洗練されたステージ設計とフォローの手厚さで楽しませてくれる、やさしい精密系2Dアクション『BZZZT: バズボット!』

アクション,インディーゲーム

横スクロールのアクションゲーム(2Dアクションゲーム)には、俗に“精密系”と称されるタイプがある。

言うなれば、針の穴に意図を通すかのような繊細(精密)な操作と立ち回りが試される高難易度のアクションゲームである。単に難しいだけではなく、プレイヤーキャラクターの機動性が高い、ミスしてもすぐに再挑戦(リトライ)ができるなど、遊びやすさに配慮した作りも特徴となっている。

当もぐらゲームスでも、そのようなアクションゲームはいくつかピックアップしてきている。そんな精密系のアクションゲームの中でも随一……とまで言ってしまうと大げさかもしれないが、入門に適したとてもオススメの作品がある。

その名も『BZZZT』。邦題は上記、スクリーンショットのロゴの真下にある通り「バズボット」である。

邦題は2024年7月29日に実施された日本語対応アップデートに合わせて付けられた。「ボット(bot)と呼べる部分が無いのに!?」と、ツッコみたくなる気持ちは我慢いただきたい。抑えられないなら6秒間深呼吸をしよう。

ちなみに2024年9月19日からは、Nintendo Switch版も発売中である。

小さいけどビッグなAIロボになって、秘めたる力と無限の可能性を示そう!

西暦4096年。発明家のエミリー博士と世界的権威のノルバート教授の共同研究により、トースターほどの大きさながら、ビッグな思考回路を持ったAIロボ「ZX8000」が誕生した。

エミリー博士とノルバート教授は、そんなZX8000の秘めたる力と無限の可能性を確かめるべく、研究所内に設けた特設エリア「テストチャンバー」で動作テストを実施。ZX8000は2人の命に従い、テストに挑むのだが、その裏で、あるひとりの科学者も研究所内に秘蔵された最終兵器を奪うため、行動を開始していた……。

そんなオープニングストーリーと共に幕を開ける本作、『バズボット』は横スクロールのアクションゲームだ。プレイヤーはAIロボ「ZX8000」を操縦し、様々なトラップと迎撃ロボットが巡回する危険なステージを潜り抜け、出口(ゴール)への到達を目指す。

最終目標は生みの親のエミリー、ノルバートが課した試練を乗り越えること……なのだが、諸々あって、悪の科学者の野望に挑むという展開になる。その後、どういうストーリーになっていくのかは本編でお確かめを。

アクションゲームとしての作りはまさに王道。ステージを進み、ゴールへの到達を目指すことを基本に本編が展開されていく仕組みだ。ZX8000のアクションに関しては移動、ジャンプを主軸としていて、攻撃系の技は一切所持していない。また、精密系に属するアクションゲームらしく、トラップや迎撃ロボットに接触したり、攻撃を受けてしまうとZX8000は即、大破。すぐさまステージのスタート地点へと戻されてやり直しになる。

しかしながら、残機の概念はないのでゲームオーバーはなく、いくらでもやり直し可能。まさに精密系に属するアクションゲーム、と言わんばかりの定番を網羅した作りとなっている。

ただ、ステージによっては敵と戦う場面も用意。その際はステージ内に仕掛けられた砲台を起動して対処する形になる。敵の中にはボスも存在。これも登場するステージでは基本的に戦闘となるのだが、ZX8000の性能上、戦い方としては相手の自爆を誘う、あるいは追いつかれないところまで逃げ切るといったものになっている。

アクションに関しても終始、移動とジャンプだけという訳ではない。ある程度、ゲームが進むとZX8000を強化させる装置がスタート地点に置かれたステージが登場。

そこに待機することで、新しいアクションがZX8000にインストールされ、使えるようになるアップグレード要素が備わっている。装置を通して追加されるアクションは2段ジャンプ、ダッシュ、連続ジャンプと複数あり、以降のステージも追加アクションを踏まえた構造へと変化するようになっている。

こうした個性付けを図っている部分もあるが、根っ子は移動とジャンプを基本に難関を潜り抜けていく遊びに徹した作り。操作も複雑さは皆無で、まさにジャンプアクションゲームの基礎と王道を突き詰めた作品に仕上げられている。

ジャンル初心者への手厚いフォローと、理にかなった設計が光る

しかしながら、精密系とも言われるタイプに属するアクションゲーム。それらを象徴するタイトルを知っていれば、難しいゲームとの先入観は持ってしまうだろう。

事実、トラップや敵に1回接触するだけで、問答無用でミスになるシステムの都合、難易度は高めである。しかし、普通にクリアするだけなら、そんなに難しくない。むしろ、選択によっては楽だったりする。

というのも本作、プレイヤーへのサポートが非常に手厚い。特に象徴的なのは難易度で、精密系特有のシステムに抵抗感があるプレイヤーを対象としたライフ制(ダメージ制)の選択肢を設けているのだ。

本作に用意された難易度は「すごくかんたん」「かんたん」「ふつう」「ありえん」の4種類。このうち、「ふつう」以外はライフ制で、精密系特有のシステムとは無縁の、純粋なジャンプアクションゲームとして楽しめるのだ。

しかも「ありえん」以外の難易度はゲーム中、ポーズメニューからいつでも切り替え可能。おまけに簡単な難易度へと切り替えてしまうと、上位の難易度が選べなくなるみたいな制約もない。

さすがに選び直した時は、ステージのスタート地点から強制的にやり直しになるが、それでも「こんなの無理!」って場面に遭遇しても、簡単な難易度へと切り替えればいいという選択肢が選べるのは良心的。おかげで精密系に限らず、アクションゲームがそれほど得意でないというプレイヤーにも門戸が開かれており、非常に柔軟性のあるゲームバランスを実現しているのだ。

中でも「すごくかんたん」はライフが多いのに加え、敵やトラップの量も減少するなど、凄く気軽に楽しめる難易度になっている。なので、単純にストーリーだけを楽しみたい、あるいは「ふつう」以上の難易度に挑む前にステージの構造などを把握しておきたい際にはオススメだ。

基本難易度たる「ふつう」も、精密系特有のシステムが解禁されるものの、非常に理にかなったバランスに調整されている。そもそも本作、ゲーム全体のスピードがそれほど早くない。比較的ゆったりしたテンポでどのステージも進行するのに加え、トラップや敵もその速度を踏まえた動きや攻撃を仕掛けてきたりと、不意打ちされる心配が少ないのだ。

ステージ全体の構造が把握しやすいレイアウトが採用されている影響も大きい。順路に沿って進んだ先に何が待ち構えているか、到達するまでの間に分かるようになっているので、どんな動作で対処すればいいかという計画が立てやすいのだ。おかげでミスしても、プレイヤー自身の操作、判断ミスだと自然に納得できる。

これに加え、移動速度も速くないから焦りの感情も生じにくい。ダッシュのアクションを駆使して乗り越える場面、逃亡することが勝利条件のボス戦は例外になるが、それでも理不尽とは一切感じさせない徹底した気配りもあって、楽しく取り組めるだろう。そんな具合にプレイヤーが遊びやすいと感じる配慮がレイアウトも含めて心がけられていて、心地よい難しさとなっているのだ。

よって、いきなり「ふつう」で挑んでしまっても問題ない。むしろ、この難易度ほど本作の理にかなったバランスの妙を味わえるので、筆者としては初回プレイ時に選択することを強くオススメしたいところだ。

なお、残る「ありえん」はライフ制ながら、すべてを失ってしまうとゲームオーバーになり、本編最初のステージからやり直しになるという苛烈なものになっている。これに関しては、覚悟が決まったら挑むことを推奨する。

難易度と遊びやすさへのフォローが傑出している感じだが、肝心のステージの作りと本編全体の構成も非常に練られている。基本、トラップや敵を乗り越え、ゴールを目指す展開が中心だが、追加アクションによる構造の変化、ボス戦を始めとするイベントの挿入によって、起伏ある内容に仕上げられているので、退屈することがない。

おまけにステージによっては、精密系のアクションゲームとしては少し珍しい横スクロールのシューティングステージもある。こうした意表を突く展開が用意されている所にも、本作の構成がいかに手の込んだものになっているのかが察せるだろう。

美麗なドット絵とおぞましいタイムアタックも必見の良作アクション

ただ、ステージに関しては惜しい所もある。ボリュームが少なめなことだ。本作は精密系のアクションゲームとしては、収録ステージ数がやや控え目の規模になっている。そのため、クリアに要する時間は難易度と腕前によっては1時間を切ることもある感じだ。

しかしその分、ステージ内に散らばった「ボルト」の全回収、目標タイム内のゴール到達(タイムアタック)といったやり込み要素は充実している。特にタイムアタックは、この手のアクションゲームに慣れたプレイヤーでも手を焼く難しさとなっている。なぜかと言えば、「そんな時間内に到達できるの?」と二度見してしまう時間に設定されているためだ。

そして、設定が設定だけに、目指すとなればゲームの様相が大きく変わる。なのでもし、普通にエンディングを迎えて物足りないと感じたらタイムアタックに挑んでみていただきたい。精密系アクションゲームとしての本気を目にするだろう。

ゲーム以外の箇所になるが、本作はグラフィックと音楽の完成度も極めて高い。グラフィックに関しては、光の表現も活用した高精細なドット絵が異彩を放つ仕上がり。中でも背景周りの作り込みは傑出していて、背後でキャラクターが動いていたりといった細かい作り込みには感心すらしてしまうだろう。

音楽もオシャレで8ビット風の表現も盛り込んだ楽曲が揃っていて、各ステージの展開を盛り上げる。さりげなくボーカル付きの曲もあったりと、その力の入れようにはグラフィックと並行してこだわりの強さを感じさせられるだろう。

ちなみにサウンドトラックはSteamで販売中である。ゲーム本体とセットになったバンドル『Badbert’s Evil Plan – BZZZT Bundle』もあるので、興味があればそちらもどうぞ。

他に2024年7月29日のアップデートで実装された日本語翻訳も盤石で、違和感のある言い回しは一切なし(※邦題は除く)。ストーリー自体はロボットをテーマにした作品としては割と定番の内容で、終盤に若干、勢い任せの激しい展開があったりはするが、エミリーとノルバートを始めとする個性の強いキャラクターたちの会話劇で楽しませてくれる。ちょっぴりゆるい感じのテキストフォントにも注目だ。

全体的に洗練された仕上がりの本作だが、ややキャラクターの当たり判定を大きく取ってしまっているためか、時折、避けたと思ったら当たっていたという判定を喰らう場面がある。特にダッシュでレーザーを潜り抜ける場面で生じやすい印象だ。

また、全体的にゲームテンポは緩やかながら、中盤以降は精密系アクションゲームの本領が発揮される点には覚悟しておいた方がいいだろう。ボス戦も直接対決タイプが少なく、逃げたりするパターン中心なのが若干の物足りなさを誘う。

しかしながら、精密系アクションゲームとしての仕上がりは申し分ない。そして、プレイヤーへのフォローの手厚さもあって、入門編としてこれ以上なく適した作品にもなっている。控え目のボリュームも逆に言えば、手軽に遊べることの証左である。精密系アクションゲームがどんなものかを知りたい人にはまさに打ってつけ。

そして、アクションゲーム好きも歯応え十分のタイムアタックにバリエーションに富んだステージと、唸る要素盛り沢山であるので、ぜひお試しいただきたい。小さいけどビッグなAIロボになって、無限の可能性を見せつけよう。そして、世界を救え!?

[基本情報]
タイトル:『BZZZT: バズボット!』
開発:KO.DLL
クリア時間:1~2時間
対応プラットフォーム:Windows、Nintendo Switch
価格(税込):1,400円(Steam)、2,000円(Nintendo Switch)

◇購入はこちら
・Steam

・Nintendo Switch
https://store-jp.nintendo.com/item/software/D70010000086602

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