『弾幕シミュレーション296』弾幕特化型超攻撃的シューター養成ギブス!フリゲで始めるSTG:第3回
STGの魅力とテクニックをフリーゲームで学んでいく「フリゲで始めるSTG」。今回は『弾幕シミュレーション296』を紹介したい。というのも、本作はゲームで遊びながら弾幕STGの基本テクニックが学べるという内容。このコーナーにうってつけのフリーゲームだ。もちろん、弾幕STGだけがSTGだけではないが、「チョン避け」、「切り返し」、「早回し」などSTGで広く使えるテクニックが紹介されている。
至れり尽くせりの訓練システム
本作はノービス、ミドル、アドバンドの3つの難易度にわかれており、それぞれ8つのステージが用意されている。それぞれのステージには学ぶべきテクニックがひとつ以上含まれ、ステージ前のイントロダクションやゲーム中の画面で解説される。お手本となるデモプレイも用意。初心者には至れり尽くせりだ。
ゲームシステムとしてはボム有りのスタンダードな内容。攻撃は通常ショットとレーザーの2種類。レーザー時は自機移動が遅くなる。手っ取り早く言えば『怒首領蜂』や『虫姫さま』といった弾幕STGを多数発表してきたCAVEのシステムだ。中でも本作は『怒首領蜂』シリーズを踏襲しており、2種類の自機も移動速度が早いAタイプと広範囲ショットのBタイプという構成になっている。初心者にはBタイプをおすすめしたい。
弾幕とは速攻撃破だ!
以上のように初心者に手厚い配慮がなされた本作。しかし注意してほしいのは、本作の主眼は弾幕STGにおける弾避けテクニックにあるわけではないことだ。「弾幕!弾幕!」というと多くの人は「避けるゲーム」と考えてしまう。だが本連載でも強調しているようにSTGとは本来、攻撃的なジャンルだ。
もちろん、本作でも自機狙い弾、Way弾といった基本的な弾幕の避け方は紹介される。しかし、それらは全体の半分にも満たない。ではどういったテクニックが紹介されるのか?
決まってるだろ!敵機が飛来したらすぐにブチ殺す攻めの姿勢だ!サーチ・アンド・デストロイ!これぞ弾幕STGの魅力。この点、作者はよくわかっているといわざるをえない(何様)!
では具体的に紹介されるテクニックをいくつか見てみよう。
まさにSTGイロハのイである。STGの一番基本的な敵弾は自機の位置を正確に狙う「自機狙い弾」。これは一定の速度で左右に動くことで簡単に避けられる。その際、移動量を少なくすることで、大量の自機狙い弾をさばくことができる。ちょんちょん動くからチョン避け。コン避けというとスティック使っている古参をアピールできるぞ。
way弾というのは複数の弾が同心円状に広がってくるタイプのもの。大きく分けて奇数と偶数に別れる。奇数のway弾は通常、自機狙い弾を中心として放ってくるため、チョン避けすることで回避可能。ただし動きすぎると周りの弾にあたってしまう。偶数は逆に動かなければ当たらないものだ。弾幕STGではこれらのway弾が他のタイプと合わさって飛んでくる。慣れないうちは慌てて避けられないが、きちんと要素に分解すると意外と簡単だ。また敵弾に名前をつけることの重要性は前回も強調したとおり。名付けとその認識。これはSTGすべてにおいて重要だ。
これまでは守備的なテクニックだったが、ここからは攻撃的なもの。「オーラ撃ち」とは本来、『怒首領蜂』シリーズのテクニック。レーザーを接射することでダメージ効率を上げるというものだが、同シリーズ以外の作品にもフィーチャーされることもある。また第一回で紹介した古典的テクニック「張り付き」にも通じる技術。密着するというリスクをとりつつ、速攻撃破というリターンを目指すものだ。本作ではこのオーラ撃ちがスコア要素にも絡んでいるため、チャンスがあれば積極的に前に出て接射すべし。
「早回し」も攻撃的もしくは稼ぎにかかわるテクニックだ。STGの一部の敵編成はプレイヤーの撃破スピードによって変化する。例えば中ボスを速攻で撃破すると、残された時間を埋めるために通常敵機の編隊が出現するといった具合だ。これは主にスコアを稼ぐためのテクニックとして利用されるが、苦手な敵編成が出現したときはボムなどで一層することで早回しでスキップ可能。初心者としても覚えておいて損はない技術だろう。
正直、作業感、いや訓練感は否めないが……
以上、いくつかのステージを紹介したが、基本的にはどれもオーソドックスな内容だ。そのためか本作は純粋な遊びとしての部分は少なく、STGの練習ソフトといった側面が非常に強い。特にミドル以降のステージは攻略パターンを見つけないと初心者ではクリア不能。STGにおいてパターン練習は必須といえるが、毎回、同じ反復練習するのは初心者には苦痛だと思う。
イントロダクションにはゲーム内には登場しない重要な解説がある。
ただ本作は途中で詰まっても他のステージに挑戦できる。同じステージばかりプレイしていると飽きるので、積極的にステージをスキップしていこう。またどうしてもクリアできないときは、デモプレイを見ること。デモプレイでは解説では紹介されていないテクニックが含まれており、それらを読み解くことで解決の糸口を見出すことができる。
いずれにせよ、本作だけで弾幕STGをマスターしようというのはいささか無理な話だろう。モチベーションとしても他のSTGと平行してプレイする方が良いと思う。弾幕STG自体はフリーゲームでも多くの作品がある。それらを進めつつ、気分転換で本作をプレイ。そして本作で身につけたテクニックを別のゲームに応用してみよう。個人的にはボリュームが少なめな東方Projectの体験版(個人的には紅魔郷か風神録)をオススメする。
もっと必要、初心者のためのこんなステージ
最終ステージには強力なボスが待っている。東方ノーマルのラスボスくらいの難度はある。
本作は今後のアップデートも予定されており、特に通常のSTGのような通しプレイが可能な「サブモード」が実装されるそうだ。そちらも楽しみだが、作者はさらなるステージのネタを募集しているそうなので、ここでいくつかネタを出してみたい。
全方位弾+自機狙い弾:
基本の合わせ技。実際には後半のステージにはいくつか登場する。ただ初心者は弾幕をバラして理解するのが苦手であるため、明示的に練習するメリットはある。
安全地帯:
もちろん特殊な状況でしか発生しないが、弾幕STGにはつきもの。また派手な弾幕を鑑賞するといった弾幕STGならではの楽しみもある。
回転:
主にボス戦に見られる弾幕であり、全方位レーザーなどをさけつつ、ボスの周りを回る。全方位弾が一緒に吐かれることもあり、最初は難しいが派手なわりに簡単な部類。
全体を通していえば、本作のステージはやや駆け足にテクニックを紹介している。そのため、初心者は基礎を十分にマスターするよりも前に、高難易度のステージにぶち当たってしまう。もう少し、簡単なレベルを楽しく反復練習できるようなモードが必要だろう。またフリーゲームには贅沢な要望かもしれないが、自分のプレイを分析するためのリプレイ機能もほしいと感じた。
とはいえ、登場テクニックや解説の内容は非常に的確。本作に真剣に取り組めば、アーケードのSTGのワンコインクリアも夢ではない。若干、練習への動機付けが弱い(せめてインストラクターさんを萌えキャラにして欲しかった……)が、STG入門講座としてはうってつけの一本だ。
[基本情報]
タイトル 弾幕シミュレーション296
制作者 シーレ
クリア時間 4時間程度(全ステージクリア)
対応OS win
価格 無料
ダウンロードはこちらから
http://www.freem.ne.jp/win/game/8572
本連載の他の回はこちら
『シューティングゲーム(仮)』で覚えるワンコインクリアの達成感 フリゲで始めるSTG:第2回
『超連射68k』に込められたシューティングゲームの攻撃性 フリゲで始めるSTG:第1回