フリーゲームをはじめよう。「第5回 フリーゲーム制作をはじめよう!」
これまでに4回行ってきた連載「フリーゲームをはじめよう。」は今回で最終回です。今までフリーゲームの魅力を遊ぶ側の視点を中心に取り上げてきましたが、遊ぶだけではなくて自分でゲームを作ることも大切な要素のひとつです。なので連載の締めくくりとして、「フリーゲーム制作のはじめ方」という話題を書き連ねていこうと思います。
幅広い可能性を持ったゲーム制作ツール
かつて個人でのゲーム制作には、とても大きな壁が立ちふさがっていました。素人がイチからゲームを作り始めるための選択肢はけして多くありませんでした。手軽に制作出来るツールは数少なく、本格的に作るためにはプログラミングが必要になってきます。さらにインターネットゲームを公開した後の反応も、プレイ・実況動画やデバイスが普及した今に比べると限定的でした。
しかし現在に至るまで、ジャンルに合わせて多種多様なツールが販売・配信されるようになりました。例えばノベル、アドベンチャーゲーム制作の選択肢は非常に多いです。もぐらゲームスでも紹介した『ティラノビルダー』を始め、『吉里吉里』や『LiveMaker』や『NScripter』他多数揃い、どれもプログラミングより手軽にゲームを作れます。
紙芝居感覚でゲームを作ることが出来る『ティラノビルダー』。先日話題になった『どとこい』のように、アイデア次第では斬新なゲームも作れる。
出会う女の子がすべてドット絵に見える、異色の設定で話題となった『どとこい』
ゲームを作るソフトとして人気の『RPGツクール』シリーズも、何世代もかけて様々な機能が追加され、より作りやすいツールになりました。先日ブラウザやスマホアプリに対応した『RPGツクールMV』が発売されましたが、前作『RPGツクールVXAce』についても手軽かつ動作が早いというメリットがあるため人気は衰えていません。また、古くから普及している『RPGツクール2000』は、制作者同士の交流によって技術的なノウハウが蓄積され、他のシリーズにも劣らないほどの作品が現在も発表され続けています。
『RPGツクール』シリーズではRPGが手軽に作れるが、『ゆめにっき』や『青鬼』など、一大ブームを巻き起こした他のジャンルの作品もツクール製だ。
これほど選択肢が多いと、どれを選べばいいか迷ってしまいがちです。個人的には直感的に作りやすい『ティラノビルダー』や『RPGツクールVXAce』をオススメしたいですが、自分が感銘を受けたフリーゲームを制作したツールを選んでみるのも一つの手です。例えば『WOLF RPGエディター』は定期的にコンテストを行っており、良いゲームを遊んだ刺激を受けて、自分の制作に活かすことも出来ます。
ゲーム投稿イベント「WOLF RPGエディターコンテスト(ウディコン)」第八回が開催!
無料の制作ソフトだけでなく、有料でも体験版を出しているソフトも多いので、まずは気軽に触って自分に合うものを探してみましょう。
ゲーム制作は始めるよりも完成させるほうが遥かに難しい
さて、みなさんは「エターナる」という言葉をご存知でしょうか?これはゲーム制作における俗語で、制作に取り組んだゲームが永遠に完成しないことを指します。膨らましすぎて破綻し始める設定、全グラフィックを自作しようとしたゆえの息切れ、作っているうちにゲームがつまらなく思えてきて中断・・・これは多くの個人制作者が恐怖することのひとつです。
手軽にゲームを作り始められるツールを手にすると見落としがちですが、大手メーカーが販売するゲームは、リリースするまでとても多くの人が携わっています。プロデューサーやデザイナーやプログラマーだけでなく、広報や流通、事務や資金繰りを担当する人達が、役割を分担しながら作っています。ゲームは見えない支えもあってはじめて完成するものです。もしもフリーゲームを1人で作ろうとするならば、様々な作業の負担が一気にのしかかってきます。チーム制作であっても、それが大変なことには変わりません(むしろ意思疎通の難しさから失敗するケースもあります)。
ほとんどのフリーゲーム制作では収益が発生しませんし、感想を必ずしも得られるとは限りません。その中でモチベーションをいかに保ってゆくかは、制作者にとって最も重要な課題です。
日頃何気なく遊んでいるゲームは制作者の努力の結晶。しかし世に出なかった数々の作品も存在する。
誰もが迷い、間違えながらゲームを作る楽しさを知ってゆく
ゲームが完成しないことは、誰しも起こり得ることです。初心者ならいざ知れず、有名な制作者の方でもそういった壁にぶち当たってきました。逆を言えば、そう言った経験の積み重ねが、魅力的なゲームが生まれる糧になっているのです。
アマチュアである以上、正しいゲームの作り方はありません。時にいい加減に作ったものが思わぬ好評を得たり、冗談で紛れ込ませたおまけ要素がプレイヤーの心を掴むこともあります。逆にいいものを作ろうと気負いすぎて、足をすくわれることだってあります。
正解がないからこそ、ゲームを作る人達はどこかで悩みます。ですが今はネットを通してその経験を共有しあうことが出来ます。例えばSNSや掲示板での交流の中で、自分にない考えを知ることがあります。制作ツールのwikiは先輩制作者が積み重ねた経験の産物です。誰もが迷い、間違えながらゲームを作ることで、ゲーム制作という大きなコミュニティが成り立っています。
ここまでゲーム制作が大変なことを大きく伝えてきましたが、それでも創作者の人口は増え続けています。その理由はたったひとつ、ゲーム制作は楽しいからです。自分が面白いと思ったアイデアを形にすること、マップを作りキャラクターを動かすこと、自分の考えや思いをテキストに忍ばせること、一部の人にしか分からないネタをぶっこむこと、そして何より誰かにゲームを遊んでもらうこと。そのすべてがゲームを遊ぶだけでは体験できない魅力的な世界です。
もし少しでも興味を持ったのなら、ぜひ気軽に制作ツールで遊んでみてください。今まで見えなかったゲームの違う一面が、きっと見えるはずです。
『メイジの転生録』
『Ruina』
『洞窟物語』
フリーゲームをより多くの人に親しんでもらうため、この連載を開始しました。最初に書いたとおり、無料であってもハードルの高い世界かもしれません。しかし誰もが表現者としてゲームを作る時代がやって来た今、フリーゲームはひとつの大きなコンテンツとして人々を巻き込み、進化をし続けています。
これにて、5ヶ月に渡った連載「フリーゲームをはじめよう。」はおしまいです。用意された「ゲーム」という枠をちょっとだけ離れ、フリーゲームをはじめてみませんか?あなたが探し求める体験が、今この瞬間生まれているかもしれません。