飛んで跳ねて転がりながらの大冒険!RPGツクール2000製正統派2Dアクション『こうもりさんの花物語』

アクション,フリーゲーム

『こうもりさんの花物語』は、横スクロールアクションゲームである。

プレイヤーは主人公の「こうもりさん」を操作し、レベルごとに設けられたステージを攻略していく。各ステージのクリア条件は単純明快で、最後に設けられたゴールに到達すること。アクションゲームとしては、極めて正統派かつ、王道の内容だ。

なお、本作は「RPGツクール2000」を用いて制作された。

大事なことなので、もう一度言及しておこう。ロールプレイングゲーム(RPG)の制作を基本とする「RPGツクール2000」で作られている。上記のスクリーンショットの第一印象からは、アクションゲームの制作を専門とするツールで作られたかのように見えるかもしれない。ところが、本作は近頃の代表格とも言える「アクションゲームツクールMV」で作られたゲームではない。

「RPGツクール2000」製とは思えないビジュアルと挙動が異彩を放つ横スクロールアクション

思わず耳を疑ったかもしれないが、紛うことなき事実である。実際に本作のゲームデータをフリーゲーム配信サイト「ふりーむ!」か「フリーゲーム夢現」、あるいは「itch.io」からダウンロードし、フォルダの中身を調べればすぐに分かる。

「RPGツクール2000」製ゲームでお馴染みの起動ファイル、「RPG_RT.exe」があるからだ。

▲そして、起動して間もなく出るこれである。

そんな訳で、本作『こうもりさんの花物語』最大の魅力にして特徴は、「RPGツクール2000」を用い、制作された横スクロールアクションゲームであるという事実を疑ってしまうそのビジュアルだ。

ビジュアルだけではない。プレイヤーが操作する主人公「こうもりさん」のアニメーションとその挙動も、「RPGツクール2000」で作られたゲームという事実を意識させない。むしろ、アクションゲームの制作ツールで作ったかのような手触りになっている。前述した「アクションゲームツクールMV」のような専用ツールで作られたゲームでは、と思ってしまうほどだ。

しかし、繰り返しになるが、本作は「RPGツクール2000」で作られた横スクロールアクションゲームである。それもあって、思わず「マジか!?」となってしまうほど、とてもいい意味で“らしさ”を感じさせないものに仕上げられているのだ。

特に「こうもりさん」の動作全般がその象徴である。以降はキーボード操作時の解説になるが、方向キーを左右に入力すれば滑らかで自然なアニメーションと共に歩き、Zキーを押せばジャンプする。

さらにジャンプ中、再びZキーを押すと「FLAP(フラップ)」、羽ばたきが発動。事実上の二段ジャンプになる。そこからZキーを押しっぱなしにすれば、羽を開いた状態になって滑空も可能。Zキー押しっぱなしのジャンプをすれば、若干ながら勢いが付き、飛ぶ高さも上げられる。

また、Xキー押しっぱなしでダッシュが発動。そのままZキーと組み合わせればダッシュジャンプになり、普段のジャンプよりも長い距離を跳べる。Zキー押しっぱなしによる勢いをつけたジャンプと組み合わせれば、より高く跳ぶことも可能だ。

この他にも、壁に張り付いた状態で方向キーを逆側に入れてジャンプすれば三角蹴りに。滑空状態で坂に着地すると転がり状態になって、敵を跳ね飛ばして倒せるようにもなる。ちなみに道中で行く手を阻む敵は、ジャンプしてからの踏みつけで倒すのが基本だ。

なお、一連のアクションに関するチュートリアルはなく、本番たるステージ攻略を通して学んでいく形になる。しかしながら、使うキーは少なく、操作自体も簡単なので、基本的な動かし方は(個人差はあれど)早々の段階で慣れるだろう。

いずれも、実際に体験しなければ分かりにくいのがもどかしく、「本当か?」と思ってしまうだろう。だが、触ってみればすぐに分かる。「RPGツクール2000」で作られたゲームとしての“らしさ”を感じさせないこともまた然り。それほど、手触りから見た目まで自然なアクションゲームとして仕上がっているのだ。

かくいう筆者は“新世界”を見た……いや、見っぱなしだった。

そもそも、ゲーム開始直前に「RPGツクール2000」で作られたことを示す起動ファイルを見た時点でビックリだった。だが、中身はそれ以上で、とりわけビジュアルとアクションの自然な挙動は、本当に「RPGツクール2000」で作られたことを思わせないものになっていたのだ。まさに「そういうのもあるのか……」である。

上達と共にどんどん無駄のない動きになっていく面白さと気持ちよさ

ここまでの時点では、「RPGツクール2000」製との情報を除けば、横スクロールアクションゲームの作りは正統派、もしくは王道との印象がある。実際、遊び方は横スクロールアクションゲームの定番に則っている。では、本作ならではの特徴や要素はあるのかと言えば、いくつかある。

ひとつに主人公「こうもりさん」の挙動。

率直に言って”鈍い”。特にジャンプは非常に低く、他のアクションゲームのキャラで例えるなら、マリオの半分以下である。勢いを付けたり、ダッシュを組み合わせても、マリオ並の高さにはならない。そのため、ジャンプの手触りも鈍く、癖のあるものになっている。

逆に言えば、このおかげでやたらと小刻みな行動が可能。トラップや敵をギリギリの所で避ける、ジャンプによる滞空時間を減らして素早くステージを進むといった無駄を減らす動きを実施できるのだ。そのため、本作はどのステージもどこまで無駄な時間を減らしてゴールまで到達できるかという、タイムアタックのやり込みが熱い。

それを意図してか、各ステージはクリアのたびに費やした時間も記録。1度クリアしても、どこまで時間を縮められるかという新たなチャレンジが提示されるので、繰り返し楽しめる設計になっている。

また、上記のリザルト画面のスクリーンショットの通り、別に「FLAP」の回数も記録される。最速タイムを目指すのとは別に、一切羽ばたかずにクリアするという、一見、無茶に見えそうなチャレンジも用意されているのだ。これもタイムアタックとは異なる面白さがあると同時に、さまざまな攻略法が許容されたステージの作り込みに気づかされるものになっている。

何より、どの要素も極めれば極めるほど、文字通りこうもりさんが無駄のない動きになっていくという、若干の気味の悪さすら感じさせる上達による変化が現れる。この辺りのアクションと、極める面白さは本作ならではといったところで、ジャンプの低さをユニークな形に活かした部分になっている。

実際、極めようとすると、段々とレースゲームを遊んでいるかのような心持ちになっていくので、アクションの手触りに何かしら広がりを感じたなら、チャレンジいただきたいところだ。謎の”流派”に目覚めるかもしれない。

▲4番目のカードはランダム選択で、ステージ開始時に1~3のいずれかのカードが選ばれるようになる。

もうひとつの特徴として「タロットカード」がある。これはゲーム本編開始当初から使えるもので、レベル&ステージ選択画面でメニュー画面からセットできる。カードは3種類あり、セットすることによってステージ内に様々な変化が発生。仕掛けの配置が変わる、敵が一新されるなど、デフォルトの未セット時とは違ったステージの攻略が楽しめるのだ。

さすがに地形ごと一変するタイプはないが、おかげで1回クリアしたステージも、カードを変えれば最低3回以上は楽しめる。しかも、カードによる変化は本編に用意された全ステージに用意。本編には全20+αのステージがあるのだが、カードをセットすれば未セット分も含めて、多彩なパターンのステージが楽しめてしまうのだ。

基本的にセットするか否かはプレイヤーの自由なので、未セットで全ステージクリアを目指すことに終始してもよい。ただ、セットすればより深い世界を楽しめると同時に、ゲーム全体のボリュームが大きく膨れ上がる。こうした多彩な変化が用意されているのも圧巻のひと言で、一度でもその全容を確かめれば、本作の異様な作り込み具合を目撃すること間違いなしだ。

この他に地味な部分だが、本編の進行も若干変わっていて、1ステージをクリアすると、その上に連結した次のレベルのステージが解禁される仕組みになっている。なので、次のレベルに進むにあたって、その直前レベルのステージをすべてクリアする必要はない。ただ、全ステージを遊べるようにするなら、直前レベルのステージの全クリアが必須と、やや奇怪な仕組みで設計されている。

なので、左から右の順番に沿って進むか、外れるかも自由。この辺もタロットカードのようにプレイヤーに委ねていて、本作の遊び方の自由を重視したゲームデザインを感じられるだろう。こういったユニークな仕様も多く、基本は正統派の横スクロールアクションゲームでありつつ、独自の遊び心地を表現した作品になっている。

アクションゲーム好きよ、この”まさかにも程がある”力作に挑んで極めよ!

タロットカードによる変化を除いたステージ自体の作り込みも上々だ。敵や仕掛けの配置、規模ともに適切で、レベルが変われば独自の敵、仕掛けも登場するといった起伏が抜かりなく表現されている。

唯一、本編にはボス戦がなく、大きな盛り上がり所に欠けるという物足りなさがあるのだが、その辺りはタロットカードによる変化と、全ステージをクリアし終えた後に待つ”アレ”を体験すれば、色んな意味で「もう十分」と感じてしまうはずである。そもそも、ストーリーの設定からボス戦があるとミスマッチな感じが出てしまうため、削った判断は正しかったと言えるだろう。

各ステージを彩るグラフィック、音楽もすべてオリジナルであると同時に、バリエーションにも富んでいるなど凝った仕上がりだ。

特にキャラクターのドット絵は大変可愛らしく、とりわけ表情豊かで動きも多彩なこうもりさんには全身がピンク色で、どこかの誰かさんを思わせる容姿も含め、嫌でも注目してしまうはずだ。

なお、こうもりさんに”転写”の力はございません。

全体的にアクションゲームとしての醍醐味は押さえられており、独自の工夫も凝らした仕上がりだが、やはり気になるのはチュートリアルの不足。特に転がりは、普通にプレイしているとまず気づきにくい。

別に覚えずとも問題はないのだが、使えるようになればステージ攻略の幅が広がる見所があるので、何かしらのガイドはあって欲しかった。地味にreadmeファイル、本作の公式サイトで説明されていないのも気になるところだ。

それ以外では、やはり操作感の鈍さだが、これは意図的かつ作品の特徴なので、安易に難点とは言えない。ただ、人によってはだいぶ気になると同時に、アクションゲームに縦横無尽さを求めていると不満を抱きやすいので、念のための心構えはしておくといいだろう。

ダッシュ時も滑りやすかったりと、慣れが必要とされる部分もあるが、相応に極め甲斐があると同時に、上達すればどんどん動きに無駄が無くなっていくのは妙なおかしさと気持ちよさがある。何より「RPGツクール2000」を用い、アクションゲーム制作ツールで作られたものと錯覚してしまうビジュアルと挙動を持った横スクロールアクションゲームを作り上げてしまった手腕は驚嘆の一言に尽きる。

そんな訳でアクションゲーム好きはぜひ、このまさかにも程がある一品をお試しいただきたい。「本当にアクションゲームなの?」と疑念を抱いているかもしれないが、やれば分かる。動かせば分かる。なので迷わず行けよ、行けば分かるさ!

単純に可愛いキャラクターを操作できるアクションゲームをお探しの人にもおすすめですよ。

[基本情報]
タイトル:『こうもりさんの花物語』
作者:あかーみゅ
クリア時間:30分~1時間
対応プラットフォーム:Windows
価格(税込):無料

◇ダウンロードはこちら
・ふりーむ!
https://www.freem.ne.jp/win/game/31738

・フリーゲーム夢現
https://freegame-mugen.jp/action/game_11669.html

・itch.io
https://akarmyu.itch.io/batys-flower-story

・『こうもりさんの花物語』公式サイト
https://koumorisan.web.fc2.com/

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