デジゲー博2024で見つけたおすすめ同人・インディーゲーム7選

イベントレポート

2024年11月3日、同人・インディーゲームの展示・頒布イベント「デジゲー博」が東京・秋葉原UDXの2階および4階にて開催された。毎年の恒例行事ともいえる本イベントは今回で12回目を数え、会場ではのべ204組が出展して例年と変わらぬ賑わいを見せていた。

今年の特筆事項として、サークル・エンドレスシラフ主催の有志企画「同人シューティングゲームキャラバン」が開催されていた。同キャラバン企画は2018年時(関連記事)以来の開催となる。キャラバンには16ものサークルが軒を連ねており、会場4階の一角に集結。シューティングゲームジャンルの根強い人気が今もなお継続していることをうかがわせるものとなっていた。

本記事では取材陣が気になった同人・インディーゲームを7作品紹介する。読者の皆さんも気になった作品があればぜひチェックしてみてほしい。

昨年の記事はこちら

おばけにく『アンチヒーロー』

『アンチヒーロー』はおばけにく氏が開発中の育成シミュレーション+ノベルゲーム。悪人を倒すヒーローの存在が一種の資格として扱われている世界で、元ヒーローの「オジサン」の視点から、ヒーロー志望の少女「マオ」を育てることになる。

展示では5週間の期間内で、1週間ごとに体力・スピード・知識の3ジャンルからひとつを選択し、そこから更にトレーニングの強度を示す選択肢を選ぶことでマオの能力を向上させていく過程をプレイできた。育成終了時にはランク方式で評価が与えられる。またマオとオジサンの間には「信頼度」も存在し、いかに絆を育むことができたかも育成終了時に与えられる評価に影響しそうだ。

一直線にヒーローを目指すマオの健気な性格が輝かしい一方、過去にヒーローであったときの確執を伺わせるオジサンの発言や、ヒーローによる悪人の粛清現場を目撃してしまうなど、この世界ではヒーローと言っても一概に善性であるとは言いがたいようで、タイトル通りの「アンチ」な物語に引き込まれる。本作はSteamにて2026年のリリースを予定している。
(真野 崇)

Website: https://x.com/obake29_umauma

ねむねむおかき『【掲示板】ワイ魔法少女なんやが?【管理できん】 』

サークルねむねむおかきが開発中の『【掲示板】ワイ魔法少女なんやが?【管理できん】』は、元・魔法少女がインターネット掲示板でチヤホヤされるべく掲示板荒らしを撃退していく作品。シティポップ風味のビジュアルやスレッド型掲示板など、20世紀末前後の「懐かしいインターネットの雰囲気」が全開で、インターネットミーム風に言うなら所謂”老人会”案件というやつだ。これはあの頃を生きてきた人間にとって気にならない訳がない。

シューティングゲームを謳う本作であるが、自機を直接操作するのではなく、プログラミングによって自機を制御して掲示板荒らしを撃退するオートバトル方式となる。「敵に向かって弾を打ち、敵を倒す」という目的を果たすためには?そのためには「敵が正面になるまで」「右回転する」、「敵が正面にいたら」「弾を打つ」…といったように、必要な条件と動作を組み合わせていくのである。展示試遊では指示に従いながらプログラムを組み立て、ひととおり敵を撃退するまでを体験することができた。

本作は2025年リリース予定でSteamストアページが公開されている。キャッチーな見た目の印象とは裏腹に、本格的な思考を要求される作品となりそうだ。
(真野 崇)

Website: https://nmnmokk.games/

このへの部屋『Alone A Long』

このへ氏が制作した『Alone A Long』は、人類最後の一人として日常生活を送るストラテジーゲーム。イベント開催当日である2024年11月3日よりSteamにて配信が開始されている。

画面には生活の拠点である一軒家が写し出される。一軒家に配置されているキッチンやベッドなどをマウスで右クリックすることで、「炊事」や「睡眠」といった物品に対応する行動を取ることができる。机を選択して「記録」コマンドを行うと手記が書き溜められ、その手記の記述から人類が消えていった背景が垣間見えるようになっている。

何をしていてもあまり変化のない驚くほど淡々とした展開が逆に印象的で、それをもってただ一人残った孤独さを表現しているように感じられた。人類が滅ぶほどの極端さは無いにしても、やがて自分にもこうした時間を過ごすときが来るのだろうか?という想像が頭をよぎる。展示版ではオミットされていたが、製品版では自宅に配置されている物品は使わないでいると風化して壊れるようになっているため、生活を維持することにも気を使うことになりそうだ。
(真野 崇)

Website: https://x.com/konohe12345

まさごみ『ふえるさいぼう -ブリセル-』

『ふえるさいぼう -ブリセル-』はまさごみ氏の制作による、細胞増殖を題材とした落ちものパズルゲーム。2024年10月28日よりitch.ioならびにSteamにて販売開始されている。

基本的なルールは、フィールド内に落下してくる細胞ブロックをクリックして増殖させ、四角く集めることで消していくというもの。各細胞は細胞に描かれた白線の方向に増殖する性質がある。細胞ブロックを消していくことでゲージが溜まっていき、一定量溜まることでフィールド横に星印が表示され、星印をドラッグするとゲージを消費して指定した一列全体を横方向にスライドさせることができる。

斜め方向に増殖する細胞ブロックは比較的四角く集めやすいが、縦方向・横方向にしか増殖しない細胞ブロックが曲者。落ちものパズルには自信があるつもりの筆者だったが、思うようにブロックを消していくことができなかった。開発者の方に話を伺ったところ、増殖する際に別の細胞が押し出されることを利用していくのがコツになるとのことだ。
本作はインターネットランキングに対応しており、世界中のプレイヤーとスコアを競えるようになっている。もしも我こそはという方は挑戦してみてほしい。
(真野 崇)

Website: https://masagomi-studio.com/

テクナン『プロトリジゲン』

テクナン氏が開発中の『プロトリジゲン』は、電子空間上にある2Dの世界と3Dの世界を行き来しながら進んでいくアクションアドベンチャーゲーム。

本作ではステージ中に浮かぶディスプレイの裂け目を介して2Dと3Dの間を移動する。2Dと3Dがシームレスに切り替わるだけでなく、2Dの世界でスイッチを押すと床が画面手前方向にせり出して3Dの世界での足場になるなど、2Dの世界と3Dの世界が相互に関係しあっている点がユニークだ。展示で試遊した範囲内では2Dの世界は横スクロール型のみであったが、ムービーでは見下ろし型の世界もあることが確認できる。

本作は2024年11月下旬ごろにitch.ioでの配信を予定している。ゲーム本体は無料で、アートブックとサウンドトラックの付いた豪華版の販売も行うとのこと。気になった方は作者X等で続報に注視してほしい。
(真野 崇)

Website: https://potofu.me/1097n

☆ぽむぽむ支部☆『ミテとる』

広島大学ゲーム制作同好会GSDのメンバーであるやぎせ氏ら3名によるサークル☆ぽむぽむ支部☆が開発している『ミテとる』は、iPhone/iPad向けの3Dシューティングゲーム。道端に現れるスライムの「ぽむ」を、目からビームを放って倒していく。

一風変わっているのがその操作方法。iPhoneに搭載されている「Face ID」という機能を使用し、実際に視線の動き(アイ・トラッキング)で目から放たれるビームの狙いを定めるのである。操作は目だけでなく口にも対応し、ゲージが溜まった際に口を開くことで画面全体を一掃する極太ビームを放つことができる。

操作のズレなど気になる点もあるが、精度については今後改善したいとの意気込みを語ってくれた。技術を駆使した「視線で操作する」という一点突破のアイデアと新感覚が楽しい一作となっていた。
(真野 崇)

Yogurt Neko『ズ・ギュバーーン!』

『ズ・ギュバーーン!』はYogurt Nekoのゆのみ氏が制作を進めている「パネル破壊系」ツインスティックシューター。上述のシューティングゲームキャラバンの参加作品のひとつとなっていた。

敵を倒すことで発生する爆風でパネルをめくっていき、ステージ内の75%以上のパネルをめくれば次のエリアへ進めるゴールが開かれる。ただ垂れ流しで敵を倒せばよいわけではなく、めくりたいパネルの位置まで敵を引きつけてから倒すことが重要となる。パネルの下からは美少女が…と言うとなんだかムフフなゲームを連想してしまいがちだが、至って健全な作品なので安心だ。

また特殊攻撃として、一部の敵弾や衝突判定を消しながら自機周辺を攻撃できる「ワイプアウト」がある。ワイプアウトに敵を巻き込むことで得点に倍率がかかり、これを利用した得点稼ぎができるようになっていた。
本作は現在itch.ioにて体験版が公開中だが、こちらは会場展示版とは内容の異なる古いバージョンのものであるため、まずは体験版の最新化対応を進めたいとのことだ。
(真野 崇)

Website: https://yunomi3.wixsite.com/yunomi

  • 真野 崇(@tacashi

    フリーゲームと共に四半世紀を生きるフリゲ馬鹿一代。
    フリーゲームのレビューブログ「自由遊戯黙示録」を経て、自身のフリゲ人生を集約した、フリーゲーム・同人ゲーム・インディーズゲームの年代記「自主制作ゲーム史論」を執筆。