
四肢は敵に攻撃を与える度に溜まっていく『フォーカスメーター』が満タンの際、敵にトドメの一撃を与えると発動する『切断モード』というクイックタイムイベントで入手する。入手方法は簡単で、対象となる敵の四肢をスワイプで斬るだけ。
しかし、制限時間があるので、素早く斬らなければならない。酷いと一つも手に入れられずに終わる…なんて事もある。そうして得られた四肢が一定量に達すると『スキル』習得ができるように。あとはメニュー画面を開き、十字マークが表示されたスキルのアイコンをタッチすれば、そのスキルがサーシャのものとなる。
後にも先にも、敵の四肢をリソースにしてプレイヤーキャラクターを強化するシステム、あったものではないだろう。そんな珍しさ、ダークな設定も相まって、異様な雰囲気を醸し出している。
『切断モード』で四肢の全獲得を狙うのも結構熱い。見事、ミス無く時間内に全ての四肢を斬り落とす事ができた際には、思わずガッツポーズしたくなる衝動に駆られてしまうほどだ。その独特の達成感はぜひ、実際に体験してみて欲しい。
また、四肢はフィールド上の壺を壊すと現れる『臓物』を回収し、変換を行う形で入手する事も可能。『切断モード』で上手く四肢を獲得できなかった際の補助アイテムの役割も果たしており、素早い操作が得意でないプレイヤーへもある程度、配慮している。
『スキル』とは別に、新たな装備を手に入れる事で解禁されていく技もある。先の『目くらまし』がその一例だ。そして、装備が手に入る度、メニュー画面でのサーシャの容姿も変化していくのだが、段々と怪物に等しい見た目になっていくのがなんともエグい。
家族を取り戻す為なら、化け物に成り果てでも成し遂げる。そんな彼女の強い意志を示す姿には、プレイヤーによっては心を抉られるような気持ちを抱いてしまうかもしれない。
アクションゲームさながらのテンポの良さと動かす気持ちよさ
本編は戦闘以外にダンジョンを始めとするマップの探索も行っていくのだが、難解な謎解きはほとんど無く、構造も入り組んではいない。戦闘も特定ポイントのみで発生し、勝利後には完全消失してしまう(二度とその戦闘が発生する事がなくなる)固定型シンボルエンカウントなので、非常にテンポ良く進む。その為、クリアに要する時間も大体5~7時間ほどと、意外と短めとなっている。
しかしながら、密度は非常に濃く、物足りなさは全くと言っていいほど感じさせない。また、『ハートの欠片』、『脳の欠片』と言った隠されたアイテムの回収、フィールドやダンジョンの未踏領域の制覇、トロフィーと言ったやり込みも完備。アイテムの中にはエンディングに変化を及ぼすものも用意されている為、自然と全回収を目指したくなる面白さもある。
難易度もプレイヤーの上達具合が反映されるアクションゲームらしいバランスでまとめられている。中盤以降、厳しい戦いが連続するようになるが、仮に負けてしまっても戦闘の直前から全ステータスが回復された状態でリトライできるので、ストレスが溜まる事もない。
また、上達次第で戦闘の早期決着を狙えるので、エンディングまで一気に走り抜けるタイムアタックのやり込みにも対応。ご丁寧にもセーブファイルにプレイ時間もしっかり記録されるので、やろうと思えばとことん突き詰められる余地も持ち合わせている。
他に独特のアートワークによって彩られたグラフィック、カナダで優れた音楽を讃えるジュノー賞にノミネートされた実績を持つ『YAMANTAKA // SONIC TITAN』によるプログレッシブロック全開の激しく、時に不気味な音楽も雰囲気作りに華を添える。
そんな様々な魅力を持つ本作だが、その特徴的な操作性ゆえ、液晶には指紋がベッチョリ付きます。遊ぶ際は必ず液晶に保護シートを装着し、クリーニング用のウェットティッシュを常備しておきましょう。
PlayStation Vita、iPhone、iPadをお持ちの方は是非、指を動かすだけでも楽しい斬撃アクションを楽しんでいただきたい。
[基本情報]
タイトル: 『Severed(セヴァード)』
制作者: Drinkbox Studios
クリア時間: 5時間~7時間
対応OS: PlayStation Vita , iOS , WiiU(※海外のみ) , ニンテンドー3DS(※海外のみ)
価格: ¥840(iOS)/¥1620(Vita)
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