フリーゲームRPG『嘘つきジニーと磔刑の国』。倒した敵を入手して戦わせる、戦術性の高いゲームデザインが光る

RPG,フリーゲーム

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今回は、探索型フリーゲームRPG『嘘つきジニーと磔刑の国』を紹介する。本作はフリーゲームRPG『停滞少女』などを制作した「マテンロウ計画」のうた氏による新作となっている。
このゲームの特徴としては、倒した敵を道具のようにストックし、戦闘で呼び出し仲間として戦わせるという「使役」システム、そして探索中に手に入れたアイテムは何でも装備でき、それらアイテムを合成してさらに強力な武具を練成する「装備」と「練成」のシステムだ。またレベルアップが存在せず、キャラクターの能力値の上昇や技の習得は全てアイテムを装備することに頼るため、プレイヤーの戦術が戦闘の勝敗にダイレクトに反映される点も特徴となっている。さっそく紹介していきたい。

レベル制なし、プレイヤーの戦術が問われるゲームデザイン

本作の舞台となる場所は、不死者たちの王国『磔刑の国モルテモーセ』。主人公は、この国の「不死神」に捧げる供物として選ばれた少女「ジニー」と、妹であるジニーを救うためにモルテモーセへとやってきた「マルタ」の二人だ。二人はこのアンデッドだらけの磔刑の国を脱出すべく、「磔の城」の上層部をめざし上へ上へと進んでいくことになる。本作は探索と戦闘がゲームの大部分を占めているが、城の階層を進むごとにジニーたちの過去の記憶を振り返る形で物語も展開されるものとなっている。

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ゲーム開始時、ジニーを助けるべくマルタがモルテモーセへとやってくる

本作にはレベルアップが存在せず、敵を倒すと得られるものは経験値ではなく武具やアイテムを練成するための素材アイテムとなる。そのため、ただ敵を倒すだけでは強くなることが出来ず、本作の特徴である「使役」「練成」「装備」という3つのシステムを駆使し、ジニーとマルタを強化していくこととなる。

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「磔の城」の次の階層へと進むためには、それぞれの階層の奥に待ち構える手ごわいボスキャラクターも倒さなければならない。後述するシステムをフル活用して撃破しよう。

「使役」・「練成」・「装備」。3つのシステムが勝敗を分ける

ここからは、本作の特徴である3つのシステムを紹介しよう。まずは「使役」のシステムだ。主人公の一人であるマルタは「操霊術」というスキルを持っており、探索中に特定のアンデッドを倒した場合、そのアンデッドは道具のようにストックされ、次回の戦闘から仲間として使用することが出来る。

アンデッドは無制限に使えるというわけではなく、倒した敵の数だけストックされ、呼び出すごとに1体ずつ消費していく。無計画に呼び出していると、次回の戦闘で使うアンデッドがなくなってしまいピンチに…ということも起こりうるので注意が必要だ。また、使役するアンデッドにもそれぞれ特徴があるので、相手に合わせて使い分けることも大事だ。

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特定のアンデッドは倒すと仲間としてストックすることが出来る

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倒したアンデッドを戦闘中に仲間として呼び出すことが出来る。苦戦した強敵の力を借りることが出来れば、攻略も楽になるだろう

次は「練成」のシステムだ。敵を倒して手に入る素材アイテムと「魔石」を組み合わせることで、攻略の役に立つ武具やアイテムを作り上げることが出来るというものだ。練成結果のアイテムについては初めはどんなものになるかわからないが、一度合成すれば結果が記憶され、同じアイテムを何度も作ることが出来る。また、使用する魔石のレベルによっては、素材として使用できるアイテムの数や練成結果が変わってくる。上位のレベルの魔石ほど強力なアイテムがつくれるので、まだ見ぬアイテムを次々と作り上げていく面白さもあるのだ。貴重なアイテムを手に入れるヒントは探索中にも入手することが出来るため、有効に活用しよう。

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魔石や素材アイテムは敵を倒して入手できる。最初は練成結果となるアイテムは分からないが、一度合成してしまえば、同じものを作る場合は結果が表示される。

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探索中には、アイテムを作るためのヒントのようなものも…? 高いレベルの魔石を使うと強力なアイテムを作ることが出来るため、強いアイテムを集めることも思わず楽しみになってしまう

最後に「装備」のシステムについて、本作では普通のRPGのように「武器なら腕に、服なら身体に装備する」という制限は一切ない。キャラクターの持つ装備スロットの数だけ、種類に関係なく装備を装着することが出来るのだ。そのため、「防具を一切身につけず武器だけを身に着け攻撃力に特化する」。逆に「防具だけを身に着けて仲間の盾となる」という、能力の調整と役割分担が可能となる。

image05装備の組み合わせはプレイヤーの戦術次第。色々な組み合わせを試してみよう

状態異常の「深度」、そしてパーティの「隊列」システムも奥深い

これまで紹介した3つのシステム以外にも、本作には注目したい要素がある。このゲームでは、RPGにおける「麻痺」などの状態異常に「深度」が設定されており、同じ状態異常を引き起こす技を相手に使うたびに、状態異常の「深度レベル」が上昇、相手の状態をより深刻なものにすることが出来る。状態異常には、相手に毎ターンダメージを与える「衰弱」や、深度レベルに応じた確率で行動が不可能になるうえ、攻撃力が下がるという「魅了」など存在し、状況に応じて活用することで戦況を好転させることが出来る。

特筆すべき点は、こういった状態異常がボスキャラクターにも通用することだ。通常のRPGでは、ボスキャラクターにステータス異常など効かず、使用機会が無い場合もあるが、本作ではむしろ戦術の要となりうるものとなり、プレイヤーの作戦や工夫の幅を広げてくれる。

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磔の城で待ち受ける強力な敵も、状態異常を駆使すれば互角に戦うことが出来る。逆に相手も容赦なく使用してくるので対策が必要だ

次に「隊列」のシステムだ。ジニーとマルタはそれぞれ、隊列を「前衛」と「後衛」のどちらかを設定することができる。後衛は、前衛が倒れるまで敵の攻撃の対象とならない。ただし全体攻撃のダメージは変わらず受けてしまうために絶対安全ではない、という部分も戦術を考えるポイントとなる。

この隊列システムは、特に「装備」のシステムとの組み合わせが重要となってくる。たとえば、圧倒的な攻撃力を持つ敵に対しては、防具を固めたマルタを前衛にして防御させ、後衛のジニーが回復と遠距離攻撃を担当する…という役割分担を行うことで、普通の戦い方では勝てない強力なアンデッドたちも倒すことが出来るだろう。
ただし、ひとつの戦術が全ての敵に有効とは限らない。相手の特徴に応じた装備や戦術をプレイヤーが考えていくのが重要であり、そして面白さのある部分となっている。

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装備に応じて隊列を調整することが重要だ

本作は、その特徴あるシステムの組み合わせから様々な戦術を取ることができ、奥深い戦闘を楽しめるRPG作品となっている。プレイ時間としても6時間ほどで終わる作品となっているので、攻略しがいのあるRPGを求めている人はぜひプレイしてみてほしい。

[基本情報]
タイトル 『嘘つきジニーと磔刑の国』
制作者 マテンロウ計画(制作者様ページはこちら
対応OS Windows XP/Vista/7/8
価格 無料

ダウンロードはこちらから
http://www.vector.co.jp/soft/winnt/game/se510313.html

  • poroLogue(@poroLogue

    もぐらゲームス編集長。大学在学中にフリーゲームをテーマとした論文を執筆。日本デジタルゲーム学会・若手発表会にて「語りとしてのビデオゲーム(Videogame as Narrative)」を発表。NHKのゲーム紹介コーナーへの作品推薦、株式会社KADOKAWA主催のニコニコ自作ゲームフェス協賛企業賞「窓の杜賞」の選考委員として参加、週刊ファミ通誌のインディーゲームコーナーの作品選出、株式会社インプレス・窓の杜「週末ゲーム」にて連載など。

    フリーゲーム作者さんへのインタビュー・レビューなど多数。フリーゲーム歴は10年半ばほど。思い出に残っているゲームは『SeraphicBlue』『Berwick Saga』。