100万人に Oculus Rift を被せたい~ニコニコ超会議で話題になった超Ocufes にインタビューしてみた
渋谷のスクランブル交差点かと思うほどの混雑。
4月26,27日に開催された今年のニコニコ超会議3は、2日間で13万人が来場するお祭りだった。
もぐらゲームスが注目するVRデバイス「Oculus Rift」関連の展示にも、VRの世界を体験しようと終日行列ができていた。
開催直前!ニコニコ超会議3でOculus Riftが体験できる「超ocufes」まとめてみた – もぐらゲームス
展示は会場各所にあったが、17のデモを展示してOculusの体験に力を入れていたブースがあった。
Oculus Riftの開発者が主催するOcufesの展示、「超Ocufes」だ。
お客さんにOculusのかぶり方や操作方法を丁寧に説明しながら、「VRは体験しないと分からない」と話すのは、Ocufesの代表、桜花一門さん。
そんな中、「未来のデバイスOculus Riftを体験してみませんかー!」と声を張り上げて呼び込んでいたのは稀代の手妻師こと藤山晃太郎さん。
彼らがOculus Riftに魅せられているのはなぜか、そしてOcufesは何を目指しているのか、インタビューを行った。
・桜花一門さん(@oukaichimon):Ocufes代表。本業はゲーム制作会社勤務。「VR Ski Jump」など多数のOculusのソフトを開発している。
・藤山晃太郎さん(@tezumashi):VRで乗馬体験ができる「Hashilus」の発案者。本業は手妻師。
もっと多くの一般の人たちに体験してもらいたくて
- すんくぼ
- 超Ocufesお疲れ様でした。大盛況でしたね!
- 桜花
- ありがとうございます!もぐらさんの事前のまとめはこちらも把握できてなかった展示もあったりして、参考になりました。
- 藤山
- 実際に、稼働し始めてからは全く列が途切れなかったんですよね。今回の超Ocufesでは2000人もの方にOculusを体験していただきました。
- すんくぼ
- 今回はOculusに興味を持ち始めた人たちに向けて、Ocufesがどういう団体なのか、日本のOculusの開発をどうしていきたいと思っているのか、という話を聞いていきたいと思います。まずはお二人とVRの出会いの話からお願いします。
- 桜花
- Ocufesの代表をやっている桜花です。本業ではゲーム制作会社に勤務しています。VRとの出会いは22年前になりますかね。高校生の時に、先輩のMiroさん(@MobileHackerz)に連れられてバーチャリティ2000というものをアーケードで体験したのがきっかけです。ちょうどバーチャファイターとか3Dポリゴンのゲームも出てきた頃でしたね。そこから3Dポリゴンの世界へ興味を持つようになりました。
- すんくぼ
- VRに触れ、3Dポリゴンに興味をもったのは、より現実に近いものを再現するという点なんでしょうか。
- 桜花
- そうですね。現在にいたるまで、ゲーム制作の現場でも3Dやポリゴンの関係の仕事をしています。Oculusの存在は偶然教えてもらったのですが、KickStarterを見てすぐに「これだ!」と思って飛びつきましたね。試しにいじってみたらソフトも簡単に作れたので、試しに周りの人にプレイしてってもらったんですよ。そうしたらウケが良かった。
それで、自分のソフトを周りだけじゃなく、もっと多くの一般の人たちに体験してもらいたくなったんです。当時相互フォローしていたGoromanさんに体験会の話を持ちかけたら、意気投合しちゃって2日後にはミーティングという運びになり。場所もホイホイと決まって、2013年8月には開発者が作成したOculusのソフトを展示する体験会、第1回Ocufesの開催になりました。第1回Ocufesの様子
- 桜花
- それ以降は日本各地で開催しています。徳島や大阪でもやりましたね。全部で12回開催しました。開発者もどんどん集まってきて、ネットワークになってますね。アラサー・アラフォー世代が多いですがw高校生もいたりしますよ!
VRで起きていることは、ニコニコ動画の黎明期と非常によく似ている
- 藤山
- 僕は本業では「手妻師」をやっています。つまるところ手品師です。ニコニコ動画的には「ダブルラリアット回ってみた」とか「【邦楽BadApple!!】傷林果」「エルシャダイ演ってみた」の人だと言うと分かりやすいかもしれません。
- すんくぼ
- そうなんですよね。最初藤山さんを見た時にどこかで見たことある人だなと思ったら…あの動画の人だ!っていう。
- 藤山
- Ocufesは本業とは全然違う切り口でやっています。Ocufesの人たちからは一度も手品見たこと無いよと言われますw
VRとの出会いはMikulusが話題になってからですね。「ミクさん立っててやばい」と。体験会に行きたかったけどなかなか行けず、9月のOcufesに初参加して以来、12月からスタッフとして参加していました。
- すんくぼ
- 全く違う切り口とはいえ、今まで関わってきたものとの共通点のようなものはあるのでしょうか。
- 藤山
- ニコニコ動画はいまは誰もが知ってますよね。今ではイベントをやったら13万人きてしまう規模になっている。Oculusを中心とするVRで起きていることは、ニコニコ動画の黎明期と非常によく似ていると感じています。今でこそ知る人ぞ知るものだけど今後メインストリームになると思っています。数年後にOculusか没入型のHMDが各家庭にあるかもしれませんよね。世の中に新しいものが出てきて、それが良くなっていく過程だったり初期の頃のカオス感が面白いんです。「それを使って何をするか。何ができるか」誰も分からなくて暗中模索中している中、「こんなことをやったら面白いんじゃないか?」ってやっていくのが好きなんですよね。
VRは完全に次のメディア
- すんくぼ
- Ocufesは2013年の第1回からずっと「体験」を重視して開発者がデモを展示する体験会を開催していますが、その意図はどういったところにあるんでしょうか。
- 桜花
- VRはラジオ、テレビ、VRと言えるくらいに完全に次のメディアなんですよね。テレビのすごさをラジオで伝えられないじゃないですか。絵が動くんだよって言っても実際に見るまでわからないし。テレビでいくらすごいんだよっていってもOculusのすごさは伝わらない。
- 藤山
- 被ってみるまではわからないんですよね。
- すんくぼ
- 超Ocufesでも変わらず「まずは体験してみて」ということがOcufesを通して皆さんが伝えたいことだったわけですよね。
- 藤山
- 全く変わらないです。超会議に出すことは僕がプッシュしました。何度かスタッフとしてやってきましたけど、Ocufesは知らない人がやる展開にはまだまだなってなかったということを痛感してたんですよね。秋葉原のRMバーガーさんの店舗内でやった時も、路上に看板を出しておくわけじゃないですか、「Ocufesやってますー」と。知らない人は入らないんですよね。もっとストリートパフォーマンス的にやれるところはないかってことで探してたら、あるじゃないですか10万人が通りかかるイベントが。Ocufesをもっと一般の皆さんにやっていただくためには必要だろうということで応募しましたね。
まずは100万人にOculusを被せる
- すんくぼ
- お2人もそうですけど、Ocufesは皆さん副業でやってらっしゃいますよね。
- 藤山
- お金はもらってないですから(笑)誰も食っていけませんよ。
- 桜花
- Oculus自体がまだ産業になってないので。今Ocufesにいる人達みたいに好きでやっていたり、会社の実験でとりあえず1人2人やってみているっていう感じですね。
- すんくぼ
- 産業という話が出てきましたが、今後はやはりビジネス化も考えてらっしゃるんですよね。
- 桜花
- 産業にしたいです。VRで食べていくためには産業になって仕事ができないと困りますからね。そのために必要なことはまずは体験だと思っています。今のところは好きな人、好奇心が強い人は体験してくれています。でも、「私はいいです」って5割位のひとは逃げていってしまうんですよね。怖くなくて楽しい物だってことを100万人にかぶせるまでは伝え続けたい。100万人までいけば家庭に1台あるかもしれないし、その頃には体験会はいらないんじゃないと思っています。その後は、これまでのネットワークを活かして、酔わないやり方だったり、新しいソフトのつくり方の技術をシェアするような互助組織のようになっていくんだろうなあと。
- すんくぼ
- 目標は100万人ですか。実際に超会議では2000名の方が体験されたということですが、今までの体験会を通算するとどれくらいの方が体験されたんでしょうね。
- 桜花
- 超会議前は4000人くらい。超会議は超Ocufes以外にも握手会やニコニコ学会などでも展示がありましたし、全部で4000人位の方にやっていただけたんじゃないでしょうか。これからも月1回ペースぐらいでやっていけるんじゃないかとは思っていますが、100万人に被せるためには、ラーメン二郎方式をとっていきたいなあと思っています。
- すんくぼ
- のれん分け的な感じですね。
- 桜花
- はい、ラーメン二郎で修行したら二郎の看板使っていいよっていう感じですね。Ocufesで2,3回やってもらって内情とかやり方わかったら自分でも開いていいよっていう風にしていきたいです。大阪Ocufesとか既にそうですね。今マニュアルをまとめつつあるのですが、これを渡して後はもうがんばれと。そうして全国でOcufesが開催できるようになったら、100万人という目標に早く到達できるだろうと思っています。
- すんくぼ
- イベントマニュアルみたいな形でまとめていっているわけですね。
- 桜花
- 皆さん勘違いというか。びっくりされるんですけど。僕はOcufesがイベント初主催なんですよw僕らはイベント屋ではなくて、素人なんです。
作り手も増やしていくために
- すんくぼ
- 体験する人を増やしていくと同時にコンテンツを作る人達のネットワークにもなっていきたいという話でしたよね。体験する人を増やしていくためには作る人も増えるといいですよね。両輪だと思うんですが、どうでしょうか。
- 桜花
- Oculusのコンテンツは気軽にUnityで作れてしまいます。「主婦ゆに!」がまさにいい例ですね。主婦さんはOcufesにも出展して、最終的にはOculusの産みの親であるパルマー・ラッキーさんにもやってもらったと。
- 藤山
- 僕がやっているHashilusも、制作の代表者に当たる人は一度もゲームを作ったことない人ですからね。当初、Hashilusは自分自身勉強しながらスローペースで作る予定だったんですよ。ところが、アイデアを話したところ、桜花さんと@waffle_makerさんが面白そうですねってのってきて作ってくれたので、自分が作る機会を逸してしまったんですwこれからは超会議も終わったし、企画の精度を高めるためにも最低限は作れるように勉強しようと思っています。
健康用具「JOBA」を使った乗馬体験レースゲーム。馬にのってるとしか思えない。
- 桜花
- Ocufesでは、今まで携わったことない方がゲームを作るという他にも学生向けにOculusを使ったゲームのアイデア出し「学生限定 Oculus争奪企画大会」をやりました。アイデアを語ってみたら作ってみたくなるだろうし、いきなりUnityとかやるとなるとハードル高いですからね。まずはアイデアいっぱい出してみたら、それを作りたくなるかなと。プログラム書けるけどアイデアはなかった学生たちが集まってなにかをしてくれたら、という思いで開催しました。商品はOculus Riftだったのですが、100件以上集まりました。優勝者同士がOculusソフトを一緒につくろうという話になってますね。良かった良かったw
- 藤山
- 開発者向けだと裏Ocufesっていうイベントをやっているんですが、今後もつくる側に焦点を当てたイベントは開催していきたいですよね。
- 桜花
- 体験会みたいに色々なお客さんに触れてもらう機会があったりすると、自分一人では分からないこととかも分かってくるんですよね。「こうなると酔うのかー、次はこうしよう」とノウハウが蓄積される。VRコンテンツの底上げにもつながってきますよね。
- すんくぼ
- 体験してもらうと、作り手が普段見えてないものが見えてくることも多いんでしょうね。
- 桜花
- 実は、体験会そのものについても懸念していることがあるんですよね。流行ってるからデモを作って体験できるようにしてみようという企業さんなどが見受けられるんですが、スペックの低いPCでデモをやってしまうことがあるんです。体験した人から「酔うねー。大したことないねー」って言われるのは避けたいんですよね。そういう意味でも企業さんも巻き込んで一緒にやっていきたいです。
- 藤山
- VRって毒にも薬にもなるんですよね。スペックが低くて60fpsが出ないPCででやると色が落ちちたりカクカクしたり変な状態で動いちゃうんです。そうなるとかなり酔ってしまいやすくなってしまって、体験した人にとっては内容の良し悪しにかかわらずそれは悪いものだってなってしまうんですよね。その点は、プレゼンターにかかってるので、プレゼンターの皆さんにも伝えていきたいっていうのはOcufesの目的としてありますね。誤った使い方、誤った認識で世界に広まって定着してしまう可能性があるわけです。
- すんくぼ
- Dk2は75fpsになったり、解像度も上がるのでさらに要求スペックが上がりますしね。日本からの注文も多いのでプレイ中心で使う人も多くなるとは思うんですが、体験する人たちがOculusそのもの以外の部分で酔ってしまうような事態にならないといいですよね。
VR用のコンテンツを一緒に作っていこう
- 藤山
- Oculusのゲームは、いわゆる既存のゲームとは全く違う作り方をしてるんですよね。特にユーザーインターフェース、入力の部分ですね。今、注目を浴びているOculusソフトの多くはナチュラルUIという非常に直感的な入力方法を使っています。これまでのコントローラーを使って、十字キーの上を押すと前に進むゲームとは違うんですよね。
NovintFalconを使用した「MikuMikuAkushu」
超会議3の「超ボカロ握手会」では手の素材が一新された。
桜花さんが開発した「VR Ski Jump」。Oculusの加速度センサーを使って飛ぶ動きをするとVRの中で実際にジャンプできる。
- すんくぼ
- OcufesにはJOBAやNovintFalcon、Kinect、ファミコンのパワーグローブなど本当に様々な入力デバイスを使ったコンテンツがありますよね。
- 藤山
- これまでのゲームの延長だとVR用のコンテンツにならないんですよね。Ocufesには、いかにして向こうの世界を楽しめるかっていう問いに対して、答えを出しているソフトがいっぱいあって、それこそが「次の開発者キットは日本に再優先で発送する」と、パルマー・ラッキーに言わしめた理由です。日本こそがVRの分野では世界の最先端なんじゃないですかね。
- 桜花
- Ocufesとしても、そうしたVRの最先端への取り組みを続けていきたいですし、VR用のコンテンツを一緒に作っていきませんかという呼びかけていきたいですね。これからも月1回ペースでOcufesを開催できそうですし、体験できる場を増やしていきます!
- すんくぼ
- VR用のコンテンツを作る環境も徐々に整ってきそうですね。東京・秋葉原に、Oculusで使えそうなデバイスを集めた基地を作るという話も進んでいると聞いています。
超会議の感想からOcufesの目指している将来まで、お話をありがとうございました!今後も体験できる場を増やしていくとのことで、引き続き期待したいと思っています。
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