デジゲー博2023で見つけたおすすめ同人・インディーゲーム13選

イベントレポート,インディーゲーム

2023年11月12日、同人・インディーゲームの展示・頒布イベント「デジゲー博」が東京・秋葉原UDXの2階および4階にて開催された。11回目を数える今回は入場が事前販売チケット制から当日受付のみに変更され、より制限が緩和された形での開催となった。会場ではのべ220組が出展して例年と変わらぬ賑わいを見せていた。

本記事では取材陣が気になった同人・インディーゲームを13作品紹介する。読者の皆さんも気になった作品があればぜひチェックしてみてほしい。

昨年の記事はこちら

illuCalab.『ハートオブクラウン オンライン』

illuCalab.が開発中の『ハートオブクラウン オンライン』は、漫画家チームFLIPFLOPsが制作したデッキ構築型カードゲーム『ハートオブクラウン』のデジタル版となる作品。アナログ版『ハートオブクラウン』は自主流通のインディーボードゲーム作品としてスタートしながらも10年以上にわたって展開されている人気シリーズである。過去にもilluCalab.によるPC版が制作されていたが、今回展示の物は2022年発売の『ハートオブクラウン 第2版』をベースとしたファン待望の最新版であり、グラフィックも3D化されるなど大幅なリニューアルが施されている。

ルールはデッキ(山札)から引いてきた土地カードを使用してお金を捻出した後、そのお金を使って様々な効果のある行動カードを購入する事を繰り返し、デッキをその場で強化しながら勝利の為の得点を稼いでいく『ドミニオン』スタイルのデッキ構築型ゲーム。『ハートオブクラウン』ならではの要素として「王位の継承権争い」をモチーフとしており、まず王位継承権を持つ姫君達からひとりを「擁立」し、擁立後に勝利条件である「戴冠式」を後押しする「継承点」を大臣や議員などから入手していくという2つの段階を経るゲーム展開が特色となる。擁立する姫や購入できるカードの品揃えに応じて千差万別の戦略が立てられ、繰り返し新鮮に遊ぶことができる点が長く愛されているポイントだ。

試遊では3D空間で盤面が表現されながらも軽快な動作で対戦を楽しむことができた。オンラインのタイトル名が示すようにネットワーク対戦に対応予定であり、対戦プレイがはかどりそうだ。本作は2024年リリース予定となっているほか、近日中にクラウドファンディングの展開が予定されている。続報を注視したい。
(真野 崇)

Website: https://illucalab.com/

おはな世界『ノウ』

サークルおはな世界が開発中の『ノウ』はコラージュ技法を使用した独特のビジュアルスタイルが特徴の2D探索型アドベンチャーゲーム。2024年にリリース予定となっている。

目を開けばそこはサイケデリックな極彩色の世界。プレイヤーは記憶喪失の少年としてその世界の学校に流れ着き、学校を足がかりに世界の秘密について探っていく事となる。頭が様々な色でぐちゃぐちゃしている「グチャ」や学校の「センセー」によれば、この世界では人間とカイブツが戦争をしており、学校は人間がカイブツたちに対抗するための組織になっているという。会場では学校の「探索班」に組み込まれ、学校の門の外へと旅立とうとするところまでをプレイすることができた。

冒頭で現れる目玉の存在も奇妙さを引き立てる。この目玉からは頭ごなしに指示に従うように言われ、探索の途中でもあれやこれやと指示を実際に出してくる。筆者がプレイした際には指示に逆らうことなく進めたが、目玉が一体何者で、何の目的で自分に指示を出しているのか?この目玉の指示を裏切ったらどうなるのか?という疑念がつきまとう。何もかもが謎めいていて気にならずにはいられない一作だ。
(真野 崇)

Website: https://ohanasekaigame.wixsite.com/know

72 Studio『DRINKRIME』

72 Studioが開発中の『DRINKRIME』はゲームボーイライクなビジュアルとサウンドが特徴のコマンド選択式アドベンチャーゲーム。ある目的のために罪人を集めているという呪いの酒瓶「ジン」と共に、罪を隠す被疑者を”ジンモン”で自白させて捕らえる事が目的となる。

本作のメインとなる”ジンモン”は、画面上部に出ている穴埋め問題の答えを、被疑者との会話の中で下線が打たれたキーワードから探し出すことで進めていく。相手の話している事について「ひきだす」でさらに追及したり、時にはジンの呪いの力を借りるなど、あの手この手で証言を掘り下げよう。途中、不利になって逃げ出そうとする被疑者を先回りでブロックするミニゲーム等が挟まるなど、反応のバリエーションの豊富さが楽しい作品となっていた。

本作はゲーム投稿サイトunityroomにて体験版がプレイ可能なほか、2024年1〜2月ごろにSteamでのアーリーアクセスの開始が予定されている。試遊した際のエンドロールでは警官や鳥のような羽根が生えたキャラクターなど様々な人外キャラクター達が登場することが予告されており、彼らが”ジンモン”を前にしてどのような面を見せるのかに注目だ。
(真野 崇)

Website: https://www.72studio.tokyo/

AQUA FACTORY『エッグウォーパズル』

『エッグウォーパズル』は同人サークルAQUA FACTORYが開発中の対戦型落ちものパズルゲーム。縦・横・斜めに同じ色のブロックを3つ並べると消えるという基本ルールのもと、上から出現するブロックを落下させて積み上げていく「ドロップスタイル」と、下からせり上がるブロックを入れ替える「カーソルスタイル」の2タイプによる異種混合戦となっている。

本作の独特の要素として、消した後のブロックの落下中にブロックが繋がって消える「空中連鎖」が挙げられる。空中連鎖の存在によって思わぬところで連鎖が発生しやすい一方、ブロックを積み上げて狙って連鎖を組み立てることが難しくなっており、ブロックが消えている間に更に消すことで連鎖が繋がる「後付連鎖」の存在と合わせて頭で考えるよりは指先の操作量で勝負するタイプと言えるだろう。

他、多数のキャラクターから2名を選んでスキル構成を構築できる点や、特定条件で大連鎖の種を呼び出せるバーストモードなど、落ちものパズルゲームとしてはかなり多くの要素が混ぜこぜになった豪快なカオスさが楽しめそうだ。本作は11月22日より早期アクセスの開始が予定されており、期間は半年から1年程度となっている。
(真野 崇)

Website: https://aqua-factory.dev/ewp/

Aqua Siren『Brave and Desire』

Bardaxel氏が開発中の『Brave and Desire』は戦士、魔法使い、シーフなどの様々な職業のキャラクターから5人のパーティを作りダンジョンの踏破を目指すローグライトRPG。縦4マス×横3マスからなる隊列システムが最大の特徴となっている。

各キャラクターは前列・中列・後列の何処に居るかによって使えるコマンドが完全に異なっており、使用したいコマンドに応じて隊列を入れ替えながら戦う必要が出てくる。例を挙げると、HP回復の魔法は後列からしか唱えることが出来ず、かつ隣接1マスにしか届かないため、HPが減った前列メンバーを回復させたい場合は一度中列に下がる必要がある。しかし盾となるべきメンバーが治療のために後ろに下がっている間は前列に残っている他のメンバーに攻撃が集中してしまう、といった具合に立ち回りに頭を悩まされることになる。

ダンジョン内は主に2択~3択の選択肢を選んで進んでいくノンフィールド風味の進行だが、安易に安全なルートを取り続ければ最深部のボスを倒せるだけの成長度を蓄えられなくなるなど、戦術面のみならず戦略面でも重厚さを感じさせる。じっくり時間をかけて考えながらプレイしたい一本だ。本作は2024年リリース予定となっている。
(真野 崇)

Website: https://twitter.com/Bardaxel

水無川旅館『Hijack ヒンジャノホコリ』

川向薫氏の個人サークル水無川旅館の『Hijack ヒンジャノホコリ』は、浮遊するドローンをジャックし味方に付けながら進んでいくシステムが特徴の2D横スクロール型アクションゲーム。展示ブースでは最初の1ステージが体験できたほか、旧作にあたる『Hijack ヒトノムクロ』の頒布も合わせて行われていた。

今作ではジャックしたドローンはカードの山としてストックされ、山札からめくって順次呼び出し滞留しない召喚攻撃のような形で扱われる。あらかじめ山札を複数枚めくって用意をしておいてから、ドローンを次々と呼び出して自機と合わせて畳みかけるように攻撃を仕掛けるのが爽快だ。またドローンの中には体力回復の効果を持つものがあり、攻撃と回復を同時に行うというちょっとした万能感も味わえた。

ドローン以外の部分では近接・射撃の2種の攻撃と壁蹴りジャンプを駆使して障害を乗り越えたり、主人公ら少女キャラクター達同士の掛け合いが楽しめる奇をてらわない正統派アクションゲームとなっていた。本作は12月末開催のコミックマーケット103にて頒布予定となっている。
(真野 崇)

Website: https://twitter.com/bydriv

tozicode.com『シカクケス』

今回の会場内で最も物珍しかったものを挙げるとするならば、クランク付きポケットゲーム機「Playdate」で動作する作品であるtozica氏制作のパズルゲーム『シカクケス』で間違いないだろう。氏によれば来場者の中には筆者を含めて初めてPlaydateに触れるという人が多かったとのこと。なお、その小ささ故に写真撮影が困難を極めたことはご容赦頂きたい。

プレイヤーは上から下に向けてブロックを発射し、2マス×2マス以上の四角形を作り出すことでブロックを消していくというのが基本ルールで、縁取りができていれば複数のブロック塊を巻き込む形で四角形を作って消すことが可能。四角形が作れそうにない場合はエネルギーを消費してボムを投射して直接ブロックを破壊することもできる。また、エリアをクリアするごとに3種類提示されるパワーアップから1つを選ぶというローグライト要素も盛り込まれている。


(※撮影した写真を拡大して掲載しています)

徐々にせりあがるブロックが最上部まで到達するとゲームオーバーとなるが、Playdate本体に付属するクランクを回転させることでブロックをスライドさせ巻き戻すことができる。スライドにはボムと同様にエネルギーが必要になり無制限に行えるわけではないが、クランクが外付け装置のようになっていることからちょっとしたズルをしている気分になれたのがユニークな体験だった。本作はitch.ioにて配信中となっている。
(真野 崇)

Website: https://tozicode.com/

フツララ『CultureHouse』

ある生化学者が暮らしていた住宅兼研究施設「カルチャーハウス」で、「ジェニオ」と呼ばれる謎の生命体の培養に取り組む育成&アドベンチャーゲーム。正確には1人称(主観)視点で展開される、ウォーキングシミュレーター風のアドベンチャーゲームとなる。本編はカルチャーハウスこと「イプセ邸」の内部を行き来しながら、様々な器具などを用いて「ジェニオ」を”泊まり込みで”培養していく。

生命体の培養に取り組むという内容の異端さもさることながら、細胞の素をピペットで吸い上げたり、シャーレの培地に塗るといった現実さながらの本格的な実験パートが大きな特徴となっている。ただ実験に黙々と取り組み続けるだけでなく、時には邸宅内に現れる”違和感のあるもの”を発見してはカメラで撮影し、そこから謎の結晶を得るという探索に挑むイベントも用意。また、ストーリーに応じて周囲の様子が奇妙になっていくという仕掛けも凝らされている。

特に”違和感のあるもの”の捜索が始まるようになると、邸宅内の様子は徐々におかしくなっていく。同時にストーリーも奇妙な展開を見せ始め、思いもしない事態が起こる。そもそも、なぜジェニオを培養しなければならないのか、この邸宅で暮らしていた生化学者はどこに行ってしまったかなど、ストーリーには他にも多くの謎がある。それらを培養の仕事を通して明らかにしていくという流れだけでも相当な珍しさがあり、プレイヤーを自然に引き込む作りになっている。


▲「イプセ邸」を紹介するパンフレットと「ジェニオ」のカードも配布されていた。

今回試遊できたのは序盤の7分間と短めだったものの、生命体の培養に”違和感のあるもの”の探索、それと共に一変する邸宅内といった作品特有の売りと異端さは十分に味わえる内容になっていた。写実的なグラフィックも見た目の美しさもさることながら、”違和感のあるもの”の存在によって、どこか不気味な雰囲気を醸し出しているのも印象深い。プレイヤーの案内役として登場する女性、「ノモス=ゾーイ」の無機質な笑顔と立ち振る舞いもまた然りである。

完成は2025年と結構先になる予定だが、Steamではすでに作品ページが開設済み。題材のユニークさもさることながら、シュールレアリスムな要素を持った世界観とビジュアルに惹かれるのなら、要チェックの新作だ。
(シェループ)

Website: https://futurala.com/culturehouse/

ポッピコーン『Dear Flower』

白黒(モノクロ)の手描きグラフィックが特徴のポイント&クリック型アドベンチャーゲーム。主人公の少年を操作し、横スクロール構成のステージ内に設置された仕掛け(パズル)を解きながら、先へと進んでいくという単純明快な内容である。

ただし、本編にはテキストを用いた表現・会話イベントなどは一切ない。そのため、仕掛けの手掛かりやストーリーは、周りの背景などを元に推理・考察して探っていく形となる。また、そうしたスタイルもあって、ストーリーの全容も謎に包まれている。タイトルおよび「届けたい思いを花に込めて」というキャッチコピーから、花にまつわるストーリーが想像されるが、今回、体験できたバージョンでは花にまつわるものは確認できなかった。むしろ、何かの装置や石碑(?)といった、花とは無関係なものが目立っていた。さらに登場キャラクターも少年以外に女の子とロボットがいるようだが、こちらも今回は未確認。ただ、女の子もロボットも、少年と同じく直接操作して仕掛けを解いていく展開が用意されているらしい。しかも、それぞれに違った”視点”があるとかないとか。

今回体験できたのは、全体のごく一部にして、ゲームの基本部分に限定されていたが、一連の謎の多さから「どんな世界観なのか?」「何を描くストーリーなのか?」と、プレイ後にも余韻が残る内容だった。すべての仕掛けを解き終えた後に発生した、魔訶不可思議なイベントがそれを生み出したような感じだ。また、パズル自体も装置の特徴など、視認できる範囲内から法則性を見出すなど、テキスト表現を採用していないなりの観察力を試す作りになっていたのが印象深い。難易度もほどよく、ある程度ながら総当たりによる攻略も許容したバランスになっていたのが面白い。

試遊ではヘッドフォンを装着してのプレイが推奨されるなど、サウンド面にもこだわっているようで、実際、独特な雰囲気を味わいつつ一連の展開を楽しめた。すべて手描きで作られたキャラクター、背景にもこだわりが感じられ、特に前者の可愛らしい動きには注目だ。発売は2024年で、スマートフォン(iOS、Android)とPC(Steam)を予定しているとのこと。世界観や雰囲気にフォーカスしたアドベンチャーゲームが好きな人には注目の1作だ。
(シェループ)

Website: https://www.popiicorn.com/

lidlocks『黒ニ狂 [クロニクル]』

狂気の絵師「ルイス」の遺作で、連作肖像画「エフェクター・シリーズ」のモデルとなった人物たちとの戦闘に挑みながら、ルイスの遍歴に迫っていくリアルタイムストラテジー(RTS)。作者自ら『にゃんこ大戦争』風と語る通り、戦闘システムは同作をオマージュ。「エフェクター」と称されたユニットを戦闘フィールド上に召喚し、敵対する連作肖像画のモデルたちと戦闘を繰り広げつつ、相手側の拠点制圧を目指すというものになっている。

本作ならではの特徴としては、戦闘フィールドが奥行きのある3D俯瞰視点になっていること。そのため、ユニットの召喚および進軍ルートも手前や奥があったりなど、細分化されている。位置の概念も存在し、ユニットがどちらに向かって進むかを考えたり、逆に敵はどこから進軍してくるかを確かめつつ、最適な一手を打っていくことが求められてくるようになっている。実際、戦闘中に一部のユニットが前線の隙間を潜り抜け、拠点まで単騎で到達する様子も見られ、戦術次第では短期決戦を仕掛けることも可能なようだ。


▲ストーリーとは別にデイリーチャレンジ、イベントなども用意される模様。

また、対決する連作肖像画のモデルたちはすべて歴史上の著名な人物で、シェイクスピア、モーツァルト、ウィリアム一世といった名だたる者たちがルイスの独自解釈による”歪んだ”姿で登場。本編は彼らの描かれた肖像画を選んで、それぞれの戦いに挑んでいくという一種のボス戦特化型の構成になっている。ただ、肖像画のモデルたちは敵専用という訳ではなく、プレイヤー側のユニットとして手に入れることも可能。手に入れる手段は「作画召喚」ことガチャになっていて、引き次第では戦力の大幅な強化も夢ではないとか。他に連作肖像画のモデルたちは、著名なクリエイターの方々によってデザインされていて、いずれもそれぞれの個性が強く滲み出た仕上がりになっている。

本作はスマートフォン(iOS、Android)向けに基本無料の形式で配信予定。それ以外にもPC(Steam)版も予定されており、スマートフォン版とは異なる買い切り型での展開が検討されているようだ。仮に買い切り型での展開が決まった場合は、エフェクターの入手方法も違ったものになるとのこと。連作肖像画のデザインもさることながら、世界観とストーリーにも独自の設定が凝らされているなど、完成途上の現在でも手の込みようが伝わってくる仕上がり。RTSとしてもベースは著名作のオマージュながら、独自の工夫が見られるので、ストラテジー系のゲームが好きな人にも必見の新作だ。
(シェループ)

Website: https://lidlocks.jp/

株式会社PoisonGames『Unbelievaboom!』

端的に言えば、サードパーソンシューティング(TPS)とサッカー(フットサル)を織り交ぜた対戦型アクションスポーツゲーム。ハンドガン、サブマシンガン、弓矢、そして爆弾(ボム)といった武器で相手チームの選手たちに攻撃を仕掛けつつ、ボールを蹴っ飛ばしてゴールへと叩き込むことを目指す。試合は3対3のチーム戦で、最終的に試合時間内に最も多くのゴールを決められたチームが勝ちという、いかにもなサッカー(フットサル)。だが、試合中には銃撃戦が繰り広げられ、あちこちで爆発も起きては、その爆風でボールも乱れ飛ぶという、とんでもない展開が繰り広げられる。

もう、何がこのゲームの特徴かは話すまでもないと思う。まさにカオスの極み。しかも、本作には”某大乱闘”の要素も採用。銃撃などで相手選手を攻撃するとダメージが蓄積されていき、100に達すると場外に勢いよく吹っ飛ばされ、そのまま復帰を試みなければ落下して一時的に退場となってしまうのだ。本作ではこれを「バースト」と称している。

さらにバーストされると、自チームのゴールポストが大きくなるというペナルティが発生!何度も繰り返せばゴールポストはさらに大きくなり、容易にゴールを決められやすくなってしまうのだ。これは相手チームも同様。そのため、試合中は過度にダメージを蓄積しないよう立ち回ることが重要。また、本作には「スキル」なる技もあり、これで銃弾を防ぐ壁を作り出すのもダメージ蓄積を抑える戦術のひとつとなっている。万が一、バーストされた時にも復帰用のアクションがあるので、これを素早く繰り出せるか否かがその後の展開を大きく左右する。そのようなこともボールを蹴り、ゴールを決めるのと並行して意識しなければならないので、とにかく気の休まる暇なし!もはや”異次元”としか言い様のない駆け引きが味わえるようになっている。

試遊ではbot操作によるチームに挑むシングルプレイのほか、ローカルのマルチプレイも楽しめた。製品版はオンラインにも対応し、そちらを主体とするゲームになるようだ。システムからルールに至るまで、「そんなのアリなのか……」とボヤいてしまう特徴を持っている作品。配信はSteamを予定している。このトンデモすぎる内容に少しでも関心を抱いたならSteamの作品ページにアクセスし、ウィッシュリストに登録しよう。
(シェループ)

Website: https://poisongames8.com/

Alunite『ニャイト ミュージアム』

夜になると展示品が動き出す、不思議な博物館の警備員として働くことになった主人公が、泥棒から展示品を守るため奮闘するストーリーを描くパズルアドベンチャーゲーム。タイトル名の通り、2006年に上映され、後に続編も作られたファンタジーコメディ映画『ナイトミュージアム』のパロディ、そして”ニャ”の通り、登場人物全員がネコという可愛い世界観となっている。

ゲーム本編は探索型アドベンチャーと対戦型パズルを織り交ぜたゲームデザインを特徴としている。基本的に主人公を直接動かして博物館内の展示室を探索し、泥棒のネコたちを見つけては懲らしめていくのが主な流れ。その泥棒たちを懲らしめるために対戦型パズルに挑むことになる。パズルのシステムは、フィールド内に敷き詰められたブロックを左右に動かし、同じ色(絵柄)を3つ以上並べて消していくというもの。任天堂の『パネルでポン』に近いと言えば、パズルゲームに詳しい人ならピンとくるだろう。

ただし、泥棒の攻撃と共に上から落ちてくる黒いブロックは1個単位で、隣にあるブロックと位置を交換できなくなるのを始め、独自仕様もいくつか。展示室に沢山の泥棒が潜んでいて、それら一人ひとりと対決する流れを踏まえてか、短期決着が推奨されるバランスに調整されているのも独自性を表している。

他に展示室内のマップは結構広く、泥棒たちも意外な所に隠れていたり、襲われていたり(?)するため、かくれんぼ的なやり応えがある。さらに展示室内には、他のインディーゲームからのゲスト出演者がさりげなく紛れ込んでいることも。今回、プレイしたところでは、『助けてタコさん(助けてタコさん 決定版)』のタコさんが確認できた。他にも様々なインディーゲームのキャラクターがゲストで登場するようだ。

本作はエピソードごとに分けて展開され、第1エピソードは12月22日に配信予定となっている。また、最終的なエピソード総数は3つを予定しているようだが、パブリッシャーから好意的な反応が寄せられていることから、増える可能性もあるらしい。さらに出展されていたのはスマートフォン版だったが、将来的にはPC、コンソール版の展開も検討中とのことだ。現時点でも少し懐かしい手触りの対戦パズルと、ゆるい雰囲気のストーリーが異彩を放つ仕上がり。パズルゲーム好きに限らず、ネコ好きにも注目の新作だ。
(シェループ)

Website: https://www.alunite.jp/puzzle-museum

りりぃカンパニー『Eye on the World!』

ボクセルで作られたジオラマの中から、ターゲットであるモノ(オブジェクト)を見つけ出す探索アドベンチャーゲーム。特別監察官に任命された主人公が、町の安全を守るために治安維持目的で設置された監視カメラの映像をチェックしながら、さまざまなミッションを遂行していくというストーリー。試遊では3つのミッションを体験できた。

遊び方としてはマウスでカーソルを動かし、ジオラマのどこかに潜むターゲットを見つけてはクリックしていく形となる。端的に言えば『ウォーリーをさがせ!』である。

ただし、どのターゲットもボクセルゆえの特徴的な形をしているため、よく観察しなければ見つけ出せない。しかも、町には昼夜の概念もあり、夜になるとボクセルの陰影が目立ってターゲットが見つけにくくなるという不利な事態も生じる。なので、なるべく昼のうちに見つけ出すか、夜になっても陰影がさほど目立たないエリアに監視カメラの映像を変更し、ターゲットを探すといった対処が求められてくることも。そのようなボクセル……3Dの立体物ならではの性質をゲームとしての手応えへと昇華させた作りが本作ならではの特徴にして、『ウォーリーをさがせ!』とは異なる個性になっている。

また、探す手間を軽減してくれるヒント機能も完備。ただ、あくまでも現在、映像として出ているエリア内にターゲットが居るか居ないかを教えてくれるだけと、探すことをキモとした本作のゲームプレイを損ねないものに留められている。
加えて、ヒントを提供してくれるのは”居るか居ないか”ということで”イルカ”。それも、某Excelなどで邪魔者扱いされがちなあのイルカである。


▲右下にあのイルカが!

だが、本作では決して邪魔者にはならない。むしろ、居ないと困る存在である。邪魔者扱いすれば、それはもう地獄のような苦しみを味わうことになるだろう。「そんなバカな!」と思うなら試してみるがいい。「助けて!イルカさん」となること必至である。

ゲームとしてはほぼ『ウォーリーをさがせ!』なので真新しさは薄い。ただ、ボクセルという3Dの立体物特有の表現を活かした仕掛けにより、独特な”探し出す難しさ”を味わえるゲームに仕上げられている。

製品版の発売は2023年末を予定。なお、今回の試遊版では無制限にイルカさんからヒントを得られたが、製品版では回数制限を設けるとか。
筆者個人としては、そのようにした方がイルカさんの存在感と意義を高められそうに感じるので、制限ありを歓迎したい。本作が邪魔者扱いされたイルカさんの面目躍如な作品になることを願って!(……って、結びがおかしい気がするが、よしとしよう。)
(シェループ)

Website: https://lily-company.net/eye-on-the-world-diorama-discovery/

  • シェループ(@shelloop

    様々なゲームに手を伸ばしたがる人。2D、3Dのアクションと手強めの戦略シミュレーションを与えると喜びます。

    Webサイト:box sentence

  • 真野 崇(@tacashi

    フリーゲームと共に四半世紀を生きるフリゲ馬鹿一代。
    フリーゲームのレビューブログ「自由遊戯黙示録」を経て、自身のフリゲ人生を集約した、フリーゲーム・同人ゲーム・インディーズゲームの年代記「自主制作ゲーム史論」を執筆。