血を血で洗う長編ノベルゲーム『真昼の暗黒』。闇に次ぐ闇の末、全てが分からなくなる。
紙面、WEBを問わず、メディアに掲載されるニュース、批評は、それを書きまとめた人間の目を通したものである。それは当サイト「もぐらゲームス」も同じだ。
そのことを踏まえた上で今回、『真昼の暗黒』というノベルゲームを取り上げる。
ただ、
”ゲームの紹介兼批評記事でそんなことを前置きする必要ないだろ。”
”批評が書いた人の目を通した内容にまとまることなど、当然だ。”
そう物申したくなったのなら、ここで記事を読むのを止めていただきたい。
そのまま、ゲームをダウンロードして始めるのだ。
本作はフリーゲームとして「ふりーむ!」、「フリーゲーム夢現」、「ノベルゲームコレクション」にて配信中である。(※ノベルゲームコレクションはブラウザ版となる)
東京都多摩市。事件は夏の日の夕暮れ時に起きた。
2018年8月19日より公開された本作は、ある女性の失踪事件を描いたノベルゲームだ。
東京都多摩市。古い団地に昼間うたげ・ミサという二人の姉妹が住んでいた。
姉のうたげは市の役所で働く公務員で、妹のミサは小学五年生。歳にして10歳以上離れている。両親は、父親が九州地方に単身赴任中のため、現在、うたげが家事全般をこなしていた。
ある日、ミサは同級生の友人との約束で多摩駅近くまで出かける。
うたげはいつも通り、ミサの面倒を見つつ、全てを終えた後に市役所へと出勤した。
夕暮れ時、友人との約束を終えたミサは団地へと戻り、自宅のドアを開けた。
時間帯からして、既にうたげが帰宅しているかと思われた。
だが、その先にあったのは、大量の血痕と誰かが引きずられた形跡。
近くにあったバッグから、ミサはそれが姉のうたげのものであることを知る。
うたげは帰宅後、何者かに襲われ、姿を消してしまったのである。
ほどなくして警察が駆けつけ、現場の調査が始まる。ミサは下の階に待機していたが、突然の出来事に茫然自失の状態にあった。そんなミサの元に、事件被害者のカウンセリングを担当する暮方計(くれがたかず)なる男がやってくる。
冒頭の物語はこのような形だ。これから間もなく、ミサは計と関わり合いながら、事件の推移を見守っていくことになる。果たして、行方不明になった姉はどこへ。犯人は何者なのか。
内容としては、王道のサスペンス。そして、ゲームの流れも単純。物語を読み進めていくだけだ。しかしながら、本作は読み進める体験に着目した仕掛けが仕込まれていて、それを最大の魅力とする。
……分からない。
だが、その詳細を語ることは不可能だ。これ以上はゲームをプレイしてご覧いただきたい。
なるべく内容に触れないよう語るなら、”分からない”。
念のためだが、大量の血痕を残して消えた姉の行方、彼女を襲った犯人は途中で暴かれる。物語も最終的にはちゃんと幕を下ろす。
だが、”分からない”のである。サスペンスなら、次第に謎が解けていく過程が御約束であり、醍醐味だ。
ところが、本作はそうならない。”分からなくなっていく”のだ。
そして、あるタイミングを境に”真実”に辿り着くことになる。分からなくなるのに真実に辿り着くって矛盾しているじゃないか、と言いたくなるだろうが、本当にそのような展開が起きる。
そこから物語は結末へと向かっていくのである。
筆者個人の”目を通した感想”を書くならば、その過程は非常におぞましいものだった。作中で語られる個々のエピソードもさることながら、この物語がノベルゲームという形で描かれた理由に背筋が凍る恐怖を覚えたからである。
ノベルゲームは、アクションゲームやロールプレイングゲーム、シューティングゲームのようにプレイヤーが直接、キャラクターを動かす干渉要素に乏しいことから、”ゲームではない”と言われやすい。本作の場合、物語を読み進めていくことに終始するので、より声高に”ゲームではない”と言えてしまうところがある。
だが、本作は間違いなくゲームだった。
そうとしか言い様のないものに直面したのである。
この闇の果てには”なにか”がある。
”何が言いたいのかサッパリだ。”
”大げさすぎる。”
”普通のサスペンスにしか聞こえないぞ。”
”ノベルゲームなのだから、物語を読む以上のことなどない。”
”この記事の書き手は信用に値しない。”
……正直、何が言いたいのかは全く伝わっていないと思われる。
だが、それは正しい反応だ。端から筆者にそれを伝える考えはない。それに、非常に申し訳ないが、先ほどの記述の一部は嘘だ。
何故、そのようなことをしたのか、答えは簡単だ。
所詮、筆者個人の目を通した感想でしかないからである。
筆者は嘘を混ぜた内容にするのが最適と判断し、このようにまとめた。
他の方なら、全く違った考えに至るだろう。
そして、俺は詳細を語った内容にしてやる、と意気込むかもしれない。
だが、いくら足掻いても本作のことを語ろうとすれば、目を通したものに収束してしまう、どうしようもない現実に直面するだろう。
これだけは嘘でもなく、本当のことだと断言する。ゲームを問わず、どんな娯楽作品の批評も究極的にはそういうものだろうと言えば、まさにその通りなのだが……訳が違う。
先日に発表された「ティラノゲームフェス2018」ではグランプリを受賞した本作。その実績には一切の偽りはなく、完成度の高いノベルゲームに仕上がっている。そして、本作を語る人への疑念を強くする”なにか”が潜んでいる。
散々繰り返してきたが、内容が気になるなら今すぐにでもプレイいただきたい。
この記事に嘘が書かれた真の意味を探るのだ。
そして、最後に辿り着く”あるもの”を拝見して欲しい。
ここまで書いたことの全てを、”思いもしない場所”で知ることになるだろう。
いや、分からなくなるかもしれない。
最後に、本作には過度な暴力、出血、性表現が多く含まれる。特に性表現周りのテキストは苛烈なので、苦手な方はご注意いただきたい。推奨年齢は15~17歳以上が望ましい。
念のため、この情報も本当のことです。
でも、信じるか信じないかはアナタ次第。
[基本情報]
タイトル:『真昼の暗黒 / Darkness at Noon』
制作者: 隷蔵庫
クリア時間: 7~8時間
対応OS: PC(Windows)
価格: 無料
備考:対象年齢15~17歳以上(※過度な暴力、出血、性表現あり)
ダウンロードはこちらから
※ふりーむ!
https://www.freem.ne.jp/win/game/18312
※フリーゲーム夢現
https://freegame-mugen.jp/adventure/game_7376.html
※ノベルゲームコレクション(ブラウザ版)
https://novelgame.jp/games/show/1012