『LiEat』制作者の新作フリゲ『1bitHeart』。「友達作りシステム」が鍵のアドベンチャー
今回は、実況動画でも人気を集めた『Alice mare』(2013)、そして以前にもぐらゲームスでもレビューした『LiEat』(2014)を制作した△○□×(みわ しいば)氏の新作アドベンチャーフリーゲーム『1bitHeart』を紹介する。
本作は『WOLF RPGエディター』で制作されている。2015年2月7日時点にリリースされているバージョンは体験版と銘打たれており、ゲーム序盤である1章をプレイすることが出来る。しかし、既にこの体験版でも、1つのアドベンチャー作品として相応に楽しめる作品となっており、特に漫画のコマ割りのように展開していく豪華な一枚絵、登場するキャラクター全員のボイス演出、そしてエンディングで魅せる驚愕のクオリティの演出…など、アドベンチャーとして非常に完成度の高い作品となっている。
またゲームシステムの面でも、選択肢を適切に選び、キャラクターとの雑談を上手く発展させていくことが鍵という、ある意味でプレイヤー本人のコミュニケーション能力が試される興味深い作りとなっている。早速紹介していきたい。
記憶喪失の少女と一緒に、未来世界で「友達」を作ろう!
『1bitHeart』の舞台は、2222年という未来。世界を制御する「管理プログラム」が稼動を始めたばかりの世界で生活をしている人々は、様々な情報を処理できる端末である「ビットフォン」を身につけているという世界観だ。ゲームの流れとしては、2Dのマップを歩き回り、キャラクターとの会話や街の探索を行って情報を集め、物語を進めていく。
こういった2Dのマップを探索し、会話や情報収集を行っていくのがゲームの流れだ。
この物語の主人公である引きこもりの少年「ナナシ」(本名:ナナセ ヨシ)は、従兄のプログラマー「ミカド」と暮らしていた。毎日ゲームなどをして過ごしていた彼は、ある日、自分の部屋に見知らぬ少女「ミサネ」が倒れていることに気付く。意識を取り戻したミサネに話を聞いてみると、どうやら彼女は記憶喪失であるという。ミサネの記憶探しを目的として、ナナシは、久しぶりに家の外へ出るという大冒険に繰り出そうとするが…。
自分のことをなぜかボロクソに言う自己紹介を放つ、陽気な引きこもりの少年「ナナシ」(画像左)。この自己紹介はフルボイスで再生されるという気合の入ったものとなっている。
気が付くとナナシのベッドの上に倒れていた記憶喪失の少女「ミサネ」
ミサネの記憶を取り戻すために、引きこもりのナナシも一念発起して街を探索する…はずが、ナナシの対人能力が壊滅的に思われるため、まずは彼の友達作りが目標となってしまう。
魅力ある20人以上のキャラ、そして「漫画のような演出」も!
本作の特徴としてまず目を引くのは、豪華に作りこまれた「キャラクター」たちだ。多数のキャラクターイラストは丁寧に描き込まれており、さらに全員にキャラクターボイスがついている。ノベルゲームのように全てのセリフに声が付いているわけではないが、特徴的なポイントでセリフが再生されるようになっている。また、漫画のコマがいままさに描かれるように表示されていくという、一枚絵の演出も素敵だ。
ナナシの姿が描かれる一枚絵。これは、画像の右上のカットから順番に表示されていき、最終的にこの一枚絵のようになる…というもの。
1章の時点で既に20人以上のキャラクターが登場し、設定も非常に練られ、魅力的なものとなっている。今回は、ゲームの中で出会う個性豊かなキャラクターのうち、何人かを紹介してみよう。
ナナシの住む「ブルーサンストリート」の一角にラボを構えるマッドサイエンティスト「キリ」。研究者のようだが、なぜか筋肉に凄まじい執着があるようだ。
人々が着用を義務付けられている情報端末「ビットフォン」の管理室から、娯楽施設までもが入っている「307タワー」の案内人を務める「セキユ」。口調だけはとても丁寧だ。
街から離れた「宵闇通り」の公園で遊ぶ双子の姉妹「シロロ」と「クロク」。いたずら盛りでとても元気な子たちだ。
プレイヤーのコミュ力が試される!「Talking Time」システム
ゲーム序盤となる1章の目的は、まず「ナナシの友達を作る」ことだ。友達を作るためには、まず街の中を探索し、友達になれそうな人を探す必要がある。そして友達になれそうな人が見つかったら、次はその人と仲良くなれそうな情報を探していくのだ。
そして、準備を整えてターゲットと接触すると「Talking Time」のイベントが発生する。そこでは、探索で手に入れた「話のタネ」の中から適切に話題を選んでいき、気になる点には「ツッコミ」を入れていく…という流れで会話を進めていく。このプレイ感は、コンシューマゲームでいうと『逆転裁判』や『ダンガンロンパ』に近いものと言ったところだろうか。
友達になるためには「同じ話題を共有する」…こういった友達作りの基本中の基本から攻めていこう。
会話相手に振る話題の内容やタイミングなどを見誤り、雑談に失敗すると左下のハートゲージが減っていく。0になるとナナシのメンタルが破壊され、ゲームオーバーになってしまうぞ!
相手に対して、どのタイミングで、どの話題を振るか…!?緊張感のあふれる駆け引きで、何の変哲も無いただの雑談を成功させよう!
平和な街に「ハッキング」事件! 1章の物語をハイライトで紹介
体験版のバージョンで遊べる1章では、先ほども触れたナナシの「友達作り」、そして謎のハッカーが人々の意識を操るという「ハッキング事件」が描かれている。一見関係のないそれら二つの出来事だが、しかし、次第にそれが交差していき…。今回は、ゲーム中のプレイ画像を絡めて、そんな物語のハイライトを紹介しよう。
ナナシが友達作りの一人目に選んだ「ナツカゲ」。「スカイ・シー・ラン」という、未来の水泳競技と思われるスポーツに熱心な少年だ。
ナナシたちの前に現れた、日本語にはまだあまり慣れてないハーフの少女「ミウミ」。彼女はナツカゲと非常に仲が良いようで、彼の情報を知っているかもしれない。
「友達作り」の最中、身体に装着する端末「ビットフォン」をハッキングし、人々の行動を操る事件が発生しているということ伝える、従兄のミカド。
そしてナナシたちの前に慌てた様子で現れるミウミ。どうやらナツカゲの行動が変だったというが…。
ナツカゲのおかしな行動には、仲間達の変貌が関わっているようだ。
ナツカゲの様子とハッキング事件の二つの関係を、ナナシとミサネで整理する「Discussion Time」。こちらも「Talking Time」と同様の展開で進めていく。
そして事件内容の結論を導き出し、ナツカゲの元に急ぐナナシとミサネ。彼の後ろで笑う少年たちは…!?
章クリア後のお楽しみ「自由行動」システム
本作では、章をクリアするごとに楽しめる「自由行動」の時間がある。これは、物語で出会ったキャラクターたちにアイテムをプレゼントして、交流を深めることが出来るシステムだ。交流を深めることで、様々なイベントも見ることが出来る。体験版の段階では、現在収録されている1章をクリアしたときのみ楽しめるものとなっているが、今後の更新で章の区切りごとに楽しめるシステムとなっていくのだろう。
今回は交流できるキャラクターのうち、古書店務めの高嶺の美女「カヲリ」と、どこか抜けている神社の巫女さん「ハクヒ」の2人のイベントを紹介しよう。
1人目は、熱心に婚活をしているが理想が高すぎるために上手くいかない古書店員「カヲリ」。ふとしたきっかけで、ナナシにそのアドバイザーとしての役割を求める。
婚活サイトで知り合った男性と会ったカヲリ。ナナシのサポートもあって、今回こそは上手くいきそうだが…?
純粋すぎるゆえにいつも詐欺にあっているハクヒ。今回もお金を騙し取られる事件に巻き込まれているようだが、本人にその自覚は無く…。
幼なじみである警察官の青年「タカミヤ」にも、自覚の無さを怒られるハクヒ。事件の展開はどうなるのだろうか…。
『1bitHeart』の今後の展開に期待!
今回紹介した『1bitHeart』は、現在プレイできる1章以降も次々と物語が追加されていくようだ。ビジュアル面・システム面ともに意欲的な部分が目立つ本作の展開に、引き続き目が離せない。
なお、本作の制作者である△○□×(みわ しいば)氏の過去作『LiEat』は、もぐらゲームスで以前に紹介させて頂いた。こちらもフリーゲームの三部作連載という意欲的な試みの作品となっているので、ぜひプレイしてみてほしい。
フリーゲームを「連載する」とは?特集『LiEat』夏休みに遊びたい短篇集
[基本情報]
タイトル 1bitHeart
制作者 △○□×(みわ しいば)
クリア時間 1時間~
動作環境 Windows 7/Vista/XP/2000(WOLF RPGエディターの動作環境に準じる)
ダウンロードhttp://1bitheart.nobody.jp/