フリーホラーゲーム『A』。サーカスを舞台に紡がれる少年少女の物語

アドベンチャー,フリーゲーム,ホラーゲーム

アドベンチャーゲームの魅力のひとつとして、世界観の元となる「テーマ」が存在する。例えば世界観として「美術館」をテーマにしたフリゲアドベンチャー『ib』や、「寂れた映画館」をテーマにした『a film』など、設定としては様々ながら、それらテーマは作中の演出に一役買っていることだろう。

そんな中、先日「サーカス」をテーマとしたフリーホラーゲーム『A』が公開されたので、紹介したい。このゲームは、4人組の制作サークル「窓辺のプリマ」による作品となっている。本作の特徴としては、サーカスというテーマから紡がれるマルチエンディングの物語や、丁寧に描きこまれた世界観。そして、物語を進めるにあたって待ち受ける悩み応えのある謎解きだ。謎解きも存在するが、制作者のサイトに攻略ページがあるので、そちらを参考にできるようになっている。

目覚めた少女は、サーカスの世界を彷徨う

このゲームの始まりは、闇の深い部屋。そこで主人公の少女は、場所も自分のことも分からないまま探索を行なう。光のある通路に出た時に、彼女の前に謎の少年が現れる。少年は「アリア」と名乗り、少女の名前は「アーサー」であると伝え、これはアーサーのものだと言い「真っ白な日記」を手渡す。その後、アリアはすぐに「サーカスが始まってしまう」と言い残して去ってしまう。名前以外の何も分からないアーサーは、ひとまずこの場所を探索することになるが、そこで「エイダ」と名乗る少女と出会い……。

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「アリア」と名乗る少年から自分の名前を教えてもらう主人公の少女「アーサー」。二人の名前にどことなく違和感を感じるが……

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次にアーサーが出会うのは少女エイダ。エイダはアーサーと一緒にこの場所を探索することになる

このゲームを開始してまず目に入ってくるのは、その作りこまれた世界観だ。「サーカス」をテーマにした本作の舞台は、ドット絵と一枚絵のイラストで表現された見事なものとなっている。探索中に周りを見渡すだけで、その幻想的な空気感を楽しめることだろう。

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意味深な言葉を投げかけるピエロの存在が不気味だ

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マップ内の細かい装飾の配置まで、とても丁寧にデザインされている

ゲームの進行方法としては、マップを探索しつつ奥へと進んでいくことが目的となる。アーサーたちが探索を行なう道中には様々な謎解きが待ち構えており、登場する謎はどれも一捻りが必要なものとなっている。ヒントは提示されているものの、謎を解くためにはそれらの解釈が必要であり、そして中には「謎解きには直接結びつかない、思わせぶりな文章」といったものも存在する。そういった情報を総合的に判断した上で、プレイヤーによる解釈が求められるのだ。
中には悩み応えのある謎も存在するため、行き詰った時には、制作者サイトの攻略ページを参考にするのも手段だろう。

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机の上には謎のメモが。これをヒントに謎を解けるだろうか?

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壁に書かれた文章の意図とは…?複数のヒントを組み合わせ、謎を解き先に進もう!

探索の果てに、アーサーたちは何を見るか?

本作はマルチエンディング制となっており、ゲーム中の探索の仕方によってエンディングが分岐するものとなっている。ひとつのエンディングだけでは完全にはこの作品の全貌が掴めないかもしれないが、複数クリアすることで物語の様々な側面を見ることが出来る。ここからは、そんな本作の物語の一部を紹介したい。

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エイダと共に、サーカスを思わせる場所を探索するアーサー

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作品内で度々出てくる「日記」について語るエイダ

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探索中のイベントイラストも豊富なものとなっている

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先々でサーカスの団員と出会い、アーサーはどこに辿り着くのか……

その作りこまれた世界観と、悩みがいのある謎解きが特徴的なホラーアドベンチャー『A』。1周のプレイ時間としては2時間程度となっているので、短編作品で幻想的な世界を堪能したい人は、ぜひプレイしてみてはどうだろうか?

[基本情報]
タイトル『A』
制作者 窓辺のプリマ(制作者様サイトはこちら
クリア時間 2時間ほど
対応OS Windows 7
価格 無料

ダウンロードはこちらから
http://www.freem.ne.jp/win/game/10527

  • poroLogue(@poroLogue

    もぐらゲームス編集長。大学在学中にフリーゲームをテーマとした論文を執筆。日本デジタルゲーム学会・若手発表会にて「語りとしてのビデオゲーム(Videogame as Narrative)」を発表。NHKのゲーム紹介コーナーへの作品推薦、株式会社KADOKAWA主催のニコニコ自作ゲームフェス協賛企業賞「窓の杜賞」の選考委員として参加、週刊ファミ通誌のインディーゲームコーナーの作品選出、株式会社インプレス・窓の杜「週末ゲーム」にて連載など。

    フリーゲーム作者さんへのインタビュー・レビューなど多数。フリーゲーム歴は10年半ばほど。思い出に残っているゲームは『SeraphicBlue』『Berwick Saga』。