探索型アクションを作り続けた開発チームが送る”攻略しやすい”完全新作横STG『DRAINUS』

インディーゲーム,シューティング

「team ladybug」(チームレディバグ)。個人ゲーム開発者のkrobon氏率いるこの開発チームの代表作と言えば、『ファラオリバース』(紹介記事)に『Touhou Luna Nights』(紹介記事)、そして『ロードス島戦記 -ディードリット イン ワンダーラビリンス-』に象徴される探索型アクションゲームだ。

特に近年はそのようなゲームを連続して制作したのもあって、「team ladybugと言えば探索型アクションゲーム」みたいなイメージが強くなっている。

そんな「team ladybug」の新作が2022年5月、PCゲーム配信プラットフォーム「Steam」に颯爽と現れた。その名は『DRAINUS(ドレイナス)』。横スクロールのシューティングゲームである。大事なことなので、もう一度言おう。横スクロールのシューティングゲームだ。チームとしては初の探索型アクションゲームではない新作である。

また、今冬には『Touhou Luna Nights』と同じく、Nintendo Switch版が発売されることも決定している。(それに合わせて言語追加のアップデートも予定)

ついでに世界観も本作独自のもので、原作版権作品でもない。
この点に関しては『ファラオリバース』以来になる。

対抗手段の豊富さが光る、正統派シューティングゲーム

「なるほど……ということは、探索型のシューティングゲームなのか?」……と、近年の傾向から結びつけることがあるのかどうかは分からないが、本作は立派なステージクリア型の横スクロールシューティングゲームである。ステージクリア型だ。面クリア型とも言う。シューティングゲームとしては王道中の王道。伝統的とも言えるスタイルだ。

プレイヤーは主人公「イリーナ」とその父親、そして「ゲーニー」なるカエルのような姿をしたキャラクター(※念のためだが、「ゲロゲロ、ゲロゲロ」というボイスは発しない)3人が搭乗する最新鋭戦闘機「ドレイナス」を操縦。圧政を敷く「カーラル帝国」の軍隊にあふれた宇宙へと飛び出し、「惑星適応障害」なる病に侵された父親を治療するため、帝国との戦闘を繰り広げながら遠い故郷の星を目指していく。

本編の流れもシューティングゲームの伝統を踏襲。基本的にステージ最後に現れるボスを倒せばクリアとなり、次のステージへと進むという構成だ。ステージ総数は6つで、全てクリアできれば”一応の”エンディングを迎える。なにゆえ”一応”かは後述する。

対し、システム面には独自の試みが多くなされている。
ひとつに「リフレクター」。本作で操縦する自機「DRAINUS」は(※Xboxコントローラ使用時)Aボタンで基本攻撃の「ショット」を放ち、Bボタンで「リフレクター」なるバリアを張る。この「リフレクター」はボタンを押しっぱなしにすると、画面左下に表示された緑色のガードゲージが空になるまでの間、自機の周囲に展開し続ける。そして、この「リフレクター」展開時には、敵が放つエネルギー系の弾を吸収可能。言い方を変えれば、自機へのダメージを無効化できてしまうのである。

エネルギー系の弾なら、レーザー(極太系含む)も吸収可能。どう考えても回避不能な広範囲攻撃であろうが、リフレクターさえ展開していれば脅威ですらなくなるのだ。しかも、エネルギー系の弾を吸収した後、Bボタンを離せば攻撃主への反撃を自動で実施。大きなダメージを与えられる。加えてリフレクターを解除した直後には約1秒間の無敵時間も発生。解除した瞬間、ダメージを受けるというような事故も起きにくくなっている。

あくまでも吸収可能なのはエネルギー系の弾(攻撃)で、赤で囲われた物理的な弾(ミサイルなど)に対しては効果を発揮しない。ただ、精密な操作や集中力を要することなく、直感的に敵弾へと対処可能な点で大変優秀な装備。それによる独自の戦術を生み出すだけでなく、シューティングゲーム初心者にも安心感をも提供する、意欲的なシステムに仕上げられている。

また、吸収したエネルギーは画面右上に表示されたビンこと「エネルギータンク」へと貯まっていく。敵を撃墜すると落とす「クリスタル」を手に入れた時にも貯まるこの「エネルギータンク」は、主に自機性能強化に当たって用いるものになっている。

これがもうひとつの本作独自の試み。自機の性能は戦闘中に貯まった「エネルギータンク」を消費して拡張していくのである。やり方はポーズ画面を表示し、「機能を拡張する」の項目を選んで追加したい機能を決定するだけ。これを画面上部中央に表示された「パワーアップソケット」へと装備することにより、戦闘中に使用可能となる。
厳密には敵が倒す「パワーアップアイテム」を獲得し、機能を装備した「パワーアップソケット」が点灯すると使用可能になる仕組みで、強化後まもなくという訳ではない。また、機能の拡張はステージクリア時に表示されるメニュー画面からも可能だ。

ただ、ゲームを一時的に止め、プレイヤーの好きなタイミングで性能を強化・調節可能なのはなかなか大胆な仕様。機能のバリエーションも多彩に加え、リフレクター用のゲージ、「パワーアップソケット」、そして広範囲攻撃「スーパーボム」の最大ゲージ拡張も図れるので、明確な成長が実感できる。可能な限り強化を図りたい欲求に応え、いちどクリアしたステージへと戻れる機能も備わっているので、RPG的な稼ぎプレイも自在だ。前述の「リフレクター」同様、こちらも独自の戦術性、シューティングゲーム初心者への安心感を提供するシステムで、本作の意欲的な作りを象徴するものに完成されている。

他に「パワーアップソケット」は自機の耐久力も兼ねている、敵もボスを含むすべてに残り体力を示すゲージが示されているなど、ユニークな仕様が幾つもある。ステージ上のチェックポイント到達時にもセーブが行われ、通しプレイを必要とされないのもそのひとつである。

基本は王道のステージクリア型シューティングだが、攻略面ではプレイヤーの裁量次第で色んなことが試せるという懐の広い作り。これまで探索型アクションゲームを手がけてきたteam ladybugらしい個性が現れた内容に仕上げられている。

幅広い攻略法と興味深い提案が込められた”クリアしやすい”難易度

本作の魅力は何といっても”攻略しやすさ”。
またの言い方で”ゲームクリアを達成しやすい難易度”である。

それは複数の難易度を設け、プレイヤーの腕前に応じた加減で遊べる設計にしているからだろう……と言いたくなるかもしれない。実際、ゲームスタート時に「イージー」「ノーマル」「ハード」の3段階の中から好きなものを選んで本編を始める作りになっている。そして、「イージー」があるから、ゲームクリアしやすいのだろう、と思うかもしれない。

率直に言おう。それは大きな間違いだ。本作は3種類すべてがゲームクリアを達成しやすい難易度になっている。初めてシューティングゲームを遊ぶというプレイヤーであっても、だ。

さすがに「ハード」は文字通りの調整のため、初心者視点からだと相当難しいが、決して無理というほどでもない。「ノーマル」に至ってはそれ以上にゲームクリアしやすいバランスになっている。「イージー」ならなおのこと。それもあって、本作はシューティングゲーム初心者でも「ノーマル」が推奨される。

なぜ、そうも攻略しやすいのか?
それは前述のシステム全般が物語る通りである。自機が強い。「リフレクター」を展開すれば物理系以外の攻撃はすべて吸収して無効化できるのに加え、それによって貯まる「エネルギータンク」で強化の選択肢が増えていく。しかも、吸収する仕組み上、避けることはそこまで重要ではない。むしろ、(リフレクターを展開した上で)積極的に当たりにいくことが推奨される。そうすることで得られるメリットが沢山あるからだ。

自機も1発被弾した程度で撃墜されるほど柔くない。前述の通り「パワーアップソケット」が耐久力の役割も兼ねているため、点灯しているソケットが多ければ、その分だけ耐えしのげる。それと共に自機が弱体化する弊害も受けるが。
ただ、「リフレクター」は一貫して使用可能。また「スーパーボム」に関してはエネルギー充てん式の(事実上)回数無限仕様。発射可能な分を全て使い切っても、「リフレクター」による敵弾吸収、「クリスタル」の入手、そして「パワーアップアイテム」の過剰取得のいずれかをすれば充てんされ、早々に最低1ゲージ分は放てるようになっている。(※全ゲージ分放つには、相応の吸収とアイテム回収が必要)

なんだったら、この状況下でポーズをかけて機能拡張を図るのもありだし、チェックポイントまで戻ってやり直してもいい。究極的にはエネルギータンク稼ぎのため、クリア済みのステージに戻ってみる手段に出てもいいのだ。

こうした特徴もあって、どの難易度でもゲームクリアを達成しやすい。高難易度「ハード」でもその可能性は残され、発想と根気次第ではゼロとも言い切れないバランスになっているのである。

その意味でも非常に意欲的と言えると同時に、過去の探索型アクション作品でも”ゲームクリアを達成しやすい難易度”を追求していたteam ladybugらしさあふれるゲームバランスだ。
特に本作、いつでも”止められる”点が秀逸。チェックポイント通過時に実施されるセーブ、ポーズ画面で機能強化を図る仕様がそれで、ゆっくり少しずつ進めることを許容している。基本的にシューティングゲームはノンストップ進行が定番であり、醍醐味でもある。ただ、それゆえに慣れていないプレイヤーには焦りを生む一面がある。

それを本作はチェックポイント単位のセーブ、いつでも可能な機能強化によって抑え込み、自分なりのスピードで進めていける作りにしているのだ。同時に何度かプレイしていくうちに戦術の基礎や立ち回りなどの感覚を掴んで、最終的にはノンストップでの進行もできるように……という成長も促す枠組みにされている。

単に易しくするのではなく、進行速度の調節を容易にし、段階的に慣れていってもらう構成を作り上げているのは、まさにジャンルの常識を踏襲しつつ、新たな解釈と可能性を示したと言える。また、こうしたプレイスタイルを確立させているところが、非常にteam ladybugらしい。様々な探索型アクションゲーム、豊富な攻略法が設けられたゲームを手がけてきた経験が活かされている。また、どんな攻略法であれ、本作を遊んだ人が必ずゲームクリアへと到達できるように、と言う思いが節々に込められている。

その意味でも本作は、シューティングゲーム入門に完璧に近いレベルで適した作品と言ってもいいだろう。ゲームバランスの面でもこのジャンルの間口を広げる提案が込められており、特にシューティング熟練者ほど「そういうのもあるのか……」と唸ること請け合い。

そうは言っても、人を選ぶのでしょう……と怪訝に思うかもしれないが、繰り返そう。本作は本当にゲームクリアしやすい難易度になっている。あえて騙されたと思って初回「ノーマル」で遊んでみよう。全然シューティングゲームをやったことがない、という人でも思い切って「ノーマル」を選ぼう。確実にここまで記した意味を思い知らされるだろう。

ストーリーと映像面も心を熱くする、珠玉の1本がここに。

ボリューム周りも充実。ゲームクリアだけならおよそ2~3時間だが、ステージ内に隠された「レコード」の回収、クリア後に解禁される難易度「アーケード」への挑戦など、やり込もうとすれば長く遊べる作りになっている。

また、若干ネタバレになるが、本編は2周前提の構成。前述にて”一応の”エンディングと記した意味はこれ。本当のエンディングを拝みたければ2周クリアが必須になるのだ。一度、クリアしたステージをやり直しになる時点で「ちょっとそれは……」となるかもしれないが、ご安心いただきたい。というか、断言する。

本作の2周目は是が非でも挑む気になるだろう、と。

その秘密はストーリーに隠されているのだが……詳細は伏せる。だが、見れば確実に「こんなの、やるっきゃないでしょう!」と思ってしまうはずである。
ちなみに2周目では敵も強くなるのだが、これにも非常に納得感ある理由付けがなされている。例によって、これも実際に2周目に突入してから確認していただきたい。
全てを見れば、本作の2周目は無くて語れぬものであると確信するはずだ。

そのほか、グラフィックと音楽の完成度も非常に高く、特に後者はステージごとの戦闘シーンを大いに盛り上げる。演出も爆発エフェクトを始め申し分ない派手さ。特にゲーム開始直後の発進シーンには思わず声が出てしまうだろう。

また、各ステージには著名なシューティング作品のオマージュもさりげなく仕込まれており、往年のプレイヤーほどニヤリとしてしまうはずだ。(もちろん、全く知らずとも特徴的な要素として確立させた上で描かれているため、とても強く印象に残る)

多少、気になる部分もある。敵にショットを撃ち込んでいる時の効果音が大人しすぎたり、ポーズメニュー画面の移行が気持ち遅めかつ選択カーソルの反応速度が鈍い、接触判定があるのか分かりにくい背景が一部存在するといったことなど。
また、リフレクターを展開しての被弾(吸収)が推奨される関係で、やや初見殺しな攻撃が繰り出される場面も目立つ。また、これは完全に筆者個人の好みでしかないが、あの有名な球体状ボスのオマージュは勘弁願いたかったです……。(※トラウマ持ち)

そう言った気になる箇所もあるにせよ、本作は紛うことなき攻略しやすいシューティングゲームである。システム面でも意欲的な試みが多いほか、ストーリーに関してもちゃんとその役割を果たしているという見事な作り込みが光る。

team ladybug開発のシューティングゲームという興味深さに惹かれる人から、全くシューティングゲームを遊んだことがない人にまで、自信を持ってお薦めできる力作にして傑作だ。この攻略しやすいバランスは頭ひとつ抜けた”やさしさ”に満ちている。繰り返しになるが、ぜひシューティングを全然遊んだことがないという人も難易度「ノーマル」で始めてみていただきたい。そして豊富な攻略法を駆使し、ゲームクリアを掴むのだ!

今冬発売予定のNintendo Switch版を待つ方も、ぜひ難易度は迷わず「ノーマル」で。探索型アクションゲームを作り続けた開発チームならではの”懐の広さ”を堪能しよう!

[基本情報]
タイトル:『DRAINUS』(ドレイナス)
発売・開発元:team ladybug, ワイソーシリアス、PLAYISM
クリア時間:2~3時間
対応プラットフォーム:Windows
価格(税込):¥1,480

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