仮想現実の美少女ゲームをテーマにした漫画『ルサンチマン』の世界が現実に「70%再現」された

Oculus Rift DK2,VR(バーチャル・リアリティ),イベントレポート

8月26日夜。新宿・歌舞伎町にあるライブハウス「ロフトプラスワン」でイベント『花沢健吾×堀江貴文 ルサンチマンの世界がここに!?』が開催された。

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このイベントは『アイアムアヒーロー』『ボーイズ・オン・ザ・ラン』などでお馴染みの花沢健吾先生と堀江貴文氏のトークライブだ。テーマは花沢健吾先生のデビュー作『ルサンチマン』。堀江氏が招いたOculus Riftの開発者チームが『ルサンチマン』の世界を再現したのでそのお披露目が行われた。

ゲストでセクシー女優の紗倉まなさん、そして再現を手がけたOculusの開発者集団、チームルサンチマンの5名(@GOROman@yunayuna64@yuujii@waffle_maker@NaotakaFujii)が登壇した。聴衆も130名以上という盛況振りで、地下2階の会場は熱気に包まれた。

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おそらく、日本初、いや世界初のバーチャルな「性」をテーマにしたイベントだったのではないかと思う。その様子をレポートしてみたい。

3D美少女ゲームの仮想現実にハマるダメ男を描いた『ルサンチマン』

そもそも『ルサンチマン』とはどういった漫画かという紹介をしよう。

舞台は2015年。主人公の坂本拓郎(30歳)は金ナシ、女ナシ、ブサイクの3拍子揃ったダメ男。無味乾燥な毎日を送っていた。そんな坂本が出会ったのが3D美少女ゲーム。ゴーグルのような装置ヘッドギアを装着してプレイする仮想現実のギャルゲーだ。相手の女の子はAIでたくさんの種類が用意されており、店で売られているお気に入りの子を購入する。

ヘッドギアを装着すると仮想空間の中で、AIの女の子と会話をしたり、あんなことをしたりと色々な体験もできる、まさに3Dのギャルゲーだ。男性の欲望を忠実に再現したとも言える。

作品では、坂本が出会ったAI『月子』。この月子には他のAIとは違う秘密があった…。
現実を巻き込む形で話が進展していく。

そんなあらすじだ。

この作品に登場する仮想現実の装置はOculus Riftにも似たゴーグル型。スーツやグローブなどの周辺機器が必要なことも似ている。そして、部屋でプレイしながら、動きすぎて壁にぶつかってしまうシーンなどは現実のOculusの体験でも起こりがちなことだ。2004年の作品だが、現在のVRの状況と見事に一致していることが驚きだ。

漫画家の花沢先生にとっては、『ルサンチマン』は当初打ち切りになった作品。描いたときは漫画家人生の中でもかなり不調な時で、行き詰まった結果生まれたのが『ルサンチマン』だったという。どん底の自分の気持ちを主人公に乗せて描いたところ、感情が入っていていいということで連載が始まったのだとか。

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画面には主人公・坂本(をVRで再現したモデル)。当時の売れ行きはイマイチだったという。「いまさら光が当たるとは…」というコメントも。

筆者はOculus Riftを体験した後でこのルサンチマンを読んだ。見事に現在のVRの延長線上にある内容でありながら、「ここまで実現できてしまうと現実と仮想現実の違い、AIと人間の違いってなんだろう?」と考えさせられる作品だった。

Oculus Riftと『ルサンチマン』

なぜOculus Riftと『ルサンチマン』なのか?

1年以上前、Oculus Riftの初期型DK1が日本に届きはじめた頃、GOROman氏が花沢先生にTwitterでリプライを送ったことがきっかけだったという。

このやりとりをきっかけに、ルサンチマンはOculusRiftの登場を予見していたということで、他の開発者も巻き込んでこの漫画を慕うチームルサンチマンが結成された。

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チームルサンチマンの5名(後列)

Oculus Rift DK2の高解像度、全身の動きを認識できるスーツなど技術的にも『ルサンチマン』の世界を再現することが可能になってきた。堀江氏の提案で、ぜひ預言者である花沢先生に体験してもらおうということで今回のイベントが実現した、というわけだ。

さっそく花沢先生が体験した。使用する装備はOcukus Rift DK2の他に、全身にセンサーがついたスーツMVN。これによって全身の動きを認識する。

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Oculusを被るとまず広がるのは男性におなじみの「例のプール」

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自分はルサンチマンの主人公坂本と同じキャラ。坂本とAI月子が出会う海辺も再現。スーツをつけているので全身の動きが連動する。

3Dスキャンデータの忠実な再現

Oculus Riftで実現するバーチャルな世界を楽しんだ後に、いよいよ本命のコンテンツがはじまった。流れ始める艶やかな声は紗倉まなさん!?

かなり過激な光景が繰り広げられたため、この記事では写真やビデオで100%お見せできないのが残念だが、想像で補っていただければ幸いだ。

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そして、完全に向こうの世界に行ってしまった花沢先生(一番右)。

この本命のコンテンツ、チームルサンチマンの一員である大鶴尚之氏(@yunayuna64)が働く株式会社イリュージョンが進めているプロジェクトと関係している。

セクシー女優の3Dスキャンデータを撮影し仮想現実に再現する「PLAYGIRLS」プロジェクトだ。今回、ゲストで登場した紗倉まなさんの身体も全身スキャン済み、ということでそのデータを使ったコンテンツになっている。

PLAYGIRLS公式サイト
http://pg-production.com/

女優さんのスキャンデータは非常に処理が重いためレタッチや身体の動きなども自然になるよう加工したものになっていると自信たっぷりの口調で披露。

動くスピードなども調整できるとのこと。紗倉まなさん本人も自身の3Dモデルが動いているのを見て、「不思議な気分になる」という感想を漏らすほど、見事に再現している。

再現度は70%、バーチャルが押し広げる世界へ高まる期待

なお、このコンテンツ、花沢先生からは「再現度70%」との評価だった。

残る課題はなにか?

スーツは1着800万程度という話だったが、まだ手の動きに誤差がでていたようだ。そして、触覚のフィードバックがないことだ。バーチャルな世界で相手に触れてもその感触はまだ現実の身体には返ってこない。会場にはコンテンツと連動して動くVR TENGAと呼ばれる怪しげな装置もあったが、まだ実装は先とのこと。

また、紗倉まなさんからは、男性用だけでなくて女性用もぜひ作ってもらいたいという話があり、会場を沸かせていた。

こうした改善点は今後の課題としてチームルサンチマンの面々に引き継がれた。近いうちにこれらの課題は解決するだろう。

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チームルサンチマンのGOROman氏(左)。Oculus Riftのエバンジェリストとして、国内外のイベントでのVRコンテンツの制作も受注している。「かつてヤフーがADSLのモデムを配ったように、Oculus Riftを配れば一気に普及するかもしれない」という話も飛び出した。

イベント後に一般向けにスーツは付けない体験会が行われたが、体験をした人たちの口元は、これまでの体験会で見てきたものとは比べ物にならなほど緩んでいた。男性はもちろんのこと、女性の体験者も同様だ。

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筆者も体験した。「すごい、やばい」その一言である。プロジェクターで映し出される画面とは比べ物にならない光景が広がっていた。掲載できそうな写真を選ぶのに苦労したことはお伝えしておこう。

今回のイベントでは、Oculus Riftはゲームの世界に革新的な変化をもたらしつつあるが、アングラな世界にも同じように変化をもたらす可能性があることが強く示唆された。VHSの時のようにこういった分野こそが技術を推し進める可能性も往々にありうる。

株式会社イリュージョンではセクシー女優の3Dデータを年内にも発売予定だと言う。触覚フィードバックなどの改善点も近いうちに実装されると、いよいよバーチャルな世界の扉が開かれる。

イベントの最後の方で堀江氏が述べていたように、「構想を練る人がいて、作る人がいて、推進力になる」。今回のルサンチマンの例はまさに、漫画で描かれた世界があって、それを開発者が実現するエネルギーになった。

奇しくも来年2015年はルサンチマンの舞台となった年だ。バーチャルの世界がどこまで進むのか今から楽しみだ。

Oculus RIft Dk2対応コンテンツの紹介記事はこちら

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  • すんくぼ(@tyranusii

    学生時代、MMORPG「リネージュ」で朝から晩まで飽くことなきレベル上げと戦争に没頭する毎日を送る。本業では廃人卒業後、国家公務員を経て、再びゲームの世界へ。「もぐらゲームス」を立ち上げました。ハマったゲームはライブアライブ、ファイアーエムブレム 聖戦の系譜、デモンズソウルなど。
    個人ブログもやってます:もぐらかペンギンか