戦闘機とロボット、それぞれのレーザーで敵をせん滅せよ!ツインスティック”レーザー”STG『ジェミニアームズ / GeminiArms』
1980年代にハドソン(現:KONAMI)より発売され、全国規模で「ハドソン全国キャラバン」なるゲーム大会が開催されるほどの熱狂を呼んだ、いわゆる”キャラバン系”シューティングゲーム。それらにインスパイアされた作品をスマートフォン、パソコン向けに制作し、お披露目してきたのがセキュリティエンジニアであり、個人ゲーム開発者のてらりん氏だ。
当もぐらゲームスでも、それらの中で『Image Striker』、『Moon Striker』、『Missile Dancer』三作品のレビュー記事を過去に掲載した。
そんな氏が手掛ける最新作が2019年4月6日、丁度「TOKYO SANDBOX」の開催時期に産声をあげた。同イベントのレポート記事でも少しだけ紹介した、『ジェミニアームズ / GeminiArms』だ。改めて、今回の単独記事でその詳細を掘り下げる。
戦闘機とロボットに変形し、迫りくる敵を撃ち落とせ!
人類が宇宙に進出し、日常を送るようになって50年。地球上で度々繰り返された資源を巡る争いは、宇宙においても変わらず続いていた。特に宇宙にて誕生した人類と、地球で誕生した人類との確執は根深く、衝突が相次いだ。争いは激化の一途を辿り、ついには地球側の連邦軍がスペースコロニーを破壊可能な巨大レーザー兵器を開発。多数の犠牲者を出しかねない深刻な状況に陥る。宇宙側はこれを打破するべく、極秘裏に開発されていた最新兵器「ジェミニアームズ」を投入。レーザー兵器破壊へと乗り出した…。
このような世界観を下地とする本作は、パソコン(Windows)用シューティングゲーム。過去に取り上げた三作は、いずれもスマートフォンとパソコンの二つで供給・販売されたが、本作は前者のみ。販売ストアも「Steam」だけとなっている。
ゲームの作りも過去三作から一新。(事実上の)十八番たる縦スクロールではなく、横スクロールになっている。流れは迫りくる敵を撃墜しながら、ステージ最後に待ち構えるボスを目指す、王道のステージクリア方式だが、スクロール方向が縦ではないのもあって、やや趣の異なる遊び心地になっている。
そして、ユニークなシステムが搭載されている。一つに強制同時プレイ。本作でプレイヤーが操縦する自機「ジェミニアームズ」は二機編成の機体で、片側はコンピュータが自動で操作し、もう片側はプレイヤーが直接動かす仕組みになっている。これにより、シングルプレイ時でも常にコンピュータ側自動操作によるサポートが行われる中で敵と戦う、風変わりな戦術性が描かれている。
おまけに自動操作の機体は無敵。絶対にやられない。だが、自ら進んで敵を倒しに向かってくれるほどの万能サポートはしてくれない。あくまでもプレイヤーの攻撃を補助する程度だ。他のシューティングゲームで例えるなら、追従型のオプションに等しい。なので、基本的にはプレイヤーの実力が試されるバランス。賢すぎると、そちらに頼ってばかりの”社長プレイ”になる問題も考慮した、適度な落としどころに収めた設計になっている。
もちろん、自動操作の一機をもう一人のプレイヤーが直接操作する、二人同時プレイにも対応(※ローカル限定)。その場合はより自由に行動できるようになり、無敵も取っ払われる。さらに役割分担する場面が生まれるなどの戦術面の変化も生じ、シングルとは異なる、協力してステージを攻略していく面白さが味わえる。このような、一人でも二人でも楽しめる余地が設けられているのも見所の一つだ。ちなみに参加方式はゲーム開始時から、途中からの二つ。タイミングを計るのもプレイヤー任せだ。
自機に関しては、ユニークなシステムの二つ目、三つ目に当たる「二つの形態」、「合体」も見所。前者は言葉通り「戦闘機」、「ロボット」の二つに変形するもので、本作では状況に応じてそれらを切り替え、敵の軍勢に対応していくのが基本戦術になる。各形態も「戦闘機」は移動速度が早い一方で攻撃方向が直線限定、「ロボット」は移動速度が遅い一方で攻撃を360度全方向に照射できるのに加え、地面や壁などの地形に接触しても撃墜されないなどの特徴を持ち、全く異なるプレイ感を演出。
そして、「フュージョンゲージ」と呼ばれる画面上に表示されたゲージが最大に達した時、対応ボタンを長押しすれば二つの機体が後者の言葉通りの形態に。一定時間、強力な攻撃を照射できるようになるのだ。しかも、ゲージは特にアイテムを集める必要もなく、自動的に溜まる仕組みなので、ほぼ無制限に合体可能。極めつけにシングルプレイなら長押しで実施な反面、二人同時プレイでは実際にボタンを押した状態で、双方が直接合体しないと発動しない仕組み。息の合った連携が求められるようにもなっているのだ。
このような個性的なシステムが備わっており、内容こそ伝統的なステージクリア型の横スクロールシューティングでありながら、新鮮味のあるプレイ感、本作独自の戦術性を持ち合わせた作りになっている。
しかし、ここまでは序の口。
本作を本作たらしめる、さらなる特徴がある。「レーザー」だ。
レーザー一点主義を貫き通した戦術面
自機の攻撃は、いずれの形態共に可視光線型。一つの線を描き出すものとなっている。これだけなら何の変哲もない、むしろシューティングゲームにおいては前例すら存在する武器である。だが、本作が面白いのはこれ以外の武器、パワーアップが一つも用意されていないこと。言うならば、レーザー一点主義を貫き通しているのだ。
しかも、先ほど少し紹介した通り、形態によって照射されるレーザーも変化。戦闘機なら直線状、ロボットなら360度という具合だ。特に注目はロボットで、文字通り全方位にレーザーを照射し、敵を迎撃できる大胆で華麗な戦術を駆使して立ち回れる。
照射の操作もボタンではなく、右スティックで実施。好きな方向に倒せば、そちらに向けて攻撃が実施され、そのまま倒し続ければスティックを戻さない限り、ずっとレーザーが照射され続ける仕組みだ。
また地面、壁などに当たれば反射。入り組んだ地形の先にいる敵に先手を仕掛けたり、時にはその効果を活かして弱点を狙い撃つ、独特なテクニックも実践できるようにもなっている。
まさに全方位型シューティングゲームな手応えと味わいに満ちた攻撃技。それを横スクロールの世界で実践するという点から、プレイヤーによってはXbox 360のダウンロードソフトで、実は筆者も大好物の『オメガファイブ』を想起させるかもしれない。実際、制作に当たっては同作を参考にしたと作者自ら語られている。
ただ、本作は強制同時プレイと合体、そして「戦闘機」形態の存在から、遊び心地は全く異なる。特に戦闘機形態は直線状にしかレーザーが照射できないのもあって、ものの見事な王道横スクロールシューティング。この形態が活きる場面も度々差し込まれるので、二つの異なるシューティングゲームを一度に遊んでいるかのような、ハイブリッドな遊び応えが得られる。
レーザーに特化しているのもまた然り。前作『MissileDancer』に引き続き、攻撃手段を絞り込むどころか、アイテムによるパワーアップ方式をも取っ払った仕組みは、レーザーの特徴的な性質(反射など)をプレイヤーに体験させることに特化するという確固たるこだわりと潔さが滲み出ていて、まさにレーザーのレーザーによるレーザーのためのシューティングゲームを実現させている。
ただ、さすがに難易度が急上昇しかねないためか、敵の攻撃もレーザー限定とまではなってない。今回は単発のショット、ミサイルなどの多彩な攻撃で襲い掛かってくる。逆に言えば、ここぞという場面でレーザーで攻める敵が登場する。どんな時に、どう使ってくるのかは見てのお楽しみだが、シチュエーション的に熱くなってしまうこと請け合いだ。
他にレーザーの性質を活かし、スクロールも実は横限定でないのも見所。時には斜めや下にと目まぐるしく変化する。そして、最終ステージは今まで、縦スクロールシューティングを制作してきたことに反抗するかのような構成になっているので要注目だ。こう言った細かい部分でも、本作はレーザーで戦うシューティングゲーム特有の遊び心地を演出。そこに強制同時プレイを始めとする独自の要素も合わさってくるので、オマージュを感じさせない仕上がりになっている。
前作『MissileDancer』においても、過去の作品から一気に進歩した独自性が異彩を放ったが、本作ではさらにそれが押し上げられた感じだ。過去のてらりん氏が手掛けた作品を遊んだプレイヤーほど、本作の仕上がりには感慨深いものを得られるだろう。
リプレイ性の高いスコアアタックも光る秀作
また、難易度は全体的に高め。特に残機アップ(エクステンド)の規定スコアが高めに設定され、ゲームオーバー時のコンティニューにもクレジット方式が導入された関係で、力押しが窮地を招くバランスになっている。ステージ一つのボリュームは短めなので、エンディングまで駆け抜けることに特化するならそれほどではないほか、簡単な「イージー」も用意されているが、ハイスコアを目指すならば話は別。シューティングゲーム好きも唸る、納得の手応えを得られるはずだ。
スコアに関してはオンライン対応のランキング機能も実装。反面、「キャラバンモード」は無くなってしまったが、その分、本編にスコア稼ぎを意識させる場面が多く用意されたほか、難易度の上昇もあって、ノーミスクリアからのランク入り達成時の快感が底上げされている。それもあって、周回プレイも楽しく、何度でも遊べてしまうリプレイ性も高めだ。やり込めばやり込むほど、様々な稼ぎポイントが見つかっては、上位を目指せそうな意欲を刺激する仕掛けが満載なので、一通りクリアまでプレイしたら、最初からやり直してみていただきたい。その魅力がよく分かるはずだ。
他に演出もエフェクトは大人しめながら、爆発音の適度なやかましさもあって迫力は及第点。地味ながら固い敵にレーザーを照射した時の「ドドドドド」という音も気持ちよく、ついスティックを力んで倒してしまう。操作スタイルもゲームパッド(Xbox360、Xbox One、PlayStation 4)のほか、キーボードとマウス操作にも対応、それぞれに応じたチュートリアルも用意されていたりと、配慮も申し分なし。
一周に費やすボリュームが30~40分程度で、ゲームモードも本編特化なので、価格設定にやや割高な印象を抱いてしまう部分もあるが、仕上がり具合は盤石。二つの形態を使い分ける戦術性、レーザーにこだわり尽くした攻撃手段とステージごとのシチュエーション、そして強制同時プレイ兼二人同時プレイが光る秀作シューティングゲームだ。直線、全方位の異なるレーザーを射出して、迫りくる敵を撃墜しながらステージを駆け抜けよう。そして、レーザーの猛威に立ち向かえ!
[基本情報]
タイトル:『ジェミニアームズ / GeminiArms』
制作者: てらりん
クリア時間: 50分~1時間
対応OS: PC(Windows)
価格: ¥1520
備考:二人同時プレイ対応(ローカル)、オンラインランキング機能搭載
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