マシンガンで地層を撃って掘り進め!?爽快感&中毒性抜群の全方位型”ドワーフ”シューター『BORE BLASTERS』

インディーゲーム,シューティング

2024年2月頭。PCゲーム配信プラットフォーム「Steam」にドワーフのタグが追加された。

▲「ドワーフ」タグのトップページより

ドワーフと言えば、ヨーロッパの伝承などに登場する妖精の一種。背が低く、長い髭を生やしている外見的イメージが有名だ。他にハンマーや斧といった重量級の武器を扱う、鍛冶屋を営んでいる、エルフとの仲が悪いなどもドワーフのイメージとして挙げられる。本稿執筆直近のイメージだと、魔物の調理に長けているのもそのひとつになるかもしれない。

なぜ、ドワーフのタグが追加されたのかは、海外ゲームニュースサイト「GamesRadar+」が報じている。それによれば、ドワーフが活躍するゲームを作っているインディーゲーム開発チームとパブリッシャーの根強い要望(という名の執念?)が実ったものであるようだ。そして追加以降、新旧様々なドワーフ出演ゲームにタグが付けられるようになっている。

そんなドワーフのタグが付けられた2024年発売の新作から1本、『BORE BLASTERS』を今回、ピックアップする。

マシンガンで地下深くを目指す全方位型採掘シューティング

『BORE BLASTERS』は、2024年3月8日からSteamで販売中のドワーフタグの付いた作品。スコットランドのインディーゲームスタジオ「8BitSkull」開発による、全方位型”採掘”シューティングゲームである。

なんだか不思議なジャンル名だが、詳しくは追って紹介していこう。

まず基本の内容だが、ドワーフが搭乗したジャイロコプターを操縦し、大量のブロック(※作中表記)で敷き詰められた地層を掘り進めていくというものだ。進行はステージクリア方式で、地層最深部にある大きな宝箱を回収することが最終目標(ゴール)となる。

地層の掘り方は簡単。ジャイロコプター搭載の「マシンガン・ドリル」で地面(ブロック)を撃つだけだ。「ドリルなのに!?」と物申したくなるかもしれないが、実際、これが本作のスタンダードにしてジャスティス。そういうことだから仕方がないのだ。「これぞドワーフの高い技術が成せる業!」と無理矢理感心して納得しておこう。ラリホー。

操作も(※Xboxコントローラ使用時)右スティックで狙いを定め、RTボタンで銃撃という全方位型シューティング定番のスタイルを採用。弾数制限もなく、撃ち放題だ。ちなみにオプションで自動射撃モードにも設定可能となっている。

銃撃以外のアクションも用意。代表的なのが「固有アビリティ」。画面左上に表示されたピンク色のゲージが満タンになると発動可能になる特殊技だ。一時無敵になって地層を猛ダッシュで掘り進む突撃、爆発性の高いホーミングミサイルの発射、地層を脆い宝石に変換する光線の照射があり、採掘をスピーディに進めていく際に役立つもの揃いになっている。また、これらのアビリティは、ジャイロコプターに搭乗するドワーフごとに異なる。

前述したが、ジャイロコプターにはドワーフが搭乗しており、採掘開始前には誰を搭乗させるかを選択する。この時、搭乗させたドワーフによって使える固有アビリティが変わるのだ。なお、ドワーフは全3人だが、最初は1人(グンナル)しか選べない。残る2人(ラグンヒル、ジャール)は本編ストーリーを進めていくと解禁されていく仕組みだ。

ドワーフ以外に解禁されていく要素では「パーツ」もある。

本作は地層を掘り進めていく過程で「宝石」が手に入るのだが、これを集めると同時に固有アビリティゲージの下に設けられた緑色のゲージが上昇していく。そして、満タンに達するとジャイロコプターの「一時アップグレード」が解禁。提示される3種類のパーツの中からひとつを選ぶことで、それに沿った強化が図られるのである。

いわゆるサバイバー系アクションゲーム、デッキ構築型ローグライクでお馴染みの選択式強化システムが本作に備わっているのだ。このパーツはステージをひとつクリアするたびに解禁されていき、その数が多いほど多彩な強化を図れるようになる。

さらに「一時アップグレード」とは別に「永続アップグレード」も用意。各ステージで手に入れた宝石を通貨として支払うことで、全8項目の強化を図れる。しかも、宝石はステージクリアに限らず、採掘失敗(ミス)でも失われない仕様だ。

つまり、最終的には力押しの無双プレイが容易……かと思えばそうではない。ジャイロコプターには耐久力とは別に「燃料」の概念があり、無くなると操縦不能になって墜落してしまう。延々と採掘し続けることはできないのだ。一応、永続アップグレードで燃料の消費を遅くすることはできるが、無限にはできない。そのため、最大まで強化したとしても、宝石ガッポリ大儲けな行為には墜落の危険が付きまとう。そうした欲をかくなりのデメリットも設けられており、一筋縄ではいかないバランスになっている。

他に本編はステージクリア形式と紹介したが、ステージは全体マップ上から自由に選択可能。また、ストーリーは「クエスト」なるミッションを軸に展開されていく。ちょっと分かりにくいかもしれないが、クエストが発生していると、その攻略が完了するまではどのステージに訪れても同じクエストが発生するという仕組みになっている。これに絡んでか、ステージの数も非常に多い。そして、各ステージの地層は一部を除き、毎回ランダムで生成。ただ、進行がステージクリア型なので、いわゆるローグライク(ローグライト)のような最初から最後までの通しプレイは要求されず、気楽に遊べる作りである。

このように武器がドリルなのに撃つというツッコミどころはあれど、ゆるく遊べる仕組みを持った全方位型シューティングゲームに仕上げられている。ローグライク(ローグライト)的な要素もあるが、プレイヤーに極度の緊張感を与えるほどの存在感はない。どちらかというと、RPG的な感覚で遊べてしまう設計だ。

ドリルではなく、マシンガンだからこそできた圧倒的な爽快感と中毒性

本作の魅力は、ゆるく遊べる安心感がもたらす抜群の中毒性と、地層を掘り進める爽快感だ。

特に素晴らしいのが後者。画面の大半を埋め尽くす地層という名のブロックの山をゴリゴリ撃って削っていくのは、見ているだけでも気持ちよく、延々とやり続けたい欲を刺激する面白さが詰まっている。エフェクトを始めとする演出も、そんな気持ちよさと欲を大いに刺激。

▲四方八方から宝石が集まってくる超絶怒涛のフィーバー状態!

中でも「一時アップグレード」を繰り返し、大幅強化したジャイロコプターで容赦なく撃って削っていく際の絵は非常に派手。それと共に宝石もジャラジャラ雨あられのフィーバーになるので、自然にトリップ状態になってしまう。加えて、宝石が手に入れば手に入るほど、「永続アップグレード」での選択肢が増え、ジャイロコプターのさらなる強化を図れるメリット付き。おまけに仮に途中、ジャイロコプターが大破するようなことになったとしても、手に入れた宝石は絶対に失われない!

▲がっぽり。(しかも、ミスしても絶対に失われない)

こうしたゆるさと爽快感が絶妙なバランスで融合していて、単純なのに延々とやり続けてしまう面白さがある。実際、ノッてくると本当に止め時が分からなくなり、気づいた時には3時間が経過していたなんてこともあるぐらいだ(経験者:談)。加えて、ペナルティも重くないからこそ、気軽に遊べる。そういった遊びやすさが鬼に金棒な効果を発揮し、傑出した中毒性を生み出している。

なにより、これが「マシンガン・ドリル」なる謎めいた武器を採用した意義を出している。ドリルの場合、掘るにしてもどうしてもそのポイントが限定されてしまうゆえ、絵的に地味で、チマチマ感の強いものになってしまう。だが、360度に展開可能なマシンガンなら広範囲を削れる上、それ自体が絵的な派手さも作り出せる。

理屈的には違和感バリバリなのは否定しないが、爽快感重視と思えば、これ以上なく納得感がある。それを踏まえると、なかなかに深い武器になっている。実際、プレイを重ねていくほど思ってしまうはずだ。「地層をドリルで掘る時代は終わった!」と。いや、さすがにそれは極端すぎるが、これほど地層を掘る爽快感を引き立てるのに相応しい武器は無いと実感させられるだろう。

一連の特徴が”安心安全のサバイバーゲーム”とも言えるプレイ感を作り出しているのも面白い。「サバイバーゲームで安心安全ってなんだよ」となるが、実際、地層を撃ちまくって削っていく過程は、サバイバーゲームでの大量の敵を高火力の技と武器で一網打尽にしていくのに近い手触りがある。ただ、サバイバーゲームの場合、その相手はプレイヤーを倒そうとしてくる敵。少しでも攻撃の手を緩めれば、大ピンチに陥るリスクが付きまとう。ゆえに危険が伴うと同時に、それ自体がゲームプレイの緊張感を作り出している。

だが、本作は相手が進路を邪魔するブロックでしかないので、そこまで大きなリスクは付きまとわない。一応、接触すればジャイロコプターがダメージを受ける危険性はあるが、サバイバーゲームの敵に比べれば脅威度は低めだ。
ゆえに安心安全な感じがある。安心安全な一網打尽プレイが楽しめる、とでも言うだろうか。そういったプレイ感が本作にはあると同時に、相手が地層という動かない対象だからこそ成し得た面白さと気持ちよさが表現されているのだ。

では、ずっと緊張感がない展開が続くのかと言えばそうではなく、燃料切れとその脅威度が増す深度の高いステージ、破壊しても再生されるブロックを始めとする要素がそれらを適度に補っている。また、本作はブロックとは別に敵も登場。数こそサバイバーゲームほどではないが、それらを迎撃する必要も適時求められるのだ。

さらにクエストでは変則的な展開も発生。宝物を防衛したり、ドワーフと敵対するゴブリン軍の襲撃に応じたり、時には地上への脱出を目指すなど、従来の遊びとは異なるイベントでプレイヤーを楽しませてくれるのだ。もちろん、その中にはシューティングゲーム定番のボス戦もあり、採掘が基本なりの特徴的な倒し方も試されてくる。

地層ことのブロックもバリエーション豊か。掘りやすいもの、掘りにくくて固いものに限らず、前述した再生されるもの、ジャイロコプターに危害を及ぼすもの、敵を生み出すもの、視界を遮るものなど、採掘に影響を及ぼす様々な種類が用意されている。敵も同じようにバリエーション豊富で、その多くが地層の地形を無視してくるのも、ゆるく遊べる作りの裏を突く仕様として地味に納得感がある。

やること自体は本当、地層を掘り進めることなのだが、遊べば遊ぶほど全方位型シューティングとローグライク(ローグライト)、サバイバーの3ジャンルの一番おいしい所だけを味わえることに絞った作りに感心させられるだろう。ゲームの根本(ベース)となる面白さが盤石であることも然り。それというのは、マシンガンで地中を撃ちながら掘り進める気持ちよさだ。

筆者個人は、この根本を押さえた作りにかの『地球防衛軍』シリーズを代表作とする開発会社、サンドロットの魂をほんのり感じた次第である。操作感の良さと爽快感、どんどん強くしていきたい欲求が生まれやすい所にも、人によっては共通点を覚えるかもしれない。

バランス面での課題は今後のアップデートに期待。先鋭的な見所も持つ意欲作

ただ、全部が手放しに褒められる訳ではなく、結構大きな難点もある。

特にドワーフ3人の「固有アビリティ」の格差。一時アップグレードの恩恵を最も得られやすいことから、どうしても地層を脆い宝石に変換する光線を放つ能力持ちの3人目、ジャールにプレイが偏りやすい。他の2人は宝石が集まりにくいことから一時アップグレードの恩恵が得にくく、獲得できる宝石の総額にも明確な差が生まれることから、ジャールの解禁と同時に一気に存在感を失ってしまうのだ。

▲ドワーフのひとり、ラグンヒルは女性(髭も生やしている)ということもあって一定の存在感が残る。

正直、この格差はあまりにも大きすぎるゆえ、救済が欲しかったところである。特に主人公格のグンナルは本当に可哀そうなぐらい存在感を失っていくので、どうにかならなかったのかの一言に尽きる。

それ以外で大きいものはステージ。数が多すぎる上、地層がランダム生成される関係で個性付けが弱い。あっても深度と環境の違いぐらいで、水増し感が勝ってしまっている。クエストも完了するまで、どのステージを訪れても継続される関係で、数の多さとミスマッチを起こしている。おそらくはクエスト達成に失敗しても、ゴール到達という成果が得られる救済を兼ねたのかもしれないが、失敗自体が起きにくいバランスなのでイマイチ機能していない。この辺りも一考の余地があったように思える。

他に強化し尽くすとストーリー後半は消化試合になるなど、色々と課題は散見される。ただ、本作は発売後もアップデートが続いていて、新たに「デイリー採掘モード」なるやり込み用のゲームモードが追加されている。そのため、前述した課題もいずれは適切な形に直るかもしれない。特にドワーフ3人の格差は際立ってしまっているので、何かしらメスが入ることに期待したいところだ。

そんな大きな難点を背負ってしまっているのが惜しい限りなのだが、根本的なマシンガンで地中を掘る面白さは盤石であり、ゲームデザイン面でも特徴的なまとまりを見せた作品に仕上がっている。難易度も強化要素の充実さもあって極端に高くなく、大らかに楽しめるバランスだ。グラフィック、音楽も全体的に滲み出る重厚感が光る出来。演出の派手さは前述した通りである。

日本語にも対応しており、翻訳も総じて自然。おかげでストーリーも違和感なく楽しめる。ちなみに内容は単純にまとめるなら、ドワーフとゴブリンの争いである。だが、中盤以降には若干、ホラーめいた展開になるという見所も。ドワーフとゴブリンの掛け合いでも面白いものが少しあり、中でもラグンヒル関連は必見だ。

少々荒っぽい所もあるが、地層を撃ちながら掘る爽快感と中毒性は群を抜いている本作。この特徴的なゲームデザインとプレイスタイルに惹かれたなら、ぜひプレイいただきたい一作だ。さあ、撃って掘りまくれ!

[基本情報]
タイトル:『BORE BLASTERS』
開発:8BitSkull
クリア時間:8~10時間
対応プラットフォーム:Windows、Mac、Linux
価格(税込):999円

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