幼きロボットと博士が交わした”約束”の物語『OPUS: The Day We Found Earth』
日々、探究心を持った科学者たちが研究を続ける「宇宙開発」。宇宙生活が現実のものとなったらどうなるのだろうか。子供の頃に空を見上げて抱いた「わくわく感」は今もなお色あせない。インディゲームデベロッパー「SIGONO INC.」が手がけた『OPUS: The Day We Found Earth』の舞台は、人類が宇宙へと進出した数十万年後の世界「銀河歴160000年」。人類は生活拠点を宇宙へと移していたのだ。
そんな、新世界の人類が危機に直面していた。生命を維持するための遺伝子に欠陥が発見され、このままでは人類が滅亡してしまう。滅亡を防ぐためには「太古の時代の遺伝子」が必要となる。人類の存亡をかけたプロジェクトの調査隊となった研究者たちは、今では神話の存在とされている人類の故郷「地球」を目指すこととなった。
暗い宇宙の中、たった1人で起き上がる
地球調査プロジェクト「オプス号」に乗った研究員は「リサ博士」、「マコト」、そして博士の手によって生み出された人工知能ロボット「OP1414-エム(以下、エム)」の3人。地球探索の開始から839日が過ぎ、マコトは「地球が見つけられるとは思えない」と半ば諦めていた。神話となった存在を2年以上追いかけても見つからなかったら、諦めてしまう気持ちも分かる。
しかし、そんなことお構いなしに、地球の存在を信じるリサ博士は、親のように優しくエムに望遠鏡の使い方を教えている。リサ博士とマコトの大人同士のやり取りに理解が追いつかないエムに、博士はこう告げる。「マコトは自分の目標を信じていないから怒っている」と。
エムには目標が無かった。目標が無いロボットはただのコンピューターになってしまう。リサ博士は、エムをコンピューターにさせないため「地球を見つけること」を目標として与え、固く約束をするのであった。
暗い宇宙船でエムは1人目覚める。リサ博士と交わしたあの約束から何日、何週間、いや何ヶ月経ったのだろうか。現在の日時は不明だ。人の気配は無く、博士らを探そうにもオプス号の電力供給が少ないため、この場から身動きが取れない状況だ。一刻も早く、博士に会いたいという気持ちを抑え、記憶を頼りに、教えてもらった望遠鏡を使い地球調査を開始する。
神話と化した「地球」を探す
この莫大な宇宙で何の手がかりも無しに地球を探すのは一苦労だ。オプス号には、地球を探し出すヒントとなる情報が搭載されている。情報を頼りに地球を探し出そう。宇宙は大きく4つの「ゾーン」に分かれていて、1つのゾーンに各「星域」が存在している。その星域内の「座標」を辿ることで惑星を発見していく流れとなっている。
上記の画像では、「ゾーン1にあるLISA星域の「06.13」の座標に位置している惑星を探し出せ」と指示されている。オプス号に表示された情報が一致していたら目ぼしい惑星を「スキャン」してみよう。
惑星のスキャンに成功すると「半径」、「温度」、「質量」、「水」などの詳細から、どのくらい地球と似ているか「相似度」で表示される。上記の画像では、水は73%と地球に近いが、質量が全く似ておらず、その他も半分ほどで、空気が薄すぎて人間が住むのに適さない。相似度は54%と低く地球とは別物だ。
調査をしていく中で、プレイヤーが発見した惑星には、自分で名前を付けることができる。惑星の情報から決めたり、フィーリングで決めたり自由に命名してみよう。宇宙全体を見渡す時に、自分が命名した惑星が映り込むと何だか嬉しい気持ちになる。
地球の存在は、神話扱いされているほどだ。そう簡単に見つからない。調査を進めていく内に、望遠鏡がアップグレードされて「演算方」や「フィルター」など地球調査に役立つ新たな機能追加される。いくつもの失敗を繰り返し、エムはリサ博士との約束を叶えるため、ひたむきに地球を探し続けるのだ。
リサ博士との約束は叶うのか
リサ博士は「もし地球が存在しないのであれば、人類は遺伝子操作によって生み出された人工的な産物となってしまうが、それはありえない話である」とレポートに残し、地球が神話だと思わない。熱い探究心を持った博士の心を受け継いだエムは、「相似度99.89%の惑星を探すのは天文学的な確率」という言葉にも負けない。大好きな博士との約束なのだから。
オプス号の電力が少し回復したところで、エムは不思議な再会を果たす。リサ博士そっくりのホログラム「オプス汎用サポート人工知能第三型(以下、リサ)」が突如出現する。彼女は、地球を探すエムの協力者であるという。自らを「リサ博士」と名乗るが、エムは「リサはリサ、博士は博士だ」とあくまでも区別する。リサ博士から地球を探す熱を受け継いでも、エムの心はまだ子供のように未熟である。時おり、リサが優しく接するも駄々をこねて困らせてしまうシーンもある。どうやら、彼女もエムと同じく「目標」を持っているらしいのだが……。
リサ博士はどこへ行ってしまったのだろうか。オプス号には、数々の痕跡が残されている。エムの記憶では「恒星フレアの衝撃で宇宙船の調子が悪い」という会話もあった。船内の様子や残された情報から、少し慌ただしさも感じ取れる。一体、何が起こったのだろうか……。
幾度もの探求を経てたどり着く物語の終盤では、セリフの1つ1つの意味が深く、ラストのエムの言葉には思わず胸が熱くなった。エンドロール中は、作中で交わされた言葉の意味や解釈を考えながら余韻に浸った。
暗く広大な宇宙を舞台にロボットと人間、時間の流れ、ロボットの心の成長が切なくも優しく描かれている『OPUS: The Day We Found Earth』。より深く物語に浸るために、ぜひイヤホンやヘッドホンを使用してプレイしてみてはいかがだろうか。
[作品情報]
タイトル:OPUS: The Day We Found Earth
開発元:SIGONO INC
プレイ時間:2時間程度
価格:898円