フリーゲームADV+RPG『エインルート』。衰退していく美しい世界を救うための「儀式」に臨む物語

RPG,アドベンチャー,フリーゲーム

フリーゲームには、30分から1時間ほどでクリアできる短編作品がある。短編といっても、短い時間の中で丁寧にまとめ上げた物語、美しく作り上げられたマップ芸術によって表現される世界観、そして練り上げられたゲームシステムなど、ゲームとして必要な要素を短時間の中に上手く詰め込んだ作品が数多く存在する。

以前にもぐらゲームスで紹介した『あかねいろのそら』などは、10分ほどで完結する掌編RPGでありながら、コンパクトなゲームデザインや、いきいきと動く自作のドット絵が印象的な作品だった。

フリーゲームRPG『あかねいろのそら』。総プレイ時間10分で完結する悲劇の物語と練られた戦闘システム

そこで今回は、アドベンチャー+RPG要素の短編フリーゲーム『エインルート』を紹介する。本作の特徴としては、ドット絵による美しいマップ芸術の世界を歩くアドベンチャーの側面と、戦闘の前に選択した「感情」によって、戦闘ごとに主人公の能力値が変動するバトルシステムが印象的なものとなっている。

衰退していく世界の中で「儀式」に臨む物語

このゲームの舞台は、生物の命を蝕む瘴気に包まれてしまった世界。力を持たない人間は、瘴気に侵され死に行くしかなかったが、あるときに神様が、1人の少女に「2つの魔法」を授ける。1つは「瘴気から人間を守る魔法」、もう1つは「魔法を継承する儀式」だ。前回の継承から8年がたった今、本作の主人公「エイン」が儀式の祭壇に赴き、再び魔法の継承が行なわれようとしているところから物語は始まる……。

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継承の儀式に臨む主人公エイン(画面左)と、エインを気遣う女性

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儀式を行なう遺跡にエインを導く少女

本作は、ゲームシステムとしてはアドベンチャー+RPGといった形式となっている。魔法継承の儀式を行う遺跡にはいくつかの部屋が存在し、それぞれの部屋の中で「魔物」との戦闘を行ない、全ての魔物との戦闘に勝利することが当面の目的となる。

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遺跡の中にて、ドット絵で描かれた美しい世界を探索する

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遺跡の探索中に発見できるシンボルを調べることで、敵との戦闘となる

選択した「感情」によって、戦闘毎に能力が変動するシステム

このゲームの特徴的な要素としては、戦闘に入った際に「感情」を選ぶことが出来るシステムが挙げられる。本作には経験値やレベルの概念が存在せず、選んだ「感情」と装備」によってのみ主人公の能力値が決定されるものとなっている。

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戦闘時のエインの能力に関係するものは「装備」と「感情」のみとなっている

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戦闘開始時の選択によって、戦闘毎に能力値が変わるという独特な「感情」システム

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選択した感情によって変動する能力値は、戦闘前に確認できる。参考にしよう

戦闘で行なえる行動は「攻撃」「防御」「逃走」の3つとシンプルにまとまっている。「攻撃」は敵にダメージを与えるための手段であり、「防御」はダメージの軽減とHPの回復を同時に行なう、そして「逃走」は戦闘を中止して退却するものだ。本作の戦闘では逃走や敗北してもデメリットは存在しないため、戦闘にあたって感情選択や装備選びを誤った場合にも、安心して形勢を立て直すことが出来る。

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戦闘時に選択できるコマンドはシンプルなものとなっている

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状況に応じたコマンドを選んで戦おう

「儀式」に向かったエインを待ち受ける結末とは…?

本作は特徴的な戦闘システム以外にも、水彩画のような一枚絵を用いて物語の背景が語られるイベントシーンなどが効果的に使用され、物語の結末を気にさせてくれるような演出が展開される。儀式に向かうエインを待ち受けるものは、果たして何なのだろうか?

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儀式に臨む前、意味深な会話が聞こえてくる

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一枚絵を使ったイベントシーンは美しく、物語の背景を気にさせてくれるものとなっている

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儀式の祭壇に待ち受けるものは…?

本作は、ゲームの進め方によってエンディングが3つに分かれるマルチエンド形式になっているが、それら全てをコンプリートしても1時間程度でクリアすることが出来る。
ドット絵で描かれた美しいマップ芸術の魅力もさることながら、戦闘毎に能力値が変わる「感情システム」など細かいゲームシステムの発想が面白く感じられた本作、RPG要素が含まれる短編アドベンチャー作品を遊びたい方は、ぜひとも遊んでみてほしい。

[基本情報]
タイトル 『エインルート』
制作者 箱庭のイデア(制作者様サイトはこちら
クリア時間 30分~1時間
対応OS Windows 2000/NT/ME/XP/VISTA/7
価格 無料

ダウンロードはこちらから
http://www.freem.ne.jp/win/game/11600

  • poroLogue(@poroLogue

    もぐらゲームス編集長。大学在学中にフリーゲームをテーマとした論文を執筆。日本デジタルゲーム学会・若手発表会にて「語りとしてのビデオゲーム(Videogame as Narrative)」を発表。NHKのゲーム紹介コーナーへの作品推薦、株式会社KADOKAWA主催のニコニコ自作ゲームフェス協賛企業賞「窓の杜賞」の選考委員として参加、週刊ファミ通誌のインディーゲームコーナーの作品選出、株式会社インプレス・窓の杜「週末ゲーム」にて連載など。

    フリーゲーム作者さんへのインタビュー・レビューなど多数。フリーゲーム歴は10年半ばほど。思い出に残っているゲームは『SeraphicBlue』『Berwick Saga』。