ラン&ガン系アクションゲームの巨大ボス戦がお好き?ならば『Probo Rush』と『Full Moon Rush』の2作に挑もう!
マシンガンのような連射系の武器を用い、敵との戦いを繰り広げるシューティング要素強めのアクションゲームこと「ラン&ガン」。このタイプのアクションゲームでは、以下に挙げる共通した特徴がある。
・走りながら撃てる弾数無限のマシンガン系武器
・複数の武器を使い分ける戦術性
・続々と湧き出てくる大量の雑魚敵
・派手な爆発と巨大なボス
・荒唐無稽で仰々しい演出
・一周単位の手頃なボリューム※過去の特集記事「撃ちまくり爆発しまくりの激闘を楽しもう。”ラン&ガン”インディーゲーム5+1選」より引用
その中で、プレイヤーに見た目の面で強い印象を与えるものといえば、4番目に挙げている「派手な爆発と巨大なボス」だろう。主人公の倍以上の体格、巨体を活かした豪快な技の数々、予期せぬ不意打ち、そして花火大会さながらの華麗な散り様。ラン&ガンの象徴的作品とされるKONAMIの『魂斗羅(コントラ)』シリーズは、続編を重ねるたびにその傾向を高めていった。特に16ビット機で販売されたシリーズ作においては、常軌を逸した発想のボスから「そこまでせんでも……」とボヤキたくなるほどの大爆発が描かれている。
当時、該当するシリーズ作をリアルタイムでプレイした世代の中には、そうした巨大ボスとの激闘や大爆発が思い出として刻み込まれているかもしれない。世代ではなくとも、単純にラン&ガン系のアクションゲームと言えば巨大ボスと大爆発だ、とのイメージが受け付けられているように筆者個人は思っているのだが、いかがだろうか。
そんなラン&ガンの最もおいしいところを味わえる2つのゲームが7月26日、Steam、Epic Games Store、GOG.comにおいて爆誕した。
それが『Probo Rush』と『Full Moon Rush』である。
タイトル画面のデザインがほぼ同じの通り、2作共にスウェーデンの個人開発者Silkworm氏が手がけた作品だ。ジャンルも双方、ラン&ガン系のアクションゲームとなっている。
ちなみにSteamでは単品販売のほか、『Bullet Hell Boss Rush Bundle』なる2作をまとめたバンドルパッケージも販売中である。
道中なし!ボス戦だけ!潔さ全開のラン&ガン系アクション
2作の内容はいずれも共通。ズバリ「全10体のボスを倒せ!」である。
襲い来る雑魚敵を倒しつつ、仕掛け満載のステージを進む”道中”に当たる部分は無し!
いわゆる「ボスラッシュ」主体のステージクリア型アクションゲームだ。
ゲームモードは全10体のボスの個別撃破に挑む「BOSS SELECT」と、連戦形式の「BOSS RUSH」の2種類。いずれも本編に該当し、どんな風に遊ぶかはプレイヤーに委ねるスタイルとなっている。
システム周りではライフ制を採用。ラン&ガンと言えば、1回でも被弾すれば即刻ミスというシビアなルールが脳裏をよぎるが、本作は最大3回まで被弾が許される仕組みになっている。だが、受けたダメージを回復する手段はなし。また、3回という設定はオプションにおいてプレイヤー側で自由に変更可能。最大6回まで上げられるようになっている。
逆も然りで、1回にすればラン&ガンの古典的な厳しさのもとでプレイ可能。さらには禁断の「アシストモード」も搭載。その中のひとつ「無敵モード」を設定すれば、一切やられずに全10体のボスを倒す遊びも楽しめてしまう。
そして、これらの設定はボスとの戦闘中、いつでも切り替え可能。まさにプレイヤーにすべてを委ねた形で、どんな遊び方にも対応した大らかすぎるゲームデザインになっている。ちなみに残機の概念はなく、敗北してもゲームオーバーにはならない。だが、戦闘は最初からやり直しになるペナルティがあるので、油断大敵である。
アクション周りは移動、ジャンプ、射撃を基本とするラン&ガンの伝統的なスタイルを踏襲。その場にとどまって、斜めおよび上下の方向に射撃する固定撃ちの操作も備わっている。また、プレイヤーは最初から数種類の武器を所持。(Xboxコントローラ時)YボタンもしくはAボタンを押すと切り替え、それぞれ異なる弾丸による攻撃が可能になる。
ただ、武器のラインナップは『Probo Rush』と『Full Moon Rush』でそれぞれ異なる。
さらに『Full Moon Rush』は一部、『Probo Rush』にはないアクションも存在する。
『Probo Rush』
武器は4種類で直線状の「マシンガン」、拡散型の「スプレッド」、誘導型の「ホーミング」、短距離型の「ファイヤー」となっている(※注:武器の名称は作中にて付けられていないため、筆者が勝手に命名した)。
一部の闘士はデジャヴを感じたかもしれないが、概ね正しいとだけ言っておく。
『Full Moon Rush』
武器は3種類。拡散型で飛距離が伸びるほど威力が上がる「ライトニング」、毒液を放つ「ポイズン」、連射性の高い誘導弾「ブレイズ」となっている(※注:これらの名称も前述と同じく、筆者が勝手に命名したものである)。
また、『Probo Rush』では武器切り替えに割り当てられているAボタンに「ダッシュ」のアクションが備わっている。その名の通り、横方向に高速ダッシュするというもの。ダッシュ中に限り、わずかに無敵時間が発生するという特徴がある。
まとめるなら『Probo Rush』はアクション最小限のスタンダードタイプ、『Full Moon Rush』は特殊な立ち回りも可能なテクニカルタイプといった感じだ。なお、2作共に登場する10体のボスも全く違い、独自の戦闘が楽しめる設計である。
他に双方「しゃがみ」のアクションが存在しない、武器のパワーアップやダメージに伴う弱体化(所持武器の消失)がないのもちょっとした特徴となっている。ただ、全体的なアクションゲーム(ラン&ガン)としての作りは伝統的かつ単純明快。どちらも最もおいしいところを味わえることにフォーカスした内容に仕上げられている。
「勝てそうで勝てない!」絶妙に嫌らしいバランスが心を熱くする!
そんなこの2作の秀逸なところは、絶妙な難易度バランスにある。
具体的には2作両方のボス戦。その多くが一貫して「勝てそうなのに勝てない!」という、(いい意味で)嫌らしくて楽しいバランスで調整されているのである。
基本的に2作品それぞれで登場するボスは、ダメージを与えていくにつれ、攻撃を激化させていく特徴を持っている。最初は弾をばら撒くだけだったのが、激化と共に新たな攻撃を仕掛けてきたり、急に動きが速くなったりするというのが一例だ。こうした変化は、取り立てて斬新なものではない。ラン&ガン系に限らず、アクションゲームのボス戦では至って伝統的なものである。
ただ、その激化が始まるタイミングと、それに伴う難易度の変化が絶妙。それでいて、繰り出される攻撃も明確に回避できるものとして描かれ、初見でも「対処できそう」というやる気にさせてくれるものになっているのだ。
しかし、かと言って初見撃破ができるとは限らない。大抵負ける。挑んでみたら結構トリッキーで回避に苦労してしまったり、酷い時には一瞬の気の緩みでダメージを受けて敗北、みたいなことにもなる。
しかしながら、「次はなんとかなるのでは?」との希望が残る。また、ボス戦は長くても3分程度で決着する規模に収まっている。なので、最初からやり直しになることへのストレスも少なく、前回の経験も活かせることから再チャレンジへの意欲が湧きやすい。
そして挑んだ結果、無事に突破……と思ったらさらなる変化が起き、返り討ちなんてこともあるのだが、それでも攻撃への対処しやすさは共通。ゆえに「次こそ勝利を掴む時!」……と思ったら、今度は集中力切れや凡ミスで失敗ということになったりする。
こうした「勝てそうなのに勝てない!」「あと一歩が届きそうで届かない!」という心持ちにさせる調整が一貫しており、なんとも嫌らしくて楽しい戦闘を提供してくれるのだ。しかも、素晴らしいのがこのバランス、オプションでライフ設定を最大の6にしても変わらない。そもそも、ダメージを回復する手段が存在しないため、力押しによる戦術は通用しないのだ。よって、どのボスも攻撃をきちんと回避し、その特徴を知った上での対処が必要になってくる。
さすがにアシストモードを使った時は話が変わってくる以前に、これらの見所大崩壊になるが。それでも理不尽そうで理不尽でない激化の流れには調整の上手さを垣間見るはずである。また、理不尽さがないからこそ、やられたとしてもムカッとすることがない。失敗の要因がプレイヤー側の操作ミスに由来するからこそ、思わず「あがーっ!?」と笑いながら声を出してしまう楽しさが勝りやすい。人によってはアブない声に出してしまう恐れもあるが。事務所に叱られかねないので気を付けよう。(なんの話だ)
とにもかくにも、そんな絶妙な調整が光る仕上がりになっているのだ。2作共に10体いるボスの内の後半組には、「無茶言うな!」とボヤきたくなる苛烈な攻撃で攻めてくる者もいるが、大事なことなので繰り返そう。理不尽さはない。何度か挑むうちに思わぬ隙間が発見され、一気に難易度が変わる瞬間が訪れるようになっているので、粘っていただきたいところだ。
また、このバランスの絶妙さを最もダイレクトに味わえるのがデフォルトのライフ設定3である。なので、2作をプレイするに当たっては、ぜひともデフォルト設定のまま、戦闘に挑んでみていただきたい。「勝てそうで勝てない!」の真髄を思い知らされるはずだ。
ゆくゆくはラン&ガンの代名詞、ライフ設定1にも挑戦だ。まさに「無茶言うな!」だが、保証しよう。全然勝てる(力説)。
バランスに焦点を当てたが、ボスそのものも個性豊か。ストーリー設定が存在しないのをいいことに巨大メカあり、モンスターあり、中東の神秘あり、某テレビ局のマスコットキャラクターあり(!?)のやりたい放題だ。もちろん、倒した後の爆発も申し分なし!攻撃を命中させた時にも小気味よい音が鳴り響くので、手触りもバッチリだ。
ボスに関しては2作それぞれ、プレイヤーのできるアクションが違うのを踏まえた個性付けが図られているのも見所。とりわけ『Full Moon Rush』はスピーディな立ち回りが試される戦闘が多いので、アクションゲームにスピード感を求めている人ならば、まずはこちらから挑んでみることをお薦めしたい。美味しいものは後回し、という判断もよしだ。
火傷するほど熱い戦闘曲も要チェックの小粒な良作アクション
ボス戦に関してはもうひとつ、特筆すべき部分として音楽がある。2作共に戦闘曲は1曲しかないのだが、これが非常に耳に残ると同時に再チャレンジ意欲を刺激する熱いものになっている。
特に素晴らしいのが『Probo Rush』だ。前掲の動画を見れば分かる通り、火傷するほどに熱いという表現がこれ以上ないほど似合う戦闘曲になっている。
この曲を手がけたのが、PC(Steam)およびNintendo Switch向けに販売中のアクションゲーム『Donut Dodo(ドーナツ・ドド)』のSean “CosmicGem” Bialo氏であるという時点で、分かる人には分かったはずだ。そんな訳で……挑め!
だが、惜しむべきは前述の通り戦闘曲が1曲しかないこと。これは贅沢極まりない望みだと重々承知しているが、可能であれば10体それぞれ固有の曲を設定して欲しかったところだ。多分、現在の定価が跳ね上がる可能性もあるが。
また、本作は日本語テキストに対応しているのだが、ハッキリ言って対応させる必然性がない。そもそもストーリーは存在しないし、メニュー画面の表記および単語もひと目で分かるものになっている。加えて上記を含む一部スクリーンショットの通りだが、日本語のフォントが潰れ気味で、設定すると残念なことになる。これ自体は英語などの他の言語でも共通なのだが、日本語にすると殊更潰れ具合が目立ってしまう。
なので、本作をプレイするに当たっては英語設定のままでプレイすることを強く推奨したい。これと言ってテキストを読むようなことはなく、本編は戦闘に次ぐ戦闘の連続なので、全く支障がないはずである。
ただ、『Full Moon Rush』は武器、アクションに特殊な性能があるので、チュートリアルをする際は日本語に設定しておくといいだろう。
大体、10体のボスを倒すまでは30~40分。実績やタイムアタックのやり込みもあるが、前者も10時間を超えない範囲内で達成できる規模となっている。ただ、2作共に絶妙なバランスと変化に富んだボス戦、熱い音楽で至福のひと時を提供してくれる仕上がりだ。
アクションゲーム、とりわけラン&ガンのボス戦が好きな人にはおすすめの良作である。ぜひデフォルトのライフ設定3で、「勝てそうで勝てない!」とのもどかしさを体験させてくれる珠玉のボス10+10体の戦いに挑もう。ゆくゆくはライフ設定1の試練にも挑め!
[基本情報]
タイトル:『Probo Rush』&『Full Moon Rush』
販売・開発:Meridian4、Silkworm
クリア時間:30分~40分
対応プラットフォーム:Windows
価格(税込):580円(※Steam:2作共通)、1,044円(バンドル)、490円(※Epic Games Store:2作共通)、$4.99(※GOG.com:2作共通)
備考:無料体験版あり(※Steamのみ)
◇購入はこちら
・『Probo Rush』(Steam)
・『Full Moon Rush』(Steam)
・『Bullet Hell Boss Rush Bundle』(Steam:バンドルパッケージ)
https://store.steampowered.com/bundle/33851/Bullet_Hell_Boss_Rush_Bundle/
・『Probo Rush』(Epic Games Store)
https://store.epicgames.com/en-US/p/probo-rush-b3ee54
・『Full Moon Rush』(Epic Games Store)
https://store.epicgames.com/en-US/p/full-moon-rush-15f674
・『Probo Rush』(GOG.com)
https://www.gog.com/en/game/probo_rush
・『Full Moon Rush』(GOG.com)
https://www.gog.com/en/game/full_moon_rush