この熱すぎる駆け引きは「戦わなければ、分からない!」異色のポーカーバトルADV『バトルポーカー・ハイスクール』
「ポーカー」と言えば、複数人が5枚のトランプで「ポーカー・ハンド(役)」を作って競い合うゲームだ。心理戦の特徴が色濃いこともあってギャンブルのイメージが強く、運要素の強いゲームとも見なされやすいが、数学知識などのスキルを駆使すれば実力勝負も可能になる側面を持っている。
そんなポーカーの強さによって、大学や就職の推薦といったすべての運命が決定付けられる“戦わなければ、生き残れない”高校があったとしたら、どう思われるだろう。「ギャンブラー養成機関かよ!」とツッコんでしまうだろうか。
『バトルポーカー・ハイスクール』は、まさにそのような衝撃の高校を舞台にした「ポーカーバトルアドベンチャーゲーム」である。
2024年7月より、「フリーゲーム夢現」と「ノベルゲームコレクション」、「PLiCy」の3サイトにてWindow PC、ブラウザ向けフリーゲームとして配信中だ。
熱きポーカーバトルを乗り越え、てっぺん取ったれ!
≪すべての物事は、“ポーカーバトル”の勝敗によってのみ決定される≫
こんな校則を掲げているのが、本作の舞台となる「私立紡花(ほうか)高校」。改めてご紹介すると、この学校の生徒は全員がポーカーによるバトル「ポーカーバトル」の成績によってランク付けされている。
大学や企業への推薦、クラスにおけるカースト、そのすべてがポーカーバトルの実力次第なのである。よって、この高校では“戦わなければ、生き残れない!”
そんな紡花高校のことを何も知らずに迷い込んだ哀れな子羊にして、主人公が「青木光介(あおきこうすけ)」(以下、コースケ)。滑り止めとして受験した紡花高校に入学することになった彼は、その校門前でトランプのカードを拾う。
すると、あら不思議。コースケの身体はカードに封印されていた「ヤミコースケ」なるもうひとりの自分と思しき者に乗っ取られてしまった!ヤミコースケは、紡花高校のボス……理事長をポーカーバトルで倒すことが目的だという。
かくしてコースケは、ヤミコースケに引っ張られるがまま、理事長と学校の強者たる四天王たちとのポーカーバトルに巻き込まれていくのである!
もはや何がなんだかなオープニングだが、考えるのは止めよう!ところで「ポーカーバトル」とはなんぞやだが、ずばりポーカーによるバトルである。「全然わからん」と言われてもそういうものなのだから、強引に理解しよう。そして、戦いの合図は「決闘(バトル)!」だ。デュエルちゃうぞ。デュエルしたかったら、小惑星にある高等専門学園へ行こう。
とにもかくにも、ルールを詳しく説明すると基本は従来のポーカーと変わりない。5枚のトランプカードで役を作り、それを出し合って勝負するというものだ。
独自の特徴としては、プレイヤーと相手それぞれに体力(HP)があること。つまり「ポーカーバトル」とは、この体力の削り合いである。
ダメージを受けるか否かは、ゲーム(ターン)の勝敗によって決まる。そして、ダメージの量は勝敗が決した時に作った役に応じて変化。基本的に強い役ほどダメージが大きく、弱い役ほどダメージが低い。
また、勝負の前にはカードの交換(Change)とは別に防御(Defence)が選択可能。文字通り、己の身を守る行動だ。これを選ぶと、そのゲームは負け確定となるのだが、受けるダメージが半減され、体力の低下を抑え込めるというメリットがある。
さらにこの「ポーカーバトル」を特徴づけるのが、プレイヤーと相手の双方が用いる「スキル」だ。これを使うことでもういちどカードを交換できるようにしたり、特定の役を強制的に作り上げるといった反則まがいな一手を繰り出せるのだ。
スキルは最大3種類まで装備可能で、右端のスロットにある指定のアイコンをクリックすれば発動する。ただし、1回使うとクールタイムが発生し、しばらく使えなくなる。さすがに毎回のゲームで繰り出すことはできない。そして、本編スタートの時点では1つのスキルしか使えない。
残るほかのスキルは、四天王の勝負に挑んで手に入れていくのだ。紹介が前後したが、本作はステージセレクト方式で本編が進行。戦いたい相手を任意で選んで、ストーリーを進めていく形となっている。俗に言う「ロッ●マン」方式だ。そもそも、一連の仕組みからして露骨にロ●クマンである。進め方は人それぞれ!答えもそれぞれ!
そういった独自ルールやら攻略スタイルが入り混じったポーカーで、相手との勝負を繰り広げていくことに終始するのが本作の主な内容だ。なお、ポーカーを全くやったことがない、ルールを知らないというプレイヤーもご安心を。その辺のルールを解説してくれる「中途利亜流(ちゅうと りある)」なる者が最初の相手を務めてくれるからだ。
なんか見覚えがありすぎる姿をしているのは気にしちゃいかんぜよ。
驚くほど熱い駆け引きがここに!意外に侮りがたい完成度のポーカーバトル
本作の魅力はズバリ「ポーカーバトル」そのものである。
とりわけスキルが一定数揃ってきてからが大変面白く、反則まがいで超人的な技をいかにベストなタイミングで繰り出し、ゲームをものにできるかの駆け引きバトルになってしまう。スキルが揃っていない頃は、多少、反則まがいなことがあっても、ポーカーで戦っている感があるのだが、揃い始めるとスキルで戦っている感が強くなる。
絵に描いたような本末転倒だが、この駆け引きが熱い。その時の判断に応じて状況がひっくり返ることもあって、まったく気の抜けない緊張感のある展開を楽しめるのだ。2種類以上のスキルを掛け合わせたコンボが可能なのも見所。スキルの中には攻撃力を倍増させる種類のものも用意されていて、他の役を作り出すスキルと併用することで、ワンターンキル確定の恐ろしい火力を発揮したりもする。
しかし、スキルの中には、そういった火力の高いコンボでも絶対に防いでしまうものが。
相手の手札を自分のものにしてしまう「お前のものはオレのもの」的思想のスキルもある。もし、それらを相手に使われたら、どんな悲劇が待つかは想像にかたくないだろう。
そして、そういったスキルの存在から、こちらの持つスキルが増えたとしても戦いが有利なりにくい。ゆえに駆け引きが熱く、緊張感も損なわれない。そのような一方的な戦法を防ぐ工夫も万全で、意外なほど公平性のあるバランスが確立されているのだ。そこにポーカー由来の運要素が絡むことで、常に油断ならない変化に富んだ展開が演出される。
「ポーカーでスキルの殴り合いって、なんじゃそりゃ……」と、前段落の紹介からは奇妙さを感じたかもしれないが、実際に遊んでみるとなかなかに侮りがたい完成度と見所を秘めたシステムになっている。さすがに本場のカードバトルに比べると、スキルの少なさもあって戦略に限界もあるのだが、そこもポーカーと組み合わさることで、驚くほどスリリングな駆け引きが実現するという思わぬ可能性を見せつけられる。
前述したように、スキルが揃ってからでないと分からないのが難点だが、体験してみれば思い知らされるだろう。一見、ムチャクチャな組み合わせながら、不思議と熱い読み合いを楽しめるバトルになっている、と。人によっては、これで対人戦をやってみたいという気持ちも起きるかもしれない。残念ながら、本作はシングルプレイ専用のゲームなので、対人戦はできないのだが。
ポーカーバトルの侮りがたさ以外では、意外に攻略自由度の高い本編がある。基本の進め方としては、四天王を倒してスキルを獲得し、大ボスの理事長に挑むというものなのだが、実は四天王をすべて倒す必要はない。数名倒すだけに留めたり、場合によっては完全にスルーして理事長のところへカチ込みしてしまってもいいのだ。
ただ、当然のように基本の進め方からは外れた攻略になるので、難易度は劇的に高くなるが。特に理事長は、完全にスキル勝負となるため、初期装備で挑もうとすれば、大変なことになるだろう。しかし、本作のバトルの骨子にあるのはポーカーである。ゆえに、やろうと思えばできなくもない可能性もわずかに存在する。
それに本作では、ポーカーに苦手意識がある人を対象にした「おたすけモード」も用意。これをONにすれば、受けるダメージが半減するのに加えてこちらが与えるダメージを倍にできるという、力押し攻略が可能になる。そして、これを利用して理事長に挑む手もあるのだ。
そのような手を尽くして、理事長を倒すとどうなるのかは見てのお楽しみである。ただ、色んな意味で「わかってらっしゃる」となるはずである。そもそも、倒せるようにしている時点で“信頼”の二文字がおぼろげに見えていると思えるのだが、どうだろう。
とにもかくにも、本編の攻略周りにおいても本作は、確かな遊び応えと攻略する楽しさが描かれている。どうしても奇天烈な設定と、先ほどチラ見せした「中途利亜流」にはネタゲー的印象を抱いてしまうところもあるが、とりあえずは遊んでみていただきたい。そうすれば、思いのほか個性的で、遊び甲斐のあるゲームであることが分かるはずだ。
本編メッセージのひとつを改変して言うならば……
“戦わなければ、分からない!”
そう、戦わなければ分からない!それが「ポーカーバトル」の醍醐味にして面白さ!
なお、ゲーム部分は割と真面目な反面、ストーリーは概ね見た目通りにして、ネタまみれの内容である。
特に四天王は、その強そうな名前とは裏腹に愉快なメンツ揃いに加え、あらゆる意味でギリギリな台詞のオンパレード。ヤミコースケに身体を乗っ取られたため、常時幽体離脱状態の主人公コースケも奇妙なツッコミやら妄想をしたりと、ネタの塊である。当然、本編最大の目標である大ボスの理事長もまた然り。
そして、終盤には色んな意味で斜め上の展開が待ち受けている。それを経てのエンディングまでの流れもツッコミどころがありつつも、ある意味では「これぞ」と言える熱いシチュエーションになっているので必見だ。すべてが決着した時には、不思議な満足感も得られるので、頑張ってみていただきたいところだ。人によっては、もっとポーカーバトルしたくなったりするだろう。
ストーリー周りでは、各キャラクターの立ち絵も「中途利亜流」を除いて表情差分などが豊富。演出はポーカーというのもあって、少しスローテンポな感じだが、スキル使用時のカットインやRPGバリバリな戦闘曲で大いに盛り上げてくれる。
ちなみに戦闘曲はガチでRPG向けのものだったりする。多分、当もぐらゲームスで紹介している一部のRPG作品やら探索アドベンチャーゲームをプレイしたことがある人なら、一度は聴いたことがあったりするかもしれない。
他にボリュームは順調に進めば1時間半ほどだが、何度かトライ&エラーを重ねた場合は2~3時間ぐらいかかるだろう。(個人差はあるが)割と体感時間長め。前述した時間以上の充実感が得られるだろう。
反面、スキルをすべて揃えて楽しめる高難易度の2周目が無いといった、あると嬉しかった惜しい部分も。また、スキルの存在感が強いとは言え、根っ子はポーカー。ある程度、バトル中のキャラクターの表情などの推察できる要素はあれど、運を抱かせる部分は多いので、ハッキリとしたパターン化やら公平性を求める人には拒否反応が出やすい。
だが、ポーカーバトルにおけるスキル読み合いの面白さ、プレイヤーの裁量に任せられた本編攻略法など、総じて侮りがたいゲームに完成されている。
この異色の組み合わせと、スキルが充実した際の読み合いの面白さがいかなるものか気になったのであれば、ぜひお試しいただきたい意外性のある小粒な良作だ。すべての運命がポーカーで決する高校で頂点を勝ち取れ。何度でも繰り返そう。
“戦わなければ、生き残れない!”
[基本情報]
タイトル:『バトルポーカー・ハイスクール』
作者:アクアポラリス
クリア時間:1~2時間
対応プラットフォーム:Windows、ブラウザ
価格(税込):無料
◇ダウンロード・プレイはこちら
・ノベルゲームコレクション
https://novelgame.jp/games/show/10004
・ふりーむ!(※ブラウザ版のみ)
https://www.freem.ne.jp/win/game/32689
・フリーゲーム夢現(※ダウンロード版のみ)
https://freegame-mugen.jp/adventure/game_12534.html
・PLiCy(※ブラウザ版)
https://plicy.net/GamePlay/184530