『Cosmic Kitchen<コズミックキッチン!!>』は、カレーのごとしゲームデザインが舌を巻く変身ヒーローRPGだッ!
変身(へんしん)。それは映画、テレビドラマ、アニメなどに登場する人物が姿を変え、超人的な能力を行使するヒーローなどになることを表す意味も持つ言葉だ。
日本では、1950年代に放送されたテレビドラマ『月光仮面』を皮切りにさまざまな変身ヒーローを主人公とする特撮作品が制作され、大きなブームを巻き起こした。アニメにおいても同様に主人公がヒーローへと変身し、戦う作品が数多く誕生している。
昨今も、変身ヒーロー系の作品は特撮系を含むテレビドラマ、アニメともに新作が絶賛誕生中。根強い人気を保ち続けると同時に、若い世代のファンも獲得しつつある。
逆にゲームの分野に焦点を当てると、変身ヒーローを題材にしたオリジナルの作品はテレビドラマ、アニメなどに比べるとやや少ない傾向だ。とは言え、その種の作品自体は多数存在し、一部には根強いファンを持つ名作も見られる。
そんな変身ヒーローを題材とし、カレーとのコラボレーションを決め込んだエキセントリックにもホドがある作品が爆誕した。
その名も『Cosmic Kitchen<コズミックキッチン!!>』。
2024年8月より「ふりーむ!」「フリーゲーム夢現」「PLiCy」にて配信中のWindows PC、ブラウザ向けフリーゲームである!
街で暗躍する秘密結社の野望を打ち砕くため、カレー屋の少女が戦う!
変身ヒーローとカレーがコラボレーションとは「何がどうしてそうなった!?」な感じだが、理由は単純明快だ。
本作の主人公を務めるのは、カレー屋を営む少女「マチコ」だからである!
時は西暦20XX年「ホープシティ」。世界一宇宙産業が盛んな都市にして、地上で最も宇宙に近い場所とされるこの街では今、人知れず大きな影が暗躍していた!
そんな光と影の戦いによる爆発に巻き込まれ、気を失っていたマチコは謎の生き物「ポットン」の叫びとともに目を覚ます。近くにはポットンのほかに泣きわめく赤ん坊、そして街を襲う影こと「秘密結社ブラックバタフライ」の戦闘マシーンの姿が!
ほどなく戦闘マシーンに襲撃されるマチコは、その圧倒的な力の前に敗北。だが、近くで赤ん坊が泣きわめく中で諦めきれないマチコは意地で立ち上がる。
その時!ポットンが持っていた謎の腕輪がマチコと共鳴。その腕輪をマチコへと渡すと、彼女は星光の騎士「アストライヤー」へと変身!
その圧倒的な力をもって、ブラックバタフライの戦闘マシーンを退けるのであった。そして、そこに現れた光の使者こと「特務機関セイントスパイダー」の一員「ティーポ」に救助されたのち、マチコは街で暗躍するブラックバタフライとの戦いに巻き込まれていくのだ。
以上が本作のオープニングで語られるストーリーのあらましである。
要はカレー屋を営む少女が突然、変身ヒーローになってしまい、悪の組織との戦いに巻き込まれるハメになっちゃった的ストーリーである。「カレーは完全にこじ付けじゃないか!」と思うかもしれないが、断じてそんなことはない。くわしくは後ほど。
改めて、本作のゲーム内容を紹介しよう。基本的にはエピソード方式で展開されていくRPGだ。プレイヤーは主人公のマチコとその仲間たちを操作し、舞台であるホープシティの各地で発生するイベントをこなしながらストーリーを進めていく。
ホープシティ各地への移動は、各エリアの名が連ねられた専用メニュー画面から選択・決定する形で実施される。そのため、いわゆる全体マップは存在しない。局地マップを中心に探索、イベントなどを進めていく構成となっている。
また、エピソード方式ということで、一定の区切りを迎えると次のエピソードへと移行。そのまま新たなストーリーが始まるという、いかにも変身ヒーローを題材にした作品らしい構成になっている。ちなみに次回予告付きである。
だが、ご安心あれ。ネタバレはあまりない!各話タイトルも、その後の展開が露骨に分かるようなものにはなっていないので、身構える必要はナッシングだ!
戦闘は一部マップに登場する敵シンボルに接触したり、イベントなどで発生。システムとしては敵味方が入り混じり、順番が回ってきた者から行動するコマンド選択型。画面構成はサイドビュー式で、画面下には次に行動するキャラクターをアイコンで記したタイムラインも設けられている。
ただ、特徴的な要素がいくつか。ひとつに「コスモパワー」。タイムラインの上に表示されたゲージで、主に敵を倒すなどの行動を取ると蓄積されていく。
また、味方のターンが回ってきた時に(一部の味方キャラクターを除き)「スターポイント(SP)」なるものが自動で補充される。SPは「ウェポン」と呼ばれる射撃系の武器や、必殺技(後述)を使う時に必要なエネルギーである。コスモパワーが沢山貯まっているほど補充量も大きく、SPを消費する技を積極的に繰り出せるようになる。
そして「コスモパワー」が一定量に達していれば、「変身」コマンドでマチコをアストライヤーに変身させられる。アストライヤーになれば、前述した「必殺技」が使用可能に。基礎ステータスも底上げされるため、ボスなどの強敵を相手する時の切り札となってくれる。
このような要素が備わっていて、仕組みこそコマンド選択型ながら、独自の戦術が試されてくるようになっている。さらに戦闘に挑むと「スタミナ」なるゲージが減少。
本作は戦闘終了後に回復が実施されるのだが、その度合いがスタミナのゲージ量に応じて変化。低いとわずかしか回復できなくなってしまうのだ。それどころか、戦闘終了時にダメージを受けていなかったとしても、ゲージが少ないと戦闘開始時の体力が低い状態になる。つまり、スタミナの残量を気にせず戦闘を繰り返すと、返って危機的状態に陥ってしまうのだ。こんな疲労を表すかのようなシステムも本作には備わっている。なお、スタミナの回復自体はマイホームでの休息、もしくは専用の回復アイテムを使えばいい。
そんなマイホームではスタミナの回復以外にも、カレーを作ることが可能。これも本作の特徴的な要素にして、戦闘に重大な影響を及ぼすもの。カレーを作って食べることによって、基礎ステータスの底上げ、いわゆるバフをかけられるのだ。
この効果はマイホームで休息するまでの間、持続。さらにどのステータスを底上げするかは「スパイス」「具材」「味付け」の3項目の選択と調整に応じて変化する仕組みになっている。作り方によっては、特定のステータス強化に偏らせたりも、バランスよく底上げさせることもできてしまうのだ。そして、このカレーを食べているか否かが、アストライヤーへの変身と併せて強敵との戦いのカギになる!
それゆえに本作は、カレーが重要な存在として位置づけられた変身ヒーローRPGとなっているのだ。「なんでやねん!」と言っても、そういう設定なのだから仕方がない!ついでに言うと、ストーリー上でもきちんとカレーである意味と必然性が語られているぞ!その辺の詳細はゲーム本編をプレイして、その目で確かめてくれ!
ただ、そんなカレーと変身ヒーローの組み合わせを除いても、野心的な試みが多いRPGなのは察せるかと思われる。
度肝を抜く独自要素の数々!カレーのごとく濃厚で深い味わいのゲームデザインが炸裂!
だが、ここで衝撃の事実をカミングアウトをしよう。実はここまで紹介してきた本作の特徴的な要素というのは、全体の一部にすぎない。そもそも特徴的な要素というものは、これ以外にも山ほどある。どれだけの量があるのかと言うと、それらをひとつずつ解説するだけで、記事の10割が埋まってしまうほどだ!
独自要素てんこ盛りのRPG。それこそが本作最大の魅力にして、見所なのである。
記事の10割が埋まってしまうと言及したように、本当にもの凄い量の要素があるため、どれも紹介は最小限に留める。ひとまず、代表的なものを列挙するならば、以下の6つだろう。「6つも!?」と思うかもしれないが、マジで6つである。
探索のたびに階段の位置が変化する仕掛けなど、ランダム要素が組まれたダンジョンマップ「古代遺跡」。
古代遺跡内で敵を倒すと溜まっていく「スターゲージ」と、それが3つに達すると一定時間、接触するだけで敵シンボルを倒せるようになる「フィーバータイム」。
遺跡で手に入れた「コアキューブ」を装飾品などに変換する「キューブ変換」。
コスモパワーゲージを侵食し、敵側の強化を促す「ヴォイドパワー」。
そして、コスモパワーを消費して2回行動を発生させる「スターアクセル」だ。
こんな要素も先んじて紹介したのとは別に存在するのだ。しかも、これもまた全体を構成する一部。ほかにも遺跡の最深部到達時の報酬に影響を及ぼす「スコア」、アストライヤーの属性を変える「フォームチェンジ」、より高いステータスアップ効果が得られるカレーの作成を可能にする「調理レベル」などといったものが用意されている。
ひとつずつ解説するだけで、記事の10割が埋まってしまう意味がだいたい分かったかと思われる。誇張抜きに本作、独自要素てんこ盛りもてんこ盛りなのだ。それも本編が進むたびに解禁されて違った戦術が試せるようになったり、難易度までもが変化する。
まるで調味料の追加で味の変化を繰り返すがごとし構成にまとめられているのである。特筆すべきは、この変化続きの展開が最終エピソードまで続くこと!
さすがに序盤から中盤に比べると、変化の度合いは大きくないのだが、それでも新たな独自要素が解禁されて使用可能になる展開は用意されていて、それまでのエピソードとは違った体験をプレイヤーに提供するのである。
正直、その押し寄せる独自要素の波には、「どこまで食わせる気だ!」となってしまうこと請け合い!それも新規の要素が続々押し寄せてくるゆえ、マンネリを感じることもない。「スターアクセル」のように既存要素にちょい足しするレベルのものでも、それまでとは違った戦い方が可能になるのもあって、十分な変化があるのだ。
さながらカレーのごとしゲームデザインとも言える、驚くべきまとまり方をしているのだ。誇張抜きに手の込み様が凄い。しかも、どの要素も難易度を破綻させるレベルの影響力や存在感は無く、あくまでも面白さをプラスする塩梅に留められている。
その辺もカレー作りのごとしバランス感覚が発揮されている。これらの要素を段階的に解禁させていくスタンスを取ったのも適切であると同時に、エピソード形式の本編構成がこれ以上ない親和性を発揮しているのも注目に値する。
エピソード形式だからこそ、先に進むことによる変化という、期待感を持たせられるからだ。そして、実際にその期待に応える展開を各エピソードでは見せてくれる。だからこそ、次のエピソードへと進めたくなる気持ちも刺激させられると同時に持続する。
それほどまでに本作、もの凄い密度とバランス感覚の良さが異彩を放つ内容に完成させられているのだ。これに加えて、ストーリーも見所多し。変身ヒーローと善の組織の者たちが、街を脅かす悪の組織と戦う、絵に描いた勧善懲悪モノだが、中盤が終わりを迎える辺りからは壮大なSFモノへと発展していくのだ。
その辺もまた「凝りすぎや……」と感服させられる仕上がりである。どんなストーリーが展開されていくかは当然のように、その目で確かめていただきたい。おそらく中盤を越えた辺りになれば、まさに止め時が分からなくなっちゃうだろう。「Don’t Miss It!」である。
体感的ボリュームも大きい、味の濃さと深みが炸裂した力作
要素のてんこ盛り具合とは対照的に、本編全体のボリュームは中規模。エンディングを目指すだけなら、だいたい10時間以内に到達できるだろう。
ただ、もの凄い量の要素が存在するのもあって、体感的なボリュームは大きい。人にもよるが、おそらく2倍ぐらいの差を感じるかもしれない。また、サブイベントを始めとする寄り道を挟んだりすれば20時間を超える。それも要素のてんこ盛りぶりから、体感的には時間以上のものを感じてしまうだろう。
また、難易度は意外に手ごわい。これまた本作を構成する要素のひとつで、紹介が漏れたものだが「属性」の相性によるダメージ差が地味に大きいため、装備を計画的に切り替えて対処しないと追い詰められやすい。「スタミナ」による体力減少と、途中から解禁される「ヴォイドパワー」への対処、「スターアクセル」の活用なども考えないと厳しいことになる戦闘もいくつかある。
逆に言えば、やり応えは抜群。特にボス戦は戦略が上手くハマった後に、(またまた本作を構成する要素のひとつで、紹介を割愛したものだが)必殺技の威力を大幅に高める「フィニッシュタイム」を決められた時の達成感は格別。他にも工夫次第で、戦闘をスムーズに進められる方法は多数用意されていて、そのような作戦や戦略を練る楽しみがしっかりしているところは好きな人にはたまらないだろう。
他にグラフィックもキャラクター全般はマップ、戦闘ともにオリジナルで、可愛らしく動くものに仕上げられている。音楽もこれぞヒーロー作品と言わんばかりの楽曲がチョイスされているほか、演出面でも変身バンクなどのお約束を網羅。さらにスキップ機能、次の目的地となるエリアを教えてくれるハイライト機能など、遊びやすさへの配慮も万全だ。
反面、要素が多いなりに考える必要のある個所は多く、プレイ感そのものはカレーのごとく重い。遊びやすさの面でも、カレー作成は一度開始してしまうと前の画面に戻れないといった若干、不便な部分もある。
それからグラフィックなのだが、立ち絵がパーティメンバー分しか用意されていないのがあまりにも惜しい。本編にはブラックバタフライの幹部を始め、個性的なキャラクターたちが多数登場するのだが、彼らには立ち絵が用意されていないのだ。いずれもキャラクターが立っていて、存在感も抜群なのに大変もったいない。全員分は難しいにせよ、せめてブラックバタフライの幹部勢には用意して欲しかったところである。
そんな「あと一歩」な部分もあるが、総じて本作が大変な力作であることは、ここまでの紹介からもよく分かるだろう。とにかく、色んな要素が詰め込まれて密度……いや、味が濃い。それらにさまざまな変化を及ぼす調味料的な工夫も盛りだくさんで、最初から最後までたっぷりじっくり堪能させてくれる。
まさにこれぞ、カレーのごとし味と香りと深みが詰まったRPG。この一連の魅力に少しでも興味を抱いたのなら、ぜひご賞味あれ!そして、あらゆる手を尽くして悪の組織を一網打尽とするのだ!合言葉はただひとつ。
アストライヤー、ゴー!
[基本情報]
タイトル:『Cosmic Kitchen<コズミックキッチン!!>』
作者:MS-R
クリア時間:10~11時間
対応プラットフォーム:Windows、PLiCy
価格(税込):無料
◇ダウンロード・プレイはこちら
・ふりーむ!
https://www.freem.ne.jp/win/game/32818
・フリーゲーム夢現
https://freegame-mugen.jp/roleplaying/game_12638.html