フリーホラーゲーム『バグのセカイ』。バグったゲームが、現実を侵食する。

フリーゲーム,ホラーゲーム

今回は、先日発表された「第10回 ふりーむ!ゲームコンテスト」にて、ホラー部門の銀賞を獲得した『バグのセカイ』を紹介する。なお、金賞受賞作は、映画化もされたフリーホラーゲーム『DeathForest ~森からの脱出~』。こちらはもぐらゲームスでも紹介したが、身の毛もよだつような恐怖を体験できる作品だ。

そんな恐怖のゲームに続いて銀賞に輝いた本作『バグのセカイ』も、『DeathForest ~森からの脱出~』とはまた違ったものではあるが、非常に恐ろしい体験を提供してくれるゲームとなっている。特徴としては、ファミコンのゲームがバグったような不気味な世界を探索する独特の感覚。そしてゲームのバグが、現実の世界にも侵食していく恐ろしい展開だ。さっそく紹介したい。

バグった世界を探索するホラーアドベンチャー

物語は主人公の少女の部屋から始まる。部屋に置かれた、砂嵐の映っているテレビの前にはプレイ中のゲームがあり、それを調べることでゲームをプレイすることが出来る。部屋から出ることはできず、ひとまずゲームをプレイしなければならない。

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タイトル画面の段階から、異様な雰囲気を感じるゲーム

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とりあえずゲームをスタートする少女。しかし、そこにはバグったゲームのような世界が待っていた

ゲームを起動すると、RPGでよく見かけるような村のマップに出る。しかしその世界は、ファミコンのゲームがバグったような世界だった。少女はバグに阻まれながらも、この世界を攻略していくことになる。

このゲームの特徴は、タイトルにもなっている通り「バグったゲームの世界」を探索する部分だ。たとえばマップの中の特定のマスを踏んでしまうと「ピーー」という音が出てゲームがフリーズしてしまう。フリーズした場合、ゲーム中で設定されているリセットボタンを押すことで途中からやり直すことが出来るが、こういった突然ゲームが止まってしまう演出などは、まさにバグったゲームをプレイしているかのような感触で、演出の作り込みの細かさがある。

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ゲーム内には会話の出来るキャラクターが何人もいるが、そのどれもが要領を得ないバグった会話ばかりだ

村のマップを探索しているうちに、マップの行き止まりのような場所で謎の女キャラクターに遭遇。そのキャラクターに追い掛け回されてしまう。

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謎のキャラクターに追い掛け回されてしまう

現実に侵食する「バグのセカイ」

このゲーム内のバグは、次第にゲームをプレイしている少女の身の回りにも侵食するようになる。たとえば、謎の女に追い掛け回されている時にリセットボタンを押して回避すると、少女のいる部屋の中にもバグのような模様が出現するのだ。ゲームの中のものであったバグが、ゲームの外に侵食するという奇妙な現象に直面していく。

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ゲームを進めていくうちに、次第に部屋の中にもバグのようなものが…

バグの侵食から抜け出すためには、バグったゲームを探索し、アイテムを集め、そしてさまざまな謎解きを行ってゲームクリアを目指さなければならない。

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謎の女から逃れるため、ゲームをクリアしなければならない少女

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アイテムを集め、この世界を攻略しよう

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バグっていて意図が読みづらいが、登場するキャラクターの会話は謎解きに関係することも

本作の謎解きの量はそこまで多くなく、ゲームクリアまでのプレイ時間としては1、2時間ほどだろう。短編ホラー作品を楽しみたい方にうってつけの作品といえる。本作を謎解きアドベンチャー作品として見ると、エンディング近くのイベントの謎解きは、「少女がゲームをプレイしている」という状況を一歩引いて見る必要があり、試みとして面白いものを感じた。

果たして、このバグったゲームとは何なのだろうか?そして、なぜ少女の身の回りにもバグが侵食するのか…。謎が深まる「バグの世界」をテーマとした、一味違ったホラーゲーム。ぜひ一度遊んでみてはいかがだろうか。

なお、「第10回 ふりーむ!ゲームコンテスト」にてホラー部門金賞を受賞した『DeathForest ~森からの脱出~』も、以前にもぐらゲームスの記事で紹介した。恐ろしい体験をしたい人は、こちらもプレイしてみることをオススメする。

恐怖の森で迫り来る異形。『Death Forest』注目の3Dフリーホラーゲーム

[基本情報]
タイトル バグのセカイ
制作者 れんたか
クリア時間 2時間~
動作環境 Win XP/VISTA/7/8

ダウンロードはこちらから
http://www.freem.ne.jp/win/game/6652

  • poroLogue(@poroLogue

    もぐらゲームス編集長。大学在学中にフリーゲームをテーマとした論文を執筆。日本デジタルゲーム学会・若手発表会にて「語りとしてのビデオゲーム(Videogame as Narrative)」を発表。NHKのゲーム紹介コーナーへの作品推薦、株式会社KADOKAWA主催のニコニコ自作ゲームフェス協賛企業賞「窓の杜賞」の選考委員として参加、週刊ファミ通誌のインディーゲームコーナーの作品選出、株式会社インプレス・窓の杜「週末ゲーム」にて連載など。

    フリーゲーム作者さんへのインタビュー・レビューなど多数。フリーゲーム歴は10年半ばほど。思い出に残っているゲームは『SeraphicBlue』『Berwick Saga』。