PC版が発売された『Tengami』。不思議な世界観の秘密を探る
昨年発売されたiOS向けパズルアドベンチャー『Tengami』。古来日本神話をコンセプトに、和紙でできた飛び出す絵本を「めくる」ような感覚で進めて謎を解いていく。1月13日、SteamにてそのPC版が発売された。
ゲーム中では光っている箇所をフリックすることでステージが絵本のようにめくれる
iOS版に関しては既にもぐらゲームスでもレビューをお届けしているのでぜひ合わせて読んでいただきたい。
和紙で作られた幻想日本――David Wise の楽曲が息づく絵本風アドベンチャー 『Tengami』
PC版をプレイしてみて感じたのは、何といってもその美麗なビジュアル。PC版では、それを最大限楽しむことができるのが魅力だ。
スマートフォンの小さな画面の中にとどまっていた『Tengami』の美麗なグラフィックがPCの画面いっぱいに広がる様は圧巻だ。スマホ版は絵本という趣が強かったのに対して、PC版はその大きさもあって、美術館で水墨画を見ているような感覚に陥る。主人公の男(名前はない)はその絵の中を動く。まさに絵画の中で遊んでいるような感覚にひたることができる。より大画面でプレイすればするほどそういったプレイ感が強くなる。
iOS版は2014年2月10日に公開、AppStoreでは総合部門20カ国で1位、パズル部門123カ国で1位を獲得するという快挙を成し遂げている。
和風と呼べるのか迷う不思議な世界観
ところで、このゲームの世界観を説明するときは「和風」という言葉が使用されることが多い。
古来日本神話を元にしているゲームと謳われている通り、和紙のような質感も主人公の服装や髪型も、そして桜や雪といった素材も「日本」を感じさせる世界観だ。
しかし、プレイしてみると「これは日本のようで、日本ではない」と気づく。日本人が馴染んでいる和風ではないのだ。
例えば、灯台のデザイン。
そして色使いも日本の美術に見られるものとは根本的に異なる。
世界中にウケた独特の世界観の秘密
その理由を考えるために、まずこのゲームを制作したチームを紹介しよう。『Tengami』を制作したNyamyamは3人から成る非常に小さなチームだ。日本の沖縄在住の東江亮氏、ドイツ在住のJennifer SCHNEIDEREIT氏、イギリス在住のPhil TOSSELL氏の3人は、かつてイギリスのレア社に勤務し、ゲームの開発に携わっていたが、自分たちでこだわったゲームが作りたくなり独立、Nyamyamを結成した。国をまたいだチームなので、日々ネットでやりとりをしながら、ゲーム制作にあたっている。
そう、『Tengami』の制作には日本人が携わっている。その結果、なぜ和風に見えない和風なゲームが作られたのか。
デザイナーの東江氏は、『Tengami』で「海外の人が憧れる日本」を表現したという。
海外、特に欧米圏で食べられている寿司が、”Sushi”という名前でありながら日本の本物の寿司とは似て異なるものであるように、『Tengami』の世界観は海外の人たちが日本に持っているイメージ・憧れを表現したという意味で「和風」なのだ。日本の千代紙にあるような、思いきり日本らしいカラフルなデザインをすると、逆にドン引きされてしまったという。
「日本人の自分こそ日本を一番分かっている」という気持ちを押し殺し、外国人の憧れる日本の姿を他の2人と共同で作り上げていった。「外から見た憧れの日本」に徹底的にこだわることで、『Tengami』は海外から見たときに非常に「和風」なゲームに仕上がり、世界中の人がAppStoreからダウンロードしたというのは非常に興味深い。3カ国に分かれて住む3人だからこそ制作することができたのだろう。
外国人が憧れる日本の世界観。日本人からするといささか奇妙な世界観だが、日本にいながらにして体験できることは多くない。ぜひ『Tengami』をプレイして体験してみてはいかがだろうか。
[基本情報]
タイトル Tengami
制作者 Nyamyam
クリア時間 2~3時間程度
対応OS等 Windows Vista 以降/ Mac Mountain Lion 以降
価格 800円
PC向け日本語版のダウンロード
Playism