4人編成コマンドバトルでボスラッシュに挑む戦闘特化ノンフィールドRPG『アストラルゲート』 周回で引き継げるのは知識と経験のみ、パターン構築が勝利の鍵!

RPG,インディーゲーム

複数のキャラクターのスキルや装備を揃えながら少しずつ強くなっていくパーティ制のコマンドRPGと、ゲームオーバーですべてがリセットされるローグライクRPG。いずれもRPGとして古典的でありつつお互い関わることはなさそうなゲームデザインだが、なんとこの2つを合わせたような異色のゲーム性を備えた作品が、今回紹介するRPG『アストラルゲート(ASTRAL GATE)』だ。

進行にランダム要素はないためその意味ではローグライクではないが、逆に言えば周回で攻略手順を詰めて行く“パターン構築ゲー”の側面もあるなど、なかなか他では体験できないユニークなプレイ感が見どころとなっている。なお本作は有償作品で、執筆時現在はSteamおよびDLsiteで購入可能だ。

選んだ敵を倒しながら進む戦闘特化ノンフィールドRPG

本作でプレイヤーが操作するのは、「どんな願いも叶えることができる秘宝が眠っている」と噂される遺跡にやってきた英雄達。具体的には9人の英雄から4人を選んでパーティを組み、遺跡の研究者を名乗る女性「アリシア」に導かれながら遺跡へと挑む。

この遺跡を研究してきたというアリシアに導かれ、英雄達は遺跡の攻略へと挑む
まずは9人の英雄から4人を選んでパーティ編成。各キャラクターは戦闘スタイルやおおまかな能力の傾向、初期習得スキルと習得可能なスキルを確認できる

ゲーム進行はノンフィールド方式で、各階層に固定で存在する複数の敵から戦う相手を選んで、階層ごとに指定された数を倒すと階層クリアとなり次の階層へと進む。全ての敵を倒す必要はないのがポイントで、敵ごとに用意された固有の撃破報酬、さらに敵のステータスや使う技、特徴的な挙動などを事前に確認できるため、欲しい報酬や今回選んだパーティメンバーとの相性などを考慮して戦う敵を見極めていくというのがプレイの定石となる。

そして開示された情報をもとに敵への対処法を考えつつ、実際に戦っていく。ゲーム開始後にまず訪れる第1層は小手調べといったところだが、次の第2層からいきなり、普通のRPGならクリアに必須ではない寄り道系ボスとして出てくるような敵では!?と言いたくなるような独自ギミックにも凝った敵が登場。また、HP/MPは敵を倒したときに30%、階層クリアで70%回復という仕様になっており、とくにMPはこれ以外での回復手段が非常に限られているためリソース管理も必要となっている。

開示されている情報をもとに戦う敵を選んでいく。画面左側では表示内容を切り替えることで敵が使用する技の効果も確認可能。攻略ネタバレを避けるためゲーム開始後すぐに見られる第1層の画面を掲載したが、次の第2層からいきなり、情報をしっかり読み込んで対策を考える必要があるような敵が登場する

このような形で進行し、全階層のクリアを目指すわけだが、途中で全滅するとゲームオーバー。次のプレイはまた最初からとなる。セーブは中断セーブのみで、「うまく進められたところまでをセーブしておいて途中から再開する」といったことはできない仕組みだ。なお初回プレイ時は完全一発勝負だが、2回目からは全滅した戦闘の最初からやり直すリトライが解禁される。リトライ回数はプレイを重ねるごとに増えていき、最終的に5回まで可能となる。

編成・キャラビルドの戦略とコマンドバトルの戦術、両面が試される

本作にキャラクターレベルの概念はなく、キャラクターのステータス上昇はゲーム開始時および階層クリアで得られるポイントを消費して装備品をレベルアップすることで行う。武器・防具・紋章・秘石という4種類の装備品に応じて上昇するステータスが決まっており、実質的に「ポイントのステータスへの割り振り」と考えてよいだろう。

戦力増強においては敵を倒すことで習得できるスキルも重要で、キャラクターによって習得可能なスキルが決まっている。また、敵を倒した際にはさまざまな効果のあるアクセサリ系の装備品も入手できる。とはいえ一定数の敵を倒せば自動的に次の階層へ進むため、習得したいスキルや欲しい装備品すべてを手に入れられるとは限らない

装備品をレベルアップするためのポイントも同様で、最終階層まで行っても全キャラの全ステータスを満遍なく上げるには全く届かない。誰のどのステータスを重点的に上げるかといった配分や、どんなスキルや装備品を揃えていくかの取捨選択という、育成戦略が試されるわけだ。編成するメンバーの選択も含め、自分なりに最適なパーティビルドを模索していくのが醍醐味となっている。

ポイントの割り振りによるステータスアップと、指輪・腕輪という2タイプのアクセサリ系装備品の装備でキャラクターの戦力をカスタマイズしていく

こうした準備を整えて実際に挑む戦闘も、緊迫感があるものとなっている。事前に情報があるとはいえやはり実際に戦ってみないと掴めない感覚もあり、また(一部の「そういうコンセプトの敵」を除き)敵の行動も完全にパターン化されているわけではない。さらに、全体的にこちらの耐久力に比べて敵の攻撃が激しめのバランスになっている。初見殺しにならないよう情報は開示したんだからいいよね?とばかりに本気で倒しに来ている印象だ。こちらの戦術を通すことと、敵の攻撃や妨害を凌ぐことの両立が求められる。

戦闘システム自体はオーソドックスなターン制コマンド選択型。敵のさまざまなギミックやバランス調整によりやり応えのあるものに仕上がっている

「TP」というポイントを消費して発動する、各キャラクター固有の「リミットスキル」の存在も本作の戦闘の特徴だ。TPはゲーム開始時に100あり、ごく一部の例外を除き回復することはない。また、9キャラクター中5人はリミットスキル発動でTPを100消費し例外的な回復手段の対象でもなく、つまりゲーム中に絶対に1回しか使えない。他のキャラクターも何度も使えるような調整にはなっておらず、文字通り限られた場面で使う“切り札”となっている。本作の(リトライがあるとはいえ)負けたらそこでゲームオーバーという仕様により、後のために温存するか、今を生き延びるため使ってしまうか……といったジレンマが生まれているのも面白いところだ。

それぞれ固有のリミットスキルもキャラクターを特徴づける。とくに1回使い切りタイプには絶体絶命の状況を切り抜けられるようなものも揃っている

持ち越せるのはプレイヤーの知識と経験だけ!周回型ゲームのデザインと4人パーティバトルの融合による独特のプレイ感

このようなシステムでゲームが進行していき、最後の敵まで倒したらゲームクリア、それ以前に全滅したらゲームオーバーでまた最初からとなる。

この際、プレイするたびに溜まるポイントを使用した永続強化のアンロックといった要素は一切なく、純粋にプレイヤーの知識と経験を積み重ねることで状況を打開していく形だ。場合によってはパーティ編成の見直しや、後の階層で戦う敵への対策に必要となるスキルや装備品を序盤の階層で入手する、といった進行ルートの見直しなども発生するだろう。

本稿冒頭で述べたことの繰り返しになるが、階層ごとに存在する敵や報酬にランダム要素はないためその意味ではローグライクではないものの、ゲームオーバー時に持ち越せるものがない、いわゆるパーマデスの要素はローグライクに近い。また、攻略の道中で得られるスキル等を複数から選択してキャラクターを徐々に強化していくのは、昨今のデッキ構築型ローグライクにも通じるものがある。

報酬自体にランダム要素はないが、「提示された報酬から必要なものを選んでキャラクターを強化していく」という点はデッキ構築型とも通じるプレイ感がある

さらには“パターン構築ゲー”的な側面や後戻りせず直進的に階層をクリアしていく方式、リミットスキルの存在はシューティングゲームとボムを想起させるなど、さまざまな周回型ゲームのデザインとの融合を感じさせつつ、根底にあるのはRPGとして古典的な4人パーティのターン制コマンドバトルというのが独特のプレイ感を生み出している。

ただし、逆に言えばこの独特さがデメリットにもなっている。具体的には周回型ゲームとしての1プレイの重さで、2周目以降で同じ敵と戦う場合でも、複数メンバーのコマンドを状況に応じて選択していく都合上、なかなかサクサク進行とは行かない。とくに終盤の階層でゲームオーバーになったとき、再びそこまで到達して再挑戦するまでに、前周の進行をほぼなぞったとしても軽く見積もっても1時間ほどはかかってしまう。

クリアまで惜しいところまで行って再戦したくなっても、再びそこまで辿り付くまでが結構長い

とはいえリトライが最大5回までできるので、ある程度は敗北しながらその場で戦術をアップデートしていく余地は残されている。逆に繰り返し再挑戦しても勝てなかったり、そこに至るまでにリトライ回数を多く消費してしまうくらいなら、編成や進行ルートから見直す必要があるとみてよいだろう。そういう意味では、最大5回というリトライ回数は丁度よい調整と言えそうだ。

なお、本作は1プレイの終了後に、プレイ内容に応じてスコアとそれに基づくランク評価が発表される。このスコアはリトライをすると低下するため、高評価を目指すならリトライなしでのクリアが目標となるだろう。そこを追求するかはプレイスタイル次第で、そういった点もシューティングゲームに通じるものがあると言えるかもしれない。

コマンドRPGの試行錯誤が好きなら唯一無二の体験ができる意欲作

本作は進め方によってルートが分岐し、これによって物語も新たな展開を見せる。ノンフィールドの周回型というゲームデザインゆえシナリオの量自体はそこまで多くはないのだが、この構成ならではの展開もあり、親しみやすさを感じさせつつもどこかミステリアスなアリシアのキャラクターも相まって惹き込まれる。

パーティ制のコマンドRPGとしては色々な意味で異色の本作だが、強敵に立ち向かい、状況を打開する達成感や、そういったゲーム体験と合わさって感慨を生むシナリオという点は王道RPGらしくもある。ゲームデザインとバランス調整の両面において難易度は高めだが、それだけに挑戦しがいのある内容に仕上がっている。

公称プレイ時間も1周は1.5時間~3.5時間ほどながら、全ルートクリアまで目指すと15時間~25時間ほどと、じっくり取り組めるボリュームだ。コマンドRPGにおける戦略・戦術の試行錯誤が好きなら唯一無二と言える体験ができる意欲作となっているので、興味があればぜひ触れてみてほしい。

ミステリアスな雰囲気をもつアリシアだが、徐々に彼女自身が抱えるものも見えてくる。攻略を進めることで展開していく彼女と英雄達の物語も見どころ

[基本情報]
タイトル:アストラルゲート(ASTRAL GATE)
制作者:イチデスク
対応環境:Windows
価格:960円(Steam) / 990円(DLsite)

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ASTRAL GATE(イチデスク)
貴方のコマンドRPG戦闘技能を測定します。『アストラルゲート』は、戦闘重視のノンフィールド&コマンドRPGです。

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  • 中村友次郎(@finalbeta

    RPGのプレイと紹介がライフワーク。システムに凝ったRPGをとくに好んでプレイします。商業で一番好きなゲームメーカーは日本ファルコム。運営型では原神にハマってます。
    過去に十数年ほど、窓の杜の連載記事「週末ゲーム」の編集と一部執筆を担当していました。